BJ6美術準備室展 テーマ「asobi」について

この日本という国は、いつの間にか人に厳しい社会に変わってしまった。 お互い様という考え方がすたれ、人々の表情は固く、笑顔をふりまくのはサービス産業ばかり。 誰もが自分の身を守ることに必死になり、他人を思いやる心の余裕をもちにくくなっている。 そうしてため込んだストレスを発散するために、対象をみつけては、よってたかって攻撃する。 振り上げた拳がいつか自分に振り下ろされるかもしれないのに。 これは拝金主義や不況による社会不安など様々な要因が考えられるが、 世の中から「あそび」の要素が抜け落ちていることも原因の一つではないだろうか。 文化やスポーツ、産業や学問が日々発展してきたのは、人々の心の中にあそび心があったからだ。 それは柔軟な発想の源であり、明日への生きるエネルギーでもあった。 また、社会にはハンドルのあそびのようなゆとりがあって、それが他人への思いやりや寛容さにつながって潤滑油のような役割をはたしていたはずである。 これら「あそび」の精神を現代社会が忘れてしまったために、現在の閉塞感ただよう社会状況に陥っているといえないだろうか。 教員として日々感じることだが、こどもたちには将来にむけての大きな夢が必要だ。 でも今の社会状況は、こどもたちに厳しい現実をつきつけ、夢をみることを困難にしてしまっている。 これは私たち大人の責任であり、こどもたちが夢や希望をもって、安心して成長できる世の中にしなくてはならない。 BJ6では 「asobi」 のテーマのもと、12名の美術教師がそれぞれの「あそび」を作品に表現した。テーマに対する解釈はさまざまであるが、一つひとつの作品は、作家であり教員である私たちの、 社会へ向けてのメッセージである。 こどもたちの輝く未来のために、たとえその波は小さくとも一石を投じる機会としたい。

BJ6事務局  岩永  純