音楽科教育と特別活動との関連

 音楽科教育と特別活動は,様々な意味で関連しあっている。ここではその実例と課題を挙げる。

1 音楽の表現領域と学級活動
 音楽科の表現領域は,合唱にしても合奏にしても集団での活動である。もちろん表現領域には,個人で行う創作や演奏ももちろんあるが,全体としては,恐らくグループ活動や学級全体での表現活動が多くなるだろう。そうなると,集団の質を高めることが音楽科の授業の質を高める要因の一つになる。
 特別活動の目標は,次のようである。


 学級集団や班集団などは,はじめから望ましい集団活動ができるわけではなく,様々な指導を通じて,望ましい集団活動ができるように子どもたちが成長していくのである。
 これは,学級活動では,担任の教師が行うが,各教科ではそれぞれの教科担当が子どもの指導を行うことになる。つまり,中学校では学級担任と教科担当は車の両輪のように,子どもたちをよりよい集団として育てていくわけである。
 「各教科との関連」については,中学校学習指導要領「特別活動」解説P.20に具体的に書かれている。


 これらは,学級担任が一人で行うことではなく,学校の教育活動すべてを通して生徒に身につけさせていく事柄だろう。つまり,各教科担当の教師は,教科学習を通じて,生徒に自主的,実践的態度を身につけさせるよう指導をすることが重要である。


 特に,集団での活動が多い音楽科では,この特別活動の目的は重要な関連がある。他の教科の教師よりも,この特別活動の目標達成が音楽科授業の目標達成と深く関連がある。音楽科の目標には「音楽活動の楽しさを体験することを通して・・」という一文が最初に掲げられている。
 楽しい音楽活動は,望ましい集団活動から生まれる。逆に言うと,集団が機能していなければ,楽しい音楽活動は望めないだろう。従って,特別活動における生徒指導機能が,音楽科教師により実現されることで,音楽科の目標達成に近づくことができるだろう。

2 合唱祭,卒業式等の学校行事
 合唱祭,卒業式,またはその他の音楽発表会は,音楽科の授業ではなく,特別活動の学校行事である。これらの行事の目標は,特別活動の視点で設けると同時に,音楽科としての特質も目的として,掲げることは,行事の性質上必要だろう。ちなみに本校の合唱祭の目標は,次のようである。


 第1項目として,特別活動の目的を掲げ,その上で音楽科の特質を目標としている。
 また,本校の卒業式の歌の練習の目標は,次のようである。


 こちらは,音楽科としての特質としてよりも,卒業式という大きな行事の中の一部分であるので,特別活動としての目標のみ掲げている。むろん卒業式全体の目標は,別にある。

3 音楽科としての課題
 音楽科の教師は,合唱の完成を目指し,自分が表に立って生徒を引っ張っていく場合がある。例えば,卒業式の全校合唱などの練習で,生徒の自主的な活動がどのぐらいあるのだろうか。教師がマイクを持ち,全校生徒を叱咤激励し,合唱を仕上げようとしていないだろうか。もし,そのようなことを行っている先生は,僭越ながら拙HPの中にある『「全校合唱のつくり方」ー生徒の自主的な力を生かし,少ない時間で取り組むにはー』をお読みいただきたい。大切なことは,生徒の力を伸ばすことであり,全校合唱の完成や,音楽科の教師の自己満足ではないのである。

 また,事前に音楽科の授業で,合唱祭や卒業式の練習を,その合唱を仕上げるために時間を割いていないだろうか。音楽科の評価項目に従ってその楽曲の練習に取り組むのならば,まったく問題ないだろう。授業での目標を明らかにし,それに従って生徒個人に対しての評価活動が行われれば,音楽科の授業として成り立っているだろう。
 しかし,全体練習を重視し,ただ単に楽曲の完成を目指す練習をくり返すことは,音楽科の授業とは言えない。それは,行事の準備に音楽科の授業を使っていることになる。

 大切なことは,集団と個人を育て,望ましい集団活動を通し,音楽活動の楽しさを味わわせることである。これが音楽科授業の基本である。つまり,特別活動の目標が基盤となり,その上に音楽科の目標が成り立つのである。これは,すべての教科に同じことが言えると思う。ここでは特別活について触れたが,道徳もまた同様である。すべての教科の土台に道徳教育があるのである。つまり,特別活動と道徳が基盤にあり,その上に各教科があって,その上にすべてを総合化する「総合的な学習の時間」があるというのが現在の教育指導要領の構図なのだろう。


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