中深層遊泳魚
/生物08

富山湾の名産と言えばこれを抜きには語れません。幻想的なイルミネーションを見てよし、からし酢ミソで食べてよし、すっかり全国ブランドになっています。富山湾は最深部が千二百M、と陸地に近い深海湾で相模湾や駿河湾と並んで実に面白い生態系を抱えています。普段は数百Mの深海にいるホタルイカは春先、産卵の時期になると浅い所まで上がってきます。時には海岸まで近寄り過ぎて「身投げ」になって打ち上げられてしまうこともあります。これはどうやら新月の晴れた夜、月明かりの道しるべを見失ったホタルイカたちが沖に戻れなくなってしまうからとのこと、深海生物といえど天体の影響を受けているんですね。発光器は三種類あって体全体に分布する皮膚発光器、目玉の下に五つ並ぶ眼発光器、そして第四腕(触腕ではありません)の先端に三つずつ並ぶ腕発光器、がそれぞれ別々の役割を果たしています。まず胴体に数百個くらい分布する皮膚発光器は下から見られたときの影を消す役目をしていると考えられています(カウンターシェーディング)。発光器の向きも巧妙で丸い断面の胴体に放射状ではなく真下を向くことで死角をなくしています。さすが抜かりはありません。眼発光器はどうしても透明にできないこの大きな目玉の影を隠すために発達しました。そして腕発光器は威嚇のためにひときわ強く輝き、網ですくい獲られた時のあの幻想的な光となります。イラストにマウスポインタを置くと発光の様子を確かめることができます。さて次にシラエビ(通称シロエビ)もかき揚げよし、寿司ネタよし、富山湾の重要な食材として利用されています。生きているときの水晶のような透明感は「富山湾の宝石」と呼ばれるにふさわしい美しさです。
1.Watasenia scintillans
 ホタルイカ
 7p

2.Pasiphaea japonica
 シラエビ
 7p













発光器の向き