オリジナル小説サイト

ランプの魔神ちゃん2

 オレは、あの日から、ランプを探し始めた。
 あの日、願いを叶えた魔神ちゃんは、ランプに吸い込まれ、光を放ちながら東へと消えた。
 根気強く、一ヶ月以上をかけて探索をした。そして、ついにオレは、あのランプを発見することに成功したのだ。
 遠く離れた河川敷の草むらに落ちていたランプを拾って、自宅に持ち帰った。
 薄汚れたランプを、布巾で擦ると、煙が部屋に噴出して、高らかな笑い声と共に、ターバンを巻いた可愛い少女があらわれた。
「にゃはー! あたし、ランプの魔神ちゃんよー。こんにちはー」
「……」
「……あれ? あれれ。見たことある顔ね。うわっ、この前のお兄さんじゃない!?」
「うぃーす……」
「ま、まさか、またランプ発見したの? 探して見つかるもんじゃないのに」
「もう一生分の幸運使い果たしたよ。だから、今度はちゃんと叶えてくれ。この前のあれはないよ。納得できない」
「またまたー、しつこい男って嫌われるのよー、お兄さん。これだけ頑張りました、必死です、付き合ってくださいという感じの男いるじゃない? あれ、逆効果よ。自分をひけらかさず、涼やかに熱意を伝えるのがカッコイイのよ……」
 三十分ほど、ネチネチと魔神ちゃんの熱弁が続いたが、どうやら再び探しても、ルール違反ということではないようだ。
「……わ、わかったよ。魔神ちゃんの男性観はわかった。それより願いを聞いてくれ」
「もう、ガツガツしないの! しかたないなぁ、じゃあ、願いごと、三つ言って」
 オレは、大金持ちはもう諦めていた。どうやら困難は多いし、ちゃんと真面目に働けばなんとかなるだろう。
「こんなこというのはなんだけど、女が欲しい。なかなか出会いはないし、やっぱりオレは愛に飢えていることに気が付いたんだ。愛に生きたい。かわいい女をくれ、イイ女を頼む」
「なるほーど。こりゃまた正直なお兄さんねー。そこまでストレートだと、逆に感心だわー。じゃ、行くわよー、えーい!」
 ボフンと、毒々しい煙が部屋に満ちた。
 オレは咳き込みながら慌てて窓をあけた。
 煙がひいたが、前回と同じく何も起きてないような気がする。
「おい、なにも起きてないような気が……」
 オレはそう言ったとき、自分の声が変なことに気が付いた。なんだか、妙に高い声になっている。
 まさか、と思って、部屋の隅にある姿鏡をのぞいた。
 そこには、実にかわいい女の子がいた。好みのタイプだ。たが……。
「こらー! おい、まて! 誰が、女にしろと頼んだ!」
「え? あれ? だって、女にして欲しいって言わなかった? イイ女に頼むとかなんとか」
「ふざけんな! オレは愛が欲しいんだー、自分が女で、どうやって、こうやって、ああ! わけがわからん! 耳が腐ってんのか、おまえはー!」
「ご、ごめんなさーい! えーい!」
「ちょ! まてまて、早まるなー!」
 ドーンと盛大な音がして、キラキラと周囲に星のようなものが舞った。オレは何故かくるくると回転させられながら、服が光の粒子となって消えて、また再構成されるのを感じた。
「おい…… 今度はなんだこれ……」
 なんだかわからないが、ヒラヒラのついたセーラー服まがいの、キラキラな衣装に早変わりしている。
「あ、愛と正義の美少女戦士よ……」
「いや、そうじゃなくて」
「その手にもった、ムーンクリスタル釘バットで、悪を滅ぼすのよ」
「だから、そうじゃなくて」
「それで殴れば、悪党どもが、血飛沫あげて悶絶するわ」
「ただの釘が刺さったバットだろ! どこが正義なんだよ。おまえ…… 完全に失敗の誤魔化しに入ってるだろ……」
「そ、そして、愛を広めるのよ。そうすれば、おのずとあなたにも愛は手に入るわ!」
「いいかげんにしろ! 出ていけー」
「じ、じゃ! それが三つ目ね。バーイ!」
「し、しまった。逃げられた!」



↑ PAGE TOP