第48次教育研究全国大会(岡山大会) 技術・職業の内容
第10分科会 技 術 ・ 職 業 教 育
T 研究・実践の概要
1.今次教研の課題(技術・職業教育の共通問題)
今次教研には、中学校18、高校9本の合計27本のリポートが提出された。
討議に先立って、理産審答申、教課審答申及び改訂学習指導要領についての分析・問題提起
(共同研究者佐々木・田中・長谷川各先生〕があった。
@新学習指導要領について、技術科の時数削減や情報とコンピュータの領域、総合的な学習の
時間など、技術教育の課題にどう対応するか。
A「普通教育としての技術教育」の再確認をし.積極的な教育編成を行うこと。(技術教育は、
技術及び労働の世界への手ほどき)
B技術教育と環境教育の関係及びそのあり方の討議を通して、中学校と高校との共通理解をうな
がすことをはかる。
以上の基調報告・問題提起をふまえて教育実践の報告と討議がなされた。
2.技術教育
中学校の技術教育に関する18本のリポートは、主題によって大別すると、環境教育1、栽培
3、情報基礎4、機械2、電気3、加工領域3、選択教科1、教育評価1となった。木材加工の
リポートがなく、環境問題を意識的にとりあげたリポートが目立った。
領域ごとに討議を行い、技術教育の教育目標・評価、教材、指導過程のあり方について子ど
もの実態と具体的な授業実践を通して明らかにした。
新学習指導要領によって中学校「技術科」は、授業時数の不合理な削減や、「情報教育」が
もりこまれるなど困難な局面をむかえている。同時に、家庭分野とは異なる技術の独自の「目
標」の明記、内容ごとの時間数や学年配当指定の廃止により、自主的に教育課程を編成する条
件が一定程度できた。これからの技術数育の意義と役割とを参加者が共通に再確認しあう分科
会となった。
3.職業教育
今日、高校職業教育は種々の課題をかかえている。理産審答申「今後の専門高校における教育
の在り方等について」(1998年7月)は、専門高校の役割がますます重要になるとし、専門高校
生が一つの得意な分野で技術や技能をしつかり身に付け、自らの勤労観・職業観を確立していく、
などとして改善・充実の具体的方策を打ち出している。
しかし、「専門性の基礎・基本の重視」や「地域や産業界とのパートナーシップの確立」など、
具体的にどのように展開きれるか注目する必要がある。また、技術と職業の教育が青年期の人間
的発達にとって欠くべからぎる大切な教育であることを実践的に確認する必要がある。
そこで、今次教研では9本のリポート討議により、高校職業教育のうち農業教育と工業教育の
実践と各県の学科改編の状況をふまえ、職業高校の存在意義を明確にし、今後の実践課題と方向
についての展望を明らかにした。
U 分科会討議概要(技術・職業教育の共通問題及び技術教育)
1.技術・職業教育での共通問題について(分科会初日)
(1)環境教育と技術教育(三重(高)・山梨(中)・兵庫(中))
@三重からは、「実習教育(機械科)の見直しについて」の提案があった。環境問題とリサイク
ルを考えた実習として、アルミ缶の再利用に取り組み、1年生で空き缶回収、2年生でアルミ
缶を溶解鋳造実習、3年生でマシニングセンター(MC)を使っての加工を実施した。
A山梨からは、「学ぶ意欲を高める授業の工夫(空き缶のリサイクルに着目して)」の提案があ
った。金属加工(選択)の授業として取り組み、アルミ缶を七輪で溶解する作業では、意外に
も簡単に溶解してしまう様子に生徒が感動し、次の加工の過程への意欲づけになったとの報告
があった。
B兵庫からは、「自らの生活を考え、創造する生徒の育成(地球環境を考えた電気の有効利用)」
についての提案があった。電気の基礎知識や発電と環境問題について学習した後、家庭におけ
る電気機器と消費電力を調べたり、有効な電力消費について調査・実践をしたりする授業展
開であった。調査などを通して電気機器の必要性や無駄がないか考えさせる指導を行った。
技術教育というより、家庭科的な部分が強いのではとの指摘もあったが、総合学習にむけて参
考になる報告であった。
※技術数育としての環境教育を進める場合の課題として、次のような意見があった。
・消費者例の環境問題に着目しがちだが、生産者側の環境問題(エネルギーの有効利用に関して
の技術の向上とその努力など)にも着目すること。
・作る側、使う側の見方・考え方など、両方の観点から学習し生徒に考えさせること。
・もののリサイクルを考えるとき、エネルギー効率や生産コストなども考える必要がある。
(2)「農」教育を考える(広島(中)・静岡(中)・沖縄(高))
@広島中からは、「環境にやさしい無農薬、有機栽培」についての提案があった。除草剤、農薬、
化学肥料など化学物質が栽培活動を容易にしてきてはいるものの、必要以上の使用が人体に影
響を及ぼすなど環境問題を引き起こしている。腐葉土を作り、有機肥料や木酢液の使用により
減農薬有機栽培に取り組んだという内容であった。
A静岡からは、「生活や技術に対する感性を高め、創造的、実践的態度を育てる裁培の授業」に
ついての提案があった。生徒の個性を生かし、興味関心を引き出すことのできる題材の選定、
思考に流れにそった指導計画の作成、問題解決学習の展開などの点から授業実践の報告があっ
た。とくに、プランター栽培による比較実験を通して土の団粒構造と単粒構造の違いについて
考える授業実践が細かく説明された。
B沖縄高からは、「生徒の実態に即した学習指導法について」の提案があった。内容は、農業高
校において課題研究やプロジェクト学習を行う際、記録ノートを活用しながら、生徒の実態に
即した効果的な指導を進めるという報告であった。
(3)選択に関するもの(新潟(中))
@新潟からは、「郷土体験学習によって生活と技術・家庭との関わりを深める教育課程の研究」
についての提案があった。選択教科として取り組み、地域の教育力を生かしながら自動車工場
の板金加工観察学習や野菜・草花圃場での体験学習などを実施した郷土体験学習をさせたとい
う内容である。
※ここでの主な意見、課題としては、
・問題解決学習のとらえ方について、教師側から与えた問題なのか、生徒側から考えられた問題
なのかによってこの学習の質が変わってしまう。失敗の経験から学ぶことは大切なことである
が、教師側で場面を工夫して行う必要もある。
・体験学習については、進路指導に関連しての職場体験も含め、学校教育として何を求めるのか
意義を明確にしなければならない。技術科として行う場合、何を学ばせ、指導し、評価するの
か整理しながら積極的にすすめ、現実の世界から技術の意義を考えきせることが大切である。
・農教育・栽培活動等、本来の技術教育を推進すれば必然的に環境教育につながっていく。
などがあげられ討論が展開された。
2.技術教育【これ以降は技術教育小分科会の内容】
(1)情報基礎に関するもの(福島・愛知・神奈川・三重)【分科会2日目午前】
@福島からは、「『情報基礎』領域における現状と課題」について提案があった。技術科としコ
ンピュータを教えるときの問題点として、アプリケーションソフトの利用だけでなく、プログ
ラム制御やフローチャート、デジタル回路などを生徒に理解させなければならない。その授業
実践の報告であった。
A愛知からは、「自己教育力を育てる指導の工夫(情報基礎領域の教材・教具の開発を通して)」
について提案があった。1年は入門編、2年はプログラム編、3年は応用編と中学校3年間を
通して系統的な指導実践の展開、学習のまとめとして「HTML」の言語を利用して「卒業電
子アルバム」を制作し意欲化につなげることができたとの報告があった。
B神奈川からは、「情報教育の教材開発」について、インターネットホームページ作りの提案が
あった。インターネットを通じて世界中から情報を集め活用できるようになれば、学習意欲が
高まり主体的に取り組めるようになる。ホームページの生徒作品の完成度が高く完成の喜びを
味わうことができた。意識せずにプログラム学習が進んでいったなどホームページ作成の取り
組みの実践が報告された。また、愛知と同様にCD版電子アルバムのレポートが報告された。
C三重からは、「インターネットのホームぺ一ジ作成を通して学ぶ情報基礎」についての提案が
あった。学校のこと、郷土のことを知らせるホームぺ−ジ作品や指導用に工夫された授業プリ
ントが提示されました。
※ここでの主な意見、課題としては、
・技術料で取り組む情報教育とは何か、他教科(美術、社会、英語等)との関わりを考えて取り
組む必要がある。新学習指導要領にも多くの教科でコンピュータの活用が明記されている。技
術科は基礎を学ばせるところではないか。
・子どもをとりまくコンピュータの環境を調査・分析しながら授業を展開しなければならない。
とくに理解が難しい点もあり、その到達度を見極めながらすすめる必要がある。
a,情報の処理と伝達 b,情報の収集と管理 c,モデリングとシュミレーション d,計
測と制御 e,情報化社会に対する態度 の5つの観点があり、技術科での指導の際にこれら
を明確にしながら取り組むことが大切である。などがあげられ討論が展開された。
(2)機械に関するもの(福岡・岡山)
@福岡からは、「ロボコンをやろう!」の提案があった。機械領域で基礎学習したことをもとに
発展・応用的にロボットの作成を授業で扱い、地区のロボコン大会で成果を競うという内容で
あった。大会そのものを授業の中にどう位置づけていくか、学校や関係機関との調整が必要な
点が課題として残った。
A岡山からは、「創意工夫を生かし、自主的に取り組める動く模型の設計と製作」についての提
案があった。多様な動くしくみを学習し、それらを組み合わせ、工夫しながら動く模型をつく
る。キットの有効利用で主体的な取り組みができたとの報告があった。
(3)電気に関するもの(長崎・石川・大分)【分科会2日目午後】
@長崎からは「電気領域の学習をどうすすめるか(電気エネルギーと環境を中心にして)」の提
案があった。発電所の見学などを通して発電方式の学習した後、風力発電機の製作に取り組み、
まとめとして家庭内の待機電力を調べるなど、環境とエネルギー問題について興味関心が高め
られるように授業展開したという報告であった。
A石川からは、「電気領域における指導法の工夫」の提案があった。創意工夫が期待でき環境問
題(リサイクル)を意識したものとして、ペットボトルを利用したラジオの製作に取り組み、
基盤製作は基礎学習、ベットボトルの加工を創意工夫ができる学習として位置づけ授業展開し
たという報告であった。
A大分からは、「体験的な学習を通したわかる楽しい授業の展開(電気領域における自作教材の
利用を通して)」の提案があった。太陽電池の仕組みや特性をについて学習しソーラーカーの
製作に取り組み、自然環境への関心を高めると同時に主体的な実習ができたとの報告があった。
※ここでの主な意見、課題としては、
・原子力発電についてのどのように指導していくか。有効性、設置の是非、現実の生活問題等多
くの課題がある。現状は事実認識だけを教えている。
・環境面から程々の発電方法が考えられているが、技術・コスト面も考慮する必要がある。
などがあげられ討論が展開された。
(4)加工領域に関するもの(岩手・千葉・鹿児島)
@岩手からは、「加工学習における刃物の学習」についての提案があった。加工学習に必要
不可欠な刃物を正しく使えるように、3年間系統立てて取り組んだという報告であった。
A千葉からは、「製作意欲を引き出し、問題解決能力を高める金属加工領域の指導(パター
の製作を通して)」についての提案があった。生徒がオリジナルバターを製作することで、
興味関心・製作意欲が高まり、金属加工の学習に熱心に取り組めたという報告であった。
B鹿児島からは、「子どもの学力を保障するために自主編成による技術教育をすすめる鹿児島の
とりくみ」についての提案があった。また、情報基礎が導入されて以来金属加工を履修する学
校が激減したなどの報告がありました。2年生の選択教科として金属加工に取り組み、自分の
手で苦労しながら作品を作り上げることを通して、金属加工の基礎を学ばせたという報告であ
った。
C岡山からは、教員の自主研究として、「岡山鉋塾」についての紹介があった。代表者の長原政
則さんから、設立経緯、活動内容なとが報告された。槍鉋の使い方の実演後、鉋の使い方の実
習を行った。また、昨年のレポートの追試で、「ナイフ作り」の報告があった。
※ここでの主な意見としては、
・ゴルフのパターの製作は新しい試みで、今後も工夫しさらに実践を深めてほしい。
・ナイフ作りの追試など、県を越えての伝達があり、教研の良さが表れている。などが出された。
(1)評価に関するもの(北海道)【分科会3日目午前】
@北海道からは、「生徒一人ひとりの自己実現を支援していくための授業実践(指導と評価の一
体化への取り組み)」について堤案があった。課題解決的な学習や体験的試行をともなう学習
場面を設定し、オープンマーケット方式を採り入れて取り組んだ。また、基礎基本の定着のた
めに小テストを実施しながら評価・反省に生かした。生徒側にも自己評価や相互評価を行わせ、
授業を展開したという報告であった。指導案中の本時の目標には方向目標しかないので、到達
目標が必要との指摘があった。授業改善していくには、到達目標をしっかり立て、到達度評価
を行うことが大切であるとの意見があった。
3.今後の課題(総括討論)
(1)総合学習の扱いについては、技術科の時数の削減とからめて考える必要があるのではないか。
技術科が積極的に総合学習に関わるかどうかはまだ議論していく必要がある。とくに情報教育に
ついては、技術科が主導をとって技術的再編をめざすのかどうか課題として残っている。
(2)これからの技術教育について、今回の学習指導要領の改訂では領域、時数等大きく変わってい
くが、将来技術科という教科が現在のように存続するのかどうか不安である。情報科などに変わ
ってしまうのではないかとの意見があった。教える内容が実生活と強く結びついているという技
術科の特性をしっかり位置づけ、生きるカをつける教科として考えていくことが大切であるとの
意見もあった。
(3)技術と家庭の関係について、教員の配置、通知票の評定記入欄など課題がある。通知票につい
ては、技術と家庭を独立させている学校も増えてきており、今後教科を分ける運動として取り組
んでいくのかさらに議論する必要がある。
(4)評価の問題について、通知票、指導要録等評価・評定をするが、評価のための評価にならない
ように、子どものための評価となるように考えていく必要がある。新学力観が進むなか、到達目
標が見えにくくなっているので、整理していく必要があるとの指摘があった。
(5)昨年度からの継続課題である情報検索のためのレポート題名について、今年も共同研究者から
指摘があった。情報の発信者として、レポート題名には最低3つのキーワードを入れること。
今回は昨年の反省からいくつかは工夫されているがまだ十分でないので、今後さらに考えてほし
いと再度課題として与えられた。
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