移行帯底生魚
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ひとくちにエビといっても大きく二種類に分けられます。いわゆる泳ぐエビ(Shrimp)と歩くエビ(Lobster)ですね。今回は歩くエビ、イセエビの仲間です。大きい方のハコエビはイセエビに比べるとトゲトゲが少なく全体的に四角っぽい箱形をしています。断面は五角形、そのあたりが名前の由来ですね。特徴は体長に匹敵する立派な第二触覚です。見慣れたエビの第二触覚は隣のクボエビみたいに後ろへ湾曲させているのが一般的ですがハコエビの触覚は曲げられません。常に槍のように前へ突き出しています。だから英語でもJapanese spear(槍)lobsterです。一方のクボエビは触覚が紅白のシマシマなのでBanded whip(縞模様のムチ)lobsterなんでしょうねきっと。ハコエビは以前は相模湾あたりの泥質の海底でよく獲れドロエビとも呼ばれて食用になっていたらしいですが最近は激減して市場にはほとんど出てこないそうです。さて面白いのは彼らの幼生期、親とは似ても似つかぬ姿の時期があります。透明なクモといったところでしょうか。発見された十九世紀には新種のエビと考えられていたそうです。無理もありませんね、こんなに違うんじゃ。フィロゾーマ(phyllosoma)幼生と呼ばれフィロは「葉」、ゾーマは「身体」、プレスしたように薄っぺらい姿をしています。孵化した後、何回か脱皮を繰り返して約一年は水中を漂うプランクトンとして生活します。3pくらいに成長しても厚みは1o程度、ぺっちゃんこです。その後のたった一回の脱皮で劇的に変貌を遂げます。中身が中心線に集まってきて、次第に厚みを増します。中から出てきたときは円筒形したエビらしい姿、プエルルス(puerulus)幼生に変身します。透明でガラスエビと呼ばれ、この時期は何も食べません。やがて稚エビとなってお馴染みの姿に落ち着きます。海底をのっしのっしと歩く姿しか知りませんがなかなか波乱に富んだ人生じゃありませんか。
1.Puerulus angulatus
 クボエビ
 21p

2.Linuparus trigonus
 ハコエビ
 47p(Lv.0.25p)