3・考え方(思考方法)について【平成20年3月19日】
司馬遼太郎のエッセイを厳選して1冊にまとめた「以下、無用のことながら(文春文庫)」という本があります。この中に、「魚の楽しみー湯川秀樹の著作集が出ることをきいて」というタイトルで湯川博士の科学的思考法について書かれた1文があります。
それによりますと、科学的思考法は大きく次の二つに分かれるようです。
その一つは、「実証されていない物事は一切、信じない」という態度。
もう一つは「存在しないことが実証されていないもの、起こり得ないことが証明されていないことは、どれも排除しない」という考え方だそうです。
でも、よく考えてみますと科学的思考法に限らず、私達は無意識の内に、この二つの考え方のどちらかに基づいて生きているのだと思います。そう思われませんか?
「以下、無用のことながら」によりますと、湯川博士の著作集の中の「おりにふれて」というタイトルの文章の中で、
博士は
【もしも科学者の全部が、この両極端のどちらかを固執していたとするならば、今日の科学はあり得なかったであろう。
デモクリトスの昔はおろか、19世紀になっても、原子の存在の直接的証明はなかった。
それにもかかわらず原子から出発した科学者たちの方が、原子抜きで自然現象を理解しようとした科学者たちより、はるかに深くかつ広い自然認識に到着し得たのである。
「実証されていない物事は一切、信じない」という考え方が窮屈すぎることは、科学の歴史に照らせば、明々白々なのである。】