21〜30

21.脳の健康 @ボケ
以前は、歳をとると脳細胞が少しずつ死んで減っていき、小さくなっていくと考えられていた。
だが研究精度が上がってきている今、100歳を超えても健康人の脳細胞は減っていない。
それではナゼ我々は歳をとると運動能力や計算能力などが落ちてくるのか・・と誰もが考える。
脳には沢山のアンテナのような突起(神経)があり、そこから膨大な情報を得るようになっている。
突起の数は加齢になっても減らないが、突起間のツナガリが以前ほど良くなっていない。
つまり、神経の伝達がうまくいかなくなることで「老化現象」が現れてきている。

脳の内部には記憶の入口と云われる「海馬」があり、これはストレスにはとても弱い。
そこで最近では、「“海馬”を大切にしよう」と云われてきている。
「記憶する」という行為を繰り返すと、海馬の顆粒細胞と呼ばれる神経細胞の数が増加する。
その細胞は80歳になっても90歳になっても増えるということが分かってきている。
この細胞と同時に他の神経のツナガリを良くする事が脳の老化である「ボケ」を防ぐ事になる。

一つは、体を動かすことが良く、特に指を動かすのが非常に効果的である。
二つとして、引き篭もったりすると、刺激がなくなったりするのでボケやすくなる。
女性と違って男性は、定年になると外に出たがらず、引きこもりがちになるので要注意である。
三つとして、当然のことながら楽しく頭を使うことである。
囲碁・将棋・マージャン・トランプなど何人かでやることは非常に楽しくて脳に効果的である。
四つ目になるが、「脳というものは、非常に傷つきやすく、クヨクヨ考えたりショックを受けたりす
ると折角維持しようとした脳細胞が死滅しやすい」という事が分かってきている。

これは、心を傷つけたりすると脳の中に老人班が作られてしまうからなので、この状態の時は
早く脱する事が重要である。
アルツハイマー病そのものは遺伝要因が3パーセントぐらいしかないが、これになってしまうと
残念ながら治るということはほとんどない。

この病気は「ボケになるきっかけを防ぐ事」が予防になるので、そのためには「体を動かす」
「付き合いを楽しく頭を使う」「クヨクヨしない」…という“活動的生活習慣”を旨くやる事である。
ボケは、かんたんに云うと“自分の人生をどう生きるか”という心がけ一つである。
したがって、日頃の考え方や生き方など生活態度が大きく影響するので、常にそれに気をつけ
た行動をとることが安心した気持ちにもなり、その安心感も非常にプラスになってきている。


22.脳の健康 A脳の機能
脳の表面には約6ミリ厚の大脳皮質があり、その中に150億位の「神経細胞」が入っている。
「神経細胞」は長い「突起」で体のあらゆる所に情報を送っていて、“見る・聞く”の役割りの他
に“書く”など、手足の先にも行きわったっている。
「突起」はシナプスと云って神経の繋がりの役目をするもので内部が白く、「白質(ハクシツ)」と
呼んでいる。
昔は人間の脳というのは3歳くらいで完成するので、それまでの躾が大切だと云われていた。
しかし最近になって「白質」は3歳くらいでは完成されず“運動・判断・思考”の能力は身体の成
長とともに出来上がっていくと云う事が分かってきた。

1993年にミズーリ州で17歳の高校生が、女性をレイプした後川に投げ込み死亡させた事件
があった。
この高校生は事件後、この事を友人達に「人を殺した」と自慢をしていた。
事件の背景として本人は小さい頃、親からの虐待を受けていた事実があり、検察側は「罪を認
める代わりに死刑を求刑しない」という司法取引を持ちかけた。
しかし、それに応じず「裁判にしてくれ」と言ったので陪審員も死刑の判決を下した。
そして、州の最高裁でも同じく死刑となり、最終決定として連邦の最高裁に送られた。

ちょうどその頃、医学会では脳神経について「人間の脳は17歳では半分位の完成で、25歳
前後まではかかってしまう」と云う事が分かってきていた。
そこで弁護団が勢いづいて、「17歳というのは脳が未成熟で子供なのだ」と最高裁に脳神経
の専門家からの意見書を添付して論争したが、裁判というものは科学じゃないのだ、と云う事
で認められなかった。
その後、アメリカの憲法は改正され「残忍な死刑執行をしてはいけない」という条項が入った。

ここで分かってきたのは脳というものは出来あがって行くのが非常に遅いということである。
反面、神経の繋がり(いわゆる白質)は衰えて行くのもゆっくりになっている。
25歳までにゆっくりと出来上がって、50歳くらいからゆっくりと落ちてくる。
神経細胞の突起そのものは無くならないけれど、突起と突起の繋がりが遅くなってきている。
これは“赤信号でのブレーキ・100メートル競走”など瞬発的な動作や“頭の回転”にも影響し
ている。
しかし“まとめる・統合する・説得する”などは、経験豊富な50代が最盛期である。

一般的に我々は「迅速さ」で人を評価することが多い。
だが現社会では計算や反応よりも、物事をキチンとまとめたり、全体を適確に見通す能力が
大切になっている。
その能力は歳をとっていてもシッカリしていて、あまり衰えることはない。
アメリカ社会では自分にかかる費用は、自分でお金がとれれば何歳でも良いとの考えである。
定年制もないので、社会的能力を発揮する高齢者が沢山いる。

高齢者が若者と競争の分野で頑張れば、挫折感を味わうだけで返って衰えてしまう。
だが、歳とともに積み上げられた能力は社会的貢献を大いに期待できる。
記憶や反応が衰えると「あれボケちゃって」と思うかもしれないが、それは100メートル競走で
衰えてきたのと同じである。
80歳くらいまでは白質の働きである「繋がり」は低下するので、そのためには自分の能力につ
いて得意なものを知っておく事が大切である。

歳とともに衰えた能力を取り戻そうとする事は無理で、能力は上手に使うことによって、80歳
を超えても現役で活躍している方が多くみられる。
その事を信じて生きるか、それとも「脳はドンドン衰えていくのだ」で生きるかは大違いである。
結論として「人の脳は完成にも衰えにも時間がかかる」という事を理解する事で、脳を元気にす
る生き方につながってくる。


23.脳の健康 B脳を傷つけない
本来なら脳細胞はかんたんに死ぬことはない、しかし、ある条件が加わると死ぬ場合がある。
それは強いショックを受けたり、心配事でクヨクヨ悩んだりすると、脳細胞に影響をあたえる。
「うつ病」がその代表例で、日本では3万人以上いるといわれ、これは色々の事でストレスを感
じ、その度に副腎皮質からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されている状態にある。

本来コルチゾールはストレスに対して分泌されるもので、例えば身に危険を感じる状態の時
は、筋肉に栄養を送って「逃げる・戦う」の能力を高めさせる物質である。
この反応は我々を生き延びさせるためのもので、ストレス(厭な事や怖い事など)が終わると元
に戻ってホルモンが出なくなる。

しかし、常に「将来どうなるのか」とか「いやな奴が意地悪する」とかの思いを繰り返していると、
その分ホルモンが出るようになってしまう。
また、コルチゾールは脳にも反応するので、頻繁に分泌されると脳細胞を傷つけて働きを抑え
てしまう。
例えば、厭なことがあると集中力や記憶力が衰えたりしている。

こんなことで脳細胞が死ぬことは無いが、ストレスが続いてしまうことが問題であり、これによっ
てアポトーシスといって脳細胞を自然に死へと導いていくことが分かってきた。
つまり脳を傷つけるということは脳細胞が死ぬということにつながってくる。
当然、脳細胞が死んで少なくなるのでアルツファイマー病になりやすい。
数多くの研究結果として「うつ病は長く続くと脳が萎縮してアルツファイマー病になりやすい、し
かも率が5〜6倍」という結論が出ている。

うつ病の治療としては脳内のセロトニンを増やす薬が処方されるが、治らない人も多くいる。
そこで、これは「うつ病」というよりも「ものの考え方の病」ではないのかという考えが出てきた。
治療法として「認知療法」がペンシルヴェニア大学のアーロン・ベック教授によって提唱され、こ
の療法は「ラスカー賞」を受賞している。
「ラスカー賞」を受賞した人の多くは「ノーベル賞」も受賞している。

彼の主たる理論は「感情というものは出来事から生まれるのではなく、その出来事をどう判断
するかで生まれてくる」である。
例として、巨人阪神戦で、巨人が勝つと巨人ファンはうれしいが、阪神ファンは面白くない。
逆に負ければ巨人ファンは厭なのだけれども、野球を知らない人は何とも思わない。
株でも、株を持っている人は株が下がると面白くないが、持っていない人には何も感じない。

つまり、それでなきゃダメだという考えが感情を作ってしまい、苦しい気持ちにさせたりする。
また「一流大学に入らなければ人生は終わりだ」という考えで大学に落ちると強いストレスがか
かる。
大学に入れなかった事実は変わらないのだから、そこに入らなくても生きていく道はいくらでも
あるということに本人が気付かないと「うつ病」は治らない。

考え方を変えるのは難しいと云われるが「こう考えるとアルツファイマーになりませんよ」と言わ
れると変えてくれる人の可能性が出てくる。
昔から「窮すれば変ずる」との言葉がある。
つまり困ったことがあれば考えを変える事で通じる道が出てくる。

脳を元気にする方法は、アルツファイマー病の予防にもなるので、心を痛めて脳を傷つけない
ように「気持ちの切り替え」が大切である。


24.脳の健康 C言葉は心を変える
言葉は言霊(コトダマ)と云われるように、人間の心(脳)に大きな影響を与える。
影響を与えるのは、脳内にあるミラー細胞に対してである。
この細胞は、他人のやっていることを忠実に感じ取るようになっている。
例えばテレビで人を殴るシーンを見て自分もこぶしを握りしめる行動や、茶碗を洗っている音
を聞いただけで、その仕草が浮かび上がってくる。

これは脳内のミラー細胞の働きで「見た、聞いた」と同じ運動細胞を活動させた結果である。
真似をする細胞なので、これがあるから言葉が話せるようになったという学説もある。
「言葉を聞く事によって真似をする」ので、目で見た口の形ではなく話す内容の真似をするミラ
ー細胞なので、会話が成りたっている。
我々は音や言葉を聞いたとき、脳には「本質を感じ、意味を刺激される」という仕組みがある。
だからこそ言葉の理解が出来ている。

外国語などで意味が分からなければ音としてしか聞こえてこない。
しかし、学習して言葉を覚えてくると、意味やイメージが理解できるようになる。
人を動かすのも一言、人を傷つけるのも一言である。
人に元気なことを言われたり、ほめられたりすると元気になる。
しかし怒られたり、「お前はダメだ」と言われるとガッカリしたり具合が悪くなったりする。
これがミラー細胞の特徴である。
出来るだけ、自分の心を励ますような言葉を聞き、また、そのような言葉を見つけることが大
切である。

「積極思想」で“良い事を思えば良い事が起こる、悪い事を思えば悪い事が起こる”がある。
この言葉は「良い事を思うようにしよう」という“プラス思考”の気持ちにさせてくれる。
指導者の「教育」や親が子供に対する「しつけ」効果は、ミラー細胞の働きの結果である。
したがって親や指導者は、子供などに対して、より良い言葉を選んで伝えることが非常に大切
なことである。


25.脳の健康 D良い言葉で脳を元気に   
良い言葉(または格言)で心を刺激すると脳は元気になり、体にも良い影響を与えることが分かってきた。
参考例として、次に紹介します。
@苦しいことは早く飛び込めば早く抜けられる。(どうせやらなきゃならない事は早くやれば楽になる) 
            =先送りせず“苦”に積極的に取り組めば“楽”になる=
例えば、座禅で足を組むと最初は痛く感じるが、慣れてくると痛くなくなる。
痛みは「いやだ」「つらい」「やめたい」という気持ちがあるからで、我慢を続けると痛みは感じな
くなっていく。
誰でもいやな事は後回しにしたくなるが、そのときには、この言葉で自分を励ますと効果的。
A思うて栓(セン)なきことは思わず。(結論が出ないことは議論をしない)
      =“この先どうなる”と思って議論をしてもどうしようもない事は、議論をしない=
一般的には、本当にどうなるか分からない時に「ああでもないこうでもない」と考え込んでしまう
事が多い。
「自分の子供が大学に入れなかったらどうしたら良いだろう」とか「滑り止めも落ちたらどうしよ
う」と議論をしても最初から「仮定の話」では、結局もとに戻ってしまって結論が出てこない。
そうすると夫婦で話をしても疲れるだけなので、そのときは、さっさとやめてしまう事が大切。
Bもの思わざるは仏のけいこなり。(何も考えないのが仏になる修行)
    =瞬間的にフツと思い浮かんだ気持ちが仏の心になっているので、そのままやれば良い=   
「人間は考える葦という」というが、「思考の型(考えすぎ)に耐えられない弱い葦」でもある。
折角、親切にしようと思ったときに「この間、嫌味を言われた」とか、余計なことを思い出すのが
良くない。
何でもかんでも思い出さないのではなく、そういう嫌なことだけを思い出さないようにすること。
C千金の子は市に死せず。(昔の中国では市場で死刑が行われていたが、金持ちの子は金の力で免れる)
  =親の七光りや、生まれつき才能や美貌を持った人に対して、自分を卑下してダメだと思わない事=
上司の推薦で後輩が出世すると「あの人が選んだのだから、俺なんかダメだ」と、思うかもしれ
ない。
羨むことは良いが、そのことで自分は「ダメ」「未来がない」「みんなに嫌われている」と思うこと
は非常によくない。
世の中というものは不公平なものなので、その時に自分はダメだとレッテルをつけないこと。
D人は長ずるところで失ず。(人は長ずるところで支出が多い)
               =人は得意なところで失敗する=
「5本のキリがあったとして、1番先に切れなくなるのは1番切れるキリである」ということで、小
さいころトップにいた人がいつまでも1番でいることはない。
自分も努力していれば必ず報われるときが来るので決してあきらめないことである。

脳を元気にするとアルツファイマを防ぐことになるので、自分自身で言葉を見つけることが大切である。
これだと思ったら、その言葉を大事にして自分に言い聞かせると、脳が元気になり体も元気になる。
良い「言葉」とは、良い「健康」と「人生」をおくる、秘訣にもなっている。


26、呼吸器の病 @睡眠時無呼吸症候群(T)
睡眠時無呼吸症候群というのは、最近になって聞かれるようになった病名である。
日本では、平成15年3月に新幹線の運転士が、この病気であることが報道され、それから良
く知られるようになった。
欧米では1976年頃に重要な病気であると認識されていた。
痛みを伴わないので病院で診察を受ける人が少ないが、日本では200万人いると推測される。
比率は全人口の2%で、男性が3.28%女性は0.5%と男性が多い。
症状としては、睡眠中に呼吸が止まってしまうパターンがあり、10秒以上の呼吸停止が1時間
で5回以上、一晩7時間では30回以上あると「睡眠時無呼吸症候群」と診断される。

型としては、閉塞型と中枢型の二つがある。
閉塞型は、口の中から上気道にかけての閉塞が原因で起きるものである。
原因としては“肥満・扁桃腺肥大症・舌が大きい(巨大舌)・小顎”それに“高齢”がある。
中枢型は、呼吸のリズムそのものが障害されてしまうというタイプ。
これは“脳血管障害(脳梗塞)・脳腫瘍・心不全”の場合に多い。
全般的にいうと、もっとも多いのが肥満に伴う閉塞型である。
一般的には、睡眠中に上気道の閉塞によって、イビキが大きくて不規則である。
呼吸が止まったり、のどが詰まるのを排除しようとして寝返りで体を動かすことが多い。
また、実際に何回も目が覚めてしまうので、その都度トイレに起き上がってしまう。
起きたときには、イビキの原因で口の中が乾いたり、頭痛を起こす人も多くみられる。
起きた後、睡眠時間としては充分に取っているにもかかわらず熟睡感がなく寝足りない。
また、日中も非常に眠いので、マンツーマンで人と話をしても、そのまま眠ってしまう。
その結果、記憶力の低下や集中力の欠如、また、短気になる性格変化もみられる。

このように無呼吸症候群は睡眠中に無呼吸があるため、日中には眠気を引き起こしてしまう。
したがって、交通事故の原因や仕事の能率にまで影響してしまうので非常に危険である。
他に、この病気があると脳溢血などの血管障害や心疾患、高血圧の危険性も生じてくる。
「大きくて不規則なイビキ」「睡眠中の無呼吸」「昼間の眠気」の3つがあれば睡眠時無呼吸症
候群かもしれないので、必ず「呼吸器科」を受診して適切な治療を受けることが大切である。


27、呼吸器の病 A睡眠時無呼吸症候群(U)  
睡眠時無呼吸症候群となった場合は、自宅での検査と病院での検査の2つがある。
自宅で出来る検査は簡易型のスクリーニング検査といって、病院から器具を貸し出して貰い、
それを鼻につけて空気の流れや呼吸が止まっている状態を調べる検査である。
また実際に体の中の酸素量(呼吸が止まれば酸素が低くなる)を診るために、指先につける器具もあ
り、いずれも就寝前に取り付けることになる。
翌日、病院でこの器具からデータを調べ、睡眠時無呼吸症候群の有無や、症状の程度が確
認される。
この後、必要があれば詳細を調べるために睡眠ポリグラフ(PGS)という精密検査を行う。
これは1泊以上の入院で、体内の酸素量や空気の流れ、更に脳波(睡眠時の脳の活動を調べる)
筋電図(目や顎の動きを調べる)で、眠りの深さや質を調べることになる。

(注)レム睡眠(夢を見る)は、筋肉の動きがなくなるので筋電図がほぼ平らな状態である。
ノンレム睡眠は「徐波睡眠(ジョハスイミン)」といって、こちらは夢を見ていないので脳の活動は休んでいるが、筋電図の
方は逆に活動をし始めている。
その意味で、今どのくらい深く眠っているのかという事が分かってくる。

治療法としては
@生活習慣の改善
まず睡眠時無呼吸症候群の方は眠れないと訴える方が多いので、逆に寝酒などの習慣や睡
眠薬を使うのが多いが、これは、かえって症状を悪化させてしまう。
仰向けに寝ている場合、どうしても舌が喉の奥の方に垂れ込んで閉塞してしまうので、横向き
の姿勢で寝ると効果的である。
もちろん肥満の方は閉塞型の睡眠時無呼吸症候群の原因にもなるのでダイエットの努力が必
要である。
A口腔外科的治療
歯医者や口腔外科で歯科矯正器具(マウスピース)を作り、寝るときにこのマウスピースをとり
付ける。
これは下顎を前の方に突き出すような形にさせることで、喉の奥の気道を広げる効果がある。
比較的軽症な場合の睡眠時無呼吸症候群の治療である。
B耳鼻科的治療
扁桃腺を切り空気の通り道を広げる方法である。
ただし、手術は口の中なので喉から下のところは開くことはないので限界がある。
C現在主流の治療として
鼻にチューブのついた治療用マスクをつけて、そこから空気を送り込んで気道を中から押し広
げ、中が詰まってしまうことのないように呼吸を楽にする。
器具は片手に乗る程度の小さなもので数百グラムぐらいである。
これは毎晩使わなければならないことがネックだが、効果は非常に大きい。
Dそれでも眠気がとれないと
睡眠時無呼吸症候群以外にも良い睡眠が得られない原因としては、睡眠時間が足りない、極
度の過労、うつ病、老人性の不眠、原因不明の不眠症などは、場合によっては精神科に関係
している疾患もある。


28、呼吸器の病 B気管支喘息
冬になって、空気が乾燥してくると喘息発作を起こす人が多くいる。
また、気管支喘息は小児期だけではなく、大人(壮年期)になってから発症する人も多い。
寝ているときや明け方に、なんとなく息苦しかったり、呼吸が「ゼイゼイ」とか「ヒューヒュー」とい
う音がすると気管支喘息が疑われる。

ある日突然息苦しくなる、呼吸をするときに喘鳴が聞こえる、夜や早朝に咳が繰り返し出る、
咳は普通の風邪の時とは違っている。
人によって、花粉の時期や気圧が下がる(台風)時、寒くなる季節に症状が出る場合や、年中
咳が出ている、また、昼間は意外と咳や喘鳴がなく、夕方になると症状が起きる方も多くいる。
ほかに、毎年決まった時期になると症状が出るとか、1年中薬を使い続けなければならない
等、さまざまである。

これは気道の炎症で空気の流れが妨げられ、発作性の咳や喘鳴で呼吸困難になる病気。
アレルギー性物質や生活環境からくる刺激性物質によって、気道が炎症し狭くなってしまうか
らである。
気管支喘息の怖いところは、重症になると亡くなってしまう事である。
最近では、約6000人が1年間に亡くなっている。
年齢的には、男女とも15歳から29歳という若い年代で増えており、自覚症状があれば早めに
呼吸器科の受診が必要である。

気管支喘息そのものはアレルギーの病気なので、ほかにアレルギー性の鼻炎や花粉症、アト
ピー性皮膚炎、ジンマシンなどを合併することが良くある。
そのほかに、運動によって誘発される運動誘発性喘息というものもある。
これは、アレルギーに関係なく運動した直後に喘息発作を起こすものである。
また時には、運動の後6時間くらい経ってからの発作もある。

治療はアレルギー性体質なので、治すということはなかなか出来ない。
どちらかというとコントロールという方法で、上手に付き合っていくことが大切である。
治療として色々な薬があるが、まずは「喘息発作の予防」が大事になってくる。

アレルギーの元であるダニやホコリを防ぐために家の中をきれいに掃除したり、乾いた空気が
多い場合はマスクをつけると効果的で、これは夜寝る時にも効果がある。
薬としては、気管支拡張薬(気管支を広げる)・去痰剤(たん出しやすくする)・抗アレルギー剤
(気管支の炎症を止める)が挙げられる。

最近になって吸うタイプのステロイド薬が開発され、大きな効果が出ている。
飲み薬の100の1程度のステロイドを直接患部である気道に吸い込むので、糖尿病、高血
圧、胃潰瘍、肥満、などの副作用は全くなく、喘息のコントロールが非常にやりやすい。
以前は、冬になると発作で入院する方が多かったが、ステロイド薬の吸入で入院もかなり減っ
てきている。


29、呼吸器の病 Cインフルエンザ
秋から冬にかけて空気が乾燥してくると風邪やインフルエンザが流行しやすくなる。
一般に風邪というとクシャミ・咳・喉の痛み・鼻水・鼻づまり・発熱などの症状で「普通感冒」と呼
ばれ、ライノウイルスやRSウイルスが原因となっている。
しかし、インフルエンザは喉の痛みや咳といった呼吸器症状もあるが、38度を超えるような発
熱や倦怠感・筋肉痛・関節痛などで一般の風邪よりも強い症状となって現れている。
インフルエンザは流行性の疾患で、流行し始めると短期間で多くの人に感染している。
日本では11月〜4月の間に流行し、2003年〜2004年のインフルエンザ・シーズンでは約79万人
がかかっている。

インフルエンザウイルスそのものは直径107マイクロメートル(約1万分の1ミリ)で、A・B・C型
があり、この中で特に問題になるのはA型とB型である。
A型やB型のインフルエンザウイルスの表面にはスパイクタンパクと呼ばれる突起がある。
スパイクタンパクにはHAとNAの2種があり、A型のインフルエンザウイルスはHAが15種NAが
9種で、その組み合わせで複数の形を生み出している。

たとえば、A香港型は「HA3、NA2」、Aソ連型は「HA1、NA1」となっている。
B型はHAもNAも1種類、C型はHEというタンパク質1種なので、それぞれ型は一つである。
ある型のスパイクタンパクのウイルスに免疫力があっても、違う型のスパイクタンパクのウイル
スに対しては効き目がないので感染してしまうことがある。
例えば、Aソ連型インフルエンザにかかって治った後にA香港型にかかったり、A型インフルエ
ンザの後にB型インフルエンザにかかってしまう事がある。

予防の方法は、手洗い・ウガイ・人ごみに行かない(感染の予防)、流行前のワクチン接種(発
症と重症化を防ぐ)、室内での適度な温・湿度(喉の状態を保つ)、休養と栄養(免疫力)がある。
インフルエンザのワクチンは、その時期に流行しそうな型で作られるので、違う型が流行した
場合には効き目がない。
ワクチン接種の目的はインフルエンザの発症と重症化を防ぐのが目的で、その効果は65歳
以上で約45パーセントの発症阻止、約80パーセントの救命効果があったとの報告がある。
特に65歳以上の方や気管支喘息、糖尿病、腎不全など基礎疾患のある方はインフルエンザ
にかかると重症になりやすいので医師と相談の上、予防接種を受けることが大切である。
また、以前に予防接種でアナフィラキーショックなどのアレルギー症状を起こした方も、接種に
関しては医師と良く相談の上行うことが望ましい。

ワクチンの効果が出始めるのは約2週間後で、また、効果の持続は5ヶ月間ぐらいである。
従って、インフルエンザが流行する前にワクチン接種を受けることが非常に大切になってくる。
治療は、発症から48時間以内であれば抗ウイルス薬が効果的で、それ以上経つとウイルス
の数が増えているので、解熱剤などの対処療法が主体となる。

そのほかに「SRAS」「鳥インフルエンザ」「一般的な感冒」には、インフルエンザワクチンは効か
ないので、日常の手洗い・ウガイ・マスク着用など基本的な予防対策が重要になってくる。


30、呼吸器の病 D慢性的な息苦しさ
人はどんなときに息苦しさを感じるのか。
「息(胸)苦しい」いわゆる呼吸困難という感覚は呼吸器の中では重要な訴えである。
「息苦しさ」や「胸苦しさ」を自覚する原因は多岐にわたっている。

=主な息苦しさを自覚する原因として=
@脳内の呼吸中枢から呼吸をしょうという信号があり、それに見合っただけの呼吸が出来てな
いと、呼吸をするための命令がドンドン出され、それが「息苦しい」を感じさせてしまう。
A肺や胸の筋肉の弾力低下で肺が十分に広がった(膨らんだ)感覚が得られない。
この時もなんとなく息苦しいという感じがしてくる。
B心臓や肺に問題があるために、本来なら酸素をとりこんで二酸化炭素を吐き出すが、これ
がうまくいかないため二酸化炭素が溜まってしまっている。
いわゆる「高炭酸ガス血症」で、その結果酸素が少なくなり「低酸素血症」の状態になる。
C不整脈や心不全などで酸素を含んだ血液がうまく循環されなくなる、これは心臓が原因とな
っている。  
D貧血・めまいなどの血液的な問題と甲状腺機能亢進(コウシン)症というホルモン的な問題、不
安感やうつ状態といった精神的な問題も原因としてあげられる。
E更に肺の疾患として、肺気腫、特発性の間質性肺炎、慢性肺血栓塞栓症などがある。

したがって、酸素を吸えば呼吸が楽になるという訳ではないので息苦しさを取り除くためには、
きちんとした診察や検査を受けて何が原因なのかをはっきりさせることが大切である。
息苦しさの続く慢性呼吸不全というような状態で薬を使っても改善しない場合には、「在宅酸素
療法」という治療がある。
この療法は一定症状で長期入院が余儀なくされている患者に対して行われる方法で、家庭で
酸素を吸うことにより社会復帰を目指す事で行われている。

適用される症状は、普通に呼吸をしていて血液中の酸素濃度が低い場合や、睡眠や運動の
時に必用酸素の濃度が下がる場合、先天性のチアノーゼ型疾患や慢性心不全による「※@チ
ェーンス トークス呼吸」など、さまざまなケースがある。

ただし、肺気腫など慢性閉塞性肺疾患といわれる病気では、酸素投与をすると返って「※ACO
2ナルコーシス」という病状を呼び起こしてしまうことがある。
これは、逆に呼吸状態を更に悪くしてしまうので、慎重な酸素投与が必要である。

※@チェーンス トークス呼吸(交代性無呼吸)について
体内の酸素を即時感知できないため心臓のポンプ作業が遅れ、そのために呼吸が徐々に大きくなったり小さくなった
り、時にはとまったりする。
これは情報が遅いのでタイムラグがあり、そのために呼吸が大運動や小運動になってしまう。
また、寝ているときに息苦しくて1時間に20回以上呼吸が止まったりする慢性心不全もある。
※ACO2ナルコーシスについて
呼吸運動は二酸化炭素が溜まってくると呼吸回数が増えて炭酸ガスとして外に排出される。
ところが、閉塞性肺疾患のように慢性的に二酸化炭素が体に溜まる場合は、呼吸中枢が二酸化炭素の量に慣れて
しまっているので、刺激されにくくなっている。
この場合は酸素吸入した時に突然体中酸素量が高いと自覚され、これ以上呼吸しなくともイイヤと体が感じて呼吸を
止めてしまうことがある。
そうなると二酸化炭素がドンドン蓄積して意識状態も悪くなり危険なことになる。


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