声が聞こえる。
敵艦に捕らえられたアレルヤを呼び覚ますかのように、
頭の中で反響する女の声。
「ああ、そうだ・・・・。あの時の・・・・・・。」
鼓膜を震わすものではない。脳に直接響く声音に引き起こされるアレルヤ。
いや・・・
「オンナの声だあっ!!」
覚醒した彼は、既に『アレルヤ』と呼ばれる人間ではなかった。
アレルヤの中に潜むもう一人の人間『ハレルヤ』。
血に飢えた狂犬が、自分を呼ぶ『声』を求め、宇宙を駆け抜ける。
さて、CBの緊急反省会も後半に差し掛かろうとしています。
反省会だったんですか・・・。
そうよ〜?もちろんアンタも、ここに召集されたからには、
反省してもらう事があるんだから。
前回の戦闘中に、年甲斐も無くピーピー泣き喚いたことを、
まさか忘れたなんて言わないわよね?
す、すみません・・・・・・・・・。
すまないと思うなら、酒の一つでも買ってきて欲しいものね。
この反省会で、辛かったり悔しかったことは全てアルコールで流すのよ。
ってまた飲む気かい!!
何かに理由つけて飲もうとするな!!
何よ、私に逆らうの?
前回の戦闘中に、年甲斐も無くピーピー・・・
それとこれとは話が別です!!
大体、アンタが席を立たなければ、今回の戦闘はそもそも
起こりようが無かったのよ?それを分かっているのかしら?
う・・・・そこを突かれると・・・。
年長者なのに、なんて陰湿なイジメなんだ・・・・。
分かったらさっさとドンキ行って買って来い!!
私はビールね!!
はあ、なんでこうなるのかなぁ・・・。
「中佐!前方より接近する物体があります!」
人革の威信をかけた、大規模な物量作戦。
しかし、精鋭揃いの大部隊を以ってしても、ガンダムの鹵獲を成功するには至らなかった。
多数のMSを失い、撤退を開始する超武の残存兵たち。
そこへ、ある一つの物体が一直線に突っ込んでくる。
「あれは・・・『羽根付き』か!?」
それは、先ほど捕獲したはずの『羽根付き』。
輸送艦を破壊し、脱出したキュリオスが、セルゲイたちの前に立ちはだかる。
「見つけたぜ!ティエレンの高機動超兵仕様!!
テメェは同類なんだろ!?身体をあちこち強化されて・・・
脳を弄くりまわされて出来た、バケモノなんだよっ!!」
獲物を見つけた嬉しさに、歪んだ笑みをこぼすハレルヤ。
同じ存在。人類の夢と欲望から生み出された、人であって、人でないもの。
自らバケモノと称するハレルヤは本能のままに、もう一人のバケモノと死合う。
「いい度胸だな、オンナ!!!」
単機で向かってきたタオツーに、ビームマシンガンの洗礼を浴びせる。
距離をとられるとこちらが不利か。
回避行動をとりつつ、接近のチャンスをうかがうソーマだが、キュリオスの射撃は
正確にこちらを捉え、反撃の隙を与えない。
それはまるで、あらかじめこちらの動きがわかっているかのように。
「何!?遊んでるの・・・?」
しかし、何十もの直撃弾を浴びながらも、タオツーの装甲は貫かれない。
ビームの出力を下げ、まるで狩りを楽しむかのような戦い方に、
ソーマは奇妙な不快感を覚える。
「中佐!少尉と共に離脱してください!!」
このままでは、ソーマのタオツーはなす術も無くやられるのみ。
ソーマ・ピーリスとセルゲイ・スミルノフは、超武に、人革に必要な人間。
「敵討ち・・・・・・願います!!」
超武の副指揮官・ミン中尉は、二人の撤退のために、羽根付きに挑みかかる。
「邪魔すんなよぉ一般兵!!」
「命あっての物種、だろうがぁ!!」
キュリオスに組み付くティエレンを払い除け、シールドに内蔵された打突武装でティエレンを掴み取る。
「離脱するぞ、少尉!」
「しかし・・・!」
ミン中尉を援護しようと再度突入をかけるソーマを、セルゲイが制止する。
「男の覚悟に水を差すな・・・」
「なんだぁ、仲間見捨てて行っちまうのか?」
撤退する敵部隊に、侮蔑の言葉を投げかけるハレルヤ。
そこへ、敵兵から接触通信で語りかけられる。
―いつかお前たちは、報いを受ける時が来る。
我々が築き上げた国を、秩序を乱した罰を。―
世界の秩序を軽んじ、無秩序に世界を混乱に陥れるソレスタルビーイング。
国を守る誇り高き兵士には、彼らの理念は、
ただ世界を混沌の闇へと堕とすものに他ならなかった。
「そんな大層なもんじゃねぇだろ・・・
人を改造して兵士にするような社会に、どんな秩序があるってんだ!?」
一兵士の訴えを、一笑に付すハレルヤ。
人を人と思わぬ、人体実験。その非道の末に生まれたハレルヤに
敵兵の言葉は、ただの耳心地の良い奇麗事としか伝わらなかった。
「そんで持って俺は、オンナに逃げられて少々ご立腹だぁ・・・・だからさ?」
ハレルヤの目的は、もう一人の改造兵士を消し去ること。
それを邪魔された今、彼の標的は、目の前の『雑兵』に定められた。
「楽には殺さねェぞっ!!」
シールド内部のショートブレードが、敵機の胸部を抉る。
ゆっくりと、装甲が溶けてゆくのを確かめるかのように前進する刃。
「どぉよ?一方的な暴力に、なす術も無く、命を磨り減らしていく気分は!?」
ミン中尉はガンダムの残酷な仕打ちに恐怖し、哀願の悲鳴を上げる。
「こいつぁ命乞い、ってやつだな。最後は何だ?ママか?恋人か!?
今頃、走馬灯で子どもの頃からやり直してる最中かああ!!?」
耳に残る、獲物の悲痛な叫び。至極の悦びに酔いしれるハレルヤ。
「やめろ、ハレルヤ・・・」
弱者をいたぶり続けることを愉しむハレルヤの頭に、一つの声が届く。
残虐な行為を止めさせんとする、アレルヤの声。
「何言ってんだよ、お前が出来ないから、俺がやってやってんだろ。」
「やめるんだ!!」
「ああ、そうかい。分かったよ、アレルヤ。
ったく、お前にはかなわねぇよ・・・。」
「なんてなあっ!!」
もう一人の自分の忠告を一蹴するハレルヤ。
アレルヤの言葉も、殺しの悦楽に狂ったハレルヤには届かなかった。
「楽しいよな、アレルヤ!!
アレルヤアアアアアアアアアアッッ!!!」
血が沸き、肉が焦げ、やがて全てが四散し蒸発してゆく。
機体越しに感じる死の感覚に、狂気に満ちた高笑いを上げるハレルヤ。
程なく、目の前の獲物は、
ハレルヤの放った無慈悲な一撃によって跡形も無く消え去った。
同じ頃、トレミーの周囲に展開していたMS隊も撤退を始め、
CBは敵の包囲網を抜けることに成功した。
だが、それは彼らにとって望ましい結果をもたらすものでは無かった。
「また、間違えてしまった・・・。
本当、どうしようもないわね・・・私・・・・。」
もう二度と間違えない。
そう誓ったはずなのに、迂闊にもまた誤った道を選択してしまった。
スメラギは、己の不甲斐なさに涙する。
「何故なんだハレルヤ。どうしてそんなに人を殺したがる・・・?
それが僕の、本質だとでも言うのか・・・?」
『ハレルヤ』という、もう一人の自分を止められなかったアレルヤ。
ハレルヤの中に潜む、殺人への渇望。それは本当に、『彼』だけに潜む衝動なのか。
共存する『アレルヤ』という人格にも、残虐な本性が隠されているのだろうか。
「だとしたら、僕は人でなしだ・・・・!」
戦うため、殺し合いのために作られた人間。
ハレルヤの一撃は、アレルヤにその現実を突きつける。
人革の大部隊を退けたCB。
しかし、勝利と呼ぶには程遠い、後味の悪さばかりが残る。
ほんの少しの油断が生んだ、CB最大の失態。
各々に刻まれた傷跡は深く・・・。
ただ、それを浄化するように涙ばかりが流れてゆく。
だいぶスピード上げて進んじゃったけど、第10話は
これでおしまいよ。
やっぱり、今見てもやりきれないですよね・・・・・・。
まあ、過ぎたことはしょうがないですよ。
辛いですけど。
・・・・また思い出してしまった。
敵に・・・・裸体を晒すなんて・・・・・・・。
やっぱり問題はそこなんだ!?
う〜ん、みんな結構傷ついてるけど、
今回はティエリアが一番ショックでかそうね。
今までバリバリの完璧主義者だったものねぇ。
プライドが高いぶん、打たれ弱い。よくある話だわ。
まあ、気にしなくていいわよ。間違いは誰にでもあるものよ?
そうでしょうか・・・?
そうそう!第一、私が作戦ミスを犯さなければ、
今回のような結果にはならなかったんだし。
そもそも私が、食事のために席を外したりしなければ、
敵にすら会うことが無かったんだから!今回の責任はほとんど私!!
僕なんて、今回のスプラッタ事件で各方面から起こられて、
もうそれどころじゃないからね・・・。
・・・というわけだから。ティエリアは何にも、悪くないのよ?
元気出しなさい。
あ、ありがとう・・・・
ありがとうございます・・・・・・皆さん・・・・。
やった!ティエリアも少し立ち直ったみたい!!
はは、何だか僕、また泣けてきたよ・・・。
うんうん、いいお話だわ・・・お姉さん感動。
感動した所で、今日はティエリアも飲むわよ!!
いや、それは結構です。
あ、あれ!?
〜おまけ〜
はあ・・・・・。
・・・・・・・・・。
(みんなはああ言ってくれたが、やはり今回の失態は
俺に責任があるのではないか・・・・・・?)
(いつものように楽に勝てると思って
油断していた俺も悪いわけで・・・・・・)
(普段偉そうにしているくせに、
これでは示しがつかんではないか・・・・・)
・・・・・・・・・。
(俺以外の全ての兵隊が、コーラサワーならいいのに・・・・。)
・・・・・・・・・。
くそ、もしこんなときに、刹那・F・セイエイにでも会ったら・・・。
いつもネチネチと説教している分、必ず今回のことを責めてくるに違いない!!
俺がどうかしたのか?
ぬあああっ!!せ、刹那・F・セイエイ!!!
何故こんなところにいる!!?
お前を待っていた・・・・・・。
俺を待っていただと・・・・・?
(や、やはり今回のことを言ってくるに違いない。
格好のエサを見つけて、内心舌なめずりしているに決まってる!)
今回の一件・・・
(ほら来た!予想通りじゃないか畜生!!
どんだけ性格が歪んでいるんだ貴様は・・・!
マフラーしているくせに寒そうな服着やがって!寒いのか暑いのかどっちなんだ!)
お前のことだ、多分気に病んでいるのではないかと思って・・・。
(ん、んん・・・・・・?なんだこのヤツの反応は?
あれ、ひょっとして俺をバカにしに来たのではない・・・?
ま、まさかそんなはずは・・・・・・。)
まあ、いつも身勝手な俺が言えた義理ではないが・・・
(そ、そうだ!間違いない!!
こいつもこいつなりに、俺を励ましてくれようと・・・。
いつも辛く当たっているこの俺を・・・!?
くそぅ、ツンデレで攻めてくるなんて卑怯な!!)
俺がただ一言、言えることは・・・・
せ、刹那・・・・・・・
プッwwwwwwwwwwwww
!!??
じゃっ
な・・・な・・・・・・??
・・・・・・・・。
あ、ティエリア。こんなところで何や・・・・
あ゛!?気安く話しかけるなこの電波!!!
何故一日に二度も、その不愉快な顔を見なければならないんだ!!
そもそも貴様が敵に捕まりなどしなかったら、
今回のような事態にもならなかったんだ!!
頭痛が酷い?そんなものパブロン飲んだって治るものか!!
その痛んだ脳みそを新品と取り替えてからものを言え!わかったか!!!
なっ・・・・・・!?
じゃっ
な、何で・・・・・・・?
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