ホットライン大阪からの要望書 |
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門真三中・四中での「君が代」起立強制の職務命令に抗議する! 今年のホットラインまとめ集会は、大阪でも新たな段階に踏み込みつつある「日の丸・君が代」強制にどう対抗していくのか、緊張感に包まれる開催となりました。発端は、「門真三中 国歌斉唱 起立一人」との大々的な産経新聞報道。すぐさま門真市教委は、不起立の3年担任団に対して生徒にどのような指導をしたのか事情聴取に入りました。さらに入学式に向けて、「教員が児童生徒の目前で着席するという行為は、教育公務員として許されない行為」との通知を発し、門真三中・四中には「起立」を強制する初めての職務命令まで出しました。府教委も全ての市町村教委に「厳正に対処する」との通知を出し、この期に不起立の多い学校や、「思想及び良心の自由」を告知している学校に対して締め付けを強めました。 そして6月に入り、門真市教委は、再度担任団を呼び出し、事情聴取を行っています。処分に向けて動きであり、何とか阻止しなければなりません。 私たちは、当該校の教職員と連絡を取り、弁護士を交えて対応を話し合いました。そしてホットライン大阪としても申し入れを行い、職務命令の撤回と処分をしないように迫っているところです。弁護士グループの大阪社会文化法律センターは、この件に関して「思想良心に基づく自由な行動を阻害する危険がある」との声明を出しました。集会の場でも、新たな事態に対して「今後も協力してやっていこう」と呼びかけられました。 吹田からの報告では、右翼の「不起立教員のいる学校は?」との問い合わせに対して、府教委が吹田・門真市の不起立の多い学校名を伝えていたことが分かりました。府教委が不起立の多い学校を「課題のある学校」として右翼に流し、右翼とマスコミによる個別の学校攻撃を容認していたのです。今回の門真での産経新聞による「偏向キャンペーン」をきっかけにした攻撃は、府教委との阿吽の呼吸で仕組まれていたのです。東京から参加された河原井純子さんは、大阪の状況を「東京での10.23通達直前に似ている。」と表現し、一人一人が抵抗の声を上げ「茶色の朝」を作らないように呼びかけられました。 今年の大阪門真市の事例は、全国に広がりつつあります。北海道でも兵庫県宝塚市でも不起立の多い学校を右翼やマスコミが個別に攻撃して、教育委員会の新たな強制通知を呼び込む手法が続いています。大阪での今年のホットライン活動は終了しましたが、来年に向けて、この新たな状況を踏まえた法的な詰めや職場での闘いの作り方など、これまで以上に真剣に議論し、準備を進めたいと思います。 大阪府教育委員会教育委員長 同 教育長 申し入れ書 私たちは、1999年の「国旗・国歌法」成立以降、「日の丸・君が代」強制に反対し、そのことによる「思想・良心・信教の自由」の侵害を許さないために、2000年より電話・ファックス・メール等による相談活動を続けてきた。ホットライン活動を始めてから9年目の今年、きわめて重大な「思想・良心・信教の自由」侵害の事例が報告された。門真市における教員への職務命令の発出がそれである。 3月13日に行われた門真市立第三中学校の卒業式において、多くの卒業生が「国歌斉唱」時に起立しなかったことが、27日付産経新聞によって「事前に教員が不起立を促した可能性」という憶測に満ちた記事で報道された。大阪府教育委員会綛山教育長は、門真市教育委員会からの正式の調査報告が届いていないにもかかわらず、同日の会見で、産經新聞掲載の「不起立を促した可能性」を支持し、「厳正に対処する」ことを表明した。また、3月31日付で各市町村教育委員会あてに、「このような事態は、当該中学校や当該市のみならず、不全体の公立小中学校の信頼を損なう」という異例の通知を発した。 こうした大阪府教育委員会の行政的圧力のもとで、4月7日、門真市立第三中学校および第四中学校において、校長が第一学年担任団に所属する教員に対して、「国歌斉唱時に起立するよう命じる」旨の文書による職務命令を発した。これは、卒業式・入学式の実施をめぐって、大阪では初めて出された職務命令であり、「日の丸・君が代」の強制が、また一段、段階を画したものとして見過ごすことのできない重大な問題である。 大阪府教育委員会は、従来より「職務命令を辞さないで強く指導」などとしながらも、実際の職務命令の発出にあたっては、府教委との協議を求めるなど、職務命令については慎重な姿勢であった。しかしながら、今回の職務命令が門真市教委から校長に直接指示されたものであること、門真市教委が府教委と密接に連絡を取りつつ、事情聴取などで府教委からの指示を受けていると言明していることなどを考えると、この職務命令の発出が府教委の姿勢転換を反映していると考えざるを得ない。 しかも、こうした事態が一部マスコミによる不当なキャンペーンを背景にして生起していることを見るとき、大阪府教育委員会の責任は重大であると言わなければならない。 私たちは、今回の職務命令発出に強く抗議するとともに、以下の事項を強く求めるものである。 記 (1)職務命令による起立・斉唱の強制を行わないこと。また市町村教育委員会に対し て、職務命令による起立・斉唱の強制を指導しないこと。 (2)良心に基づく「不起立」によって、子どもや保護者が不利益を受けないことを 確認し、周知すること。 (3)子どもたちが国歌斉唱への参加・不参加を自発的に決められる環境を保護すること。 (4)「不起立」を理由とした教職員「処分」を行わないこと。 (5)「起立状況調査」など、起立を強要する一切の調査を行わないこと。 2008年5月 「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪 門真市教育委員会 教育長 下浦 克明 様 申 入 書 本年3月13日に行われた門真市立第三中学校の卒業式において、多くの卒業生が「国歌斉唱」時に起立しなかった。3月27日付け産経新聞は、「事前に教員が不起立を促した可能性」という憶測に基づく記事を大見出しで掲載した。貴委員会は記事掲載当日のうちに同校を訪問し、3年生学年団教員全員に対する「事情聴取」を行っている。大阪府教委は、貴委員会からの正式の調査報告を受けていない記事掲載当日の綛山大阪府教育長記者会見で産経新聞掲載の「不起立を促した可能性」を支持し、「厳正に対応する」ことを表明するとともに、産経新聞による継続した攻撃報道と軌を一にする形で、3月31日付け府内市町村教委教育長宛の通知を発出した。「このような事態は、当該中学校や当該市のみならず、府全体の公立小中学校信頼を損なう」と、未だ記事掲載内容の「調査」中であった貴委員会と当該校に対する強い行政圧力をかけた。 この段階で、貴委員会には、府教委からの不当な行政圧力に対して抗議する責任があったはずである。しかし、貴委員会は府教委からの行政圧力を受け入れ、4月1日の臨時校長会において口頭で教職員の起立を強く促すとともに、翌2日付けで同趣旨の通知を市立学校校長宛に発出した。さらに、府教委と貴委員会が連携して、4月7日に行われた門真市立第三中学校および第4中学校の入学式当日に、1年生担当教員に「職務命令」を当該校長に行使させた。この行為は、戦前の教育における過度の国家的介入を反省し、「教育は不当な支配に服することなく」と定め、公権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならないとする憲法および教育基本法の原則を蹂躙するものである。 また、思想・良心の自由は、個人の内面的精神活動のうち最も根元的な自由であり、憲法19条は、その根元的自由を外部からの干渉介入から守るために絶対的に保障している。個人の内面的精神活動の自由についての規律はあくまでも個人の自律に委ねるものである。 1994年の政府統一見解では、「学校における『国旗・国歌』の指導は内心にわたって強制するものではない」とされ、1999年7月21日の衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会においても、国旗・国歌の指導について「何らかの不利益を被るようなことが学校内で行われたり、あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導等が行われるということはあってはならず、「学習指導要領は直接、児童生徒に対して拘束力を持つものではない」と確認されている。 私たちは、すでに卒業した当該校生徒を含むすべての児童・生徒とその保護者、そして教職員の「思想・良心の自由」を侵害する貴委員会の行為に抗議し、下記事項を強く要求する。 記 (1)良心に基づく「不起立」によって、子どもや保護者が不利益を受けないことを確認し 周知すること。 (2) 子どもたちが国歌斉唱への参加・不参加を自発的に決められる環境を保障すること。 (3)「不起立」を理由とした教職員「処分」を行わないことを確認し、門真三中、四中教 員に発出した「職務命令」の無効を確認すること。 (4)「起立状況調査」など、「起立」を強要する一切の調査を行わないこと。 以上 2008年5月 「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪 門真市立第三中学校 瀬戸和大 校長 様 「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪 2008年4月7日の入学式に際して「式次第による国歌斉唱の間、起立してください」との職務命令を貴職が教職員に発せられたことは、憲法第19条の「思想および良心の自由を侵してはならない」との条項に反する人権侵害であります。よってここに厳重に抗議を致します。 @ 思想および良心とは、世界観、人生観、主義主張よいう個人の人格的な内面の精神作用であり、「日の丸・君が代」についての認識や判断もそれにあたります。それを「侵してはならない」ということは、「国民がいかなる思想を抱いているかについて、国家権力が露顕disclosureを強制することは許されないということ、すなわち、思想についての沈黙の自由が保障されることであります。すなわち国家権力は、個人の内心において抱いている思想について、直接または間接に訊ねることは許されないのです。たとえば、江戸時代のキリスト教徒の弾圧の際に行われた「踏絵」、あるいは、天皇制の支持・不支持についてのアンケート調査のように、個人の内心を推知しようとすることは認められない。」(芦部信喜 憲法 岩波書店p122〜p213 1996年刊行)ということであります。だから教職員の多くは、式次第への「国歌斉唱」の導入に反対しているのです。 「君が代」斉唱に「起つ、起たない」「歌う、歌わない」等の態度選択を迫る状況をつくってはならないということなのです。貴職が、多くの教職員の反対を押し切って、専断的に国歌の起立斉唱を命じたことが憲法に保障された各人の人権を侵害していることを自己批判する必要があります。 A 1999年8月に制定された「国旗・国歌法」には、国旗・国歌の国民の尊重義務は規定されていません。 国旗とされた「日の丸」は、アジアの人々からは侵略戦争の旗とされ、白地に赤丸は太陽神・天照大神の子孫としての日嗣ぎの皇子、すなわち天皇を表すものとも見なされてきた歴史的経緯があります。 国歌とされた「君が代」は、第2次大戦終了までの間、皇民化教育の一環として天皇の活世が永遠にいつまでも続くように願う歌として用いられ、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた。日本国憲法で天皇は日本国の象徴・日本国民統合の象徴となったが、その永続を願うことは、国民主権の原理に反するとの考えもあります。 このような歴史的経緯のある「日の丸」「君が代」を通して、国家への忠誠や愛国心を表明するか否かは各人の歴史的認識にかかわることであり「心」の問題であるが故に国旗・国歌法では尊重義務は憲法違反になるため規定できなかったと言われています。それ故職務命令で一方的に強制されるべきものではありません。 B 職務命令の根拠を学習指導要領にある「指導するものとする」に求めたにしても、卒・入学式におる教育公務員としての態度表明と一体化するものでもありません。生徒にとって必要な教育とは、「立つ・立たない、歌う・歌わない」は個人の自由で憲法で保障されている人権であることの認識と自分で判断する力を育むことにあります。ましてや一方の立場に立ち卒矢垂範し、起立斉唱しなければならないとは学習指導要領には規定されてはおりません。 C 「国歌斉唱起立1人 卒業生170人 教員が指導か」(産経新聞2008.3.27)の報道後、教員による煽動ではないかとの疑いをもって、事情聴取が行われたとのことですが、これは教員の持つ授業の専門性、教授の自由、学問の自由を侵害するものであると共に、生徒の意見表明権を侵すものでもあります。 子どもの権利条約(1994年批准)第12条には、「自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもにも影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解がその年齢及び成長に従って、正当に重視される」とあります。まさに自己決定の能力を身につけた証左として評価されるべきものであります。 生徒を起立斉唱させるために、培われてきた教員との人間関係や心情を利用し、教員に起立斉唱を職務命令をもって強制することは教育の場ではあってはならないことであります。 最高裁判決(1990.1)においても学習指導要領は大綱的基準であり、「教員に対し一方的な一定の理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていない」から法的効力があるのだと述べています。すなわち一方的な一定の理論ないし観念を生徒に教え込むと学習指導要領の法的効力を失うということなのです。 最後の授業といわれる卒業式や最初の授業といわれる入学式で「日の丸・君が代」(国旗・国歌)に対する態度を一律に職務命令によって教師により体現させてみることは、一方的な観念の生徒への押しつけ、体感教育ともいうべき「スリ込み」というべき行為であり、学習指導要領においても容認するこのではありません。 D 教員は地方公務員であります。地方公務員法第32条に「上司の職務命令に忠実に従わなければならない」とあります。起立斉唱の職務命令が「内心の自由の侵害」であっても「受忍」すべきものだとの見解もあります。が、地方公務員法は憲法より下位法であり、上位法である憲法規定こそ遵守すべきものであります。その上、憲法99条の公務員の憲法尊重擁護義務規定を守るべきだと考えます。 E 事情聴取も職務命令も、大阪府教育委員会と門真市教育委員会の指示に従って行われています。地教行法43条1項により市教委は校長の服務を監督する権限を有しています。が、学校長の裁量権を著しく制限することは許されません。貴職は卒業式の予行の時、内心の自由があることの告知を生徒に行っておられます。まさに教育的な対応であります。とすると市教委による学校長による職務命令の発令要請は裁量権への不当介入であり、貴職の「内心の自由」を侵害するものと考えられます。抗議に値するものではないでしょうか。改正された教育基本法第16条でも「教育は不当な支配に服することなく・・・(中略)・・・公正かつ適正に行われなければならない」とあります。 貴職が教員と生徒の信頼関係を大切にし、教員の教育の協働性を培って学校運営をされておられることに敬意を表すると共に、内心の自由の告知等で「処分」等の状況が起った時は、私たち「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪に結集する弁護士等も全幅の支援を行う所存であることを申し添えておきます。 以上 2008年5月 「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪 |