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アイ・マイ・家族

「おーい、太郎。おみやげみたいなものを、一応買ってきたぞー。えーと、ほら? たしか欲しがってた、キュウレンジャーのゲームソフト……」
「本当? なんか、ありがとう、パパ。なんとなく嬉しい気がするよ!」
「……おい、なんだよ。嬉しいのか、嬉しくないのか? まあいいけど、太郎も小学生になって、なんとなく難しい物言いをするようになったなぁ。ちょっと困りもののような感じもしないでもないな。なあ、おい、母さんもそう思わないか?」
「どうなんでしょうね~」
「……いや、だから、そう思わないかなぁ~、なんて聞いてみたんだが」
「どうしたもんだろうねぇ~」
「あ、お義母さん。もしかして、まだ起きてたんですか。遅いから、できたら寝たほうがいいと思いますけど。まあ、どうでもいい話なんですがね」
「あれ、パパー、これ、なんか違う気がしない? よ~く見ると、ゲームトーイアドバンス対応じゃないと思うんだけど……」
「なに? ホントか…… なるほど、これはたしかに違うような気がしないでもないなぁ……」
「あなた! なんで、できるかぎり良く見てから買わないんですか? 昔から、なんとなく決めて失敗することが多いから、なるべく気をつけようって、たしか、ご自分で日頃いってるじゃないですか」
「え、そうだっけか? まー、そうかもしれないなぁ。玩具屋っぽい店で、あっちこっち見てて、いろいろ目移りするうちに、どうやら本命のものを忘れていたみたいだよ……」
「うえーん」
「ほら、なんか太郎が泣いたじゃないの。どうにかしてよ!」
「どうにかって、どうするんだよ…… うーん、しょうがない。じゃあ、こうしようか。変わりにならないかもしれないが、今度の土曜か日曜に、遊園地的なところにでも連れていってやるかな?」
「本当?」
「多分……」
「多分じゃ、絶対じゃないじゃない」
「太郎…… この世の中に、おそらく絶対なんてないんだぞ」
「ひっく……」
「たぶん、予想では、休日出勤はないとは思うのだが、もしも、いけたら、いろいろ買ってやるかもしれないから、約束はできないけど、だからつまり、できれば、早めに、もう寝なさい」
「パパのいうことは、なんだがよくわかんないや。寝るかもしれないから、おやすみ!」
「……ふう。なんとなくわかってくれたかな」
「どうなんでしょうね~」
「そればっかりだな、母さんは。ところで、今日の夕飯的なものは何を食べたんだい?」
「えーと、麻婆豆腐っぽいものと、コロッケに近い揚げ物だったかな……」
「へぇ、なんとなくうまそうな気がするなぁ。もしかして食べてこないほうがよかったかな。でも付き合いだからしょうがないかな。あれ、そういえば、太郎は小学校に入って、たしか、はじめてのテスト的なものがあったんだろ? それは、どうしたんだろうか」
「え? たぶん、記憶が正しければ、九十五点だったわ」
「お、それはもしかして、いいんじゃないのか?」
「うん、きっと、いいのかもしれないわ」
「おそらく母さんに似たんだな」
「やーね。もしかしたら、あなたに似たのよ」
「ハハハ。おや? そういえば、いつのまにか、お義母さんはどうしたんだろうね」
「どうしたんでしょうねぇ。まぁ、きっと、寝たんでしょう。さっき、ものすごく眠いような気がするっていってたから……」
「そうか…… なぁ…… 今晩、どう? アレ」
「いやねぇ。 ……するの? アレ」
「だって、久しぶりのような気がするじゃないか、なぁ~、いいだろう?」
「そんな気はするわね…… 太郎も寝たかもしれないし、んー、もう、しょうがないわね……」
                   ◇
「そんなのダメ…… 強いわぁ……」
「いいじゃないか……」
「ああっ、そんなにせめると……」
「ほら、こうするんだ……」
「いや、もうダメっ……」
「王手! なぁ…… アレって、将棋じゃないような気がするんだが……」



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