ホットライン大阪からの申し入れ |
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2010年3月12日 大阪市教育委員会 教育長 永井 哲郎 様 「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪 申し入れ及び質問書 私たちは、1999年の「国旗・国歌法」成立以降、「日の丸・君が代」強制に反対し、そのことによる「思想・良心・信教の自由」の侵害を許さないために、2000年より電話・ファックス・メール等による相談活動を続けてきた。昨年度から大阪市教委は学校現場の創意を破壊し、「日の丸・君が代」強制をエスカレートさせているが、私たちにも人権侵害を訴える声が寄せられている。 大阪市教育長は、2009年4月の全市校園長会において「国旗を式場内に掲揚する」「国歌を式次第に掲載する」「起立して斉唱する」「音楽の授業等における国歌斉唱の指導を進める」「卒業式・入学式においては、ピアノの活用等も図り、大きな声で国歌が斉唱できるよう指導を進める」ことを具体的に挙げて指示をした。2010年1月にはこれらを徹底させるための「通知」まで出している。卒業式に向けての子どもたちや教職員の主体的な取り組みを無視し、行政的な介入で学校現場を従わせるものであり、憲法および教育基本法が禁じる不当介入そのものである。現に教育委員会議の中でも「実施内容を一義的に定めてしまうあまり、返って学校側が思考停止に陥り、思うような教育効果が上がらなくなるのもいかがなものかと思う。実施の細部については学校の創意工夫に委ねることが妥当であると考える」(第17回教育委員会議)と、市教委の細部にわたる強制に対して批判の声も出ている。 さらに、大阪市教委は大阪府が慎重な姿勢を示す中で、4月から市立学校園での「日の丸」常時掲揚を強行する「通知」まで出した。これは国家への忠誠心を日常的にすり込み、「日の丸」を忠誠の象徴として仰ぎ見ることを強制するものである。 大阪市内の学校には、韓国朝鮮をはじめとして、外国にルーツを持つ子どもたちが多数在籍している。これまで大阪市教委は、「国籍の如何を問わず民族的・文化的背景の異なるすべての人々が差別され、疎外されることなく、自らの民族的アイデンティティを豊かにはぐくみ合える社会をめざすうえで、自己の言語、文化および歴史を学ぶことは当然の権利であり、欠くことのできないことである。」とうたい「在日外国人教育基本方針」を策定し、在日外国人教育を積極的に推進してきた。この間の卒・入学式での「日の丸・君が代」強制と「日の丸」常時掲揚は、在日外国籍(ルーツを持つ)の子どもたちの人権、それだけでなく多様なアイデンティティや多様な考えをもつ子どもたちの人権を完全に無視するものである。 そこで、私たちは卒業式を控えるこの時期に、貴委員会の態度を糺すとともに「日の丸・君が代」強制と市立学校園での「日の丸」常時掲揚方針をやめ、すべての子どもたち・保護者・教職員の思想良心の自由が守られた卒業式と学校生活を保障するように申し入れる。 また、下記の質問事項について、3月23日までの貴委員会の考えを文書で明らかにされるよう求める。 質問事項 1.大阪市教育長の指示や通知は、学習指導要領の大綱的基準を超えた細目的な指示であり、何ら法的根拠がない。上記指示・通知の法的根拠を明らかにせよ。また、撤回する意志はあるのか。 2.昨年の東豊中高校事件高裁判決では、『君が代という国歌が担ってきた戦前からの歴史的役割に対する認識や歌詞の内容から、君が代に対し負のイデオロギーないし抵抗感を持つ者が、その斉唱を強制されることを思想信条の自由に対する侵害であると考えることには一理ある。とりわけ、「唱う」という行為は、個々人にとって情感を伴わざるをえない積極的身体的行為であるから、これを強要されることは、内心の自由に対する侵害となる危険性が高い。したがって、君が代を斉唱しない自由を尊重されるべきである。』と指摘している。従って、卒・入学式で「君が代を斉唱しない自由」が、憲法の保障する自由権として認められるべきである。しかし、大阪市教委の通知では、「大きな声で国歌を歌う」指導が指示されている。自らの良心に従って「歌いたくない」と考える子どもたちの人権をどのように守るつもりか。具体的に明らかにせよ。 3.通知には、在日外国籍の子どもたちへの人権配慮が全くなされていない。「在日外国人教育基本方針」には、「国籍の如何を問わず民族的・文化的背景の異なるすべての人々が差別され、疎外されることなく、自らの民族的アイデンティティを豊かにはぐくみ合える社会をめざす」ことがうたわれている。「日の丸」が掲揚され「君が代」の起立斉唱が求められる卒業式の場で、在日外国籍の子どもたちが「差別され、疎外される」ことのないために、どのような配慮が必要と考えるか。 4.通知では、教員に対して「ピアノ伴奏」「大きな声で歌う指導」「起立して斉唱する」などと指示している。これらは教員自身の思想良心に関わる問題であり、職務命令にはなじまないと考えるがどうか。また、これらの項目についての実施調査をしないように要求する。 5.「不起立」を理由とした教職員「処分」を行わないこと。 6.大阪市教委は、市立学校園で「日の丸」常時掲揚について、「本市施設の管理運営上の対応」として実施するとしている。学校は様々な民族性や考えを持つ子どもたち・保護者が在籍しており、それらをお互いに認め合い成長していく場である。「管理運営上の対応」で全市立学校園に一律に強制することは、教育的配慮に欠けたものである。大阪府議会で「日の丸」常時掲揚の条例化が成立しなかったのは当然のことである。 大阪市立学校園での「日の丸」常時掲揚を指示する「通知」の撤回を求めるがどうか。常時掲揚するかどうかは、個々の学校が判断すべきことで、「通知」による強制にはなじまないのではないか。また、常時掲揚は子どもたちにも大きな影響を与える教育活動の一環である。強制は、教育への不当介入ではないのか。 以上 |