移行帯底生魚
/生物09

昔々のそのまた昔、超大陸ゴンドワナが分裂して南極大陸がブチッとちぎれた後、ノトセニア亜目の繁栄が始まりました。表層の魚は大陸の周囲を時計回りに流れる幅千〜二千qの強い海流(南極環流)を越えることができず陸地にはなかなか近寄れません。また沿岸には反時計回りの流れ(東風皮流)があって、このすれ違う二つの海流はどちらも進行方向左に曲がろうとしています(自転の影響…コリオリの力だそうです)。すると両者の境界は海水が少なくなるのでそれを補うように深海から湧き上がってくる流れが生じます(南極深層水)。深海性の魚はこれに乗って大陸に近づき、独自の繁栄を築き上げました。何が独自かというとノトセニア亜目はちょっとやそっとでは凍りません。温帯の魚は約-0.7℃で動けなくなってしまいますが南極に棲む魚は「不凍タンパク」という物質を体液の中に持っていて約-2.2℃まで耐えられる体を手に入れました。なので-1.9℃の極寒の海でも平気な顔して生きていられます。他には浮袋を持たないとか鼻孔が一つ、背びれが二つ(一部を除く)といった特徴があります。ここではショウワギスとナンキョクカジカがノトセニア亜目ノトセニア科に属し約五十種のグループのメンバーです。ゲンゲやクサウオの仲間も寒さには強いらしくノトセニア類に次いで多く見られるそうです。一見地味な魚たちですが体質改善をしながら環境にうまく適応していっているんですね。
1.Trematomus bernacchii
 ショウワギス
 35p

2.Pachycara brachycephalum
 ナンキョクゲンゲ
 35p

3.Gobionotothen gibberifrons
 ナンキョクカジカ
 55p













南極深層水