岡田浩明(農学博士,農業環境技術研究所 主任研究官,)
Hiroaki OKADA(Ph.D., Senior
Researcher, National Institute for Agro-Environmental Sciences)English
研究のキーワード:線虫、生態学、土壌環境、化学物質影響評価
学生時代は水生昆虫の生態に興味がありましたが、農水省に入ってからは土壌に住む線虫に興味を持っています。線虫は手足も羽もなく、顕微鏡でないと見えないくらい小さな動物ですが、昆虫に負けず劣らず種類が豊富で、その分生態も多様です。農作物に加害して嫌われるものがいれば、農業害虫に寄生するので生物防除に利用されるものもいます。また、微生物との相互作用を通じて有機物の分解を促し、土壌養分を増やす働きもします。さらに、線虫群集の構造が、土壌の生態系の様子や肥沃度、化学物質汚染の程度を反映するといわれています。このように多岐にわたり「活躍」する線虫たちに私は惹かれました。
2004年に農環研に来てからは、土壌線虫群集の簡易分析法開発、線虫群集を指標とした土壌環境攪乱の評価、線虫各分類群の生理生生態解明などに研究がシフトしました。
連絡先
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わたしの愛するネマちゃん(線虫)たち Nematode Photo Gallery
1,糸状菌(カビ)と線虫の正反対の関係。皆さんの食卓にのぼるヒラタケ(Pleurotus ostreatus)は、毒を出して線虫を麻痺させ、菌糸で溶かして線虫を食べてしまう菌として知られています(左、Aphelenchusという線虫を食べるヒラタケ菌糸)。しかし、Filenchusという線虫が、逆にヒラタケ菌糸を食べて繁殖することを発見しました(右の写真)。詳しいことはhttp://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2002/tohoku/to016.htmlを見てください。下の写真はOkada and Kadota, 2003, Soil Biology &
Biochemistryより改変して転載(クリックで拡大)。
2,糸状菌菌糸を食べているAphelenchoides sp.という線虫。Plant and Soilの表紙に採用されました(Okada and Ferris, 2001, クリックで拡大)。こうした線虫は菌糸を食べることで土壌中の窒素循環に貢献します。詳しくは岡田(2002)を見てください。
3,糸状菌の菌糸を食べ産卵しているFilenchus misellusという線虫。体長0.4mmほど。線虫群集の構造に基づき土壌生態系の攪乱程度を評価する指標Maturity
Indexでは、この仲間の線虫を糸状菌食性として計算に入れるか入れないかが大問題になっています(Bongers and Bongers,
1998)。下の写真はFilenchus属線虫が糸状菌を食べることを示す初めてもので、Nematologyの表紙に採用されました(Okada et al., 2002,クリックで拡大)。