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11.アンチエイジング @アンチエイジングとは
昔から不老長寿という言葉がある様に「人類が長生きをしたい」という事は考えられていた。
ところが最近になってエイジング(歳をとる)の仕組が分りはじめてきている。
それにともなって日本抗加齢医学会では真剣にエイジングに取り組もうとしている。
と云うのは、老化のメカニズムの糸口が少しずつ分かってきている。
例えば線虫という小さな虫がいて、この虫にはdaf-2という遺伝子がある。
遺伝子に傷が付くと普通は癌や糖尿病などの病気になったりするが、面白いことに、このdaf-
2の遺伝子に傷をつけると、線虫の寿命は2倍になってしまった。
寿命が2倍になる時に、つまらない人生を送るのではなく楽しく過ごす事が望まれる。
そして寿命は遺伝子にも影響があるのではないかという見方がでてきた。
このdaf-2という遺伝子は私たち霊長類にも近いものがあり、他の生命にも同じようなことが起
きているのだろうと考えられている。
これは、世界中で興奮しているところで、今までは歳をとるということは「天命」であって、物が
錆びたり壊れたりするように、誰もそれは止められないものだとの考えだった。
しかし、これが生物学的プロセスだということになれば病気と同じように扱う事ができる。
たとえばホルモンが足りないために背が伸びない病気があるが、これにはホルモンを与えるこ
とによって成長をさせて背を伸ばす事ができる。
それならば歳をとってホルモンが足りなくなったら、そのホルモンを与える事によって、なるべく
歳をとらないようにしょうという考え方である。
そして寿命は、すでにドンドン延びてきている。
例えば1900年のときの寿命は42〜3歳で、1950年では58歳となっている。
1950年というと漫画のサザエさんの出来た頃で主人公は24歳、お父さんの波平さんは54歳と
の設定になっている。
このように、私たちの寿命はすでに長くなってエイジングのイメージも変わってきている。
だから、これからも更に長くなっていくだろうと考えられる。
そうなると、その間は健康で暮らさなきゃならない。
アンチエイジングというのは、ベッドの中で長生きするというような事ではなくて、健康で若々しく
人生をエンジョイしながら長く生きていく事にある。
医学知識や医学情報が非常に豊かになってきているので「生きていく時間を充実させていく事
でアンチエイジング(老化予防)につながる」という事である。
健康は自分の力で守る事のできる時代になってきた。
例えばお金については銀行預金の考えがあるが、もう一歩前進して「自分で勉強して投資で利
益を上げよう」と。
これと同じように、健康についても「勉強をして自分にあった健康法を選択して、それによって
体に投資をしよう」というのがアンチエイジングの基本的な考え方である。
「将来は不老不死になる」とまではいかないが、遺伝子操作や再生医療で更に長寿命になる。
したがって、長生き残が多くあることで、人生の設計や目標が更に大きく期待される。
12.アンチエイジング A食事
私たちの日常生活では、アンチエイジングについて色々なことが出来る。
主に4つあり、食事、運動、心持ち、早く病気を見つけてそれに対処する事である。
その他に睡眠や呼吸などがあるが、とりあえずは食事、運動、心持ちが重要となる。
歳をとるメカニズムについては、一つの仮説にフリーラジカル・エイジング「活性酸素仮説」で
“細胞の酸化”がある。
例えばマヨネーズを常温の空気に触れさせると酸化して黄色っぽくなる。
これは酸化現象であり、私達の体もマヨネーズと同じようにタンパク質や脂で出来ている。
それが何故酸化しないかというと、体の中には酸化しないようなシステムがある。
しかし、それでも少しずつ酸化は進むので、そのことが歳をとるという事であった。
一番いいのは冷蔵庫の中に入っていれば良いのだが、それなら、つまんないし又寒い。
「長く楽しい人生を送るために、酸化しないようにしよう」という考え方が生まれてきた。
食べ物の中では酸化させないものとして野菜があり、それを多く摂る事が大切で、これは昔か
ら「野菜を食べると体に良い」との言い伝えもある。
野菜というものはトマトにもあるように、太陽の光と酸素にさらされて続けている。
しかし、野菜には抗酸化物質(酸化を防ぐ物質)が沢山入っている。
その野菜の摂取が食事には非常に有効とされている。
もちろん、野菜には他にも利点があるが、酸化を防ぐ効力がポイントである。
食事には自分の体の中をなるべく酸化させないようにするということが大切である。
理論的には色のついたカラフルな自然の野菜、それも旬なものをよく食べていくと良い。
その中には沢山のビタミンやポリフェノール、リコペンが入っている。
更に注目しているのがカロリー制限であり、これは世界中の科学者が認めている。
ネズミやハエ、線虫でも、食べ物を約65%の量で飼うと寿命が1.5〜2倍になっている。
不思議なことに、ご飯をキチンと食べるよりも栄養状態が悪い方が長生きをしている。
だからカロリーというものは、しっかりとコントロールすることが大切になってきた。
人ではまだ証明されていないが、最近ではモンキーのレベルにまでカロリー制限によって寿命
が長くなっていることが分かってきている。
人間も65%の量でと考えたいが、これでは骨皮人間になって面白くない。
ただ食べすぎは良くないので「腹八分は体に良い」と言われていることが本当であった。
カロリーを摂るという事は、血糖値が上ってしまうという事である。
なるべく血糖を上げない生活が大切で、これは糖尿病にとっては死活問題でもある。
普通の人でも過度の血糖を上げない生活が望ましい。
生命が誕生してからは38億年ぐらい、そして人類は100万年ぐらいの歴史がある。
その間一番困ったことは地球上に食べ物のない時代が氷河期などで3〜4回あった。
食べ物がない期間でも人類は生き延びてきている。
それは、食物がないと子孫を増やす余裕はなくなってしまうので自分自身が長生きすることに
よって次の世代への遺伝子を維持してきたようである。
と云うことは「これは大変ダ今飢餓時代だと、自分の体を何とか保持して次の世代まで自分を
生きながらえないと人類が滅びてしまう」との事らしい。
これは非常に面白い着目点です
そこで65%を考えると人生を楽しめないので、おいしいものを食べながら自分の体の中には
「そうではない」というウソのメッセージを伝えるという方法がある。
それは、同じものを食べたとしても血糖値をあげない食べ方である。
例としてフランス料理でのパンと野菜では、野菜を先に食べると血糖値が上がりにくい事が分
かってきている。
13.アンチエイジング B運動
食事の次は当然の事だが「動こう」の運動である。
動かない状態というのはエコノミー症候群が代表的なもので、これは飛行機の中で長時間座っ
ていると下肢に血栓(血の塊)が出来てしまって、空港に着いたときに突然血栓が脳や肺に到 達して起こる病気である。
動くと血流も良いので大丈夫だが、動かないとこのような事が起きてくる。
寝ているときでも寝返りを打ったりして体を動かしている。
階段でマンションの最上階まで上ったりして運動する方もいるが、これは大きな筋肉を使うこと
になるので成長ホルモンが出てくる。
成長ホルモンは子供には必要なのだが、大人でも体を維持するために大切なものである。
ある程度の成長ホルモンが若さの秘訣で、これは運動によって作り出す事ができる。
日常生活では小まめに体を動かして、階段があると「あつ!成長ホルモンだ。これを取りに行
こう」と言って、エレベーターなどは使わないようにするのは良い考えだ。
運動の基本は3つあり、一つは寝床でやるストレッチで、例えば体を伸ばすことである。
100歳まで生きている方は「センテナリアン(百歳長寿者)」という。
彼らの殆どが朝起きの時、急に起き上がらずにストレッチをするという習慣を持っている。
考えてみれば高齢になって骨折でもすると、寝たきりになってしまう方が多い。
骨折などケガのないようにする為にもストレッチで体をやわらかくしておく事が大切である。
あるセンテナリアンの方が運動を見せてあげるといってフラダンスをして、「私は90歳からフラ
ダンスを習って、12年続けています」との話もある。
しかし、座ってやっていたので訳を聞くと「転んだらおしまいよ」とのことであった。
転ぶことを防止するのが重要で、そのためにも運動は先ずストレッチである。
2番目にはエアロビックで有酸素運動である。
軽くジョギングをしたり、少し早めに歩いたりで、ちょっとハアハアという感じで良い。
肺と心臓に軽く負担を与える事で体内の血液循環が良くなり血糖も下がってくる。
更に体の中の老廃物を除去するので非常に効果的である。
3番目が筋肉トレーニングで、これは成長ホルモンが出てくるので大切である。
高齢になると散歩やゴルフは多いが、筋トレそのものをやっている人は少ない。
筋トレは自分の力の7〜8割位を8〜10秒間負荷をかけていけば良い。
100歳でも筋肉はついてくる事が分かってきている。
急に無理なことをせずに、年代に合っていなければならない。
したがってストレッチ・エアロビックス・筋トレの3つで無理をしないことにある。
体を動かして喉が渇いた時に水を飲む方が多いが、水は喉の渇きに関係なく摂るべきで1日2
リットルの目安で飲んでいくのが良い。
糖分のある水やアルコール、またコーヒーは水として好ましくない。
お茶は良いが、とにかく水は沢山飲むことが大切である。
14.アンチエイジング Cストレス
まず気持ちの持ち方としては、「長生きをしよう」「健康でいよう」が大切になる。
その気持ちが無かったら、アンチエイジングにはつながらない。
100歳代まで元気に動き、楽しく語る・・というイメージをもつようにするのが良い。
最近の研究では、ニコニコで楽しくが病気にもなりにくいということが分かってきている。
「病は気から」は精神免疫学の基本で、免疫機能は精神の状態でも変化している。
たとえば癌の治療で「落語療法」や「お笑い療法」があり、これは笑う事によって「インターロイ
キン」が出て体内の免疫細胞を元気にさせるので治癒力が上がってくる。
また、マウスによる実験では、楽しく仲間と一緒に遊ばせて飼うと、アルツファイマー病への進
行も半分以下になっている。
反面ストレスを抱えていると、細胞内の「テロメア」は短くなるという研究発表がある。
「テロメア」は細胞分裂でだんだんと短くなり、それによって老化が進むものである。
つまり、楽しく過ごしていると体内にも良いということが動物実験でも分かってきた。
「ご機嫌に生きなかったら、自分の人生じゃない」と考え、どんなことがあっても、ご機嫌の選択
を心掛けた方が良いことになる。
「お金を落とした」「仕事で失敗して上司に怒られた」時でも落ち込むより自分の置かれた状況
(環境)で「プラス思考」に切り替えて「ご機嫌」を見つける事が大切になる。
そのくらいの根性が必要で、これがアンチエイジングの精神でもある。
心(気持ち)には、体と同じように休めさせるために睡眠がある。
睡眠もライフスタイルにとって重要で、センテナリアンの方では7〜7.5時間はある。
充分な睡眠は体や脳にとって必要で、特に脳の記憶にとっても重要である。
歳をとると記憶が悪くなるというが、その記憶保持の為にも寝ることが大切になっている。
これが5時間くらいのライフスタイルなら改善すべきで、寝られない方は昼間の運動を増やした
り、心配事があれば取り除くように工夫することである。
心配事を取り除くために、また、ご機嫌を探すためにはイイ方法がある、
それは、とにかく感謝をしてしまう事である。
いやな奴がいても感謝で、子供の成績悪くて頭が痛いときでも「ありがとう、お前がいてくれて」
と考えると、成績なんてスグ吹っ飛んでしまうものである。
考えてみると私たちが、この世にいるというのは奇跡であり、素晴しいことである。
悪いと思う状況にも良い面はあるもので、それを見つけだして感謝することである。
そうすれば「テロメア」が長くなり、「インターロイキン」がたくさん出てくる。
アンチエイジングは「心の持ち方」を「ご機嫌」に持ってゆくだけでも可能である。
15.アンチエイジング D定期健診
私たちの体は60兆個もの細胞で出来ていて、これがバランスをとりながら生きている。
普段からアンチエイジング的な生活を心がけていると自然治癒力は高まり、病気や怪我によっ
て、この細胞が傷ついても自然治癒の力が働いて体を治してくれる。
だから、風邪にもなりにくいし、ガンにもなりにくい。
しかし、自然治癒力も万能ではなく、どうしても避けられない病気もある。
病気や怪我の初期の段階では適切な手当てをすべきで、それを怠ったために大きな病気にな
ってしまうことも多くある。
アンチエイジングでは定期健診を健康管理の面で重要視している。
これは、例えば緑内障の場合は早めの治療で治るが、遅れしまうと失明してしまう。
その意味で早期発見が大切で、そのためにも定期健診が必要であり、これは年に1〜2回の
全身チェックが極めて有効である。
これには胃や大腸のカメラ、血管等があるので、これを受けていると安心度が大きく違う。
「それをやっている」という安堵感が精神的にも肉体的にも非常に良い影響を与えている。
定期健診の結果で体全体を評価して、悪い部分(病気)の早期治療や弱い部分(衰えている器
官)への若返り化として生活環境の改善をしていく事にある。
健康年齢(または体年齢)として血管年齢や体力年齢・脳年齢などがあり、例えば「あなたの血
管は何歳相当ですヨ」ということが分かる。
そしてアンチエイジングでは「なるべく歳をとらせないようにする」との考えである。
テレビやパソコンでも、すべてが壊れて捨てるということはない。
どこか部品の一つが故障して機能をしていないのがほとんどである。
人間の体も同じように脳や心臓そして眼も全てダメになってということはない。
例えば心筋梗塞なら、心臓の中の冠動脈が詰まっただけで、脳が元気で肝臓もきれいで他の
器官は健康な状態のままでも死んでしまう。
考えてみると非常に勿体ないことである。
それなら、一番弱いところを見つけて、そこの部分に手当てをしておくことが大切になる。
血管年齢が高い人は心筋梗塞や脳血管障害が多いので、もし親に病歴があれば、それを参
考にして介入していくことがアンチエイジングの一つの考え方である。
例えば飛行機に乗ったときにレーダーで調べることも出来ないのに「これから乱気流が起きま
す」とか「あと3分後に・・がある」とのアナウスがあるが、結果はその通りになる。
これは、前に飛んでいる飛行機が教えてくれているのである。
親など自分の血のつながった人が周りを飛んでいるのと同じで、乱気流に突っ込む時の年齢
を考えながらお付き合いをしていくのが大切である。
また、眼というのは重要な感覚器官で、老眼、白内障、加齢黄斑変性、緑内障、ドライアイもエ
イジングに介入することによって、眼病の予防や治療として成果をあげている。
特に「眼を基点にして体全体を治す」ということは、眼から始まるアンチエイジングで「老眼や白
内障を遅くしよう」との考えで、これを体全身へと展開するものである。
16.尿の健康 @前立腺疾患
尿の出口は生殖器にあり男性では前立腺の事で、通常は栗の実くらいの大きさである。
そして膀胱の出口の尿道を取り囲むように存在しているもので、これが大きくなりすぎると排尿
に障害が出てくる。
前立腺そのものは、精液の一部である前立腺分泌液を産生するところになっている。
前立腺が大きくなる病気の代表的なものとして、前立腺肥大症と前立腺癌がある。
そのほかに、細菌感染によって起きる前立腺炎というものもある。
症状としては、排尿時に「出にくくなる、近くなる、夜間に回数が増える」などがある。
また、前立腺癌と前立腺肥大症の症状の違いは殆んどないために注意が必要である。
ただ癌の場合には、進行して骨に転移した場合、背中などが痛くなることがある。
検査は、先ず血液検査によって行われ、特異的な腫瘍マーカーPSA(前立腺特異抗原)にそ
って調べることになる。
その基準値は4で、4以上になると前立腺癌の疑いで再度精密検査をすることになる。
PSA検査は1週間以内で結果が分かり、精密検査は前立腺生検といって少し太目の針で前
立腺の細胞の一部を採って検査することになる。
これは外来もあれば、入院をさせる病院もある。
前立腺肥大症についての治療は薬物治療が主体となる。
前立腺が大きいから治療をするのではなく、排尿障害の症状によって治療法が決められる。
症状の判断基準は「国際前立腺症状スコア」で7項目をそれぞれ5点として合計35点満点に対
して、7点以下を軽症、8〜19点を中程度、それ以上を重症としている。
そして中程度以上の人を、治療の対象としている。
前立腺は「交感神経のアドレナリン作動性」といって交感神経に支配されるので、高血圧に使
われるα1ブロッカー(α1遮断薬)が交感神経の興奮を抑えるので効き目がある。
その薬の効果がなくなってきたときに、はじめて手術治療となるが、最近では殆んどがカメラを
使った内視鏡手術になっている。
内視鏡手術もいろいろあり、以前は電気メスで尿道を広げたりしたが、今ではレーザーや高温
度治療(TUMT)などがある。
前立腺癌の治療は、癌の進行や細胞の悪性度によって違ってくる。
癌が前立腺にとどまっている場合は手術治療も良いが、そのほかに、放射線治療があり、こ
れは外からかける外照射と、照射制限を考えて中から放射線をかけるという方法もある。
更に悪性になると、今度は治すというよりも癌と共存するという方向になる。
それが薬物治療で、残念ながら前立腺癌に対しては、これといった抗がん剤はない。
前立腺癌の特徴は、男性ホルモンで活発になるので、今の薬では男性ホルモンの産生を押さ
えたり、効かなくしたりしている。
特に前立腺癌の場合は、早期発見によって完治する事ができるので、そのためにはPSAの
検査が必要で、特に50歳以上の方は年に一度の血液検査を受けられることが望ましい。
17.尿の健康 A尿路感染症
尿は腎臓で作り出され尿管という管を通って膀胱に溜められる。
尿路とは尿の通り路で 腎臓−尿管−膀胱−尿道 をいう。
尿路感染症は、この腎臓・尿管・膀胱・尿道のどれかに細菌が増殖して、それによって症状が
引き起こされている。
そして一番多いのが膀胱に感染する膀胱炎である。
尿道炎は男性の病気で、これは性行為感染症との関係があるので違った見方も行われる。
尿路感染症の病原菌は殆んど大腸菌で、「腎盂腎炎」または「膀胱炎」の病名となっている。
原因としては、おしっこのガマンや便秘があげられる。
膀胱炎の症状としては、頻尿・排尿時痛・残尿感がある。
また症状がひどくなると「血尿」も出るが、これはあまり驚く事ではない。
膀胱炎と腎盂腎炎の症状はほとんど同じなので熱があるかないかで区別されていて、熱があ
ると腎盂腎炎と診断される。
腎盂腎炎は、膀胱炎を起こした細菌が腎臓にまで感染したときになる。
膀胱炎には排尿をガマンしない事が大切で、こまめにトイレにいく心掛けが必要である。
また、便秘も関係してきているので食生活を見直すのも効果的である。
残尿の正常値は10CC以下とされているので、それを超えると異常と考えられる。
また、残尿感疾患としては前立腺の病気ということもある。
そのほかに膀胱の中に石をつくるとか、糖尿病での神経障害による残尿感もある。
残尿が多いと膀胱炎を繰り返してしまうので、原因を調べた方が良い。
検査によって膀胱ガンも見つかるとこともあるので、専門医への相談が大切になってくる。
膀胱炎は一般的な風邪と同じようなもので、くり返しても普通の治療で治っている
抗生物質の服用で膀胱炎は治るが、腎盂腎炎になると治療期間が長くなり場合によっては入
院が必要となることもある。
腎盂腎炎は大人でも発症することが多いが、子供では膀胱尿管逆流(膀胱のオシッコが尿管
に戻る)で腎盂腎炎を起こしていることがある。
子供で腎盂腎炎のくり返しが多いときは、小児の泌尿器科で相談をしてみるべきである。
放置しておくと腎臓の機能が弱くなり腎不全になることもあるので注意が必要である。
18.尿の健康 B失禁
尿失禁とは、簡単にいうと尿が意識しないうちにもれてしまうことを云う。
これは膀胱と尿道の機能連携が損なわれているからである。
排尿というのは「膀胱が縮んで尿道が広がる」という協調運動である。
しかし尿失禁は、尿道が閉まっていても膀胱が縮んだり、膀胱が尿を溜めるように伸びていて
も尿道の括約筋が緩んでしまうことが要因となっている。
尿失禁で一番多いのは中高年の女性で、腹圧性尿失禁と云ってクシャミや咳、笑ったり走った
りして、お腹に圧がかかってときにチョロと洩れてしまう。
他には「逸流性失禁」と云って前立腺の病気で、オシッコがあまりにも多く溜まりすぎて、あふ
れるように出てしまう尿失禁もある。
尿失禁は年齢と共に増え特に腹圧性の尿失禁は女性に多く、骨盤を支えている筋肉が弱くな
って尿道括約筋がゆるんで漏れてしまっている。
自覚症状としてはチョロトもれて下着がぬれるという現象である。
検査ではパッドテストがあり、これは水を飲んで走ったり、横になったりして尿の漏れた量を調
べるもので、量が多ければ治療の対象になる。
大体どのくらい漏れているかを知るための簡単な方法で、中にはナプキンを1日何枚も取り替
えるということで、医師療機関を訪れる方がいる。
尿の病気の場合、女性では「恥ずかしい気持ち」をもち、行かなかったりするが、最近の泌尿
器科は女性の医師も増えてきて外来の患者も多くなっている。
薬物療法としては、なるべく膀胱に尿を保持するための薬が出されている。
運動療法としては、骨盤を支持している筋肉を鍛える「骨盤底筋体操」があるが、これは大変
なので続かない人が多い。
簡単な方法としては、肛門をキュッキュッと閉める体操で、朝昼夜3分でも5分でも行い、これ
を1〜2ヶ月続けると効果がでてきている。
薬物療法や運動療法で効果が無い場合には、手術療法となる。
これは尿道括約筋(尿の蛇口)を強化するという手術療法になる。
最近では「尿道スリングテープ手術」で、尿道抵抗を高めている。
又は尿道と膀胱の角度を少し変える事によって蛇口が閉まるようにしている。
予防法としては骨盤底を鍛える運動が効果的である。
方法としては、ちょっと浅く腰掛け、肛門を閉めるというのが有効である。
普段から良く動いていることが健康に良く、ひいては尿失禁の予防にも良い。
ほかに気をつけなければならない事として、腹圧が弱い尿失禁の場合は、骨盤を支える筋肉
が弱いので子宮や膀胱も一緒に下がってしまうことがよくある。
それは子宮脱、膀胱脱といって、これを治療すると尿失禁も治ることがある。
これについては、婦人科か泌尿器科に行って相談されると大体診断がつくので、もし下腹部が
出っ張っているということがあれば相談したほうが良い。
19.尿の健康 C血尿
血尿とは尿の中に赤血球が混じる状態をいい、通常は赤血球が混じる事はほとんどない。
検査には試験紙で調べる尿潜血というものがあり、これは化学反応によって診るもの。
また尿を遠心分離器にかけて、赤血球を顕微鏡で見る尿沈査(にょうちんさ)というものがある。
この方法は赤血球そのものを見ているから、赤血球の増加量が良く分かる。
試験紙を使う尿潜血の場合は、ビタミンCを摂っていると反応することがある。
反応があった場合、患っているかどうかを調べるために尿沈査検査を受ける必要がある。
血尿には程度があり、最もひどいのが目で見て分かる肉眼的血尿である。
しかし、黄疸がひどくなってきたときにも、尿の中にビリルビンというものが出て赤いレンガ色み
たいになり間違いやすい。
肉眼的血尿の場合は、にごった赤さなので区別はむずかしく医師に任せたほうが良い。
血尿にはいろいろなパターンがあり、「最初から最後まで赤い」「出始めに赤い」「排尿の終わり
かけで赤い」など尿の出方でおおむね患部の判断ができる。
血尿自体は問題ではないが、それを引き起こす基礎疾患が問題となってくる。
泌尿器系統のどこかにガンがないかを調べる必要がある。
顕微鏡的血尿では1〜数%、肉眼的血尿では10〜20%のぐらいの割合で腎臓や尿管、膀胱に
ガンが見つかっている。
血尿の3分の2は腎結石や尿管結石などの結石が原因といわれるが、残りは腎臓に異常があ
ると考えられる。
大切なことは血尿があったときに、悪性腫瘍の見落としをしないことである。
詳しく調べるために超音波の検査や、尿の中の細胞を調べる「尿の細胞診」というものも行っ
ている。
尿の中には、いろいろな細胞成分が含まれている。
たとえば膀胱ガンのときには、そのガン細胞が尿の中に落ちてくる。
それを染色液で染めて調べるのが尿の細胞診である。
尿の細胞診で陽性であれば、もっと進んだ検査を進めていくことになる。
血尿の症状をひきおこしている基礎疾患をしっかりと治療しなければならない。
特に悪性腫瘍の場合は、それがどこからのものなのかを調べて、それに応じた治療(ほとんど
が手術治療になる)を、考えないといけない。
たとえば、腎臓や膀胱に何かデキモノができているならば、それをよく調べた上で、どうするか
ということを考えなくてはいけない。
20.尿の健康 D尿路結石
尿路結石とは「腎結石」「尿管結石」「膀胱結石」のことを云い、尿路にできる結石である。
症状として一番多いのは「痛み」で、突然七転八倒するような激しい痛みが腹部の局所に起こ
り救急外来で5本の指に入るのがこの病気である。
この痛みは仙痛発作(センツウホッサ)とよばれ、背中や横腹など「石」のあるところが痛む。
この痛みとともに血尿が出る場合もある。
一般的に腎臓の石というのは、それほど痛むことはないが、その石が尿管に落ちてきたときに
痛みの発作が起きている。
この痛みは、石が尿管のところにはまり込み、尿が流れにくくなり腎臓が腫れてしまう。
腎臓が腫れると、腎臓を包んでいる膜が伸ばされて、それが痛みの発作になっている。
石が出来る原因として考えられることは欧米化した食事があげられている。
動物性たんぱく質や脂肪分が多く、それが結石を作る原因ではないかと考えられている。
また、夏になると汗が多く尿も少なくなり、濃い尿になると石も作られやすくなる。
地域としても、ヨーロッパのアルプス周辺では硬水の関係で石が作られることが多い。
上部尿路結石(腎結石・尿管結石)での石の成分は、リン酸カルシウムやシユウ酸カルシウム
で、その内の8割がシュウ酸カルシウムである。
シュウ酸カルシウムというと「ほうれん草」が多く含む、しかし普通に食べていると問題はない。
「リン酸カルシウム」や「シユウ酸カルシウム」を接着する「たんぱく質」が「石」を大きくする。
尿路結石は胆石とはまったく別な病気である、しかし両者とも食生活の部門で生活習慣病と関
係しているので、どうしても欧米化した食事は考えていかなければならない事になる。
肉などはなるべく少なくして、量も腹8分目にすることが大変望ましい。
水分をたくさん摂るのが良いということで「ビール」はどうかと云われるが、実は中身のホップが
尿酸を高めて痛風や結石を作りやすくする原因になってしまっている。
したがって、ビール類はなるべく避けたほうが良く、尿路結石のガイドラインでも、これは推奨さ
れていない。
水分は水やお茶でとどめておいたほうが良いといわれている。
結石の石の大きさは、通常8ミリ以下で自然に排石されている。
それ以上になると自然に消える可能性が低くなるので何らかの治療が必要になってくる。
残念ながら石を溶かす薬がないので、10〜20ミリなった石は物理的な方法で取り除いている。
最近では体外衝撃波といって、外から強い力をかけて石を砕いて8ミリ以下の石にして自然に
流し落とすという方法で治療されている。
石を砕くぐらいの力なので、皮膚を通るときに多少の痛みはあるが、これには座薬の痛み止め
を使うことで対応できるので通院での治療が可能である。
以前の結石治療は手術であったが、現在では手術をしなくても良い体外衝撃波の方法であ
る、しかし、この方法は実は再発率を高めており、半数が再発をしているのが現状である。
再発防止のために現在できることは、やはり、食生活の改善や水分を多く摂ることが必要とさ
れ、生活習慣と食習慣の見直しが大切となっている。
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