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自費出版のお役立ち情報 第2号
「自費出版のお役立ち情報」第2号をお届けいたします。
前号で、出版社に相談を持ちかける時は、いっしょに本作りをしていくための「ベストパートナー
を見つけるために」という意識を持つようにと言いました。
実際、相談を持ちかける時には、書き上げた原稿、あるいは書きかけの原稿を編集者に見せ
て相談するわけですが、その時に非常に重要なことがあります。
それによって、制作コストが大きく変わると言っても過言ではありません。
編集者の心を掴み、ベストパートナーとするためにも非常に重要なことです。
自費出版で注意すること-3
推敲(1)
自費出版をされる方が、必ず犯す「犯罪」があります。文章で他人を中傷したり誹謗したりする
犯罪よりは軽い罪ですが、ほとんど全ての自費出版をする方が犯す罪です。
それは、「はい、書けました!」とばかり、原稿を編集者にポンと投げ出してしまう、我が子同然
の原稿を虐待する「無責任」という犯罪です。
この犯罪によって、原稿は人に見せるに足りる成人として充分に育たず、著者は編集コストを
膨大にアップさせるという経済的な自虐行為をし、編集者は精神的苦痛を被りひどい時はノイ ローゼに罹ります。
次の、文章をお読みください。
「昭和40年A小学校に入学2年間この学校で学ぶ楽しい運動会母は役員でアイスクリームを売
り私ははしりはだめでいつも一番びり。遊びはおもに鮒鯉釣り林ノ中に木と木とを四方にえら び綱をはりめぐらして笹竹をこうごに編んでいき家根はシバで切りその上にのせた4畳のひろ さでした」
これは、40歳の男性の方の原稿です。これを出版してほしいと、400字詰め原稿用紙で100枚
ほど持ち込まれました。文章は、読点もなく延々と述べたいことが、誤字脱字を伴いながら思 いつくままに続いていきます。
もうこの段階で、編集に、いやその前段階の原稿チェックだけに膨大な時間と労力が必要と判
断され、そのコストが見積もりの中に大きく入り込むことになります。
「私の原稿は、こんなにひどくない」と思われた方も多いかと思いますが、多かれ少なかれ自費
出版をされる方の原稿は、推敲のされていない著者に見放された原稿なのです。推敲されて いるか否か、プロの編集者から見れば一目瞭然とわかるのものなのです。
逆に言うと、推敲されている原稿は大変心証の良いものです。編集コストは最低限に抑えら
れ、編集者はより良い作品に仕上げようと一生懸命となります。
実は、出版社の専属の校閲がついているプロの作家でさえも、自身で何度も推敲を重ねま
す。なかには、それで体調を崩す作家もいるくらいです。
何度も言って耳が痛いかもしれませんが、自費出版をされる方の文章は、推敲を重ねることで
やっと読める文章になるのです。
では次に、その推敲のポイントとは何かを少し解説します。
自費出版で注意すること-4
推敲(2)
推敲のポイントをまとめると、次のようになります。
『推敲の各論』
1)「です・ます調(敬体)」「だ・である調(常体)」のどちらかに統一されていますか
2)主語・述語がありますか
3)「てにをは」に過ちがありませんか
4)表記と表現の統一に意識されていますか
5)同じ言葉・表現を何度も使っていませんか
6)接続詞を多用していませんか
7)漢字が多すぎませんか
8)句読点は適度にありますか
9)改行は適当ですか
10)同音・同訓異義語を間違って使っていませんか
11)故事・ことわざ・熟語は正しいですか
『推敲の総論』
1)文章にリズムがありますか
2)5W1H(who誰が・what何を・whenいつ・whereどこで・whyなぜ・howどうやって)が押さえられ
ていますか
3)削る作業をしましょう――「意味が重複しているところ」「余分なところ」「あやふやなところ」が
削る部分です
「書いた文章は一度寝かせるのが良い」とよく言われます。
書いている時は夢中で熱中しているものです。しかし、書いた文章を四、五日ほど置いてから
(寝かせてから)読み返してみると、書いている時には見えなかった間違いや、同じことを繰り 返し表現していることなどに気がつきます。
とりわけ推敲の総論の最後に書いた「削る作業」は、本当に大事な作業です。自分の書いた文
章を削ることに、初心者は戸惑いと抵抗を感じると思います。しかし、極言ですが削れば削る ほど名文になると思っておいてください。
推敲の努力は、制作費用を何万~何十万円と節約する結果となります。
安く良い本を作りたいと願うならば、出版社へ相談に持ち込む原稿は、必ず推敲をしてくださ
い。
自費出版で注意すること-5
ISBNコードについて
自費出版される方で、多くの方が「私の本にも番号をつけてほしい」と申告されます。
その番号とは、ISBNコードのことです。
皆さんが書店で購入された本の裏側を見ていただくと、そこに「ISBN4-○○」という文字を見
つけることができると思います。それは「日本図書コード」と呼ばれるもので、業界では「アイ・エ ス・ビー・エヌ・コード」と呼んでいます。日本はもとより、世界中で書籍流通の基本となっている 国際的な書籍番号です。
ISBNの横の4は日本の番号で、ちなみに0はイギリス(およびオーストラリアなど英語圏)、1
はアメリカ(英語圏なので0も使用可)、2はフランス、3はドイツ、5はロシアと続きます。
4の隣からハイフンで三つの区切りがありますが、それらは4-出版社記号-書名記号-チェッ
ク数字と並んでいます。
出版社記号とは、日本図書コード管理センターから出版社に与えられた番号で、4(日本)の中
では同じ番号は存在しません。まさに出版社を指定する番号です。
この番号は、出版社が創業時に日本図書コード管理センターへ申請して、手続き費を払うこと
で取得されます。(ちなみに、自費出版される個人が申請しても取得できます)
その次の書名記号は出版社が本を発刊するときに、その本に割り付ける番号です。
番号の管理は出版社の責任とされ、同じ番号を使うことは出来ません。よって、4(日本)で出
版される本は、公的機関が割り振った出版社記号と、出版社が割り振った書籍記号によって、 すなわち世界にただ一つの記号(番号)で管理されるのです。
最後のチェック数字は、ISBNコードをコンピュータに入力した時に、その番号が正しいか否
かをコンピュータ自身が検算するための数字です。その算出方法は、独特の計算式で行いま す。
このISBNコードは、その後にCで続く分類コードと共に、図書館や書店で書籍を管理するた
めの大切な記号となります。
よって、自費出版をされる本でも、書店流通を希望される場合や、図書館に寄贈される場合は
出版社としても、ISBNコードを取って付けるのが普通となっています。
話題:
ISBNコードの2007年改定と2006年年末の出版大恐慌の予測!
ISBNコードについて解説いたしましたが、このISBNコードが、2007年1月から改定されること
になりました。英語圏での番号不足と加盟国家の増加によるものだそうです。
現在の10桁構成から13桁構成になるそうで、国番の4の前に978を付けて13桁にするそうで
す。(ちなみに星湖舎は「ISBN978-4-921142-○○-○」となります)
ただ、2006年末日まではすべて現行規格の運用とのことです。
ふと、このことで思ったのですが……
来年(2006年)の年末(12月)は各出版社、出版点数を差し控えるのではないでしょうか? 13
桁の時代になれば、明らかに10桁を付けている本は「古い」イメージになります。だから、12月 は出版を控え、1月にどっと新しい13桁のISBNコードを付けた本を出すのではないでしょう か。
ところが、ところがです! 実は本(学参は除く)が一年間で一番たくさん売れるのが、この12
月、それも年末なのです。出版業界、書店業界がもっとも活気の出る時期なのですが、いった いどうなるのでしょうか?
需要と供給のバランスが崩れた出版大恐慌が、業界を襲うと予測されます!
第2号 了
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