超深海底帯底生魚
/生物03

九千Mを超える超深海、海溝の底に布をくしゃくしゃと丸めたような物体が転がっていました。一つの細胞のみでできている大型原生生物クセノフィオフォラ(Xenophyophore)です。単細胞生物では最大級で中には二十pを超える大きさもいるそうです。自分はじっとしているだけなのでひたすら流れてくるエサを待ちます。そのために表面から粘着物質を分泌して砂粒や有孔虫の殻など色んな粒子をくっつけています。だからクセノ(xeno 外来の)、フィオ(phy-o 物)、フォラ(phora 着けている)、と呼ばれているんですね。超深海は貧栄養環境なので外敵となる大型生物の数が少ないことが幸いして、こんな壊れやすい繊細な体でも生きていけるのです。繊細さと逞しさを兼ね備えているわけです。おみそれしました。さてヨミチヒロウミユリは伊豆小笠原海溝の九千M以深でも見つかり、現時点で最深の有柄(ゆうへい)ウミユリと言われています。有柄というのは茎を持っているという意味で、約五億年前のオルドビス紀前期に出現してるのでいわゆる生きた化石なんですね。大昔は浅い海にいましたが中生代以降はこんな深い奈落の底まで追いやられてしまいました。固い岩盤にしっかり固着して口は下流側に向け、十本の腕を上流側に伸ばしてエサを採っているようです。普通超深海の底は泥の堆積物が一般的で茎のあるウミユリにとっては不安定で生きづらい環境です。それにひきかえ海溝はプレートの沈み込みで複雑、硬い底質なのでようやくそこに繁栄の場を築いたと思われます。
1.Syringammina fragillissima
 クセノフィオフォラ(シリンガミナ科)
 10p

2.Bathycrinus volubilis
 ヨミチヒロウミユリ
 23p(茎部13p)