「授業の外注」報道について

 2006年1月11日の朝日新聞の1面トップに次のような記事が載った。
 学校授業 広がる「外注」 特色づくり塾頼み
   小中高校で,授業や補習,進路指導などを予備校や進学に任せる「外注化」が首都圏を中心に広がっている。
   東京都港区の区立中や江東区の区立小では塾の先生が教える。
 
   港区の区立中学の土曜特別講座は昨年6月から,進学塾「早稲田アカデミー」との提携で始まった。1〜3年の
   全学年を対象に,英数国の3教科の授業がある。場所は学校の教室。講師が同塾製のテキストで教える。発展と
   基礎の2コース。

   港区で区立小から区立中に進んだ生徒は昨春54%。「生徒に勉強の習慣をつけて区立の教育の質を高めたい。
   結果として私立から生徒を取り戻す投資として,高いとは思わない」と高橋良祐区教育長は話す。

 筆者は思いも寄らない方法が進行しつつあることに,非常に驚いた。同時に,なぜこのような事になっているのかを考えた。

 学校の自由選択制はかなり前からいわれつつも前進の様子が無い。また,特色ある学校づくりも,行事や部活動の大会結果などに振り回されている感がある。しかし,保護者や子どもたちが本当にほしい特色は,学力のつく学校なのである。そういう点で,港区の教育長の決断は正しい方向であるといえる。ただ,方法が問題なのである。また,その方法にならざるを得ない現状に問題があるのである。それらについて考えてみよう。
 
 週5日制が始まって,この数年間の学校現場の異変は目を見張るものがある。
 
 中学校では土曜はたいていの都道府県では3時間授業だった。それが週5日制になればその3時間を引いて27時間となるのかと思ったが,28時間になった。1時間増えることと同時に始まった「総合的な学習の時間」が教師を振り回している。教師の勤務時間終了は5時前後と決めている学校が多い。週に3回6時間授業を行えば,その3日間の残りの勤務時間は数10分という事になる。「総合的な学習の時間」は他の論で書いたが打ち合わせが重要な教科である。そのため教師同士が打ち合わせを行うのは勤務時間を超えているのが現状である。

 また,質の高い授業を行うためには充分な準備時間が必要なのは当然である。授業の目的と生徒につける力を考え,教材を選択し,必要な資料をそろえ,授業の展開を考えなければならない。しかし,現状では充分な時間が確保されているとは決して言えない。

 生徒の生活指導や教育相談も教師は行っている。社会性を高めるべく,あいさつ等のしつけや給食の準備,片づけ,清掃指導,人間関係づくりなど様々な問題に教師は日々対面している。

 部活動の指導も教師の時間を束縛している。最もそこに力を入れている教師や生徒がいるのも事実だが全員ではない。朝の部活動の練習を7時30分頃から行い,夏場は夕方の6時頃まで毎日部活動の指導に教師はあたっている。休日や長期休暇中も同じである。

 このような現状を打開する案として授業の「外注」が広がりつつあるのだろう。恐らく,この方法は生徒,保護者,教師のニーズにかなっているのかも知れない。教師の中には好意的にこの方法を受け入れている人もいるだろう。

 しかし,本当にこれは正しいやり方なのだろうか。学校は学力や体力を高め,社会性を身につける場である。その原点に立ち返って教師が本当に行わなければならないことは何かを考え,教師同士で討論をしなければならないのではないか。その上で,教師が力を入れるところ,時間をかけるところを整理し,無駄な部分をカットし,学校としての特色を生み出す努力が必要なのではないか。
  そして,その特色の一番大切なところは「学力の保証」であるべきである。同時に「体力」,「社会性」を身につけさせるべく学校の教育デザインを描かなくてはならない。

 難しい課題だが,筆者は一教育者として,この記事を読み,ある種の恥ずかしさを感じた。他の方はどう考えるだろうか。ご意見をうかがえると幸いである。

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