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31、体内時計 @その神秘
1972年に哺乳動物の脳の中には時計(体内時計)があることが分かった。
体内時計は目の奥に左右一対あり、これが無いと「起きる・眠る・食事をする」など、体のすべ
てのリズムが壊れてしまう。
したがって、体内時計は生命をつかさどっていると云える。
体内時計の存在を感じる最も分かりやすい例は「時差ボケ」である。
日本とは生活の時間がズレているアメリカやヨーロッパなどに飛行機で行くと、様々な症状が
起きてくる。
集中力がなくなったり、思考能力の低下・体がだるい・寒い・暑い・便秘や下痢など、様々な症
状が起きる、これは時間がズレたための体内時計の狂いであることが分かってきた。
1997年には体内時計の中にある時を刻む「時計遺伝子」が発見され、加齢・老化・病気には
非常に深くかかわっていることが分かってきている。
時計遺伝子は7つあり、その内の5つが時計遺伝子から時計タンパクという形になって時計の
働きをするが、残りの2つは時計遺伝子から時計タンパクになるのを進める働きをしている。
この7つでコアループと呼ばれるものをつくり、遺伝子からタンパクに変化する時間を約24時間
に制御している。
体の中にある時計と体の外の時計との間には約1時間のずれがある。
昼行性動物と夜行性動物では時計の発信の周期が少し違っている。
例えば人の場合は25時間の時計が仕込まれていて、朝起きたときに明るい日差しをきちんと
浴びると、数時間で1時間のズレが解消されて24時間にセットされ、体の中で補正されてくる。
この補正がうまくいかないと、不眠が起きたり、物事を充分考えられなくなったり、不登校にな
ったり、色んな症状が起きて、丁度時差ボケみたいな症状になる。
海外旅行をしている時の時差ボケの症状は、体の中の時計と行き先の時間が合っていないた
めで、個人によって違いもある。
また、体内の場所によっても補正に要する解消時間が違う。
例えば、血圧は生きていくために重要なので、数十分ぐらいで生活の時計に合わせられる。
ところが体温とか食事・排便などに関しては1週間位かかっている。
それぞれの体の中の働きは、時間を調節する為にはバラツキがあるので時差ボケというもの
が起きてしまう。
海外旅行をしないで時差ボケと同じようなことがあると、病気になることがある。
特に、交代勤務などでは時差ボケと同じような症状が多く、健康に悪影響を与える場合がある
ので注意が必要である。
32、体内時計A体中にある時計遺伝子
人間の“生きる”という活動として体内時計があり、7つの時計遺伝子の働きで約24時間のリ
ズムを刻む仕組みまでは分かっていた。
しかし、その後の研究で脳にだけしか無いと思っていた時計遺伝子が、体の隅々にまであると
いうことが分かり「一体、これらの時計遺伝子は何をしているのだろうか」ということで非常に話 題になった事がある。
ひとつ分かってきたことは、時計を効率よく働かせるために脳の時計電子を親時計として信号
を受け止めるアンテナのような機能をもっていた。
そうすることによって脳からの働きは効率よく伝えることができていた。
ところが、不思議なことに抹消の時計遺伝子は病気を起こしやすくする働きがあった。
時計というものは、ただ動くだけと考えていただけに医学会では大きなショックを受けた。
抹消ということは、それぞれの臓器、粘膜や皮膚、血管・骨まで、全部に時計遺伝子がある。
親時計と抹消の時計のバランスが崩れることで、さまざまな病気の原因になるのではないかと
考えられるようになった。
体内時計が乱れると心筋梗塞・糖尿病・肥満・癌などの生活習慣病発生にも関係があった。
今まで、生活習慣病はQOL(生活の質)の乱れが原因とされていたが、今後は体内時計の方
面からの治療法や薬の開発も考えていく必要がある。
それぞれの臓器には時計遺伝子があるので、親時計がリズムを保てないと臓器を傷めたりし
て生活関連病発症の引き金にもなっていたからである。
様々な治療で使われる薬は確かに良い効き目がある、しかし、副作用もある。
それも思いがけない副作用であったりしている。
「副作用も時計遺伝子と関係があるのではないか」とも言われてきている。
例えば、肝臓などの治療で使うインターフェロンは、時計遺伝子の働きを崩すことが分かって
いて、その関係を調べることによって副作用を抑えながらの治療法などが研究されている。
薬を使っていて、しかもリズムを崩さない治療法が重要なテーマとなってきている。
夜勤などで一般の生活リズムと違う方は時差ボケになりやすいので、時計調節で一歩踏み込
んだ薬剤や治療法が期待されてきている。
考え方としては、一度外れてしまっている場合、それを更に外す薬などで元に戻すという可能
性「生体リズムの操作」を期待するものである。
33、体内時計B砂時計型の時計の不思議
体内時計と時計遺伝子の関係は興味深いが、これが健康面に非常にかかわりが深い。
前半の@とAは置時計型の時計であり、24時間をぐるぐる回るという内容である。
しかし、それ以外にも私たちの体には砂時計型(又はストップウォッチ型)の時計を持っている。
数分後とか数時間後とかいう「時間の経過」を感じとる時計である。
たとえば、いつも7時に起きる方が、明日は孫の運動会があるので場所取りに行こうという事で
5時に起きるために目覚まし時計をセットして、いつもの通り寝る。
ところが、5時少し前(目覚まし時計が鳴る前)に目が覚めてしまうことがある。
これが砂時計型の時計で、7つの時計遺伝子をもった置き時計型時計と違うところである。
砂時計型時計で分かったことは、不思議なことに脳の中では各部門でネットワークを作り「時
間設定・カウント・確認・修正・お知らせ」の役割分担をしていた。
この「時間の経過を予測する時計機構」の機能は、眠っている間でも働いているのであった。
砂時計型時計は人間だけではなく他の動物にも見られる。
たとえば、オスの鳥とメスの鳥が交互に卵を温めている事実である。
独りでは大変なので、お互いに交代する時間を決めていたことは、随分昔から分かっていた。
運動会があるから早く起きるというのは、眠っているときに自分の意志とは関係なく自然に目
が覚めるというのは本当に不思議な現象である。
これも多分健康につながっているのではないかと考えられてきている。
フィールド医学(人間生態学)の部門で、地域住民の高齢者の健康調査をした結果がある。
簡単な検査で、10秒60秒120秒の予測をしてもらうことである。
ストップウォッチの時間経過と予測とがどれくらいズレているのかのチェックである。
75歳以上では60秒より早く1分を感じる方が元気で長生きが多かった。
また、遅く感じている方は早く病気になったり、亡くなったりする方が多くあった。
結論として、時間を早くカウントする人ほど相対的に時間は長くなり1日を遅く感じている。
また、逆に時間を遅くカウントする人は“あっという間”に1日が過ぎる感覚になる。
実際に「一生懸命仕事をしていて、もう、1日が終わったな」という方は早く亡くなっている。
これは重要な事で、感じるのは宿命的なものか?補正できるものか?が問われてきている。
時間の流れは、その時々によって感じ方が違うので、時間を短く感じさせないためにも、ストレ
スをためずに気持ちをゆったりと持って過ごすことが大切である。
また、気分に不安などがある場合は、それに対処した薬なども有効である
※ただし、この結果が得られたのは実は男性だけで、女性には全くありません。
※ここで編集者からのクイズです
「1日儲かったネ」という言葉があります。
この言葉は、1分(60秒)を30秒で感じる人(A)と、1分(60秒)を120秒で感じる人(B)では、どちら
が多いでしょう。
(解説です)
AとBの二人に1分間の黙とうをしてもらいましょう。
そして黙とうを終えた後、時計を見てもらいます。
Aは、一分(60秒)のつもりだったのが30秒だった・・・という事になる。
また、Bは一分(60秒)のつもりだったのが120秒(二分)だった・・・という事になる。
したがって、Aは1日だったと思ったら半日だった、またBは1日だったと思ったら2日だった。…
となる。
すると、Aは2日だったと思っていたら1日だったという事になる。
「未だ一日残っている」という事で…「1日儲かったね」の気持ちになる。
・・・編集者もあまり自信がありません。・・・ので・・・
本当の答えは「時間の感じ取り方」よりも「勘違いの多い方」という事になるのでしょうね。
34、体内時計C食事
体内時計を調整するために最も重要なことは、朝に充分な光を30分程度浴びること。
そのほかに、食事を摂ることでも体内時計は時間調整される。
朝、天気が悪くて日差しを浴びることができない時や、北欧や南極の近くに住んでいて、冬の
時期には、お日様を充分に浴びることができない人もいる。
この場合には、一番大切なことは朝の食事である。
食事は3食が大切なのだが、この中で朝食が最も大事なことが分かってきている。
朝の食事によって、体内時計の時計遺伝子やファミリーのリズムがリセットされるのである。
時計遺伝子のいくつかが、食事と関係しているのである。
したがって食事をきちんととれば25時間の体内時計を24時間に直すことができる。
その他に朝のグレープフルーツというものも、研究されている。
グレープフルーツの香りを嗅ぐと体内時計が刺激されて、夜方(休息モード)から朝方(活動モー
ド)に変わり、それによって交感神経が緊張して白色脂肪が燃え体重が減る事実である。
したがって「肥満予防には朝のグレープフルーツ(香り)が非常に大事」ということになる。
日本でのグレープフルーツの消費量は圧倒的に北海道や東北地方など寒いところに多い。
ある説では、寒いところではグレープフルーツを食べることによって「体の交感神経を緊張さ
せ、脂肪を燃やして体を温める」、そのことによって体重の減少につながっているという。
時間医学や体内時計の科学として面白い説でもある。
ただし、降下剤を服用している方には気を付けなければならないことがある。
カルシウム拮抗薬によっては、グレープフルーツで利きすぎて血圧が下がりすぎることである。
医師、薬剤師との相談が必要である。
昔から言われていることで「夜食をすると太る」…今の「朝食にグループフルーツ」の逆である。
夜食をすると7つある時計遺伝子の1つが関連して白色脂肪がドンドン増えてくるのである。
白色脂肪はエネルギーを貯めるよりも、ホルモンの働きで炎症や血液を固まりやすくする。
夜食は、その白色脂肪を増やして大きくしていくので避けた方が良いという昔からの格言。
安眠の方法として、夜ラベンダーの香りを嗅ぐと気持ちが落ち着き良く眠られる事が分かって
いる。 「朝はグレープフルーツ、夜はラベンダー」。おすすめです。
35、体内時計D睡眠と生活習慣病
私たちの体は“明るくなったら起きる、暗くなったら寝る”というリズムではなく、“体内時計”によ
って起きる時間と寝る時間が決められている。
「今日はストレスがたまって疲れたから早く寝よう」と思って、いつも朝7時に起きた人が夕方の
7時や8時に床に就いてしまっても、なかなか眠られない。
これは、15時間後にならないのでキチンと眠られないのである。
朝起きてから12時間から15時間というのは一日の中で一番眠られない時間帯である。
「体内時計と睡眠」のリズムというのは非常に密接な関係になっている。
早く起きると朝の光は早く浴びるため、おのずと夜更かしできなくて早く眠くなってしまう。
早寝早起きは時計遺伝子に影響を与え、体内時計の25時間は短くなってしまい、更に早寝早
起きの傾向になってしまっている。
また、歳をとると脳内の時計遺伝子が減ってきている。
その結果、体内時計の時間が短くなり「早寝・早起き」の傾向が更に強くなっている。
あまりに早く目が覚めてしまう場合には、体内時計が進みすぎるので工夫が必要である。
朝起きてからサングラスをかけて光を浴びないようにしたり、起きた時、すぐにカーテンを開け
ないで少し薄暗いままにして適当な時間に開ける、そうすると効果的である。
「眠られない」という方は、「よく眠れる」という方に比べて病気になりやすく長生きもしていない
という結果が出ている。
いかに、良い睡眠を得るかという事が重要なポイントになっている。
生体リズムが狂うと病気(生活習慣病など)になりやすく寿命も短くなってしまう。
「Bmal1(ビーマルワン)」という時計遺伝子は夜中に急増するので、夜間での食事は太りやすく白
色脂肪も増えてしまう。
また、ラットの実験では「クロック」という時計遺伝子に不具合があると「太る・高コレストロー
ル・中性脂肪の増加・高血圧などメタボリック症候群」になったりしている。
更に、高カロリー食を与えると糖尿病になってしまっている。
時計遺伝子の異常で一番最初に現れてくる症状は「肥満」で、白色脂肪が増えて炎症を起こし
やすく、血液が溶けにくく固まりやすくなっている。
「時計遺伝子異常と生活習慣病」は関係あるので今後の治療法にも考えなければならない。
生体リズムの研究が進むと、生活習慣病予防の為の生活方法が徐々に解明されてきている。
たとえば、内臓の周りに白色脂肪細胞がつくと、生活習慣病になりやすく健康に良くない。
白色脂肪細胞には、「Bmal1」という時計遺伝子がかかわっているからです。
対策として@寝起きをキチンとA朝食をシッカリB朝日を浴びC運動をする…事です。
特に睡眠の質は、この4点を守って15時間過ぎたら寝るのが理想的な睡眠のとり方である。
これが肥満の予防につながり、生活習慣病発症の予防になっている。
ひいては「ガン」の発症予防につながると考えられている。
これは非常に大きな発見であり、生活のリズムを良くして生体リズムを安定させて、常に良い
状態に保っていくことが大切になっている。
これが「健康と長寿」にとって非常に大切なことなのである。
36.健康長寿の予防学@予防学とは?
病気の予防法を調べる
病気にかかったら治すという治療に対して、病気にならない方法を考えるのが予防学です。
病気の研究は、マウスなどの小動物や部分的な細胞を使って行う実験があります。
動物や細胞を使う実験では、感染をさせる・ストレスを与える、また、薬の投与・寒暑の環境な
どの条件を与え早い結果をとらえています。
しかし人間ではそのようなことは行うことはできません。
人間の病気の原因を調べる方法としては、例えば10万人を対象に10年〜20年間の調査を
するというような統計的な方法を用います。
調査内容は、食生活・喫煙や飲酒の有無・運動の有無・血中コレステロール値などがある。
これらのデータに対して脳卒中や心筋梗塞・がん・糖尿病の発生状況を検証しております。
健康情報で大切なのは“総合的な研究結果”であるかどうかということで、動物実験のデータや
細胞実験のデータ・人間に対する調査研究など複合的な研究結果に基づく健康情報なら信頼 性があります。
その他に、
@動物実験結果か人間の臨床結果なのか…人間を対象にしたものの方が信頼性がある。
A無作為に選んだグループでの比較実験で、効果が確認されれば信頼性がある。
B新しい研究結果(初めて発表は臨床データが不足しているので、様子を見たほうが賢明)
C情報発信者の利益の有無(発信者の利益に大きく結びつく場合は、一考を要する)
健康情報は、テレビや新聞で取り上げられているのを鵜呑みにしないで内容をシッカリ見極め
ることが大切である。
37.健康長寿の予防学Aたばことお酒
「タバコは健康に悪い」というのは常識で、吸う人は吸わない人に比べて「ガン・心筋梗塞・脳卒
中」にかかるリスクが明らかに高いと言われている。
ガンでも肺ガンとの関係はほとんどの方が知っているが、実は「口腔咽頭ガン・すい臓ガン・肝
臓ガン・食道ガン・胃ガン・腎臓ガン・膀胱ガン・子宮頸ガン・白血病」など、すべてのガン発生 率も高めている。
タバコを吸わない人に対して吸う人のガンにかかる確立は、約1.5倍といわれ“大した事はな
い”と考えがちだが、ガン患者は3分の1がタバコが原因で、1年間では男性が8万人、女性が 6000人となっている。
吸わなくても、他人が吸っているタバコの煙でガンになるという事もあり、これは受動喫煙と言
って肺ガンの原因に特定され、国際的にも認められている。
更に、タバコはガンだけではなく、他の病気にもかかりやすい。
心筋梗塞・脳卒中の他に「糖尿病・歯周病・インポテンツ(ED)・白内障・胃、十二指腸潰瘍・骨
粗しょう症」があり、妊娠中での喫煙では未熟児が多く、あらゆる病気にかかるリスクが多い。
イギリスの医師が50年間調査した結果によると、タバコを吸い続けると平均寿命が10年短い
という統計が出ている。
また、タバコを止めると長寿にもつながってきているので「禁煙長寿」とも言える。
30才で禁煙すると吸わない人と同じ寿命で、50才では平均寿命より4年低く6年の得、60才
では7年低く3年の得があるという事が分かってきている。
歳をとってからでは、効果が無いように考えがちだが、禁煙で“遅い”ということはない。
タバコを止める事は、その時点から病気へのリスクが下がってくるからである。
肺ガンで云えば20年の禁煙で、吸わない人とほぼ同じレベルである。
心筋梗塞は止めたらすぐにリスクが下がり、糖尿病・脳卒中は数年でリスクが下がっている。
お酒については、飲みすぎてしまう事でリスクは上がってしまっている。
酒によるガンは「口腔咽頭ガン・食道ガン・肝臓ガン・大腸ガン・乳ガン」などでリスクが高い。
日本人の平均的な適量としては、ある研究では1日に清酒1合程度が良いとされている。
2合以上だと1.4倍、3合以上だと1.6倍のガン発生が確認されている。
しかし、 お酒に関しては「心筋梗塞・脳梗塞・動脈硬化」などに対して予防効果がある。
お酒は適量が肝心で、飲みすぎたらその分の「休肝日」を取った方が良く、まとめとして“タバコ
は止めたらイイ…♪♪…。酒はホドホドがイイ…♪♪♪…。”となる
38.健康長寿の予防学B脂肪と魚
食の欧米化によりメタボリック症候群の人が増えています。
欧米型の食事のように脂肪を多く摂ると、血液中のコレステロール値は高くなり動脈硬化や心
筋梗塞・脳梗塞になりやすいことがわかってきている。
肥満の多いアメリカでは死因の3割を占めています。
反面、塩辛いものを多く食べ栄養状態が悪いと、出血型の脳卒中や感染症・肺炎などは、コレ
ステロールが低いために起こりやすくなっている。
循環器に関していえば、コレステロールが高いと脳の血管が詰まるタイプの脳梗塞、低いと脳
の血管が破れるタイプの脳卒中になりやすい。
このように病気に対しては、コレステロールが高くても低くてもリスクが上がっている。
前回の“酒”と同様にコレステロールも“適量”が健康を保つ上で大切になります。
「脂肪を摂りすぎると乳ガンにかかりやすい」と言われていたが、今のところは、この関係は明
らかになっていません。
ただし、栄養状態が良いと初潮が早くなり、乳がんのリスクが高まる可能性はあります。
魚については、同じコレステロールでも、青魚に含まれるEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は
動脈硬化を予防して、日本人の心筋梗塞の発症数を低くしています。
ガンについては、魚を多く食べると大腸ガンになりにくいといわれていますが、今のところコン
スタントに結果は出ていません。
魚を多く食べすぎるとダイオキシンやメチル水銀・農薬などが蓄積され、特に妊婦に関してはマ
グロなど遠洋の魚の摂りすぎには注意が必要です。
ただし、子供の成長にはEPAやDHAが必要ですので、全ての魚を避けるのではなく、リスクの
ある魚を避け、適度に食べることが必要になります。
普通に日本人が食べている量においては“良い効果”が得られています。
アメリカでも「魚を摂ること事での利益と害」での分析では、害よりも利益の方が大きいという結
果がでています。
39.健康長寿の予防学C肥満と痩せ
肥満は基本的に健康には良くなく、心臓病や糖尿病の増える原因にもなっている。
乳ガンや腎臓ガン、大腸ガン等も肥満の人がなりやすい。…という事が分かっています。
肥満の度合いはBMI数値があり、これは自分の体重を身長で2回割ることで算出される。
例えば170cm・70kgの人であれば70÷1.7÷1.7と計算される。
これが様々な病気と関係している事が分かってきて、25以上を過体重、30以上を肥満と定義
されてきた。
BMIが30以上の肥満は、アメリカでは30パーセント、日本では3パーセントで、アメリカでは
肥満に関する糖尿病や心筋梗塞、乳ガンが多く深刻な問題になっている。
太る原因の「脂肪」も、内臓脂肪と皮下脂肪に分かれ、特に内臓脂肪が悪いといわれている。
腹囲が男性では85センチ、女性では90センチ以上だと内臓脂肪が貯まっているとみられる。
これが高脂血症や高血圧、糖尿病を伴って動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞になりやすい。
日本においてはこのメタボリックシンドロームというものがどこまで我々の寿命に関わってくる
のかということは、現在、研究途上である。
日本人10万人の調査では、BMIと病気の発生率をみると確かに糖尿病や高血圧、高脂血症
に関係している。
糖尿病では、BMIが低いグループに比べ30以上の高いグループは発生率が約10倍高い。
しかし「ガンは太っている人がなりやすい」というデータは日本人には得られていない。
むしろ逆にBMIが21未満の痩せているタイプの人たちが、ガンの発生率が高くなっている。
「痩せすぎ」は、免疫力が弱く感染症などにかかりやすく、病気からの回復も遅い。
実は戦後の日本人は、ある程度太ってきた事で平均寿命の伸びに繋がってきている。
したがって高齢者の場合は、痩せすぎよりも少し太っている方が長生きという傾向である。
肥満については、若い時ほど肥満の影響が大きく、歳をとると小さくなっている。
日本人男性(40〜59歳)ではBMIが23〜27なら死亡率が低い、30超えや19を下回ると2
倍(病痩せは除く)の死亡率になっている。
女性では、19〜25で死亡率が低く、同じく30超えや19下回ると2倍の死亡率になっている。
いずれも、27を超さない、21を下まわらない事が大切といえる。
今の処はそれほどでもないのだが、今後は大きな問題になりそうなので注意を要する。
40.健康長寿の予防学D予防の実践
健康については、これに関する情報やデーターが色々とあるが、これらの情報とは旨く付き合
うことが大切である。
なぜなら情報そのものは、発信する側も自分の都合のよいデーターを使ったりしている。
したがって、中立的な立場になって云えば、“健康維持の心構え”として
@「タバコを吸わない」これは絶対で、出来れば他人のタバコの煙も吸わないように心掛ける
事。そのためには社会の秩序も考えていかなければならない。
A飲酒に関しては「飲みすぎない」ことで、一日の目安として日本酒では1合、ビールなら大び
ん1本、また、「飲みすぎた」場合は飲まない日を作ってバランスをとる事が大切である。
B体重に関しては「太りすぎ」または「痩せすぎ」をしないことが大切で、具体的には中年期の
男性ではBMI21〜27女性では19〜25が、病気にかかりにいとされている。
C食事に関して塩分の高い食品を控え、野菜や果物を多く食べる事である。肉よりも魚中心
の食事をバランスよく摂ること。「特定のものを食べるとガンを防ぐ効果がある」という事は今の ところ分かっていない。
D急に熱い物を食道に入れると「食道ガン」のリスクが高まる。フーフーして食べることも大切。
E運動については1日に歩行も含めて1時間くらい体を動かすこと。また週一回は汗をかくよう
な運動も大切である。
F肝炎ウイルスについては、中年期では数パーセントが知らないうちに肝炎に感染している可
能性がある。
初期治療は大切で、これによって他の人への感染も防ぐことにもなり、また、肝炎を重症化さ
せないためにも必要である。
G定期健診は、ガンなどに対しては早期発見と早期治療につながり有利である。またガンで死
ぬことも防ぐことができ、ほかの生活習慣病にも有利である。また、初期治療により、身体的・ 経済的負担も軽なってくる。
無理をしないで「出来ることから始める」、実行すれば病気にかかるリスクが下がり、健康長寿
の予防学を身につけることになる。
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