第十九話












「まさか、兄貴をてこずらせるヤツがいるなんてな。」 「油断大敵ね。」 「肝に銘じるしかないが・・・。」 予想外の痛手を受けながらも、任務を完遂したスローネ。 だが彼らに休息の時は無い、またすぐにでも世界のどこかで破壊の限りを尽くす。 そこへ突然、鳴り響くアラート。光速で走る三つのビーム粒子。 寸でのところでかわした三機のスローネ。 正面モニターには、思いもよらぬ一機の敵影。 「・・・・ガンダム!!」 「エクシア、目標を捕捉。 三機のガンダムスローネを紛争幇助対象と断定し武力介入を開始する。」 もはや、刹那の中で答えは決まっていた。 戦争根絶の言葉を掲げての殺戮、破壊・・・非道を極めるもう一つのCB。 いや、違う。 貴様らのその機体が、ガンダムであるものか。 俺が・・・・ガンダムだ!! 「エクシア、目標を駆逐する!!」 第十九話『絆』
オッス、俺ロックオン!! いや〜前回はいきなり刹那が飛び出しちまって、めぇったぞォ〜。 はやく止めねぇと、えれぇことになっちまう! おい、いきなり変な挨拶はやめろカカロックオン。 もう何でもありだな。 いいじゃねぇか、少しくらい茶目っ気だしても。 そうだよ、もう何でもアリなんだよ。 何故かってーと今回は、アレルヤが不在っ!! 最近は必ず、誰か彼かいないな。 たるんでいる証拠だ。 お前も前科持ちだろうが、何言ってんだ。 っと、噂をすれば奴からお電話が来たぜ。 チョット待ってな・・・。 ・・・・・・・・。 珍しく意見があったな。 は? 言葉に出さなくても分かる。 今の君の心情は「人に電源切れとか言っておいてコイツ・・・」だろう。 そもそも、『会議中はケータイの電源を切る。』 俺は前々から、この慣習だけは気に食わないと思っていた。 はぁ・・・・・。 自宅が火事になったら?家族が事故にあったら?世界で紛争が起こったら? そんな時にすぐ応答できないのは困る。 それに個人的には、ケータイくらいいつでも起動させておかないと、 デジタルジャンキーな俺としては非常に居心地が悪い。イライラする。精神が不安定になる。 わかるか、この気持ち? ・・・・デジタルジャンキーって、また古い言葉だな。
もしもし、アレルヤです。 今回の活躍、宇宙から見させてもらったよ。 まさかあんなことになるとはね・・・・。 きっとみんな疲れているだろうから、今日の報告書は僕が作成しておいたよ。 一応そちらでも添削してもらいたいから、今からデータを送ります。 ともかく、今日はお疲れ様。少しの間、地上でゆっくり休むといいよ。
・・・・だってよ。やったな、面倒ごとが少しでも減って。 おかげで最近は俺、報告書の書き方も忘れてきそうだぜ。 何がゆっくり休めだ。早く俺たちを宇宙へ戻らせろ。 何故、そんなに地上を嫌う。 地上は電波が弱いんだよ・・・・・! そんな理由か・・・。
「聞こえるか、エクシアのパイロット!何故行動を邪魔する!? 我々は、戦争根絶のために・・・」 「違う!!」 度重なるトリニティの暴挙に、ついに怒りが爆発した刹那。 持病の独断行動も手伝って、ガンダムスローネに手を挙げちゃったみたい。 あ〜あ、またこれスメラギさんが怒るよ。つーかティエリアか、それは・・・。 「貴様はガンダムではないっ!!」 当然、トリニティ兄弟は応戦してくる。 先に手を出したのはこっちだし、正当防衛と言われればそれまで。 しかも三対一という最悪なシチュエーションだ。 これじゃあ刹那がやられちゃうよ! せめて僕らに相談してから、事を起こしてくれれば・・・・。 でも、刹那は案外奮闘していた。 盾を失い、ビームサーベルやらナイフやらをバンバン使い捨てながらも、 見事に敵の猛攻を捌いている。 そんな武器の使い方、もったいない精神の化身と言われる僕にはとても真似できないな。 でもすごいよ!新たな人類の革新を感じさせるよ!まるでエスパーだね! 安心したのもほんの一瞬、2号機が温存しておいた残り2基のファングに 刹那が捕捉されてしまう!危ない、刹那!! その時、エクシアの後ろを通過する巨大な光線。砕け散るファング。 こ、これはまさか・・・・。 ヴァーチェ!ガンダムヴァーチェ!! 「ヴァーチェ、目標を破壊する!」 そう言い放ち、刹那との共同戦線を張るティエリア。 正直言って、意外でしかなかった。こういう規律を乱す行為は誰よりも嫌いなはずのティエリア。 その彼が、自ら進んでルールを破るなんて。自分の意志で、敵を敵と断定するなんて。 もちろん、リアルタイムで状況を把握している僕たちも、二人の行動には驚かされた。 でも艦内の空気は、どちらかというと刹那・ティエリア支持の票が多そうだ。 「いい男なのに・・・。」 長男ヨハンに夢中だった面食いクリスティナも、敵となった以上新たな恋は諦めた様子。 こういう時の割り切りの良さは、女って強いなと思わされる。 さすがはクリスティナ・シエラ。 一ヵ月後のホワイトデー目当てに、艦内の男子全員に義理チョコを配る女。 「ロックオン・ストラトスから、緊急暗号通信。」 地上にいる保護者その一、ロックオンもこの異常事態に猫の手も借りたい、といった状態だった。 それに対し、保護者その二が返した言葉は・・・ 「出来る事なら戦いを止めて、と伝えて。 ただし、現場の状況によっては、自身の判断も尊重する、と。」 「実質、『好きにしろ』ってことじゃないですか。」 「戦術予報士の名が泣くぜ。」 「ホント、そうよね・・・。」 至極当然な突っ込みを受け、自嘲の笑みを浮かべるスメラギさん。 でも僕は見てしまったんだ。口ではそう言いつつも、密かに見せる怒りの表情を。 それはもう恐ろしい、般若のごとき形相の彼女を。 前の二人、今月の給料カットされないといいけどな・・・。 そんな事を考えている間にも、戦闘は続いている。 「フォーメーション・S-32。」 どうやら、ガンダム相手に力押しでは勝てないと判断した二人は、 連携攻撃にて対応することにしたらしい。 さて、ここで『フォーメーション・S-32』について説明しよう。 これは本来、三機編成のチームでやる攻撃方法なんだ。 味方機が縦一列に並び、相手に敵が一人のみと思わせる。ここ重要ね。 そして後ろで構えていた二人目が奇襲を仕掛け、 そのまた後ろの三人目がとどめの一撃を喰らわせるという作戦なんだ。 どこかで聞いた事ある?気のせいだね。 で、これを僕らでやると、必然的に一人余る。 そこで考えたのがS-32。三人必要な戦法を二人でやろうって試みから生まれた、 数字そのままのフォーメーションなんだ! S-32のやり方。 まず防衛力の高い機体が前衛(ポジション名:ガイア)を務め、味方機を守りつつ突進。 この時、踏み台にされるのだけは注意が必要だね。 次に後方に控えたマッシュが、相手に奇襲攻撃をかける。 この時、先頭が踏み台にされた時は一目散に逃げようね。 そして先程のガイアは素早く後ろに回り、ポジション名:オルテガになる。 油断した相手にダメ押しの一撃!! この時、輸送機とかが邪魔しに来ないかをよく確かめて! 以上、よく分かるマイスター流戦術ガイドラインでした。
長ぇーーーーーーーーよ!! いちいち説明が長ぇーーーーーーーーーーーよ!! 落ち着け。いい作戦じゃないか。 どこがだよ!そんな旧世代の遺物みたいな作戦。 怒られるぞ。 そもそもこいつの説明、デタラメだしな。 そんな内容の作戦じゃなかったと思う、多分・・・。 一番最初からして違うじゃねーか。 敵を一人だと思い込ませるって、あっちにはもう丸分かりなんだけど!? 何かしらねーけど一人二役だし!何そのヘビーローテーション! でも、奴ら結構うろたえてる感じだったぞ。 そりゃあ連中がバカなんだろ、きっと。 見苦しいな。 何故俺たちの戦法が素晴らしかったと素直に言えん。 まあ、お前らが初めて協力的になったことは褒めてやる。 初めての共同作業だしな。 誤解を招く言い方はやめてくれ。
一糸乱れぬ完璧な流れに沿って組まれた連携攻撃も、惜しくも決定的ダメージには結びつかない。 やっぱ所詮、ジェットストリームアタックじゃダメか・・・。 でも、攻撃の成否よりも、僕たちにはもっと大事なことがある。 「まさか君と共に、フォーメーションを使う日がこようとは、 思っても見なかった。」 「俺もだ。」 あの刹那とティエリアが、互いを嫌い合う同士が共闘するその姿! S-32だけじゃない、D-07やF-52まで。 あまりに使う機会の無い、僕ですら忘れかけていた戦術を、 彼らは完璧なまでの正確さで使用しているんだ。 「ティエリアと刹那が・・・。」 景気よく繰り出される連続技の数々に、スメラギさんも泣き出さんばかりに感動している。 無理もないよね。対立の絶えないクラスの癌みたいな二人が一転、 プリキュアばりのシンクロ率を見せているんだもの。 徹夜の日々を重ねて考案したフォーメーションが、ついに報われる日が来たんだもの。 思わぬ苦戦を強いられたトリニティは、1号機の超絶火力で 一気に勝負を決めようと、ランチャーのドッキング体勢に入った。 「そんな時間が与えてもらえると・・・ 思っているのかァッ!!!」 それを見逃さなかったティエリアがカットに入る。 いいぞ!ティエリア!ついに日の目を浴びたビームサーベルも喜びに震えているよ! ぶっちゃけ撃ったほうが早かった気もするけど、その調子だ! ところが、そのドッキングは見せかけに過ぎなった。 あえて隙を見せ、敵を誘い込むための擬餌。 挟撃される形で敵に囲まれるヴァーチェ。 このままではティエリアが!! 「ナドレ!!」 それもティエリアは読んでいた。 わざわざ敵の懐に飛び込んだのも、擬餌には擬餌で対抗するティエリアの作戦。 そして彼は、ヴェーダと並ぶ最重要機密である機体、ナドレを目覚めさせる。 装甲がパージされると同時に、ナドレの中心から強烈な発光現象が起こる。 不思議な光の波に包まれたスローネは、突如制御を失い墜落する。 「ヴェーダとリンクする機体を、全て制御下におく。 これがガンダムナドレの、真の能力。」 「ティエリア・アーデにのみ与えられた・・・ガンダムマイスターへのトライアル・システム!!」 そう、これが僕たちも知りえなかったナドレの真骨頂。 今このときのように、ガンダムが敵となった時のために存在する、ガンダムを支配するガンダム。 本来なら、僕たち味方のマイスターが裏切ったり脱走したときを想定したんだろうけど、 幸いな事に、ヴェーダをハックしていたスローネ達に対して、その力を使う事が出来た。 多分ティエリア自身、こんな使い方は考えていなかっただろうな。 そして、磔にされた二体の悪魔に、ティエリアが裁きを下す。 「君たちはガンダムマイスターに相応しくない。」 「そうとも・・・・万死に値する!!」 そのままバラしちまえよ!!ギャハハハハハハハハ!! ・・・ごめん、ちょっとハレルヤが出てきちゃった。 彼は敵に回さないほうがいい。そう思った。 まさか対ガンダムの切り札がこんな近くにあったなんて。 そりゃトップシークレットになるのも頷けるし、公式サイトのナドレの紹介が いつまでたっても更新されない理由もわかるってものさ。 ともかく、最期くらいスローネには、せめてもの哀悼の意を表そう。 短い間でしたけど、お勤めご苦労様でした・・・。 「何!?」 勝利を確信したその時、突然ナドレの光が消え失せた。 結果、スローネの拘束は解かれ、勝機を逃してしまった。 一体何故、しかもこの肝心な時に! 僕が言うのもなんだけど、こうタイミングよく不都合が起こるのはもどかしいなぁ。 それとやっぱり、撃った方が早いよティエリア・・・。 一転して窮地に立たされると思ったとき、ヴァーチェの時と同じ展開で もう一機のガンダムが。デュナメスだ。 まったく、この人もタイミングが良いんだか悪いんだか・・・。 「これで三対三だ、フェアプレイの精神で行こうぜ!!」 頭数も揃った所で仕切りなおし。 あとは実力とチームワークの勝負、それとナドレの機能が復帰できれば、 今度こそこっちの勝ちだね! トリニティもそれを危険視したのか否か、デュナメスの合流と共に撤退を始める。 だがこの時、スローネアインのマイスター・ヨハンからふいに通信が入った。 「君は私たちよりも先に、戦うべき相手がいる。 そうだろ?ロックオン・ストラトス。いや、ニール・ディランディ。」 ニール・ディランディ。 この名前がロックオンの本名だと僕が知ったのは少し後になってからだった。 更にヨハンは、もう一つの真実を口にする。 クルジス共和国の反政府ゲリラ組織『KPSA』の構成員の一人、ソラン・イブラヒム。 その人物こそが、ロックオンがマイスターになってまで復讐を遂げたい相手だとヨハンは言う。 そしてその人物は・・・ 「コードネーム、『刹那・F・セイエイ』。」
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