第二十五話






スパークと火花が踊る。目の前には熱で溶けたモニター。 幾多にも重なるエクシアの攻撃の前にアレハンドロは敗れた。 己の野望、一族の悲願、その全てが虚しく音を立てて崩れていくのを感じながら。 ふいに、側面モニターに表示される通信に意識を呼び戻される。 「アレハンドロ・コーナー。あなたはいい道化でしたよ。」 「何・・・?」 リボンズはさらに言葉を続ける。 「これはイオリア・シュヘンベルグの計画ではなく、僕の計画になっていたのさ。 統一された世界の行く末は、僕に任せてもらうよ。」 「貴様!コーナー一族の、悲願を・・・・」 「そういう物言いだから、器量が小さいのさ。」 「リボンズゥゥゥゥー!!」 一族の長年の夢を利用された憤りを、画面上で嘲笑う顔にぶつける。 同時に、アルヴァトーレの機体は死に、無念と共に散った。 残存MS、エクシアを除いて全てロスト。これで、終わったのか・・・・・・・ 荒くなる呼吸を整えつつ、戦闘宙域を後にする刹那。 だがその時、レーダーに更なる敵反応を示す光が近づく。 「フラッグ・・・擬似太陽炉を!?」 目の前に現れたのは黒きフラッグ。 しかし、後ろから噴出しているのは、バーニアの光ではなく、赤い粒子の光。 GNドライブを組み込まれたものであった。 「会いたかったぞ、ガンダム!!」 お互い残った、最後の剣。 度重なる連戦の末に疲弊した刹那は、精神のみでこれを受けて立つ。 「ハワードとダリルの仇・・・撃たせてもらうぞ、このGNフラッグで!!」 「貴様は・・・!」 「なんと!?あの時の少年か! やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ・・・ そうだ、戦う運命にあった!!」 激しく振り続けられるフラッグのビームサーベルに、エクシアの片腕が切り落とされる。 トランザム後の粒子チャージが満足ではない機体状況で、反応が鈍ってしまうのだ。 そしてそれ以上に、フラッグから感じられる異常なまでの執念、気迫が、こちらの動きを殺す。 「ようやく理解した!君の圧倒的な性能に、私は心奪われた・・・」 「この気持ち・・まさしく愛だ!!」 「愛!?」 だが、愛を超越すれば、それは憎しみとなる。 行き過ぎた信仰が内紛を誘発するように。 グラハムのその言葉は、刹那の怒りを呼び起こす。 「それがわかっていながら、何故戦う!?」 「軍人に戦う意味を問うとは、ナンセンスだなっ!!」 「貴様は・・歪んでいる!!」 「そうしたのは君だ!『ガンダム』という存在だ!!」 「だから私は君を倒す!世界などどうでもいい・・・・己の意思で!!」 「貴様だって、世界の一部だろうに!!」 世界と共に歪み、エゴと復讐心に取り憑かれた男。 「ならばそれは!世界の声だァ!!」 「違う!貴様は自分のエゴを押し通しているだけだ!! 貴様のその歪み、この俺が!断ち切る!!」 歪みの世界の中で、最後まで希望を探し足掻く男。 「うああああああああああっ!!!」 「うおおおおおおおおおおっ!!!」 それは、ただの私闘だった。 歪みを正すために破壊する刹那。 かたや、その破壊によって歪んだグラハム。 どちらが正しいのかは、誰にも分からない。 全ては『歪み』が生んだ戦い。 もはや、この戦いに勝利者も敗北者もない。 あるのは、この歪んだ世界の中で生きる男たちの心の叫び。 光が広がる。 復讐の赤い光、希望の青い光。 ぶつかり合う二つは、混ざり合い一つの大きな星のように輝き、消えた。 そして今、宇宙は元の暗闇に戻った。あたりには何者も存在しない。 ただ静寂だけが満ちている。
お嬢様、そろそろ到着いたします。 ええ、わかったわ。 んーーー!長かったぁーーー! じゃあ紅龍、あなたもいい加減仮面を外しなさい。 いえ、それだけはお許しください。 あなた、向こうのイアンさんに会うの今日が初めてでしょう? 初対面なのに素顔を見せないとか、失礼ではなくて? 失礼でも何でもダメなのです。 別に仮面キャラじゃないのだから外しなさい。 給料抜きのエサ抜きですわよ? 絶対に外しません。 ホ、紅龍・・・・・? 今まで一度だって逆らった事のない紅龍が・・・・ 一体何があなたをそうさせるの? わかりました・・・わけを話しましょう。 長くならない程度にね。 私が入手した情報によると、元ユニオン兵、現地球連邦兵の一人に 仮面を被っている軍人がいるらしいのです。 私の方が先に被り始めたのに、どういう了見なのでしょうか? そのお方が仮面だと何の不都合がありますの? 大アリです! 後から出てきて、私の仮面キャラの地位を強奪しようという魂胆が見え見えです。 パイロットではない私にはこの仮面しか無いというのに。 だからこうして常時つけることで、予め地位を不動のものにするのです! あ、そうだ。ちょっと私、用事が入りましたのでこれにて失礼を・・・ 待てい。どこへ行く気ですの? その男めをぶっ飛ばしてまいります。 大丈夫です、第2期への出演不能にさせるだけで殺しません。 なのでご安心を。 何て逆恨みなのそれ!? ウチの使用人がそんなご乱心だとご安心できないわ。 やめなさい。 わ、私にも出番を求める権利くらいあるはずです・・・・・・ あ、泣いちゃった。 こんな情けない男泣き、今まであったかしら? さ、行きましょう。バカは放置が一番です。 ラジャー♪ たとえ使用人だろうと、犬と呼ばれようと・・・・・ 私は、私は・・・・・・・・・ ホンローン、仮面の下で泣くと蒸れるから、 ちゃんと外して泣くのよ〜? いってきまーす♪ ・・・・・・・・・・・・・・・あ、本当に行ってしまわれた。
「ご足労だったな、お嬢様。」 「状況はいかがですか?」 「一機目はロールアウトした。 今は実戦に向けてのテストに出払っている。」 「他の機体は?」 「予定通り、順次ロールアウトする予定だ。」 「よかったら見せてくださらない?第一世代の機体を。」 「・・・了解だ。」 ハッチの一つが開かれる。 その中で眠るものこそ、第一世代の機体―0ガンダム。 始まりのガンダム。 「太陽炉は既に取り外して、機体に装着してある。 だが、コイツを使ってもマッチしなかった・・・ エクシアの太陽炉でも、上手くいくかどうか。」 0ガンダムの隣で眠る、もう一つのMS。 世界を変える機体。 その名は・・・『ダブルオー』 モ ビ ル ス ー ツ 機動戦士 ガンダム 00 彼らの介入は、まだ終わっていない。
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