バイオ政治学ホーム メール コラムの目次




「バイオ政治学」コラム vol.208 [2002/08/10]
著者:白楽ロックビル
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゴードン会議「アメリカの科学技術政策の最前線」
に参加して(4):4日目の講演者
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2002728日〜84日、アメリカ・コネチカット州で開催されたゴードン会議「アメリカの科学技術政策の最前線(Frontiers of US Science & Technology Policy)」に参加した。

 

4日目午前のセッションは「政策と技術:バイオ、情報、ナノテクなど (Policy and Technology: Bio, Info, Nano et al.)」だ。


座長はキム・プロフカー (Kim Plofker)で、所属はマサチューセツ工科大学ディブナー研究所 (Dibner Institute for the History of Science and Technology at MIT) とあるが、彼女のホームページ (http://www.brown.edu/Departments/History_Mathematics/plofker.html) ではブラウン大学である。39歳。ゴードン会議に参加するのは初めてだそうだ。

研究内容をホームページから探ると、

Her research interests in the history of the exact sciences include: cross-cultural transmission in the exact sciences in Europe and Asia from antiquity to the twentieth century; cultural influences in European, Islamic, and Indian civilizations on understanding of quantitative methods and technology for scientific problem-solving; interaction between medieval Indian and Islamic mathematics and astronomy; historical development of calculus; and design and development of electronic tools for working with multilingual, multi-script scientific and scholarly textual sources (printed and manuscript)

・・・・・である。エ? 英語のまま? ウーン、ゴメン。

 

写真は http://www.nku.edu/~curtin/plofker.html から引用した。

1人目の講演者アル・ロミグ(Alton Romig)で、サンディア国立研究所の科学技術パートナーシップ担当の副所長(Vice President for Science & Technology and Partnerships)である。講演タイトルは「バイオ、情報、ナノ、コグノの統合:投資、利益、リスク(The Confluence of Bio, Info, Nano and Cogno: Investments, Benefits and Risks)だ。


ここにでてる“コグノ(cognition)”は認識や識別という新しい研究領域である。多分、いずれ日本でも台頭してくる研究領域に違いない。気の早い大学院生のキミは、この領域を習得すると日本で活躍できる気がする。

 

写真は http://isandtcolloq.gsfc.nasa.gov/spring2002/speakers/romig.html から引用した。実際の登壇は、スーツもネクタイもなしのTシャツである。

 

ボクはサンディア国立研究所というものを知らなかった。ホームページ(http://www.sandia.gov/) の説明文を翻訳引用すると以下のようだ。

 

1949年以来、サンディア国立研究所は、国家安全保障をサポートする科学技術を開発してきた。今日、少なくとも2億7200万人のアメリカ人のために、平和と自由に対する脅威をサンディアの科学技術が解決している。サンディアの任務は、4つのキーエリア、科学技術、人々、インフラストラクチャ、パートナーシップにおいて国家的ニーズを満たすことだ。

以下は英語のままでスンマセン。

l        Nuclear weapons — ensuring the stockpile is safe, secure, reliable, and can support the United States' deterrence policy

l        Nonproliferation and materials control — reducing the proliferation of weapons of mass destruction, the threat of nuclear accidents, and the potential for damage to the environment

l        Energy and critical infrastructure — enhancing the surety of energy and other critical infrastructures

l        Emerging threats — addressing new threats to national security

 

発表は、パワーポイントを使い、なかなか好感度の高い内容だった。

 

2人目の講演者スーザン・フィッツパトリック(Susan Fitzpatrick)でマクドネル財団(McDonnell Foundation)の副所長である。


1984年、コーネル大学で生化学・神経学の博士号を取得した。イェール大学で脳の物質代謝のNMR5年間研究したあと、非営利団体の運営にキャリアチェンジした。

マクドネル財団は、生物学と行動科学に関して、大学の研究に助成する財団である。副所長の権限として、毎年
20億円の研究費を配分できるというから、スーザンはスゴイ。


講演タイトルは「バイオ技術と情報技術:ミクロ技術がいつマクロ問題を解決するか? (Bio/Info Technology: When Micro Solutions Yield Macro Problems?)」だった。それを、発表の冒頭に「ミクロ技術とマクロ問題:公共福祉としての科学(Micro-Solutions and Macro-Problems: Reflections on Science as Service)」に変更した。こういうフレキシブルさもゴードン会議ではありなのだ。

 

そういえば、前の発表者アル・ロミグは、発表直前に講演席で、スライドの編集をしていた。会場のパワーポイントにセットされているので、編集の舞台裏がよくわかって面白い。手品のタネあかし? 推理小説の犯人が読む前に分かる? マーいいけどね。

 

写真は http://www.ulst.ac.uk/faculty/science/nnru/sf.html から引用した。写真ではメガネをかけているが、実際はメガネなしで講演をした。ボクは、アメリカの白人中年女性は区別がつかない。講演が終わると、どの人が本人だったか識別できない(気がする)。今回の会議に出席しているアメリカの典型的な白人中年女性は、ふくよかな体型で、ゆったりした白っぽい洋服を着ていて、胸は大きく、素足にサンダル、髪は長めで、髪の色はオーバーン(日本語でなんていうの?)である。このスーザン・フィッツパトリックがそうだ。

 

なお、スーザン・フィッツパトリックは、ゴードン会議に参加するのは初めてだそうだ。発表は、OHPを使ったが、文字ばかりで見にくい。今回の講演者を発表スタイルで結論づけると、パワーポイントを使えば講演は分かりやすく、OHPを使う講演は分かりにくいと分類できる。

 

 

3人目の講演者マーティン・アプル(Martin Apple)で、科学学会代表者評議会(Council of Scientific Society Presidentsの議長である。

といっても科学社会代表者評議会がわからない? ボクも分からない。科学政策、科学リーダーシップ、科学学会の協議を促進する団体とある。よくわかんないけど。

ミネソタ大学で遺伝学・微生物学の修士号を取り、カリフォルニア大学で生化学の博士号を取得した。

講演タイトルは「国家緊急事態のなかでの科学者と特別機動隊 (Scientists and SWAT Teams in Times of National Emergency)である。


アメリカでは現在ホットな話題の 国土安全保障省(Department of Homeland Security http://www.whitehouse.gov/deptofhomeland/)の話が中心である。話題が話題だし、国防関係だから、威勢のいい、攻撃的な話が、きわめて巧みに発表されると期待していた。しかし、残念ながら、前の演者より細かい文字のOHPを使って発表し、しかも下をむいて原稿を読むものだから、なんか自信がなさそうに聞こえる。“なさそう”じゃなくて、ホントに自信がないのかも知れない。

 

発表内容は、政府の安全保障組織に関するケーススタディーとして、バイオテロリズム、特に食品のテロ攻撃に対する問題を論じていた。「もしバイオテロが発生したら、1時間以内に誰がどのような責任と行動をとるのか? 5時間では? 24時間では?」。「今は、誰かが責任をとれる体制じゃない」とアメリカ人がよくするように肩をすくめた (ゴメン、彼はアメリカ人で、ここはアメリカだったっけ)

 

写真は http://www.botany2002.org/apple.html から引用した。

 

ディスカッションリーダー1人で、NIH国立がん研究所・技術移転部のベン・プリクリル (Ben Prickril)である。彼は、2003年のゴードン会議「技術移転の世界的観点:バイオテクノロジー (Global Aspects of Technology Transfer: Biotechnology)」の議長を務める。 http://www.grc.uri.edu/programs/2003/global.htm

 

彼は、1992年にジョージア大学で「嫌気性バクテリアDesulfovibrio vulgarisの鉄含有タンパク質・ルベリスリンのクローニングと生物物理学的解析」で博士号を取得した。その後、行動遺伝学のポスドクをした後、アメリカ特許庁でバイオテクノロジー特許審査官を務め、1997年に現職についた。

 

インタネットでは写真が見つからない。

 

NIH・国立がん研究所に技術移転部(TTBTechnology Transfer Branch, http://ttb.nci.nih.gov/)ができていたのを知らなかった。ついでに調べておこう。英語のまま引用してゴメン。

TTB provides a complete array of services to support the National Cancer Institute's technology development activities. To ensure that these activities comport with Federal statutes, regulations and the policies of the National Institutes of Health, a large part of TTB's responsibilities includes the day-to-day negotiations of transactional agreements between the NCI and outside parties, including universities, pharmaceutical and biotechnology companies. These agreements provide for: The exchange of research materials under the Simple Letter of Agreement (SLA); Collaborative research conducted under cooperative research and development agreements (CRADAs); Preclinical and clinical studies of the safety and efficacy of new pharmaceuticals under clinical trial agreements (CTAs); and Exchange of confidential information under confidential disclosure agreements (CDAs).

 

閑話休題

 

会場には、タンクトップを着た両肩むき出しのお嬢さん(カリフォルニア大学サンフランシスコ校のポスドク?)がいる。だから、アメリカ人の感覚では会場は寒すぎないかも知れない。なお、肌の露出度がもっとも高い人がこのお嬢さんである。といってもセクシーというわけじゃない(念のため、どういう念?)

 

ボクは、「親の因果が子に報い?」、寒さに弱い。初日はウッカリしていて、寒さ対策を講じなかった。それで気管支発作で死にそうだった。その後、寒さ対策の工夫をした。いくつかは飛行機に乗るときと同じだ。なお、今は真夏で、外気温は33度である。

1.     冬物のセーターを着る

2.     スカーフを首に巻く

3.     左手に手袋をする

4.     階段教室なので高い場所が暖かいと予測して最後尾の席にすわる(通常は、見やすいように前から23列目に座る)

5.     コーヒーブレークでは戸外にでてサンサンと照る太陽の光を浴び、気温33度で身体を即席に暖める

6.     それでも、体力がもたない。最後の手段は、会議には必要最低限だけ出席して、あとはホテルの部屋で熱いシャワーを浴び、ブランデーを飲んで昼間でもヒタスラ寝る。眠れなくても体力を保つために、ベッドの中で目をつぶっている (どこでもスグ寝れる体質だ。この点は親に感謝している)

 

コレだけ対策をたてたのに、しかし、今日は気管支の発作が起こってしまった。夜のセッションでは、人類社会のエネルギー問題が控えているが、人類社会どころじゃない。ボク1人のエネルギー問題が控えている。さらなる対策は? アルコールで内から温める? マズイ。会場からつまみ出される。帰りに車を運転して帰らなきゃならない。酔っ払って時速100kmも出すのは危険だ (高速道路を走るとこの程度のスピードは軽くだす)。では、使い捨てカイロをスーパーマーケットで探してみよう。イヤ、コレは、アメリカでは売ってない商品の筆頭だろう。

 

4日夜のセッションは「将来のエネルギー問題:選択肢は何か?(Energy Futures: What are the Alternatives?)」だ。

 

座長はウィル・リプコウスキー(Wil Lepkowski)で、職業はコンサルタントである。生化学の修士号をもち、かつて、ベテランの科学記者であった。ケミカルエンジニアリングニュース(Chemical and Engineering News)の上級記者、また、フリ−ランスでネイチャーなどたくさんの科学技術雑誌や政府刊行物に記事を書いた。前回のゴードン会議の議長だった。

 

インタネットでは写真が見つからない。

 

アメリカの白人中年女性はどの人も似ていて区別がつかないと先ほど書いたが、白人中年男性も同じだ。典型的なアメリカの白人中年男性は、中肉中背、四角い顔で、髪がグレーである。このウル・リプコウスキーがそうだ。ゴルフでもしていそうなステキなオジサマである。

 

1人目の講演者マーサ・クレブス(Martha Krebs)で、エネルギー省の科学部長(局長?)を経て、現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校・副学長とカリフォルニア・ナノテク研究所長である。

写真は http://www.pnl.gov/energyscience/11-99/inside.htmから引用した。

講演タイトルは「炭素エネルギーあと1世紀(Carbon Management and the Century Ahead)」である。内容はなかなか興味深い。講演の準備も十分にされていて、パワーポイントを使い、データも抱負である。現代社会の化石燃料の利用は、いろいろな角度から利用効率を最大化しなければならない。その現実の問題点と取り組みにかなりの説得力があった。



2人目の講演者スタンフォード・オブシンスキー(Stanford Ovshinsky)で、1922年オハイオ州生まれというから、今年80歳である。こんな高齢者がゴードン会議で発表するのは珍しい。


高校を出ただけで大学にも行かずに、超伝導の新分野を打ち立てた人である。アインシュタイ風のヘヤースタイルである。1960年にエネルギー変換デバイス社(Energy Conversion Devices, Inc. (ECD))を創立した。


彼は、ニッケルメタル電池Nickel Metal Hydride(にかめとへどら)の発明者だ(と思う)。彼の発明は、デジタルビデオに使われ、ミール宇宙ステーションに使用された。現在は電気自動車の燃料として注目されている。

 

講演タイトルは「水素の経済学―どれだけ現実か?(The Hydrogen Economy – How Real?) である。

 

座長のウィル・リプコウスキーは、講演者の紹介の最後に次のように述べた。「私が若い科学ジャーナリストだった40年前、オブシンスキー氏にインタビューしたことがあります。すごく重要な発明をした人だと聞いたのです。インタビュー前に難しい物質科学の勉強をしてでかけました。オブシンスキー氏は高卒で大学に行ってないそうです。アメリカの高校が素晴らしい科学教育をしていると証明しているようなものです」。

 

オブシンスキーは、「実は、高校に余り出席しなかったよ」と言いながら登場し、場内を沸かせた。この人は、ネクタイをしている3人目の人だが、上着をきている最初の人だ。

 

スライドなし、OHPなし、原稿なし、でシッカリと話し始めた。と思ったら、原稿はあった。時々見ている。

 

未来のエネルギーは水素だという。自動車は電気自動車で、トヨタのエスティマはハイブリッドカーだ。家を建てるならソーラーハウスだ。従来の板状の光変換板ではなく、フィルム状の光変換素子を開発した。

 

15分くらい講演してから、OHPも使い始めた。奥さんらしい女性が、OHPシートをセットするのだが、このOHPがすごい。字は小さい。色は変色している。コントラストは薄い。長年使用してマメツと劣化が起こっている感じだ。

 

そして、さらに驚いたことに、OHPシートをセットする最前席の奥さんらしい女性と掛け合い漫才講演になっていったことだ。いわく、オブシンスキーが「あれは何だったっけ?」というと、「XX」と答える。オブシンスキーが話を忘れると「YY」と指摘する。オブシンスキーが「オイ、あれを」というと、袋から固体水素電池を取り出し手渡す。ウーン、すごい講演だ。考えてみると、講演はどうして1人でするのだろう? ボケとツッコミの2人で講演するのもいいかも知れない。

 

 写真は  http://www.time.com/time/reports/environment/heroes/ heroesgallery/0,2967,ovshinsky,00.html から引用した。

 

ディスカッションリーダー1人でロバート・ハーベイ(Robert G. Harvey)である。DTEエネルギーテクノロジー社(http://www.dteenergy.com/)の副社長と聞こえた。副社長は聞き違えかもしれない。

 

写真はインタネットでは見つからない。実際の風貌は、典型的な白人中年男性だ。顔だけ見てると、例によって識別しにくい。書いても説明にならないけど、ボクの友人のフィンに似ている。フィンは映画スターじゃない。ただ、体型は、妊娠形のでっ腹である。ゴードン会議のスピーカーとしてはこのでっ腹は珍しい。今回、初めてだ。

 

ディスカッションリーダーなのにどういうわけか、講演者へのコメントはなかった。スライドなしで、自分が用意した「電力の問題」を話し始めた。

 

そして、やっぱり、夜のセッションも寒かった。ヘ、ヘ、ヘークション! 電力の効率的利用の政策議論をするなら、冷房の温度設定を少し上げてくださいヨ。それとも、誰かボクのウワサしました?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

l       白楽ロックビルのホームページ: http://www.haklak.com

l       BBS/掲示板:白楽ロックビルのホームページの掲示板をご利用ください

l       ご意見・ご感想は haklak@haklak.com

l       このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行しています。登録および解除は http://www.mag2.com/m/0000091440.htm からお願いします。アドレスを変更する場合は、古いアドレスを解除して新しいアドレスで登録しなおしてください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(著作権) 2002-2002白楽ロックビル   All rights reserved.


バイオ政治学ホーム メール コラムの目次