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【ホラー篇】
【恋愛篇1】
【恋愛篇2】
【童話篇】










【ホラー篇】
その傘は元々其処にあったのだと思う。
記憶は定かではないのだが、確かに色や柄の印象が残っている。
取り立てて、目立つ感じはない。
ごくありふれた……そう、スーパーの出入り口辺りに置いてあるような代物だ。
1、2年も使えば草臥れてしまいそうな。
まさしくその傘は使い古されていた。撥水も殆どしなさそうだ。全体的にべったりと濡れて、重そうな見た目。
澄みきった晴天の下、水溜まりを作るほどに。
雫の零れた跡が転々と柵まで続き、立てかけられている。
振り返ったのは何度目だろう。
その度に傘は其処に在り、水滴を溢し、まるで視線を向けられるのを待っていたかのように滑った光を放つ。
追いかけられているのか?
何の為に?
……傘が?
俺は暫し途方に暮れる。

Written By "橘靖之", "『箱庭のそら』 "15555 count Memory.


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