おともだち
その日、ニューヨークの空に、巨大な宇宙船が飛来した。
またたく間に、地球上は大混乱となった。
主要各国は、軍や科学者を総動員し、緊急対策会議を開いた。
「まだ動きがない。いったい、あれの目的は何なのだ!?」
「侵略か、それとも友好を結びに来たのか……」
「軍司令部は、最高レベルの警戒態勢をとっています。いつでも応戦可能です」
「いや、まずは、コンタクトを待つべきだ!」
会議が紛糾し混乱する中、突然、宇宙船から地上へと電波が送られてきた。
航空宇宙局が必死にそれを解析し、それが映像と音声であることを確認した。
映像が先に解読されて会議で上映された。
それは、奇怪なものであった。
ウネウネと体をくねらせるタコのような生物と、黒いサングラスのようなもので目を隠したイグアナに似た宇宙人が何かを話している。
あまり友好的ではなさそうだったが、音声が解読されてから判断しなければならないと会議は結論した。
だがそのとき、一機の空軍機が不用意に宇宙船の近くに接近して何かの力場に触れて墜落した。さらに誤報が飛び交って、軍が勝手に数発の地対空ミサイルを宇宙船に撃ち込んでしまったのだ。
爆発は凄まじかったが、宇宙船はびくともせず、何事もなくそこにあり、軍や市民は恐怖に陥った。
ドミノ倒しのように、疑心暗鬼は広がり、さらにその映像が世界中で放映され、宇宙人撃退すべしとの声が高まった。
全面攻撃にうつる寸前、日本政府から派遣された科学者が、やっと解読された音声を聞いて、これはまずいと叫んだ。
必要なのは攻撃ではない。了承の返事をするだけだ。あの四文字を言うだけだ。彼らの来た理由は侵略でも友好でもないのだ。だがしかし、その場合、人類は、どこのだれを紹介すればいいのか……。科学者は頭を抱えた。
「じゃ、お友達を紹介してください。 ……では火星人さんからのご紹介、地球人さんですね。おや? つながりませんね。言葉が通じてないのかもしれないですね。異例ですが、少し返答を待ちましょう」
「おっと、攻撃してきましたねぇ。どうやら野蛮で好戦的な種族みたいです。これは反撃の半物質爆弾でも投下すべきでしょうか。火星人さん、その場合、友達の輪が切れてしまうので、違うお友達を紹介してください。金星人? いるんですか。うーん。しかし、もう一度だけ聞いてみましょうよ。地球人さん、来週月曜、来てくれるかな~?」
了