性格とは何か?
−交流分析(TA)における説明−

ヒューマンスキル研究センター 代表取締役  細川 政宏
 性格はなかなかのくせ者です。
 「わかっちゃいるけど、やめられない」という言葉がありますが、これは性格にもあてはまります。「自分の性格、わかっているけど変えられない」のです。意識性が下がると地が出ます。たとえて言えば、もう一人の自分がモニターしていて、自分を見ているようなときには、性格にふりまわされずに自分をコントロールできます。しかし、人間の脳というコンピュータには限界があるので、いつもコンピュータをまわして意識性を上げていたら、オーバーヒートしてしまうのです。
 「性格とは何か」
 この問いに対する答はさまざまです。性格の存在を否定する人たちもいます。ここでは、あまりクセのない伝統的な考えを示しましょう。
1 性格は個性である
 例えば、「Aさんは『明るい』性格だ」と表現します。同様に「Bさんは『慎重』だ。Cさんは『冷静』だ。Dさんは『温かい』。Eさんは『厳しい』」などと言います。つまり、性格は人を区別するものなのです。
2 性格は変わりにくい
 5年前の性格と今の性格は違いません。例えば、久しぶりに会った友人に「明美って昔と変わらないね」と言われます。すると、「いろいろ大変なことがあって、性格変わったと思ってたけど、変わってないかもね。もともとコツコツ型なんだ」と答えてしまいます。
3 性格は筋がとおっている
 朝、目を覚まして家を出る。職場で多くの人たちと仕事をする。仕事を終えて、イタ飯屋で友人とちょっとくつろぐ。家路について、自宅で家族と接しながら家事をこなす。そして就寝。これが一日のサイクルだとします。自宅、職場、イタ飯屋と状況は大きく変わっています。当然、あなたの行動も変化します。しかし、それらの行動をじっくり観察すると、それほど大きな違いは見られないのです。例えば、思いやりある優しい性格のあなたは、自宅でも職場でも優しいはずです。すなわち、多少の変動はあったとしても、全体としてなめらかに連続しているのです。
4 性格によって行動の予測ができる
 例えば、コツコツやる性格の明美さんは、家事をこなすときも、仕事をしているときも、勉強をするときも、人の話を聴くときも、じっくりと根気よく取り組む傾向があるでしょう。だとすると、まったく違う新しい状況でもコツコツやろうとするはずです。すなわち、明美さんの性格を知っていると、明美さんの行動を予測することができるのです。そして、人々の関心はこの「性格と行動予測」に集まりました。

図 交流分析における性格の構造
 「性格はどのような特徴でできているの?」
 この問いに対する答もさまざまです。E.バーンという精神科医は図のような構造を考えました。交流分析(Transactional Analysis)と名付けています。そしてつぎのように説明しています。
 子どもは、親から指導されたりした直接体験や、親の言動を観察した間接体験をもとに親を模倣し、あるいは親を反面教師としながら、感情の表し方、物事の捉え方、見方、行動の仕方などのルールや法則、基準といったものを学習していきます。これがParent(Pと略す)と命名された性格特徴のひとつです。多くの体験データ、観察データを一貫したパターンに作り替えるためには、言語の獲得も不可欠と考えられています。親の言動には2種類あり、子どもを受け入れていく優しいかかわり方を模倣してNurturing Parent(NPと略す)ができました。また、しつけに見られる厳しいかかわり方を模倣してCritical Parent(CPと略す)ができました。
 Pができるよりも前に、親の影響を受けながら、人間に共通の生まれながらの特徴をもとに作ったのがChild(Cと略す)です。感覚的、感情的な側面の強い特徴です。
 人間に本来備わっている欲求や衝動のうち、好奇心を中心に発現してくる特徴があります。これがFree Child(FCと略す)です。母親と共生し、母親に守られることによって育まれ強化されます。
 また、人間に本来備わっている欲求や衝動のうち、愛着心を中心に発現してくる特徴があります。これがAdapted Child(ACと略す)です。母親に向けられた愛着を満たされると、赤ちゃんは母親から少し離れて自由に行動できるようになります。
 さらに、人間に本来備わっている欲求や衝動のうち、自律心(セルフ コントロール)を中心に発現してくる特徴があります。これがRebelious Child(RCと略す)です。
子どもが成長すると、この自律心をもとに「靴をはく」などの日常生活能力が身に付いてきます。この自律を促すと子どもは依存から脱却して独立心を養うことになります。
 Adult(Aと略す)は、人間の知性、知恵です。Aの形成には言語の発達が不可欠です。脳は10歳頃に完成すると考えられていますが、6歳では、ほぼ大人並に成長しています。語彙つまり使える言葉は、6歳で2千数百語にも達しており、大人との日常会話には支障がなくなっています。ところで、知性の原点は、赤ちゃんの「イナイイナイバー」遊びですが、大体6歳以降になると、現実には見えていない物を扱ったり、実物ではない擬似的な物を扱ったり数えたりすることができるようになります。そして、14〜5歳で抽象的で複雑な思考が身に付くようになるのです。
 いわばAは人間のコンピュータです。あるいは、CP、NP、FC、AC、RCという役者を演出する演出家のようなものです。ですから、Aの特徴が弱い人は、制御機能の劣るコンピュータであり、各役者の暴走を許してしまう能力の低い監督みたいなものです。上の図では、右側にリストアップされた欠点や問題点の多い性格と評価されることになります。
                 
参考文献
 イアン・スチュアート 深沢道子(監訳) 1991 TA TODAY 最新・交流分析入門
  実務教育出版

 多田徹佑,孤嶋圭子 1997 自己成長への旅立ち ヒューマンスキル開発センター,
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