上部漸深底帯底生魚
/生物03

体中がトゲトゲのエゾイバラガニ、食用になります。タラバガニ科でヤドカリの仲間、ハサミを除く三対の脚とは別に小さい第四の脚が甲羅の内側に収まっています。タラバガニは生きているとき暗ぼったい紫色をしていますがこちらは始めから鮮やかな赤です。右手の方が大きく、おそらく巻貝を背負った本来のヤドカリが体を引っ込めるときにこの大きいハサミをフタ代わりにした名残りなのでしょう。特に不自由はしていないようです。そして忍び寄る先にはシロウリガイの群集がいます。普通の二枚貝はプランクトンをろ過して栄養源にしているのに対しこのシロウリガイは消化管が退化していてこの方法が使えません。で、肥大したエラに化学合成細菌を共生させていて細菌が作る有機物をエサにしています。この海底は冷水湧出帯(れいすいゆうしゅつたい)といってプレートが沈み込んだりぶつかったりして圧縮された地殻からにじみ出るメタン水が豊富な場所です。このメタンと海水中の硫酸イオンが反応してできた硫化水素が細菌の糧になっているそうです。硫化水素は特に堆積物の下の層に多く含まれていて小さめの貝は体の大部分を、大きめの貝は半分くらいを埋めて一生懸命アシを伸ばし、ずっずっと移動しながら居候(いそうろう)の細菌のために硫化水素を探し求めています。日本周辺にも多く、十数種ほどが深さで棲み分けているようです。たまたまたどり着いた深さで独自の進化をしたのでしょうね。
1.Paralomis multispina
 エゾイバラガニ
 70p(甲幅10p)

2.Calyptogena soyoae
 シロウリガイ
 15p













深さで棲み分け