下部漸深底帯底生魚
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どちらも熱水噴出域にあるチムニーで生活しています。まず名前に惹かれました。巨大なタニシみたいなヨモツヘグイニナという名前、学名ではありません。出典は古事記です。漢字では黄泉竈食蜷と書き、「黄泉竈食(よもつへぐい)」は黄泉の国のかまど(竈)で煮炊きしたモノを食べる意味だそうです。昔々のそのまた昔、ニッポンの地に降り立った神イザナミが火の神を生んだとき、火傷がもとで黄泉の国に旅立ってしまいました。悲しんだもう一方の神イザナキが連れ戻そうとしましたが時すでに遅し、イザナミは「黄泉竈食」してしまったために地上には戻れなくなっていました。この貝、エラに化学合成細菌を共生させていて熱水噴出孔から供給される無機物を有機物に変換して生きる糧としているので、もはや太陽とは無縁の世界、つまり黄泉とダブるんですね。すばらしい命名です。最後のニナ(蜷)は巻貝全般を指す意味です。よく見ると先っちょが侵食されています。貝殻は炭酸カルシウムでできていますが高圧低温では溶けやすくなります。なので最初に作られた先端から徐々に侵されてるんですね。そんな危険を冒してでも進出する魅力が深海にはあるのでしょう。ハイカブリニナ科に属し化学合成生物群集に固有なグループです。さて気になるのが奥のゴキブリみたいなやつ。環形動物といいながらミミズやゴカイ、ハオリムシみたいに筒状ではありません。のそのそ動きときどき泳いだりもします。この種類は十対のウロコが背中を覆っています。ウロコムシは英語でもscaleworm。種類によっては非常にデリケートで刺激を受けるとウロコを惜しげもなくハラハラと落としてしまうそうです。トカゲの自切と同じなのかどうか、よく分かっていないそうです。いずれにせよ大きさといい形といいやっぱりゴキブリを連想しちゃいますね。
1.Ifremeria nautilei
 ヨモツヘグイニナ
 9p

2.Branchinotogluma segonzaci
 フィジーフタオウロコムシ
 4p