ンションで黒猫のプーちゃんと二人暮らしの、40代の男性Sさん。プーちゃんを人生の伴侶としてとてもとても可愛がっていらっしゃる。プーちゃんが病気になると、
「どうしてもプーに薬を飲ませられないんだ・・・」
と言って、元気になるまで毎日毎日通院してくる。

る時、そんなプーちゃんが、原因不明の脳障害を起こして突然の入院となった。
「とにかくプーを頼みます。」
心配の絶頂・・・、と言う感じで、振り返りつつ病院を後にしたSさん。
「ご心配なく。」とも言えない状況なのが、つらい所だった。

日の朝、さっそくSさんから電話が入る。
「もしもし、Sだけど、プーの具合はどうかなぁ・・・?」
「昨日よりはだいぶ落ち着いた状態です。このまま徐々に回復していってくれると思いますよ。」
「・・・あぁ良かった! そうだ、会いに行ってもいいですか?」
「どうぞもちろんです。」
「・・・。でも俺が行くと、プーのやつ興奮して、また悪くなるって事はないかなぁ。」
「大丈夫だと思いますよ。どうぞ会いに来てあげて下さい。」
「いや、やっぱり今日はやめておこう。俺は大丈夫だから。」
「はぁ?」
「うん、俺は我慢できるんだ。1日くらい会わなくたって・・・。プーが心配だから、今日は会わずに我慢する事にするよ。」

の日の夕方、Sさんがプーちゃんに会いに来たのは言うまでもない。しかも、なぜか背中を丸めて、ヒソヒソ声で話しながら、ぬき足さし足。




年で14才になるオス猫のランチさんは、乳飲み子の頃から人間の手で育てられた箱入り息子です。
そのため少々社会化がうまくいかず、飼い主以外の人間や他の動物にもイマイチ馴染まない性格の持ち主に育ちました。
そんなランチさんも13才頃から体調を崩しがちになり、すっかり弱々しいお爺ちゃんになってしまいました。
んなある日、ランチさんの家に1匹の仔猫がやってきました。生まれて間もない、まだへその緒のついた乳飲み子。柄といい尻尾の短さといいランチさんの子供の頃を彷彿とさせる姿・・・。
いつもは仔猫がうちに来ても見向きもしない、どちらかというと、まだ猫というよりはハムスターのような仔猫に対して「シャー」とか怒る事の多かったランチさんですが、なぜか今度の仔猫に対してはちょっぴり友好的な態度を見せたのでした。

んなランチさんの異変に気づいたのは、仔猫が離乳をすませ、動物病院に預けられるようになって数日後の事。
しばらく収まっていた体調不良による夜鳴きが始まり、時々吐いたりして、少し食欲も落ちてきました。そして、おなかのあたりを触ってみると、おっぱいにしこりが!!
猫の腫瘍は悪性である事が多いので、慌てて病院に連れて行きましたが。先生いわく「腫瘍っぽくないけれど・・・心配だから一応、抗生物質を一週間続けて大きくなるようなら手術で取りましょうか。」
がーん・・・。
キドキしながら薬を与えて1週間。しこりに特に変化はありません。時々仔猫を家に連れて帰り、遊び相手にしていると結構よく面倒を見て、ご機嫌もいい様子・・・。2匹で遊んでいる姿はまるで「親子」のよう。・・・そういえば夜鳴きもないような・・・
・・・??あれ?・・・もしかしたら・・・?!

くメス犬やメス猫で自分の子供でない赤ちゃんに対して、母親のように振る舞い、おっぱいが出るようになる・・・というのは聞いた事がありますが、まさかオス猫の、それも14才になるお爺さん猫にそんな事が起きるとは。(もちろんオスなのでおっぱいは出ませんでしたが)
半信半疑ではありますが、確かに仔猫が来て以来、悪かった体調も順調に回復し、夜鳴きも無くなり元気になったランチさん。
あの夜鳴きは仔猫を探していたんだね。

在仔猫は4kg以上に育ち、悪戯盛りでランチさんを追い回している。あれだけベタベタに可愛がっていたというのに、最近ではちょっとうっとうしそう。でも相変わらず体調はいいので、おじいちゃんにとっては良い生きがいに巡りあったって事なのかな??

ふふん