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1.免疫について:その@仕組
私たちの体は色々な特殊化した細胞からなっている。そして体を守る細胞も特別に用意されて
いる。その細胞は白血球で単細胞のアメーバーによく似ている。その細胞は生き残る事で私 たちの体を守っている。白血球の中には三分の一くらいのリンパ球がある。これが抗体を作っ て色々な感染症から身を守ってくれている。これが免疫で、免疫が活性化して旨く働いてくれる のが健康な状態といえる。
例えば風邪を引いた時、熱が出る。免疫の働き(リンパ球の働き)は、熱を高めるほうが一番
力を発揮する。だから免疫力を発揮する為に熱が出る。逆に熱がさがるとリンパ球は働けなく なり免疫の力は落ちてしまう。
私たちは無理な生き方をしたときに免疫の力が落ちていまう。例えば夜更かしをして睡眠時間
を削るとか、あるいは精神的に悩みを抱えた時これらは非常につらい状態である。この状態は 肉体的にも精神的にも独特な体調になる。それは自律神経のうちの交感神経が緊張した状態 で、よく筋肉が硬くなったり血圧が上がったりの体調があるが、それが自律神経のうちの交感 神経が働きすぎた状態である。私たちは無理をした時の疲労や悩みを継続すると免疫の働き を下げてしまう事になってしまう。
低体温は、交感神経が働くと血管が収縮して脈が速くなり血圧が上がって循環量が増える。そ
して更に働きすぎると、今度は循環障害になる。無理をした人の顔色が悪いのがそれで、これ が低体温の状態でリンパ球が働けなくなる。
長時間労働の人なら仕事の時間を減らすとか、悩みで苦悩している人は、その問題を解決し
て心がもっと落ち着くようにする事が大切。
辛いことなどが重なると潰瘍、疱疹、ポリープ、いぼが出たりする。それは免疫力の低下によっ
てウイルスが暴れたもので、更に進むと色々な病気にかかってしまう。
今までは遺伝子の問題だといわれていたが、最近では「生き方の片寄り」も考えられるように
なった。「生き方の片寄り」は自律神経の交感神経を緊張させたりするので、暮らしの見直しが 非常に大切になってくる。
2.免疫について:そのA白血球
私たちの体は自律神経の働きによって、食べた後に消化酵素が出たり、胃腸が活動したりの
反応が自動的に行なわれている。それは体の細胞全てが自立神経の支配を受けているから である。そして白血球の分布も自律神経の支配を受けている。最近になって、その白血球の 分布の変動は私たちの暮らし方によることが分かってきた。
自律神経には、活動の神経である交感神経、休息の神経である副交感神経の二つがある。
白血球も二つの球があり、細菌を処理する顆粒球、侵細物を処理するリンパ球で体を守って いる。
顆粒球は細菌が入ってきたときに化膿させて体を治す。リンパ球はウイルスやハウスダストの
様な小さな異物が入ったときに抗体でその異物を凝縮させて体を治す。
これらの球は、活動の交感神経で顆粒球を増やし、休息の副交感神経でリンパ球を増やす仕
組みになっている。しかし自律神経は、どちらかが緊張している。
一般的に私たちは、「日中は働き夜は睡眠をとる」というリズムで生きている。
そのリズムでいると血液の中に、顆粒球が60パーセント、リンパ球が40パーセントと丁度良
い比率で体を守っている。
ところが、無理をすると顆粒球が増えてリンパ球が減り免疫力が低下してしまう。だから私たち
は、よく「無理をするな」とか、「体を冷やすな」とか「食べ物に気をつけな」とか言う。これは自 律神経の働きの片寄りを防いで白血球の数のバランスをとることが必要になっているから。
つまり交感神経と副交感神経のバランスをとる事で初めて元気で居られることになる。
例えば、「長時間労働で無理をする」とか、「心の悩み抱えて苦悩する」は交感神経が緊張して
血圧が上がったり、血糖が上がったりする状況だが、そのとき顆粒球はドンドン増えてしまう。 一方リンパ球は減り免疫力が下がると同時に顆粒球過剰の害が出てくる。無理をした人が歯 周病になったり、怒りっぽい人が痔になったり、悩みを抱えた人が胃をやられるのは、それが 起因している。
一方「のんびり」はリンパ球過剰の危険性が出てくる。特に、子供たちが外で遊ばないとか働き
盛りの人がほとんど机に座って運動する機会が少ない。すると逆にリラックスした状態が多くな り今度はアレルギーという問題が出てくる。一般的に「あまいもの」は心をリラックスさせる、そ れは、私たち一番幸せなのは休むのもそうだが、甘いものを食べて満足するとすごくリラックス する。リラックスの極限は「甘いものを食べて、体をほとんど動かさない」事になる。子供たちに 「アレルギー派」が多いのは、これに関係している。
特にリンパ球過剰でアトピー性皮膚炎や気管支喘息になっている人は、あまいもの好きな人
が多い。アレルギーから断絶するためには先ず甘いものを控える事が大切。
つまり、細菌を処理する顆粒球が増えすぎたときは粘膜で場外細菌と反応して組織を壊す病
気になったり、リンパ球が増えすぎたときには周りのほこりなどと反応してアレルギーを起こし たりする。・・・やはりバランスは旨くとらなければいけない。
3.免疫について:そのB体温
働くときの体調やスポーツをするときの体調は交感神経が支えている。交感神経が働くから脈
も速くなるし血圧も上がり血流が増えて仕事などができる。しかし、これが行き過ぎると血管伸 縮が強くなり血流障害を起こす。無理をした人の顔色が悪くなったり、心配事を抱えた人が、 手足が冷たくて靴下を履かないと眠れないなどの症状に現れてくる。それは循環障害からくる もので、この状況はリンパ球の減少もともなってしまう。更に低体温になってしまっているのでリ ンパ球の働く条件も低下し、免疫力も下がってしまう。
免疫力が下がると、私たちの体の中に住みついている常在ウイルスや生活菌が暴れて口唇
ヘルペスや帯状疱疹、そして子宮筋腫などになったりする。
私たちの体の中に住んでいる常在ウイルスや生活菌は普段は悪さをしない。しかし低体温に
なって免疫力が下がる度に悪さをし始める。
健康な人の体温は36度以上である。体温が下がると手足が冷たくなったり顔色が悪くなった
りして、病気になってしまう事がある。
体温を下げないためには交感神経緊張の生き方から脱却することにある。仕事が忙しいとき
には、全部自分でその仕事を抱え込まないでみんなで手分けする。それとも少し休みの日を取 ったりしてバランスを考えなければならない。
悩みも交感神経緊張で、ちょっとした悩みでも血圧が180に上がるお年寄りなどが多い。そし
て自分が何か辛い目(低体温)にあっていないかを自覚することが大切になってくる。低体温か らの脱却ができないで、いつまでも自分の生き方を変えられない場合もある。そのときはお風 呂に入ったり湯タンポを使ったりして体を暖めるとリンパ球が働く条件を作ってくれる。
日本人は湯船を使う習慣があるので、その点好条件である。シャワーでは殆んど深部体温ま
では上がらない。お風呂に入ると体温は確実に上がる。また足元への湯タンポも良く、全身の 血流が良くなり血管が開いて顔色まで良くなってくる。
お風呂について、健康な人が入って気持ちが良いと思うのは41度といわれている。42度にな
るとちょっと熱くてスグ上がりたくなる。39度や40度では健康な人にとって生ぬるくて何か今ひ とつの感じだが、低体温で病気がちな人は体が冷えているので"ゆっくり温める"事でプラスに なってくる。
低体温の人は、体が弱っているので高い温湯に入ると疲れてしまって、かえってストレスになる
危険性がある。そのときには、ぬる目の温度にするか半身浴にすると良い。首までつかると発 汗する場所がないが、半身浴は上半身で発汗するので深部体温が過剰に上がらなくてすむ。 半身浴やぬる目の湯は楽に感じるもので、また、岩盤浴も首まで温泉につかる事がないので 疲れにくい。
4.免疫について:そのC症状は治療
「発熱や腫れは辛い」この辛い不快な症状が病気を治すために一番大きな力になっている。例
えば大やけどをした後には腫れて熱が出て痛くて辛い。大怪我をした後にもやはり腫れて熱が 出て痛い。寒いとシモヤケになって腫れて痛くて熱が出る。これらの症状はみな組織が壊れた ために血流が増え、それによって発熱して治る過程になっている。この流れが治癒の基本にな っていて熱が出たときがチャンスと云う事になる。
風邪を引いたときの38度〜39度の発熱は風邪ウイルスを退治するチャンスになっている。また
口唇ヘルペスや帯状疱疹、子宮筋腫などで痛みや腫れ、熱が出たりする時も、それは、戦うた めのリンパ球の働きを最大限にして治癒する事になっている。腫れたり熱が出たりする事が体 の正常な反応という事になる。
しかし一般的には不快な症状と云うものは誰しも辛いもので薬を使っているのが現状となって
いる。また、それが度重なると治る期間が長くなってしまう。更に病気を調べてみると、歯周病 での歯ぐきの腫れ、痔によるジクジク感や痛み、また潰瘍性大腸炎での粘膜の腫れは、すべ て治るためのステップであった。「血流を増やす事によってはじめて組織を修復できる」のが原 則で、一般的にその考えがないのでツイツイ薬で止めてしまっている。
特に消炎鎮痛剤(湿布薬)などは良く使われるが、これは一時的には痛みは無くなるけれども
反面病気は長引いてしまうものである。また風邪を引いたときにも極端な高熱であるならば一 時的に使っても良いけれども、軽い風邪で熱を下げると治癒期間は2倍くらいにのびてしまう。
一般的に風邪の治癒期間というものは2〜3日と言われるが、薬を飲むと4〜5日にのびてしま
っている。
もともと体というものは、治癒力を持っていて、それを十分に発揮させる事が大切である。頭痛
や生理痛というものは「痛み」しか分からない。しかしその時は血管が更に開いて血流を良くし ている。例えば過度に辛い目にあった後、一休みした時に頭が痛くなるというのはストレスで止 められていた血流が回復したものである。
だから常に“治るはずだ”と考えると薬に手を出さなくても済むようになる。痛みはやがて和らい
でくるので、その痛みは甘んじて受けるようにして、痛みに対する不安感を無くすようにする事 が大切になってくる。 “痛み”この症状が何のために出ているのかを知る事である。“痛みは悪 いもの”と思ってそれを薬で退治する事は“恐怖感”による行動と云う事になる。
頭痛などは血管が開かれてズキンズキンと血流が増える症状としてあるので、皆ストレスから
の解放のための反応の現れになっている。むやみに薬に頼ると返って治す力を弱くしてしまう ものである。関節の痛みや腰の痛みというのはよくある病気、それに対しての“薬”は一時的に は楽になれる。しかし薬が切れてしまうと痛みや腫れの症状がでるので、また薬で止めてしまう 事になる。
これはシーソーゲームになっていて、例えば“頭痛の多い人は薬を手離さない”というのは、こ
のシーソーゲームの流れになってしまっている。
そのためには一度思い切って「病気の時に出てくる症状は治るためのステップ」と自分に言い
聞かせガマンしてみる事である。そして風呂で血行をよくして痛む必要のないところまで修復し てしまえば本当の治癒になってくる。一般的には薬に頼るという習慣があるので“病と向き合 う”という強い姿勢が必要とされる。
5.免疫について:そのD免疫と長寿
病気というものは8割ぐらいが無理や悩みで交感神経が緊張した事で起きている。長寿には
「健やかに生き続ける」事が大事で、そのためには交感神経が緊張に入らない生き方をするこ とが大切になってくる。しかし、「能力を使い続ける」ことも大切である。交感神経が緊張に入ら ないために副交感神経の方に行き過ぎると、アレルギーの病気だけでなく他の弊害も出てく る。
例えば、ご馳走食べてあまり運動しないと筋肉が衰えてくるので動きにくくなる。ふくよかで疲れ
やすい人は豊かな日本では多く、この状態は気力が湧きにくい。この流れが老年まで続くと、 ますます体は動かせなくなり今度は体の能力そのものが維持できなくなりボケてしまったりす る。つまり長寿の条件には無理をしない事と、楽をしない事の両方が要求されてくる。
団塊の世代による定年退職者が続出している。その時「今まで頑張ったので、これからは楽を
します」と言って家に引き篭もっていると身体の能力や気力がみな落ちてしまう。今度は体を動 かさない事による低体温の状態になる。私たちは無理をすると血管収縮による低体温もある が、楽をすると筋肉からの体温保持熱が出なくなるので低体温状態になってしまい更に疲れや すくなる。すると能力を維持できないから家の中に、そしてボケの世界に入ってしまう。
一般的に私たちの食というのは体自体が要求するようになっている。例えばモーレツ・サラリー
マンなどは、忙しいので食事時間を短くする。短い時間でエネルギーを摂らなければならない ので動物性の脂肪やタンパク質、あるいは揚げ物など満足感の強いものを沢山食べるように なる。
ところが年をとってくると、エネルギーはあまり使わないから自然に食生活も脂分が少なくなっ
てくる。特に無理をしていない時は穀物や野菜海草、キノコなどで植物性が中心となり必要な たんぱく質は魚や肉から少し摂るというような形でバランスをとっている。もし、お年寄りが頻繁 に肉を食べると今度は便の量が少なくなり便秘や大腸がんなどで腸に負担がかかってしまう。
自分自身の体が何を語っているのか(何を求めているのか)を知る必要がある。「喉が渇く」と
水が飲みたくなるし、塩分を摂りすぎたら口内が「塩辛い」…これらは体の声で、これを聞いて 適切な量を自分で決めることが大切、しかし残念ながら自分の体の声を聞く力の衰えも多くな ってきている。無我夢中の時は体の声は聞こえないものだし、また楽しすぎると気迫を失い体 の声が聞こえない。体の声を聞くためにも自律神経の活動に注意を向ける事が大切である。
6.糖尿病:その@症状
糖尿病というのはエネルギーの基となるブドウ糖に必要なインスリンが不足したり、また、イン
スリンの働きが悪くなる病気で、この状態の時は血糖値が高くなっている。
そしてこの病気は遺伝の他に生活習慣があり発症の原因は様々な要因が絡み合っている。
血糖値の正常範囲は早朝の空腹時で70〜110mg/dlとなっている。
そして110を超えると糖尿病の予備軍ということになる。
更に126以上になると糖尿病が強く疑われる。
従って、この正常値である70〜110を維持する事が大切になってくる。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の二つの型があり、1型糖尿病は自己免疫などの原因か
らインスリンを作っている膵臓が壊れてしまって起こる病気である。
しかし、日本では95%が2型糖尿病であり、これは主に生活習慣が関係してきている。
血糖値が高い状態のままでいると、様々な合併症が起ってくる。
糖尿病というものは万病の源でもあるので早期診断と適切な治療を受ける事が最も大切な事
である。
症状は血糖値が高くなる事によって起るのと、その合併症との二つがある。
血糖値が高くなると先ず尿の量が増える(多尿)、そして尿の回数も増え(頻尿)てくる。
尿が近くなるので、夜中もトイレのために起きることが多くある。
そのため喉が渇いて水を沢山要求(多飲)するようになる。
体がだるくなったりして、疲れやすく夕方になるとグッタリして持久力も低下してしまう。
そして、十分な食事を摂ったにもかかわらず体重が減少したりする。
食べても食べても太れないとか、むしろ痩せてしまうというのは血糖値がかなり高い時の状態
である。
特に注意すべき点は、血糖値が高いと免疫力が低下するので感染症にかかりやすくなり、ま
た、治りにくくもなる。
皮膚に傷が出来ると化膿しやすくなったり、また、肺炎や感染症などにもかかりやすくなったり
する。
これらの症状のうち、一つでも心当たりがあれば血糖値の検査を受けるべきである。
それは、糖尿病にかかっていても自覚症状が無いため病気に気がつかない事が多くあり、特
に症状が徐々に出ている時には殆んど気がつかない。
日本ではこの病気が増えてきているので、症状が無くても定期的に血糖値を調べておく事が大
切である。
身内に糖尿病患者が居る方、現在食べすぎや運動不足で肥満の方、高血圧高脂血漿などの
生活習慣病の治療をされている方、以前に血糖値が高いといわれた方、尿に糖が出ている方 は、特に糖尿病の検査を受けてみるべきである。
7.糖尿病:そのA検査
先ず、血糖値の検査で正常範囲は早朝の空腹時で70〜110mg/dlとなっている。
それ以上の方は糖尿病の予備軍、そして126以上になると糖尿病が疑われる。
次にヘモグロビンA1cという検査がある。
これも血液を調べる検査で血糖値と合わせて計ると診断に精度が増してくる。
この検査は赤血球に含まれているヘモグロビンに糖がくっついている割合を示している検査
で、1〜2ヶ月間の平均血糖値を示す目安になる。
そして、この検査値の正常値は5.8%未満となっている。
それ以上なら糖尿病の予備軍、更に6.5%以上では糖尿病が疑われる。
この二つを調べた後に、ブドウ糖負荷試験という精密検査がある。
この検査は決められたブドウ糖を服用して2時間の血糖値の上昇を調べるものである。
ブドウ糖を飲んだ後どのくらいの血糖値が上がるかを調べるもので、糖尿病の診断の見落とし
を更に少なくしてくれる。
健康診断で尿の中の糖分調べがあるが、これは尿糖が+(陽性)になっているかどうかを調べ
るものである。
尿糖が陽性なら糖尿の可能性があるので、合わせて血糖値を調べなければならない。
しかし糖尿の方でも尿糖が出ない事があるので、やはり血糖値は双方ともどうしても調べるこ
とが必要になってくる。
したがって糖尿病の診断には尿糖だけでは不十分という事になる。
糖尿病と診断を受けた場合には担当の先生と相談するのが最も良い方法である。
内容は主に生活習慣の改善で食事療法や運動療法を具体的に相談した方が良い。
そして少しでも正常な血糖値に近づける努力をする事が重要である。
食事療法は規則正しく決められた量の食事を摂る事で一日に何カロリーにするかということが
ポイントになってくる。
運動療法はウオーキングなど有酸素運動を一日に15分から20分くらい行う事がある。
しかし高血圧やひざ・腰などの持病の方は先生とよく相談をする事が必要である。
そして食事や運動の治療を行い血糖値改善の経過を看ることが重要である。
薬物治療としては飲み薬やインスリン注射があるが、これは食事療法や運動療法を行っても
血糖値のコントロールが出来ない方に対して行っている。
したがって主治医の指示に基づいた食事療法や運動療法が第一となってくる。
その上で血糖値の治療に必要な飲み薬やインスリン注射で血糖値の治療を行う事になる。
糖尿病学会では糖尿病の治療の目標であるガイドラインを作成している。
このガイドラインによると空腹時血糖値の目標は130mg/dl未満、ヘモグロビンA1cで2ヶ月間
の平均血糖値の検査値は6.5%未満が糖尿病の合併症を予防するうえで重要とされている。
血糖値の治療と合わせて合併症兆候の検査も大変重要な事である。
8.糖尿病:そのB合併症
糖尿病を放置しておくと様々な合併症が出てくる。
大きく分けると 網膜症・腎症・神経障害・動脈硬化の4つとなる。
網膜症は、網膜の毛細血管が糖尿病によって冒され、次第に視力が低下してしまう目の合併
症である。
腎症は、尿にタンパクが出てきて次第に腎臓の機能が低下してしまう合併症である。
神経障害は、手足のしびれや痛みなど抹消神経の傷み、立ちくらみや下痢・便秘など自律神
経に障害を与える合併症である。
動脈硬化は、脳の血管や心臓の血管にコレステロールが沈着して血行障害を起こし、脳梗塞
や心筋梗塞を起こしてしまう合併症である。
この中で網膜症、腎症、神経障害は細小血管が障害される糖尿病特有の合併症だが、動脈
硬化は大血管が障害されたものである。
糖尿病は、小さな細小血管と大きな大血管の両方に障害を起こしてしまう特徴がある。
しかし、動脈硬化は糖尿病でなくても起きている。
最近の調査によると、大血管障害は糖尿病による合併症が多い事が分かってきている。
特に心筋梗塞や狭心症、そして脳梗塞は二倍から三倍も高くなっている。
糖尿病の合併症を防ぐためには、適切な糖尿病の治療を受ける事であり、血糖値を改善する
ことが先ず第一となる。
空腹時血糖値を130mg/dl未満に押さえ、ヘモグロビンA1cの検査値を6.5パーセント未満にす
る事が糖尿病の合併症予防として重要になっている。
ヘモグロビンA1cとは赤血球に含まれているヘモグロビンというタンパクとブドウ糖が結合した
割合を示している検査値で、過去1ヶ月から2ヶ月間の血糖値を計るものである。
また、反対に空腹時血糖が160mg/dl以上やヘモグロビンA1cの検査値が8%以上になると糖
尿病の合併症にかかりやすくなってくる。
つまり、検査のときには数字をキチンとチェックする事が必要である。
糖尿病のほかに高血圧症、高脂血症、肥満の方は、血糖値の改善とともに他の生活習慣病
の治療が重要である。
高血圧症や高脂血症、肥満症を治療すると糖尿病の合併症も防止する事になる。
最近、食べすぎや運動不足といった生活習慣が問題になってきているが、これらを改善する事
は糖尿病の治療にも良く高血圧症や高脂血症、肥満の改善にもなる。
また、糖尿病や高血圧症などには、タバコが加わると更に合併症が進行してしまうので禁煙も
大切なことである。
9.糖尿病:そのC高血圧症
厚生労働省が平成10年に行った調査によると、糖尿病が740万人、糖尿病予備軍が880万人
で合わせると1620万人となり、増加してきているのが現状である。
糖尿病には遺伝要因もあるが、主に生活習慣の要因が関係している。
増加の原因としては、日本人の生活環境の変化が指摘されている。
それは食生活の変化と運動不足という二つが挙げられる。
食生活の変化としては、脂肪分の摂りすぎである。
もともと日本人が食べていた和食は脂肪分が少ないが、最近ではカロリーの高い脂肪分の多
い食事が増えてきている。
しかも日本人の中にはフライ、揚げ物、炒め物、肉など脂分を好む人が多くなってきている。
運動不足についてはデスクワークの仕事が増え、車や電車の利用で歩く機会が少なくなったた
め運動量が減ってきている。
食生活が変わって運動不足では肥満が増える一方である。
平成14年の厚生労働省の統計によると、男性では30〜60歳代の幅広い年齢層で肥満症が3
割とのことである。
この様に日本では肥満が増えている事もあり、それにともない糖尿病も増加してきている。
高血圧症にも糖尿病合併症の予防と同じように生活習慣の改善が必要で、そのポイントとして
5つあげられる。
第1のポイント
食事は品数を多くして、片寄ったものは量を多く摂らないほうが良い。
種類が多いことは栄養豊富でもあり、カロリー押さえにもなる。
米・パンなどの炭水化物ばかりではなく海草・野菜・豆類・魚など色々摂るほうが良い。
第2のポイントとして
脂肪分だけではなく、糖分の多い飲み物やお菓子、そしてアルコールは摂りすぎないこと。
スナック菓子や清涼飲料水の摂りすぎも注意が必要である。
3番目のポイントとしては
野菜、海草、キノコといった食物繊維を含む食品は十分摂ることが望ましい。
食物繊維は脂肪の吸収を押さえ、食後の血糖値を和らげ糖尿病の防止にもなる。
キノコも繊維質が多く、カロリーも殆んど無いので非常に有効である。
また野菜そのものは、生でも煮ても構わない。
4番目のポイントとしては
ウオーキングなどの軽い運動を行うこと。
勝手に無理な運動をしないで辛くない程度の運動量が大切であり、主治医の先生とよく相談を
すること。
5番目には
禁煙は大変重要であり、喫煙による動脈硬化の進行防止にもつながる。
喫煙は血管を収縮し傷めてしまうので動脈硬化を起こす原因になっている。
10.糖尿病:そのD高脂血症
糖尿病は目や腎臓の細小血管障害や、心臓・脳の大血管障害での動脈硬化を促進するので
心筋梗塞や脳卒中などの引き金にもなっている。
糖尿病患者の心筋梗塞や脳卒中を予防するためには、血糖値の改善だけでは不十分であ
る。
糖尿病の多くは高血圧症や高脂血症・肥満などを合併しているので、血糖値の他に血圧や血
液中の脂質・肥満の検査が大切で、これらは動脈硬化の防止にも役立っている。
つまり糖尿病に高血圧症、高脂血症、肥満が重なると動脈硬化を更に悪化させている。
したがって、この様な状態での治癒には目標も更に厳しく決められている。
特に高血圧症の治療は重視され、治療目標が以前よりも更に低い血圧値に指定された。
その結果、血圧は上(収縮期)が130未満、下(拡張期)は80未満である。
高血圧症の治療も生活習慣の改善が重要で塩分は食塩にして1日7グラム(小さじ1杯半)以
下とされている。
また、肥満の改善や適度な運動、そしてアルコールの減量は治療に有効である。
これでも不十分の時には血圧を下げる薬での対応となる。
高脂血症とは血液中の脂分(脂質)が多すぎる病気である。
脂(脂質)にはコレステロールと中性脂肪の2つがある。
コレステロールには動脈硬化を促進させる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と、動脈
硬化を防止する善玉コレステロール(HDLコレステロール)がある。
健康診断でコレステロール値が高く、悪玉コレステロール値が高いと注意が必要である。
糖尿病で高脂血症は、悪玉コレステロールの目標を120mg/dl未満と定めている。
また、狭心症などは更に低く102mg/dl未満としている。
悪玉コレステロールの治療には食事療法として3つ挙げられる。
一つは1日の食事にはコレステロールを0.3グラム以下に押さえる事が重要で、特に卵には
約0.2グラムが含まれているので、黄身の部分は半分にする心掛けが大切である。
2つ目は肉を少なくして魚を摂る事。
3つ目は食物繊維の多い野菜を摂ることである。
また、軽いウォーキング等は、善玉コレステロールを増やし中性脂肪も減らす効果がある。
これらの治療でもコレステロールの値が改善されない場合に薬が使われる。
動脈硬化は進行させないためにも、糖尿病・高血圧・高脂血症の治療を適切に行うこと事が大
切であるが、加えて禁煙も効果が大きい
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