私たちは、これまでも各種の公募展、グループ展、そして個展などを通して、それぞれが作品の発表をおこなってきました。それらの中には、残念ながら失敗に終わってしまったものもあり、発表することの重さを肌で感じさせられてきました。私たちは、時には安易に考えすぎて、また時には難しく考えすぎてしまい、それらに流されるようにして失敗を重ねてきました。個々の人間が追求していることを一つに束ねるということは、不可能に近いことですし、すべきことでもありません。しかし、何の接点も必然性もなく、ただ作品を並べただけでは曖昧な発表になりかねません。また、下手をするとそれだけではなく、作品どうしの殺し合いすら起きかねません。
そういった危険性を承知の上で、私たちはここに集まりました。
意見の対立などがきっかけとなり、私はこのグループの存在価値に気づきました。たどってきた道も、考え方もまるで違うのだという、あまりにも当たり前なことについて再認識させられたとき、逆に、大切にすべきことが見えてきました。展覧会のコンセプトから名称に至るまで、様々なことでもめましたが、これは私たちにとっての大きな収穫となりました。こういったグループにしかできないことが、あるということに気づきました。
私たちの話し合いの中で、なかなかまとまらなかったことの一つに、「教員のグループであるということを、出すべきか出さざるべきか」という問題がありました。よく混同されてしまうことなのですが、美術の教員と美術作家とは、全く性質が異なるものなのです。結局、共通のテーマを設定して制作に望むことになり、美術家としての部分を前面に押し出すような形となりましたが、名称については、「むしろ私たちならではのものをつけた方がよいのではないか」といってような意見も出されました。
最終的に展覧会名が『BJ 美術準備室』という名称に落ち着いたのは、そういった経過をふまえてのことです。『ER 緊急救命室』や、『BT 美術手帖』みたいな名称ですが、誰に何をみてもらいたいのか、何をしたいのか…といったことが決め手となり、この名前を採用することになりました。
私たちは今回の展覧会を、美術ファンの方だけではなく、一般の方にもご覧いただけたら…と考えています。そのために、難しい言葉を名称に使うことを避け、私たちの仕事場を意味する言葉を提示しました。この言葉にはもう一つの意味があります。「これからの美術を準備するための部屋」という意味も重ねてあります。私たちの活動が、美術と美術を…そして、人と人とをつなぐ新たなきっかけとなってくれたら…そんな思いが込められています。
今回のテーマは『起』です。思い思いの方法で“料理”します。