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31.刃の性格とバイト
一般的に刃で物が切れるのは「くさび」作用によるもので、この「くさびの角度」を“切れ刃角”と
か“刃物角”と呼びます。カッターなど薄い刃物(刃物角が小さい)は木を切ることができても針 金は切れません。しかし厚い刃物(刃物角が大きい)のタガネなら簡単に切ることが出来ます。
木にたとえてみると木目に沿って切ると屑(キリコ)は切り裂かれてヒモ状になって出てくる。と
ころが木目に対して直角に切る(押し切りで剪断といいます)と短く切られた繊維(キリコ)が重 なって出てきます。金属の場合はこれに似た切れ方(削れ方)をします。
また、相手が金属なのでバイトの刃は厚くしなければなりません。
刃が厚いと刃先以外の箇所(バイトの刃先の腹の部分)が、加工物に触れてしまうと困るの
で、「逃げ角」を少しとります。
刃の切れ味を維持するためには、@刃先が光って見えたら研ぐA切削後、加工物の仕上がり
が不均等なら研ぐ…“切れなくなってからではなく、切れ味が悪くなったら研ぐ”Bキリコの状況 が変わったら研ぐ、の考えでまんべんなく研ぐことです。また切削作業には必ず切削油かCRC を使います。切削油が無ければ天ぷら油かその廃油で十分です。またCRCの代わりに灯油 (少しだけ油を混ぜた灯油…5lくらいかな)でもOKです。私は天ぷら油を使ったり、混合灯油 を霧吹き容器に入れて使っています。
切れ味の良いバイトでも、刃物台にセットするときに刃先が旋盤の心高にキチンと合っていな
ければ切削が思うように出来ませんので気をつけてください。
仕上げバイトは加工物の凸凹面を滑らかにします。凸凹面を「かきとる」事を考えると上スクイ
角は0かマイナス、前切り刃角も0として両角に丸みをつけると良いでしょう。
小さすぎるとバイトを砥石に当てるときに傾ける方向を迷ってしまうので、それぞれ大きく取って あります。いわゆる誇張見本ですね。バイトを研ぐときにグラインダーの砥石に対しての向きが 分からなくなったときに木棒見本で確認します。突っ切りバイトはこの見本で確かめながら行う と研ぎ間違いがほとんどありませんでした
32.自作バイト(差込バイト)
ホルダーに刃物を取り付けてバイトとして使います。・・・差込バイトです。
ホルダーを使ってのバイトは、スローアウエイ・バイトや突切りバイトなどが市販されています。
写真上左は使えなくなったバイトのシャンク(15ミリ角)を加工してホルダーとし、中に刃を差し
込み剣バイトとしたものです。
この剣バイトは5ミリ角の完成バイトを刃として取り付けています。
完成バイトの研ぎ方はグラインダーに対して少しだけ傾けて研いだだけでイイ加減です。
角度はスクイ角(上と横)が0度、逃げ角(前と横)が若干の角度、刃の取り付け位置がホルダ
ーに対して45度となっていますので切刃角(前と横)がそのまま45度となっています。
このまま使っての丸棒削りはまあまあの感じですが、端面削りは上出来です。
また、切刃角は刃物台のセットの仕方で変えることが出来ます。
中ぐりバイトは小さ目の棒ヤスリを真剣バイトの形状に加工して差し込んで使います。
また、中ぐりの仕上げバイトには鉄鋸の刃を使い、この刃は凸凹面のかきとりを考えた加工で
ホルダーに挟みつけて使います。
市販の中ぐりバイトに比べて、シャンク長さが調節できるので、更に奥深く加工することが出来
ます。しかしあまり長すぎると加工物と共振してビビリが生じたりします。
写真下右は突っ切りバイトです。これは市販のホルダーを利用して鉄鋸刃を挟んで使います。
この鉄鋸刃を突っ切りに加工する時、木棒見本が役に立ちました。
突っ切りの使い方は、はじめの刃の出し方は丸棒にケガキを入れるため1〜2ミリ程度で、そ
の後徐々に長くして突っ切り作業をします。
33.チビSLになるまでのプロセス
1作目の目標は「動くマシン」でした。
ところです。
尚、エネルギーはエアーコンプレッサーからの圧縮空気を利用しています。
SLのリンク機構を研究しながらの完成で、動いた時は非常に感動したものです
2作目の目標は「走るマガイSL」です。
そして右はリンクモーションのアップ写真、すごく「ゴッツイ」ですね。
すると、ゴロゴロと動き出し、まるで幼児のヨチヨチ歩きのようでした。
そして、最終的にはレールの上で人を乗せて約15m走るようになったのです。
その後、表題の「チビSL」となりました。
34.チビSLの動画です
35.四作目です
三作目の「チビSL」にはレールが必要だし、またエネルギーである蒸気の立ち上げにはいつも
時間を要していました。
この面倒さを解消すべくマシンとして「まがいSL自動車」を作ってみました。
鉄輪にオーリングをはめ込んで舗装された路面を走れるようにしました。
やけどの心配がなく身近な場所で楽しめ、また、乗ることも出来ます。
しかし鉄路に比べると路上は車輪の転がり抵抗がかなり大きいので馬力が落ち込みます。
私が乗って試みた結果、進んだ距離は何と2m…「なるほどなあ」と思いました。
36.五作目です(SLエンジンを搭載したミニ・ロードトレインかな?)
左は組み立て時、右は圧力タンクや椅子を下ろした(外した)状態です。
今回は次のところを改良しました。
@溶接部分を少なくしました。従って分解もやりやすく整備性が向上しました。
特に前回はエンジンブロックとバルブブロックを溶接で接合した一体型でしたが、今回は取り
外しができるので内部点検がやりやすくなりました。
Aパワーアップ
エンジンの内径を大きくしました。
四作目の内径が25ミリ、五作目は31ミリで圧力を多く伝えられ粘りがあります。
B車輪径を更に小さくしてトルクの点で有利になり駆動力がUPされました。
しかし速度は遅くなります・・・安全を考えれば速度は遅い方が有利と考えます。
Cタイヤに樹脂製品を使用しました。
前回は“Oリング”でしたので、走行中外れ落ちが激しく対策したものです。
材料として15ミリ厚の樹脂製マナイタをホルソーで切り抜いて鉄輪にはめ込み金属ボンドでの
接合です。
D組み立てや整備・点検を容易にするために、本体の浮き上げ装置(?)を用意しました。
4本の支柱(フラットバーですが)をフレームに取り付け「4柱リフト」の役目を果たします。
これにより、エンジンのタイミングも調整する事が出来ます。
E客を乗せるための台車を作りました。
連結して列車風にしています。
1両目は圧力タンクに腰かけ機関士感覚、2両目は台車に腰かけ乗客感覚です。
大まかなところは以上です。
これによって1人乗り走行では20メートルの実績。
2人(合計体重130キロ)では、動かない・・・・
・・おもわず後部の乗客がスタートに反動をつけようと地面を蹴ると走りだした(5メートル)。
・・・とりあえず「 バ ン ザ イ 」で満足。
37.蒸気のおはなし
私なりの考え方に基づいた話です。
一般的に蒸気とは、台所でヤカンから蒸発している白い煙状の物体を思い浮かべます。
しかし、蒸気は本当は見えないのです。
例えば、寒い場所で吐く息は白く、また、きりふきの霧だって白いですね。
この白く見えているものは、実は水滴なのです。
目に見えない小さな水滴が無数に舞い上がって白く見えてしまうのです。
それじゃ白く見えないものが蒸気かと問われても、そうともいえないのです。
体温調節での汗の蒸発や、部屋の中にある洗濯物だって風がないのに水分が蒸発して乾き
ますよね。
蒸気は、沸騰温度(沸点)と気圧(圧力)が大いに関係しています。
地上は大気圧で1kg/cu、富士山の頂上は大気圧より低く0.65kg/cuといわれます。
水は地上で100度、富士山の頂上では87度になると蒸気に変わり、膨大な体積になります。
例えば大気中の水が水蒸気に変化すると1650倍に膨れ上がります。
この爆発的な体積変化の性質を利用するとエネルギーとして使えます。
しかし、圧力鍋の場合は容積が決まっており、体積変化ができずに圧力だけが上がります。
そして、鍋の中は沸点が120度で圧力は約2kg/cuとなっています。
つまり、圧力が低いと蒸気になりやすく、圧力が高いと蒸気になりにくいのです。
私のチビSLで使うボイラーは稼動に必要な圧力(2〜4kg/cu)を得るために、加熱しながら沸
点の143度をとらえています。
143度以上になると圧力を超えてしまうので、安全バルブを働かせて蒸気を放出します。
そしてSLを走らすために水蒸気を使うと、その分、ボイラーの中の圧力が下がります。
圧力が下がると沸点も下がってしまい、ここでまたドンドン蒸気生産が自動的に始まります。
これが常にくり返されているので、ボイラーの釜の中が冷えない限り蒸気エネルギーはまんべ
んなく供給され続けているのです。
そしてSLは水を保有している分、どこまでも遠く走ることが出来るのです。
38.更に改良しました(操向装置です)
だが避けることができなく、そのまま、つまずいて止ってしまう。
発車した時、ナナメ方向になり、そのまま走行すると縁石に向かい止めざるを得ない。
これじゃ広くて障害物のない場所でないと走れない。
何とかならないかなあ・・・と悩む。
何回も繰り返しているうちに次の状況に気がついた。
進んで行く目の前に石、おもわず自転車のように体を傾けて避ける行動をとる。
するとこのマガイSL(ボイラーのないミニSL自動車)は、体を右に傾けると左へ、左に傾けると
右へ進んでいった。
不思議に思って車輪を確かめて原因を調べました。
結果、大発見!。前輪がトーイン構造で組み込んでいることが原因でした。
右に重心をかけると、右前のタイヤが若干左方向になっているので左に向かっていく。
それじゃ、ハの字のトーインじゃなく逆トーイン(トーアウト)はどうか。
“逆も真なり”で完結です、右左折は出来なくても進路変更だけは出来るようになりました。
これで障害物も避けられる、細い道も抜けられる“メデタシ・メデタシ”でした。
「マガイSL式車輪配置」の説明
右に体を傾けると重心の右移動で、右側車輪の働きが強くなる。
写真の中の、操向前輪Bと駆動後輪C・Dの働きで右方向へと進路が変わります。
39.組み立てや整備調整のために
本物のSLは天井クレーンなどを使って整備調整を行うようですが、このチビSLは自らを作業
台として考えます。
写真@:載せている圧力タンクを下ろすとフレーム内側に板金(イタガネ)が取り付けられています。
写真A:この板金(フラットバーともいう)を4枚取り出して並べているところです。
この状態にしておけば、整備や調整がやりやすくなります。
写真C:下回りの方は、やりやすくするために、ひっくり返しての整備作業です。
40.面白タイヤ
面白タイヤの紹介です。
鉄路の上を走るわけではないので、どうしてもキチンとしたタイヤの必要性を感じていました。
試行錯誤の結果、下記写真の形におさまりました。
15ミリ厚のマナイタをホルソーでくり貫き鉄輪にはめ込んだものです。
少し緩かったので1ミリ厚の鉄板を切ってシムとして間に挿入、更に接着剤を封入しています。
これでバッチリです、アスファルト上の安心走行です。
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