2・11を考える集い 主催:平和・人権・教育・文化を守る会 |
”平和・人権・教育・文化を考える会”主催の2・11集会が60名の結集で行われました。講演を主としたもので,講演は「日本国憲法の視点で教育基本法「改正」を考える ――今こそ生かそう教育基本法」と題して,弁護士の高橋勲さんがされました。 当日の講演(レジメにメモしたもの)は以下のとおりです。 | | 主催者あいさつ(中村さん) | 講演のようす | |
講演「日本国憲法の視点で教育基本 ― 今こそ生かそう「教育基本法 − 高橋勲さん(弁護士) |
- はじめに――教育基本法「改正」をめぐる今日の情勢
- 教育基本法「改正」論議は1950年代末から,くり返し論じられてきた。 そして、今・・・。
- 中央教育審議会の中間報告(02.11.14)。03.2or3月,答申。
「改正」案→03通常国会提出をねらっている。 教育基本法制定以来の最大の危機。立法作業が急ピッチで進んでいる。 教育改革反対の世論を,私たちがつくり出すことが出来るかが重要。 - そして今年,小泉首相の3年連続の靖国神社参拝。――
- アジアの国々の厳しい批判。――当然
韓国の弁護士会との会談で,厳しく批判された。(「許せない」) - 靖国神社とは→侵略戦争肯定する立場に一国の首相が立つこと。
遊就館を見学した → 恐ろしい。侵略美化。全体として戦争論。アジアに対し「開放論」のトーン。 - 「つくる会の歴史教科書」問題も歴史の記憶の塗り替えの役割という点で同じ流れと本質。
- 2001.「9.11」以降のアメリカの戦争政策と日本政府の追随。テロ特措法,自衛隊海外派兵。イージス艦派遣と「有事法制」
- 戦争する国へ。――アメリカの引き起こす戦争へ日本が参戦。
有事法制は天下の悪法。日弁連もこぞって反対。大企業の代理人をやっているような弁護士も含めデモをした。 - 解釈改憲から明文改憲へ,一挙に突き進もうとする小泉内閣。
02.11.3中間報告が提出された。反対の(憲法学者)の発言が,バラバラにされちりばめられている代物。憲法の「改正」もありうるというものに変えられている。 - 国民の戦争協力への意識の「変革」が求められる。
こうした中で,「日本の教育はこれでいいのか」といって教育基本法が攻撃されている。 - 憲法調査会02.11.3中間報告。
- 最終報告へ向けて動き急。最大のねらいは9条。
そして,教育基本法の「改正」と改憲とは共通したねらいのもと,一体としてとらえている。我々も一体としてとらえていかなければならない。小泉首相の靖国参拝,日本の参戦化と有事法制の策動,改憲の動きという流れの中で,教育基本法改悪の問題がある。 ※2001年12月6日,憲法調査会,中曽根康弘元首相の発言 ――「改憲と教育基本法『改正』は,「日本の21世紀の新しい国家像」を明確にするうえで不可欠。 - 教育基本法の制定過程と日本国憲法 ――戦後改革と憲法,教育改革と教育基本法
- (1)1945.8.15をどうとらえる。
- ポツダム宣言の受諾。軍国主義国家ではなくて民主的な国家,社会へ。明治憲法体制と「教育勅語体制」の崩壊を意味する。
- しかし,現実は。当時の政治支配層――「国体維持」
押しつけ憲法論の誤り。――「押しつけ憲法論」:憲法調査会でも展開されている。 - 46.3憲法改正案草案要綱発表。46.6最後の帝国議会での審議が始まり,46.11.3公布。47.5.3施行。
(2)教育基本法の制定経過 - 46.3アメリカ教育使節団来日,教育のあり方「報告」。
- 4.8教育刷新新委員会発足――教育勅語の扱い,教育基本法論議ではじまる。
――新憲法制定論議と平行して。 - 46.11教育基本法の骨子,法案。
- 47.3.31教育基本法成立。同日に公布,施行。(憲法の施行される前に施行された)
(3)教育基本法のもつ特徴と本質 - 教育基本法の前文について
――草案にあった“戦前に対する反省”が,くわしくかかれていた。前文のもつ意味。 - 教育勅語→教育基本法へ(天皇の命令から法律へ)勅令主義から法律主義へ。
- 準憲法的本質――憲法との一体性
――「教育における憲法」(教育基本法は法律だが上位法。)。憲法と一体のものだということが前文に謳われている。 - 教育勅語――様々な議論を経て,48.6.19「教育勅語の排除に関する決議」(衆議院),「教育勅語の失効確認決議」(参議院)
※この教育勅語の処理と論議にみられる戦前戦後の連続と断絶。 (4)何がかわったのか。−−今あらためて、確認する意味。 - 臣民づくりから人間教育へ・・・・・天皇のために命を捧げる教育から人間教育。
- 教育の理念・目的−−国民が主権者、教育は一人ひとりの人間性の開花、人格の完成を(前文1条)
平和主義−−「真理と平和を希求する人間の育成」 国と教育の関係のとらえ直し - −−国家目的に従属する、国家目的の手段としての教育から一人ひとりの可能性を育てる教育へ。
- −−憲法26条「教育を受ける権利」
教基法10条の意義−−教育の自由と自律性の欠落していた戦前の教育への反省のうえに立って、教育の自律性と教育の自由を保障し、官僚統制や外部の圧力に屈することなく、教師が創意と工夫によって、教育実践することをめざしたもの。 −−教育内容の統制(学習授業要領の法的拘束力、教科書認定、教育行政の強化など、今は多くの問題が起っている。) - 日本国憲法と一体となり、準憲法的性格をもつ教育基本法の理念・目的は、今日においても生命力をもつ。 むしろ、現実の教育に生かされなければならない。
- 教育基本法をどう変えようとしているのか、その問題点
- (1)中間報告
- 中教審「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(中間報告)を発表(02.11.14)
これに基づき、最終答申、03通常国会へ「改正」法案提出へ。 中間報告→教基法「改正」の方向と内容を具体的に示すもの。 (2)中間報告がめざす「教育の目標」 - (中間報告)「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人」「国家戦略としての教育改革」
湾岸戦争は,憲法史上重大なエポックを与えた。金を出すだけでなく「血を流せ」ということが,この10年間で益々高まっている。 - 人格形成を目的とし、教育への権利と位置づけた現行法の理念を根本的に転換するもの。
- 「有為な人材づくり」教育を国家政策の道具
- 戦前の「人材づくり」政策への無反省
(3)貫かれる愛国主義・国家主義 - 「新しい公共」「国を愛する心」
- 個を否定して、公=全体の利益に奉仕を強調。「有事法制」下での人づくり政策への連結のおそれ
- 「新しい公共」−−「大競争時代」の「閉塞感」などの社会矛盾を「公共」の名による社会統合
- 国際社会を生きる教養ある日本人」「国際社会の一員たる自覚」「伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する心」など。
- 現行法前文、1条がすでに教育の目的の一つとして平和と人類の福祉という国際社会に貢献する人間の育成を期することを示している。
- 定義があいまい。−−「日本人」「日本の伝統・文化」「郷土と国を愛する心」
- 「国を愛する心(愛国心)」や「伝統・文化」は過去の戦争や差別など負の側面をもつ(まさに現行教育法はその反省のうえに立つ)。「愛国心」が強調されるときは,歴史的に戦争へ向けた動きが強まるとき。 国を愛する心はだれにでもあるが,しかしそれが強調されるのはおかしい。
- 現在の公教育において、既成事実が先行している。「心のノート」。「日の丸・君が代」の強制。「愛国心」の評価対象(福岡)など。
「心のノート」は,小・中の全生徒に配られた(7億3千万円かけて,1千2百万円かかった)。反対派の主張を見ないと引き込まれそうな内容。政治的なねらいが込められていると心配になってきた。 - 日本で現に学ぶ多くの外国人の子どもたち
- 憲法19条(思想・良心の自由
(4)能力主義の強調 - 「一人一人の個性に応じたきめ細やかな教育」「その能力を最大限伸ばしていく視点」を強調。
これまでの教育:「結果の平等を重視」「画一的教育」 - 教育を人権として保障しようとする憲法26条「その能力に応じてひとしく教育を受ける権利」、教基法3条「その能力に応じる教育を受ける機会」あるいは、子どもの権利条約29条などの趣旨に反する。
- 教育の現状。困難をさらに増長することになりはしないか。
- 完全週休2日制」「新学習指導要領」過密スケジュール、おちこぼれ、学校荒廃。教育は一部のエリート少数精鋭のための教育ではない。
- 「できん者はできんままで結構」「非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておけぱいい」(教育課程審議会会長三浦朱門)でよいのか。
(5)「教育振興基本計画」の策定と教育内容の統制のおそれ - 中間報告は第3章で、「教育振興計画の在り方について」として、詳細な提言。
教基法10条1項はそのままとし、2項につき「国・地方公共団体の責務等」を示すように規定すべきとする。 - 教基法1項と2項は一体。2項だけの変更は許されない。
10条は、戦前の教育行政への深い反省に基づくもの。 - 「判例」旭川学力テスト最高裁1976年5月21日大法廷判決。「国の教育内容への介入はできるだけ抑制的であることが要請される」
(6)教員の使命・責務条項 - 「国.公.私立学校の区別なく、教員の使命感や責務」「研究と修養等により資質向上を図ることの重要性」の規定すべし。
- 教基法2条、6条、10条と直接関連する。
「全体の奉仕者」(6条)、「不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接責任を負うて」(10条)、そして「学問の自由を尊重し」(2条)などの現行法の意味と歴史的背景(戦前の教育への反省)の観点から。 - 教育現場の実情はどうか。 教員は学習指導要領にしばられる。教員を通しての教育の国家統制(日の丸、君が代)。 差別的人事考課。
(7)子どもの責務条項 - 「真撃に学習に取り組む責務を規定すべき」
- 憲法26条の「教育を受ける権利」の正しい理解と解釈に立って。 旭川学力テスト最高裁判決。「子どもの教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの学習する権利に対応し、その充足をはかりうる立場にある者の責務」
- 教育の国家統制への思惑。
- 教育の現状(cf.不登校のこども)などにてらして
(8)その他 (9)総じて、中間報告の示す教育基本法「改正」は、その方向性、視点、具体的内容において、日本国憲法の理念と切断される危険をもつもの。 - ○「前文の見直し」−−法全体の見直しの考え方が決まった後で改めて検討。 →この論はおかしい。白紙で提案しているが,卑怯なやり方。
- 「前文」のもつ意味と重要性
前文は、憲法の理念を実現し、憲法を具体化するために設置された教基法の基本理念、この国の教育の理念を示すもの。 - 教基法は憲法と一体のものであることを示した。
「改正」についての具体的検討の前に、何よりも、この前文に盛りこまれた理念についての検討が重要。 - 教育基本法の「改正」で、今日の「教育問題」は解決しない。教育基本法を生かす「教育改章」を。
- 教育基本法の制定経過も含め、その意義と今日的意味を語り合うことの大切さ。
- 教師、父母も、子どもを中にはさんで
- 今日の教育の現状の打開の観点で
- 今日の憲法・民主主義をめぐる情勢とのかかわりの中で、教基法「改正」のねらいと本質を、とらえ直すことの大切さ。
- 教育基本法「改正」に反対し、教育基本法と理念を現場の教育に生かす国民運動の発展を。
日弁連や法律家団体も今,立ち上がり始めた。 ※ ぜひ,教育基本法を読んでください。 以上 |
教育現場からの報告 |
講演に続いて,高校の教育労働者からの,教育現場からの報告がありました。 今教育現場で何が起きているのか。 週休2日制になって疲れている。 授業が5日間の中に凝縮されて,7時間目を入れる高校も出てきた。 賃金も下げられてしまっている。 そして,以下5点について問題点が報告されました。 - 特色化選抜が今年から採用された。
- 成績以外のものから選ぶ。 「とにかくやりなさい」。 多段階選考(2度入試)で,1度目は人格的にふるい分け,2度目は成績でふるい分ける。 → やめた法がいいという意見になっている。
- シラバスをつくりなさい。
- 昨年の11月に出てきて3月までにつくりなさいということになっている。 → 大混乱する。
- 教員の自宅研修が事実上とれなくなった。
- 8日前までに,いつ,どこで,ねらいは何か,1回に1枚づつ報告書を書けとなった。
- 昨年度末,突然,使う教科書を選んだ理由を書きなさい,ということをいってきた。 → 私たちと保護者に選定権があるということで闘っている。
- 学区が拡大された。
- 今まで,木更津から千葉へは受けられなかったが,君津・木更津・市原を一つの学区としたため,出来るようになった。→ これは,統廃合の問題と絡んだ問題としてとらえている。
こういった攻撃が突然出てきた。 戦争する側,憲法改悪しようとする側は,教育基本法がじゃまなのでしょう。 こうした攻撃に反撃し闘っている。 ○○高校では,廃校化攻撃に,生徒たちが動いて,「自分たちはこの学校で卒業したい」と立ち上がり,廃校化は棚上げ,手直しせざるを得なくなっていて,廃校化攻撃を阻んでいる。 |
「教育基本法」を守り、有事体制に反対する決議(案) |
教育基本法は、その前文に「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」と記されています。 戦前の教育の反省に立ち、「教育における憲法」という位置づけを明確にしています。 1947年に施行されて以来はじめて中央教育審議会は、文部科学省の諮問事項(新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方)に応じて昨年11月に答申をだしました。 しかしその内容は伝統・文化の尊重の名の下に「国を愛する心」や「公共」への福祉の重視であり、復古的な道徳教育の・強化を図る方向での「改正」であることが、本日の集会で確認されました。 戦後の教育の歴史をたどってみると、公選の教育委員が任命制になるなど統制が進み、教育基本法第10条にある「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し責任を負っておこなわれるべきものである。」との条項をはじめ、教育基本法そのものが骨抜きにされてきた側面があります。 従って、教育問題に関する論議は、教育墓本法の改定を前提にするのではなく、教育基本法の指し示す方向が教育現場でどれほど生かされてきたのかを検証することがなによりもまず優先されるべきものです。 すなわち教育基本法の目指す理念や内容が、この50年間でどこまで実現できたのか、実現できていない原因と、実現のために必要な施策は何かなどという観点からこれまでの教育施策を総点検することが必要であると考えます。 現在、国会では教育基本法改定論議と同様の傾向が顕著に見られます憲法調査会は、憲法がどのように国民に保障され生かされてきたのか、また不十分であった点はどのようなことかといった調査研究はほとんど無視し、憲法は今の日本の現状にあっていない、「改憲」が必要との声が多いなどという「中間報告」を全体の合意もなく多数決で押し切って提出しました。 また、継続審議中の「有事法制三法案」においては、「有事」には国民の憲法で認められた諸権利を停止し制限し、国際協調の名の下に自衛隊を海外に派遺できるようにしようと政府は目論んでいます。 教育基本法改悪、有事法制制定、憲法改悪といった一連の流れをみるとき、この攻撃に反対し、教育基本法を守り、有事体制を許さない取り組みをすすめることを私たちは本日確認しました。 更に、イラク攻撃がアメリカによって声高に叫ばれているとき、私たちは、話し合いによる平和的解決を望む立場かち、戦争への道を推し進めることにつながる「イラク攻撃」に強く反対し、日本がこれに加担しないよう運動を強めることも確認しました、以上をもって集会の決議とします。 2003年2月11日 「2月11日を考える集い」集会 |