新・仮面ライダー考証学 60

仮面ライダー・クロニクルズ(8)

1971年3月末のオートバイ事故以来、撮影現場から離れていた藤岡弘、
氏が『仮面ライダー』に復帰したのは7ヵ月半後の制作第46・47話からだ
った(山田稔監督による2本撮りとして1971年11月12日にクランクイ
ン)。藤岡弘、氏に伺ったところでは、藤岡氏はタイアップしたフェリーに乗っ
て九州へ向かった山田組一行とは別に単独で九州へ向かい、現地で合流
なさったのだそうである。ゴースター編でのオートバイでの走行シーンが復
帰して最初の撮影となった。この時はまだオートバイ事故による傷は完治し
ておらず、複雑骨折をした左脚には手術をした際に埋め込まれた金属の棒
がそのままになっていたのだ。撮影中に傷口が開き出血したが、藤岡氏は
スタッフには内緒にして撮影を続行したそうである。
こうして本郷猛は『仮面ライダー』に復帰した。復帰した仮面ライダー第1号
は第13話までの旧1号とは区別され、後に〈桜島1号〉と呼称されるように
なる。大野剣友会の中屋敷鉄也氏と岡田勝氏、さらに室町レーシンググル
ープの大橋春雄氏が桜島1号を演じた。ここに『仮面ライダー』史上初となる
ダブルライダー編が実現をしたのである。

1971年8月。平山亨プロデューサーが『仮面ライダー40話以降の構想に
ついて』を執筆。予てよりMBS側から要請のあったゾル大佐の降板と、デ
ビル教授(死神博士)の登場を予告。
1971年8月下旬、MBSから東映に対し、1972年元旦の放映枠を1時間
に延長しての〈お正月1時間スペシャル〉制作の打診がある(残念ながら実
現されなかった)。
MBS庄野至氏からの提案によって藤岡弘、氏の番組復帰と、佐々木剛氏
との共演によるダブルライダー編の構想が生まれる。
伊上勝氏が、藤岡弘、氏の復帰を前提に〈お正月1時間スペシャル〉のシノ
プシスを執筆。
1971年9月10日、MBS千里放送センターで定例の制作会議。主要議題
は藤岡弘、氏の復帰と〈ホラー博士(死神博士)〉のキャラクター設定に関し
て。
1971年9月25日、放映第26話「恐怖のあり地獄」がオン・エアーされる。
ゾル大佐がショッカー日本支部に着任。
1971年10月初旬、田口勝彦監督による放映第43話「怪鳥人プラノドン
の襲撃」と放映第44話「墓場の怪人カビビンガ」の撮影が行なわれる。天
本英世氏が演じる死神博士編のクランクイン。
石ノ森章太郎氏より第3のショッカー大幹部として、マシンマン〈ビッグゼロ〉
が提案される。
1971年10月21日、東映本社で定例の制作会議。主要議題は藤岡弘、
氏と佐々木剛氏の主役交代に関して。
MBS側からの要請を受けて第39話「怪人狼男の殺人大パーティー」のリ
テイク撮影。ゾル大佐の怪人体を黄金狼男に変更。
制作第44話「死を呼ぶ氷魔人トドギラー」より、ショッカー戦闘員のマーク
が所属する怪人の意匠から鷲の意匠の汎用マークに変更される(但し、第
39話のリテイク分に登場する戦闘員も汎用マーク)。
1971年10月下旬、伊上勝氏が台本No.40「大怪人雪男−正月版前編
−」と台本No.47「大噴火!大決戦!−正月版後編−」を脱稿。
エキス・プロダクションでは、演技者を中屋敷鉄也氏と想定して仮面ライダ
ー第1号(桜島1号)のコスチューム一式を新調する(アップ用とアクション
用各1着)。
1971年11月12日、山田稔監督による放映第40話「死斗!怪人スノー
マン対二人のライダー」と放映第41話「マグマ怪人ゴースター桜島大決戦」
のクランクイン。九州ロケで藤岡弘、氏が撮影に復帰。初のダブルライダー
編が実現される。また、新たなライダーガールズとしてエミ(高見エミリー)と
ミカ(杉林陽子)がレギュラーに加わる。旧サイクロン号は今回のロケを最後
に本編から退役。

    画像1 

   画像2

画像1・2)は九州ロケでの毎日放送によるスナップ。(画像3・4)は講談
社、大島カメラマンによる特写。

画像3画像4

ところで、復帰した仮面ライダー第1号を最初に〈桜島1号〉と呼んだのが誰
なのかは不明だが、正確ではない。そもそも九州ロケが実現したのは阿部
征司プロデューサーの尽力であり、当初は鹿児島県桜島でのロケも予定さ
れていた。しかし天候不良等の理由から中止となり、宮崎県えびの高原に
ある溶岩地帯での撮影に変更となったのである。但し、サブタイトルは「マグ
マ怪人ゴースター桜島大決戦!」のままであり、タイトル・バックにも桜島が
映し出されるため桜島での撮影と誤解されている場合も少なくない。但、い
まさら〈えびの高原1号〉と訂正する訳にも行かないだろう。
桜島1号のマスクについては、旧1号のマスクがA・Bタイプ共に旧2号用と
してリペイントされてしまった事もあり新造された訳だが、新規に原型から起
こされたものではない。旧1号のAタイプ・マスク以降、一貫して使用されて
いる3分割の石膏型を使用して造形されている(2分割の石膏型が新たに
製作されるのは新1号編の或る時点からである)。塗装に関しては旧1号の
Bタイプ・マスクの新品の頃に近く、パール・コートではなくクリアー・コートで
仕上げられたものだろう。Oシグナルにパイロット・ランプが使用されなかっ
た理由は不明だが、明らかに見栄えは悪い。


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