懐かしい
たまの休日、部屋の掃除をしはじめた。
最初は普通に掃除をしていたが、子供の頃のアルバムが出てきて、すぐ中断してしまう。
懐かしいな。
当時の記憶はほとんどないが、とにかく懐かしい。
ひとつの写真には、父とわたしが、岩場で変なポーズを取っている。
ひとつの写真には、母とわたしが、腕を変な風に交差させて、なにかの練習をしている。
これは、何をしてるのだろう。実に、へんてこりんな格好である。
わたしは笑った。
記憶は定かでないが、なにか大事なことを習っていたのではないだろうか。
次に、当時の作文が出てきた。
「ゆめ」
――ぼくのゆめは、ゆうしゃになることです。それで、うちゅうをへいわにして、わるものをせいばいして……。
読んでて、なんだか恥しい気分になってきた。なんで勇者なんだよ。しかも宇宙と来たかい、せいぜい地球と書いとけばいいのに。地球が平和なら全てよし。馬鹿だなぁ。
――いいおよめさんをもらって、やがて、ふくのでざいなーになりたいです。
はい、残念でした。まだ、嫁さん来てませんよ。しかも、なんで、服のデザイナーなの? 無理だよ、無理、完璧に無理。そもそもなんで、服に興味を示したんだろう。基本的にそれはないよな。だってそうだろ、しょうがないんだよ。そういうもんだから。本当に馬鹿だな。
――それと、ほんとうにさべつはいけないことです。はだのいろでさべつするのはいけないことだときずきました、ぼくたちもさべつされたらかなしいです。
なんで、急に社会派になってんだかな。たしかに差別はいけないよ。そりゃ、うちの一族は、ちょっとだけ他と違うが、気にすることはない。ろくな大人にならんな。いや、わたしのことだったな。
はっはっは、まったく、親の顔が見てみたい。
「誰が、どうしたって」
背後から話しかけられて、飛び跳ねるほど驚いた。
「と、父さん! ど、どうしました?」
「うん、緊急出動だ」
「えー、今日は、休暇なんですけど……」
「だめだ、行け。目標は、いつも通りに日本。なぜか怪獣はあの国しか狙わん」
「あ、そういや、そうですね」
「まったく、なんかあるんじゃないのかと……。よくわからんが、怪獣に恨まれることでもしたんだろう」
「わかりませんが……。しかたありません、わかりました、では行きます」
ジュワ!
私は、身長四十メートル、体重三万五千トン、皮膚の色は、赤と銀。
つねに全裸。
わざわざ六万光年離れた星に怪獣を倒しに行かなければならない、宇宙一おせっかいな知的種族の一員である。
了