エンドレス
――ああ、あれから何年が経つのかしら。
いつのころからか、時の流れに身をまかせ、季節の変わることさえ気にしなくなっていたわ。
永遠に春のこない世界にうずもれて、まるで化石になった氷河期の植物のよう――
わたしは、なぜ、あなたと出会ってしまったのかな。
運命なんて信じていないけど、それ以外に言葉が見当たらない。
きっと、わたしは幸せだった。誰の祝福もなかったし、誰に幸福を与えることもなかったけど、あなたが居るだけで満足でした。
一陣の秋風が吹いて、車椅子にのった老婦人の、品の良い白髪を揺らした……
――あなたの遠くを見つめる瞳に私は恋をしました。
結局、あなたは振り向いてくれませんでしたね。
あなたは、もう違う世界に行ってしまった。
私の届かない世界へと。
だから、わたしは、ここで囚われの姫……
その虚ろな瞳はどこを見ているのかわからない。だれも彼女に声は届かない……
――わたしの世界は、もはや失われていくだけなのでしょう。
心の痛みはどこかに忘れてきたようです。
あなたには迷惑をかけたくなかった。だけど、あなたに付く悪い虫は許せなかった。
あなたはわたしを認めてはくれなかった。
あなたはわたしを求めてはくれなかった。
あなたはわたしを拒絶した。
だけどあなたはわたしのもの。永久にわたしのもの。
愛しているわ。
また秋が過ぎ、冬を越えても、彼女の心には春などやってくることはない。
半世紀前の出来事など、誰も覚えてはいない。
遠き春、恋に悩み壊れてしまった彼女に、時はいつか慈悲を与えることだろう……
――ああ、あれから何年が経つのかしら。
了