第二十五話






「くっ、攻撃が効かない!!」 刹那の前に依然として立ちはだかる大型MA。 どんな攻撃を浴びせてもビクともしない鉄壁の防御を前にし、 事態は一向に好転する気配すらも無かった。 「なら、懐に入り込んで!!」 「直接攻撃だあぁっ!!」 敵と同じくGNフィールドを展開させ猛進する。 相手のフィールドの内側に入り込み攻撃するという、至極単純な作戦ではあるが、 今はそれ以外に方法が見つからない。 「忌々しいイオリア・シュヘンベルグの亡霊どもめ・・・!」 回線に入り込んでくる男の声。 「この私アレハンドロ・コーナーが、貴様らを・・・」 「新世界の手向けにしてやろう!!」 CBの監視者、アレハンドロ・コーナー。 世界を手中に収めんと企む強欲は、自らの手で新世界の幕開けをするため、 最後の戦いに身を投じたのだった。 「クソ、刹那!!」 攻撃も通用しない上に身動きも封じられては、もはやなす術はない。 GNフィールドにめり込んだままのコンテナを放棄し脱出を図る。 MAの驚異的なパワーによって、見る見る形を歪ませて行くコンテナ。 刹那たちが抜け出した時には、既に中央から真っ二つに割られた後だった。 「エクシア、刹那・F・セイエイ・・・目標を駆逐する!!」 世界の未来、人類の未来、そして自分自身の未来・・・ この戦いの先に、全ての答えはある。 その答えを見出すため、刹那は、宇宙を駆け抜ける。 第二十五話『刹那』
はあ、あの戦いからもう4年・・・時の流れるのは早いわね。 私は「やっと」4年という感じですが・・・ もうトシなんじゃないですか、お嬢様? あら、年齢ならあなたも同じではなくて? 私は気持ち的に、そしてキャラ的に若いからまだ大丈夫です。 年上の知り合いばかりのお嬢様は、知らぬ間に若さを吸い取られているのでは? あらあら、こう見えて常日頃、美への探求は怠っていないつもりよ? それよりも、常日頃からスイーツスイーツと言って聞かないあなたこそ、 糖分に蝕まれていますわ。 あなたのその身体は、せいぜい脂肪による手触りの良さしかありませんわよ。 そのくせ、肝心のお胸には脂肪が行き届かないとは、悲しい話ですこと。 世の男性は、あからさまに痩せているよりも、 少し肉が余っているくらいの方が好きだと言います。 胸も今の大きささえあれば十分です。むしろお嬢様は大きすぎですね。 その無駄な大きさは、いずれ自ら滅びます。ぶっちゃけ垂れます。 だから先程も言ったように、努力を怠らなければ心配無用です。 偏った食生活を続けているあなたの方がむしろ危険ですわ。 よって垂れるのはあなたです、ネーナ。 いいえ、あなたが垂れます。 いえいえ、絶対に垂れるのはそちらです。 絶対に絶対に絶っっ対にあなたの方です。 そっちだって言ってるじゃないですか。 給料引くぞコノヤロー。 ・・・はあ、まったく埒があきませんね。 ちょっと紅龍! どちらが先に垂れると思いますの!? ・・・・・荷物の積み込み、終わりました。 いつでも出発できます。 ・・・・まったくノリが悪いのね、紅龍。 は、何がでしょうか?お嬢様。 もういいです、行きましょう。 ネーナさん、この続きは宇宙に上がってからにしましょう。 望むところです。
「しくじったぜ、ったく・・・」 右手足を無くし、暗礁宙域を逃げ惑うキュリオス。 ハレルヤは、この状況の打開策を捻り出す作業に追われていた。 (ハレルヤ・・・) 「あ?引っ込んでろアレルヤ! 生死の境で何も出来ないテメェにゃ用はねェ。 俺は生きる、他人の生き血を啜ってでもな!!」 (僕も生きる。) 「なに?」 まだ世界の答えも、この戦いの意味も聞いていない。 それを知るまでは死ねないと語るアレルヤ。 いつの間にか、運命に抗うことを諦めかけていた。 だがもう諦めない、逃げない。 ハレルヤのように、生への執着をやめないとアレルヤは決断したのだ。 「ヘン、ようやくその気になりやがったか。 ならあのオンナに見せてつけてやろうぜ?」 おもむろにメットを脱ぎ捨て、長く伸びた前髪をかきあげる。 二つの意識を隔てたものはもう無く、両の目が同時に見開かれ・・・ 「本物の、『超兵』ってヤツをな!!」 一つの身体の中で分裂した二人。それが今再び、一個のヒトに戻る。
宇宙の景色も懐かしいですわ。 紅龍、どのくらいで着きそうですか? 今は幸い、宇宙の警戒も甘いですし、4、5時間といったところでしょう。 進行ルート上に目立った障害もありません。宇宙事業が発展してきたお陰で、 綺麗に片付いてきたものです。 そう・・・ところで紅龍。 あなたいつまでその仮面をつけてるのかしら? おかげで道中、周囲に変な目で見られがちでしたわ。 それはお嬢様の服装にも問題があると思います。 お黙りなさい、メシ抜きにしますわよ? お言葉ですが、服装の奇抜さで言ったら、二人とも大差ないかと・・・。 口を挟まなくてよろしいです。エサ抜きにしますわよ? (エサ・・・・プッ。) まことに勝手ながら、仮面を外すことは出来ません。 使用人たる私の、ただ一つのわがままです。お許しを。 まあ・・・そこまで言うのならいいのだけれど、でもどうして? 出来れば、理由もあまり言いたくありません。 な、何なのその徹底ぶりは・・・? どうでもよろしいじゃありませんか、お嬢様。 そのような犬のことなどより、先程の話の続きを・・・ ネーナ、少し言葉が過ぎますよ。仮にもあなたの先輩です。 でも、よく考えれば仮面を付けていようが無かろうが、 たいしたことじゃありませんでしたね。 犬が服を着ているのと同じようなものですわ。 ・・・・・・・・・・犬・・・・。 プーッ、クスクス。
二つの心が一つに。 キュリオスの最後の猛攻が始まる。 狙うは敵残存のジンクス2機。 うち1機は、超兵、ソーマ・ピーリス。 「直撃コース・・・」 「避けて見せろよっ!!」 流星群のように降り注ぐビームを、巧みに身を翻しながら回避する。 機体の損傷程度をものともしない、無駄のない動き。 「軸線を合わせて。」 「脚と!!」 「同時攻撃を!!」 2対1でも臆せず、むしろ圧倒すると言っても良い。 今までとはまるで人が変わったかのような動きに、セルゲイ達は困惑する。 一撃ずつ、確実にダメージを重ねてゆく。 「今までのようにはいかねェ!!」 そして、同類・ソーマへと斬りかかるキュリオス。 ふたりの超兵、その雌雄を決するときが訪れた。 「何故だ・・?私は完璧な超兵の筈だ!!」 「分かってねぇなぁ、オンナ。 オメェは完璧な超兵なんかじゃねえぇ!」 「脳量子波で得られた、超反射能力・・・ だがテメェは、その速度域に思考が追いついてねぇンだよっ!! 動物みてぇに、本能で動いているだけだ!!」 貴様は超兵どころか、タダの人間にも劣る不良品だ。 そう言い放つハレルヤの声が、ソーマの逆鱗に触れる。 「そんなことっ!!」 「なっ・・・!?」 バルカンの弾は虚空を彷徨うように飛び散り、そこにいた筈のキュリオスには当たらない。 「だから動きも読まれる。」 一瞬のうちにソーマの腹を読み、頭上に構えているハレルヤ。 もはや、真に『出来損ない』なのはどちらか、どちらが上なのかは決していた。 「反射と思考の融合・・・それこそが! 超兵の在るべき姿だっ!!!」 反射と思考、ハレルヤとアレルヤ。 二つのものが合わさった時、それこそが最強の兵士の生まれる瞬間。 そしてキュリオスは、トランザムの光を身に纏う。 「サヨナラだ、オンナァァァァッ!!」 決着のとき。完全にソーマの動きを捉えるハレルヤ。 機体の向こう側に感じ取る、同類の命の鼓動。それを潰すために腕を振るう。 しかしコックピットを貫くその刹那、横からもう1機が割り込み標的をずらす。 強かに突き破られるセルゲイ機の腹部。 「今だ!ピーリス!!」 身を挺して動きを止めた羽根突きにとどめの一撃を。 セルゲイは叫ぶ。ソーマも叫ぶ。 残された最後の力で、ひたすらにビームを撃ち続ける。 「ぐああぁああぁっ!!」 その全てをまともに受けてしまった。 赤い光は消え、戦う力を無くしたキュリオスは、ゆっくりとその場から遠ざかって行く。 「ぐぅ・・・ううう・・・・・。」 コックピット周辺への被弾は、アレルヤの顔面に大きな傷を作る。 朦朧とした意識の中、なんとか目を見開くアレルヤ。 だが、彼の目に入ってきたものは、信じがたい光景であった。 「マ、マリー!?何故、何故君が・・・?」 「ソーマ・ピーリスが『マリー』だったなんて・・・ 知っていたのか、ハレルヤ!!」 (知ったら、お前はもう戦えねぇ・・・死ぬだけだ。) (まあいいさ、どっちみち同じだ・・・ハハッ。 先、いってるぜ・・・・) 「ハレルヤ?まさか、そんな・・・・!」 「ハレルヤ・・・・・・・・・」 アレルヤ・ハプティズム。 彼がこの戦いで知ったことは、戦いの意味でも、世界の答えでもない。 ソーマ・ピーリスの正体は『マリー』。 ただこの残酷な真実であった。 ハレルヤの意識は途絶え、絶望と孤独を抱えたまま、 アレルヤは宇宙の深淵へ、どこまでも堕ちていった。
キュリオスの奮闘は大変よろしかったと思いますが、 残念でしたわ。いい機体でしたのに。 機体の問題ですか・・・ 『独りの力を試して見たくなるけれど 隣にいる人と手を繋ぎ合うことは弱さじゃない』 あの森口博子女史が歌っていた歌詞の一部よ。 つまり、一人で頑張るよりも、 連携プレーをした方が結局は強いんだよ?という事ですわね。 少数精鋭タイプのCBには縁遠い話ですね。 だからこそ、今こうして例の場所に向かっているわけですわ。 これからは少数精鋭なんて言っていられませんわ。 ガンダムだってどんどん開発しないと。 色んな方面から文句が来そうですね。 少なくとも私たちのスポンサー的には大喜びよ? 新型を作るとその分利益が生まれますもの。 それは、どっちの意味で仰られておりますか・・・?
第二十四話(後)へ 中編へ続く
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