2・人間万事塞翁が馬【平成19年12月28日】
 
 「人間万事塞翁が馬」という俚諺があります。この言葉は、広辞苑によりますと、
【塞翁という人が飼っていた馬が逃げたが、しばらく後に北方の駿馬を連れて戻ってきた。喜んでその駿馬に乗った息子は落馬して足を折ったが、そのために戦士にならず命を長らえたという故事。「世の吉凶禍福は転変常なく、何が幸で何が不幸か、予測しがたい」ことのたとえ】とあります。
 
 私が、この言葉を知ったのは高校生の頃です。その時は特別にこれといった深い意味も感じませんでしたが、何となく面白い話として心の隅に残っておりました。
  そして、実社会でのサラリーマン生活の中で、それなりに失敗・挫折の落胆や達成の喜びの体験をいくつか重ねた30代の後半に、人生についていろいろと悩み考えました。その時に、この俚諺をふと思い出し、思いを巡らしている内に、これは大変意味の深い含蓄のある言葉だと思うようになりました。
 
 人生は山あり谷あり、良い時もあれば悪い時もあります。しかも、良い時・悪い時というのは必ずしも自分の行為と直接的な因果関係が無いことが多々あります。従って、人生の禍福に一喜一憂することなく、それを超越して泰然自若として生きていくべきであるという、人生を生き抜く態度の基本を示した言葉だと思いつきました。
 
 それ以来、私は折に触れてこの言葉を噛みしめながら、
 良いことがあったからといって手放しで喜ばず、また、悪いことがあったからといって落胆することなく、人間として歩むべき道を踏み迷うことなく一歩一歩しっかりと踏みしめながら、いつも天の恵みに感謝しつつ生きていくように心掛けております。