11〜20

11.人間機関車
阪急の村田実投手は、顔をゆがめて体全体をうまく使って常に全力で投げ込んだ。彼のフォ
ームを人々は「ザトペック投法」と呼び、バッターを悩ませました。その球を天覧試合でサヨナラ
ホームランをかっ飛ばしたのが、長嶋茂雄選手でした
「ザトペック」という言葉は、チェコの長距離ランナー「エミール・ザトペック」選手の事を言いま
す。彼は、スタートから苦しそうに全力で走る姿(顔をゆがめ首を振る迫力ある走り)で、人々
は「人間機関車」と賞賛しました。そして1948と52年のオリンピックで4個の金メダルを獲得し、
更に五輪史上唯一の長距離3冠達成者となったのです。
偉大なる「人間機関車」、ついつい紹介の一筆としました。
ここで編集者の独り言「SLねぇ、苦しそうな表情もします、またリンク機構は振りが大きいので
首を振り振りの感じですねぇ。何となく分ります」。…「えっ、“首振りエンジン”で走らせる事もあ
るんですって?」…さて、何のことでしょうか。

12.SLの簡単なしくみ
この辺で各部の名称の入った図面を載せました。
まずボイラーから発生した蒸気は蒸気貯めから蒸気室に送られて来ます。蒸気室にはスベリ
弁が入っており、この弁は心向き棒(それとも合併テコ)によって作動しています。そしてこの弁
は、シリンダーへの蒸気分配を行なっています。
例えばこの図ではスベリ弁は蒸気室の後方位置としましょう。
この弁が後方位置にあると、送られた圧縮されている過熱蒸気はスベリ弁の誘導によってシリ
ンダーの前方側にある穴から入ります(この時シリンダーの後方側の穴は中の蒸気を排出す
る役目をします)。そしてシリンダーの中間にあるピストンを後方に押して行く事になります。押
されたピストンは、主連棒で図のB位置にあるクランクピンをC位置へと押して車輪(動輪)を左
回転へと動かせます。
これはSLの左側の説明ですが、この時右側はデッド(死点)の状態です
つまり、デッドの状態とはスベリ弁は蒸気室の真ん中位置で、ピストンは必ずシリンダーの前
方か後方位置、そしてクランクピンは図のAかCの位置となっています。 

13.四輪駆動だ、エンジンだ
左写真:今回のは先輪を省略した動輪だけなので、左右の前後輪は同径として、これに連結
棒(1.2ミリ厚20ミリ幅の鉄板…形は良くないが)をつないで同じ動きになるようにしています。これ
でどれか1輪が動くと四輪すべてが動きます。
写真右:エンジンの材料で直径44ミリの丸棒鋼です。これを加工してエンジンのシリンダー部
を造り車体に装着する。左写真の構造では、エンジンそのもはどうしても連結棒の外側に装着
せざるを得なく、超幅広になるのを防ぐ為、最外側に取り付けるべく返りクランクは敢えて主連
棒の内側に取り付けようと考え中です。
参考…ワルシャート式の返りクランクは主連棒の外側(つまり最外側)、スティブンソン式の偏
心輪(返りクランクにあたります)は車輪の内側です。
尚、この丸棒鋼は先輪、従輪、台車等の車輪製作にも利用する考えです

14.人車鉄道
人間機関車みたいなもので、人車鉄道です
昔々の明治29年、神奈川県の小田原と熱海の間16キロに人車鉄道が開通したのです。人
車鉄道というのは3人の屈強なる逞しい男(丁度私みたいに…じゃなかったか…)が交代しながら
8人乗りの客車を押して走る・・・そう、人力による鉄道でした。
下り坂では勢い余って脱線する事もあり、また上り坂になると、下等車の乗客は下ろされ、押
夫(人車の乗務員)とともに、人車を押し上げるのを手伝わされたりしました。
所要時間は3時間位で、 "熱海に冬なし"を宣伝文句として温泉客を呼び込みました。
しかし、そんな人車鉄道も、全線開業から僅か8年あまりで、動力を人力から蒸気動力の変更
となり、その姿を消していきました。

15.マルボウ(丸棒)のブツ切り
44ミリ直径の丸棒のブツ切りです。突っ切りバイトで切断です。
この位の太さになると高速切断機でも手こずってしまうし、また精度のある切断は無理。
従って、突っ切りバイトの登場です。
突っ切りバイトねえ。私、苦手でいつもヒヤヒヤ作業です。もっとも他のバイトもそうですが…
しかし中古道具店があります。そこで安価のバイトを買ってきます。
中古ですからプロが研磨した状態でのバイトがあるのです(私、素人ですので、このバイトの形
状を参考にしています)。
そして、それを真似て、勉強もするのです。イイ勉強になっていますヨ。
右の写真は旋盤の全体像です。古いですが使い手の要望には実に素直に従ってくれます。
もっとも扱いがでたらめですと、でたらめな結果を出してきます。そう考えると実に素直です。
これからは、難問がドンドン出てきます。しかし、難問も難しいと考えるよりも「プロセスの一つ
ダ」と考えると進んで行けるものですネ。
ブツ切りの製品?。そう、エンジンを作るのです。

16.鉄鋸の刃が折れる?
鉄鋸の刃は、切断作業中に鋸をヒネッタ時、「ポキッ」と折れてしまいます。そして気持ちも「ガ
クッ」と。ほとんどの場合は作業中に刃が外れ、その時に作業バランスが狂いヒネッてしまい折
れています。そこで素人的対策です。鉄鋸を改造しました。
一般的に鋸刃は、鉄鋸装着用の突起に刃の穴を引っ掛ける方式になっています(写真左)。
そこで改造です。
先ず突起をグラインダーで削り落とします。次にタップで4ミリ(下穴3.4ミリ)の雌ネジを作ります。
そこへ4ミリのボルト(15ミリ長さ)を組み込みます。この時にネジロック剤を塗って外れなくしま
す。鋸刃の取り付け穴は3.7ミリ位ですが、何とか入ります。そして4ミリの蝶ナットで鋸刃を締
め付けます(写真右)。
もっとも鋸刃で折れないのも売っています。これは、メーカーは忘れましたが確か輸入物で白
色塗装の刃でした。「折れない」と書いてありました。刃が外れたときは折れないですね。少し
曲がってしまうけれども…
こうすれば作業中に刃が外れる事はありません。この方法で鉄鋸の刃は随分長持ちしていま
す。それこそ刃が切れなくなるまでに…(但し、高価な鉄鋸の場合は外れにくく改造の必要はな
いと思います)。
この改造した鉄鋸は今3個あります。そして3個とも調子は抜群ですね。

17.丸棒やパイプへのケガキ
まず専門用語と…。
ケガキとは加工場所を示す線を正確に書き込むことで、罫書きが語源の様です。
また、定盤(ジョウバン)とは精密な平面に仕上げた鋳鉄製の頑丈な板盤を言っています。
丸棒などで長手方向へのケガキ(軸線に平行なケガキ線)は、私としましては左図の如く丸棒
を転がらない様に定盤上にセットしたVブロックに載せトースカンで直線を引きました。
ただし、定盤の代わりに少々厚手(厚手といっても4.5ミリ)の鉄板を使ったものです。
しかし、もっと簡単な方法が無いものだろうかと色々と参考文献を調べました。
右図の方法がありました。アングルを使うのです。
これなら定盤を用意しなくてもよく、更にVブロックも要らなく、トースカンの代わりにケガキ針一
本でOKです。
この方法以来非常に楽になり、しかもケガキ線も濃い状態にして引く事も出来たのです。

18.割り出し
割り出しとはレールの転轍機(ポイント)を開通していない方向から進入して壊してしまう
事。・・・・・・というのは鉄道用語です。
しかし工作でもこの言葉はあります。それは「決められた範囲内で角度や長さを等分割する
事」です。多くの場合は円の等分割です。
SLでは運転する時と製作する時とでは意味が違ってきます。ここでは作る方の話です。
エンジンのシリンダーにヘッドを前と後ろに取り付ける。今回は10本のボルトで締め付ける考
えです。10本分の雌ネジ穴と通し穴の位置は常に一致しなければなりません、最初に割り出
し穴あけのガイドを作る事にしました。左はガイド穴のポンチ打ち作業(目印打ち作業)として
円錐ドリルを使っているところです。センタードリルならきれいに穴印がつくのですが、手持ちが
なかったものなので…。また一般のドリル刃では工作面で泳いでしまってなかなか穴印は付け
られません。そして右はガイドの完成品です。
工作物の取り付けは大きなチャックを使いますが、ナットで押さえる事にしました。穴印打ちが
終わったらギアを回し、ギアが動かないようにロックします(ギアの歯数を間違えてしまわない
様に白ペンキを塗っています)。ギアの左下にロックピンが僅かに見えます。なお、工作物はナ
ットで押さえていますのでギアと一緒に回ります。
そして次の穴印を・・・と言う手順です。最後に決められた穴の大きさで通し穴をあけてガイドの
完成です。最初の頃は分度器を使ってケガく方法でしたので、精度が悪くて失敗が多かったで
すネ。

19.SL(電車や列車も)は蛇行しながら直進している
SLは差動装置が装着されている自動車とは違って、左右の車輪は同回転の状態で曲がるこ
とが出来ます。
それは車輪の形が円錐形を切断したような形になっているからなのです。
カーブに差し掛かった時、車体は遠心力によりレール内で外側に移動します。
すると車輪は外側レールに対して円錐形車輪の大径が、また、内側レールに対しては円錐形
車輪の小径が接触し、左右の進む距離が変わります。
つまり曲がる方向に対しては外側車輪が大きく進み、内側車輪は小さく進みます。そしてカー
ブを描いて進んで行くのです。
直進の時は、車体が鉄路の真ん中に位置しているかと言えばそうではないのです。
レールと車輪との隙間がある以上、常に左右のどちらかに寄っているのです。
車体は左に寄りすぎていると左車輪が大きく進んで右へ寄り、右へ寄ると右車輪が大きく進み
今度は左に寄って進みます。つまり常にジグザグ走行をしているのです。
そういえば、吊革にしっかり掴っていないとブレーキをかけていないのに倒れてしまいそうにな
りますね。
簡単にいうと「直線コースでのSLは蛇行していても、限りなく真っ直ぐに近い状態で走っている」
が本当の姿なのです。

20.さてエンジンだ
1.エンジン材料
2.エンジンヘッド
3.ドリル刃
4.割り出しジグでのガイド
5.タップ作業
6.エンジンのシリンダー
7.シリンダーの完成
8.ヘッドパッキン
9パッキンの完成.
エンジンのシリンダーとヘッドの製作です。エンジンの材料は直径44ミリの丸棒を使いました。
切断は突っ切りバイトです。
2.のヘッドは大まかな形状です。さて、ヘッド取り付けの通し穴とエンジン側に雌ネジを作らな
ければなりません。ボルトは3ミリの六角穴ボルトを使います。ピタリとあった穴を開けるために
割り出しジグを。そのためにガイドされるドリル刃(6ミリ)を使います。これは穴あけではなく穴
位置の設定(ポンチ作業)ですので刃先を60度にしました(写真3)。
4.はガイドをしているところ。丸棒の中心には6ミリの通し穴、ピッタリ合せるのに6ミリの棒ボルト
で押え、更に外側には動かないようにホースバンドで固定しました。ドリル刃でのポンチ打ちし
た後、2.6ミリの下穴をあけ8.のように3ミリのタップ作業です。この時、念のためスコヤを横に
置き、ネジを切るのに真っ直ぐに進んでいる事を確かめながらタップ作業を行ないます。
6と7.は穴広げです。25ミリのドリル刃を使いました。・・・これがシリンダーの内径です。本来な
ら中ぐりバイトで仕上げるのですが面倒くさいのと自信が無い事からこうしました。そしてパッキ
ンは3ミリ厚のアルミ板を写真の通りの方法で加工しました


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