「有楽町ビラまき事件」判決文(全文)

 一部略した部分を除き、すべて原文のママ起こしましたので、大変長々しく
見やすいものではないと思いますが、ご了承ください。
とにかく、要点は「一般交通に著しい影響」を与えるかどうかと、「市民の
自由や権利との調和の観点から、要許可となる基準は相当高度なものを指す」
という点に絞られていることがわかります。

 引用元は、『判例時報』第443号の26〜29ページです。
 「公共図書館リンク」というサイトで、各都道府県内の複数の自治体の図書館
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昭和四〇年(う)第五七〇号

判  決

 【被告人の住所氏名 略】
 右の者らに対する道路交通法違反被告事件について、昭和四〇年一月二三日
東京地方裁判所が言渡した無罪判決に対し、検察官から適法な控訴の申立てが
あったので、当裁判所は、検事大泉重道公判出席の上審理をし、次の通り判決
する。

主  文

 本件控訴を棄却する。

理  由

(控訴趣意)
 【略】

(当裁判所の判断)
 本件公訴事実に、「被告人は、いずれも、所轄警察署長の許可を受けないの
に、昭和三七年五月四日午前八時頃から同八時三五分頃までの間、東京都千代
田区有楽町二丁目一三番国鉄京浜線有楽町駅中央日比谷口前の交通のひんぱん
な道路において、日本共産党千代田区委員会野坂、岩間事務所発行の『全国遊
説第一声国会報告大演説会』と題する印刷物及び『戦争準備をいそぐアメリカ
の核実験をただちに中止せよ』と題する印刷物をそれぞれ通行人に交付したも
のである」というのであって、これにたいする適条として検察官は道路交通法
第七七条第一項第四号第一一九条第一項第一二号東京都道路交通規則第一四条
第八号を挙げたのに対し、原判決は、「被告人らが、それぞれ、右日時場所に
おいて、通行人に対し右題名の印刷物を交付したこと、被告人らがいずれも右
交付行為につき事前に所轄警察署長の許可を受けていないことが認められ、更
に、当該場所は、国電有楽町駅中央日比谷口前とそごう百貨店との間の歩車道
の区別のない幅員一一・三米の道路であって、右日時場所における交通の状況
は、同駅に電車が停車する都度降車した相当数の通勤者が日比谷方面に向って
同道路を横断して通行し去り、次の電車が到着するまでの数分は人の交通が閑
散になるという状態が繰り返されるほか、通勤者以外の一般歩行者及び自動車
の通行は極めて少ない状況であり、また、右中央日比谷口は同駅の主要出入口
ではないので通常国電主要駅の出入口付近にみられるような乗降者による混雑
は全くみられないことが認められるが、その交通の状況を総合し他の一般道路
との比較において観察すると、同所は社会通念上いわゆる『交通のひんぱんな
道路』に該当するというべきであって、一応右公訴にかかる外形事実を認定し
得るということができ、それは一見東京都道路交通規則第一四条第八号に掲げ
る行為に該当するかのようである」としたが、他方、「法第七七条第一項第四
号の規定の内容に徴して明らかなように、法は公安委員会において道路または
交通の状況によって危険の防止、交通の安全または円滑のため必要と認めるも
のをすべて要許可事項として規制し得るとしたのでなく、さらに当該行為が社
会通念上一般的にみて祭礼行事のようにその行為自体において一般交通に著し
い影響を及ぼすような性質内容をもつ類型のものであるか、またはロケーショ
ンのように道路に人が集まる状態を招いて一般交通に著しい影響を及ぼすよう
な性質内容をもつ類型のもの、換言すれば、行為の性質上一般交通に著しい影
響を及ぼすことが通常予測し得られる行為類型に属すると認められるもので、
それが祭礼行事やロケーション、更には法第七七条第一項第一号ないし第三号
に規定する行為に匹敵するものにその範囲を限定して委任したものであること
が明らかなのであるから、そもそも、公安委員会が右委任に基いて規則に定め
るべき要許可事項に、右類型に該当しないものまでをも含ましめることは、右
委任の範囲を超えるものとして許されないというべきである。ところで、……
『物の交付』ということの概念は甚だ包括的であってそれ自体からは定型的に
一般交通に対する影響の程度を判然と考えることが困難であって、それが多数
集団によってなされる等の場合においてあるいは一般交通に著しい影響を及ぼ
すとみられる場合があるとしても、その態様方法のいかんを問わずすべて一般
交通に著しい影響を及ぼす性質内容をもっているということはできない。そこ
で……規則にいう『物の交付』とは、それに限定を加え、社会通念上一般にそ
の態様方法からみて法の掲げている前示用件(類型)を充しているものと認め
られる範囲内の物の交付行為をいうのであって、右の類型に当らない行為まで
をも含ましめているものではないというべきであり、従って規則の右条項部分
はこれを『交通のひんぱんな道路において』、『一般交通に著しい影響を及ぼ
すような形態若しくは方法により物を交付すること』というように態様上の限
定を加えて解すべきものである。……ところで、規則にいう『物の交付』を前
述したような限定を付して解釈すべきであることを前提とすると、一人または
少数のものが、人の通行の状況に応じその妨害を避けるためいつでも移動し得
る状態において、通行人に印刷物を交付する行為のようなものは、その態様方
法において社会通念上一般に一般交通に著しい影響を及ぼす行為類型に該当す
るものとはいい難いところである。……『交通のひんぱんな道路』という文言
を人及び車馬の雑踏する、あるいはそれに近い交通のひんぱん度の高い道路と
いうように解するのであればともかく、交通のひんぱんな道路であるとはいう
ものの、通常の、言いかえれば、本件において認定した程度の交通の状況にあ
る道路を含むものと解するかぎりは、法の前示行為類型に該らないとして挙げ
た右態様、方法による印刷物の交付行為は、やはり一般交通に著しい影響を及
ぼす行為類型に該ろのもとはいい難い。以上の説示を前提とすれば、被告人ら
の本件印刷物の交付行為は、その態様、方法に照らし一般交通に著しい影響を
及ぼす程度の類型に該る行為とは言い難く、結局前記法規による要許可事項に
該当するものではないというべきである。」とし、被告人らの本件行為はいず
れも罪とならないものであるとして被告人らに対し無罪の言渡をした。
 これに対し、検察官の控訴趣意は、原判決が、法第七七条第一項第四号によ
り公安委員会において要許可事項として規制し得るのは、当該行為が社会通念
上一般的にみて祭礼行為のようにその行為自体において一般交通に著しい影響
を及ぼすような性質内容をもつ類型のものであるか、またはロケーションのよ
うに道路に人が集まる状態を招いて一般交通に著しい影響を及ぼすような性質
内容をもつ類型のもの、換言すれば、行為の性質上一般交通に著しい影響を及
ぼすことが通常予測し得られる行為類型に属すると認められるものでなければ
ならないと判示した点については、同意見であることを認めながらも、祭礼行
事やロケーションは、社会通念上類型的にはその行為により一般交通に著しい
影響を及ぼすことが通常予測し得られるもの、すなわち、一般交通に著しい影
響を及ぼすような行為に当ると考えるが、その程度は具体的事案によって相違
があってその規模、態様、方法及び行われる土地の道路または交通の状況等に
より交通妨害の程度は千差万別であり、必ずしも交通妨害の程度の高度なもの
のみを例示したものとみることはできない(祭礼行事は道路使用行為の例示で
あり、ロケーションは必ずしも道路を直接使用しなくとも道路に人が集まるよ
うな状態を招く行為の例示であることは法文上明らかである)、要するに、法
第七七条第一項第四号が公安委員会に委任した範囲は、法第七六条及びその趣
旨によって絶対的禁止行為すべきものを除き、一般交通に著しい影響を及ぼす
ような行為全般にわたるものと理解し得るのであって、その程度の特に高度な
ものに限定されているというべきものではなく、又公安委員会が要許可事項と
して規定しうる行為は、通常一般交通に著しい影響を及ぼすおそれのある行為
であれば足り、常に必ず一般交通に著しい影響を及ぼす行為にかぎられるもの
ではないことは同条第二項第一号第二号等の規定の存することからしても容易
にうかがわれるところであるとして、交通ひんぱんな道路において物を交付す
る行為は、抽象的に一般交通に著しい影響を及ぼす行為であるとともに、法が
公安委員会に要許可事項として規制することを委任した範囲内の行為である
(規則第一四条第八号にいう「物の交付」の行為は、個々の具体的な場合や瞬
間を取り上げれば、もちろん一般交通に著しい影響を及ぼさないこともあろう。
しかしその方法、態様のいかんにより、また交付物品の性質によっては著しい
影響をおよぼすものであり、おそらくそれが通常の場合であろう。しかも、規
則第一四条第一号ないし第七号がすべて単に「道路において」と規定している
にもかかわらず、同条第八号、第九号が「交通ひんぱんな道路云々」と規定し
ているが、これは、第八号、第九号に規定する各行為は抽象的には一般交通に
著しい影響を及ぼす行為とはいい得ても、具体的に交通閑散な場所で行われる
場合には第一号ないし第七号に列挙する各行為ほど交通妨害になることもない
ので、特に「交通ひんぱんな道路云々」と規定したものと解せられるのである。
規則第一四条第八号がこのような限定をした以上、原判決がいうような「一般
交通に著しい影響を及ぼすような形態若しくは方法により」との限定をさらに
加えることは無意味であるばかりでなく、かえって無用の混乱を惹起する危険
さえある。)と主張し、なお、本件の具体的内容は、原判決にいう「一人また
は少数のものが、人の通行の状況に応じてその妨害を避けるためいつでも移動
しうる状態において、通行人に印刷物を交付する行為のようなもの」ではある
が、なおかつ、現に相当の交通妨害の結果を発生せしめたことが認められると
して証拠を引いてこれを説明したうえ、右の状況からするならば、本件におい
ては、被告人らの行為は、現に一般交通に著しい影響を及ぼしたものとはいえ
ないとしても、これより交通量が若干増加するなどの条件が加われば、一般交
通に著しい影響を及ぼす結果が発生することは十分認められるところであり、
原判決のいうこの種の行為が「一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」で
あることを十分に例証しているものと認められるのであるとし、これを要する
に、原判決は道路交通法第七七条第一項第四号ならびに東京都道路交通規則第
一四条第八号の解釈を誤り、その誤りが判決に影響を及ぼしていることが明ら
かであるというのである。
 よって判断するに、道路交通法(以下単に法という)第七七条第一項第四号
により公安委員会が定めることを委任されている行為の範囲は、法自体におい
て明示するところの、一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しく
は方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響
を及ぼすような行為であることを前提とするものであることは、法文上疑をい
れる余地がないばかりでなく、道路使用の許可に関し規定した旧道路交通取締
法第二六条が「左の各号の一に該当するものは命令の定めるところにより警察
署長の許可を受けなければならない」としその第四号において「道路において
公安委員会の定める行為をしようとする者」と規定して右法条に基づき公安委
員会が定めることのできる行為の範囲を法自体で何ら限定していなかったのに
対しこれを現行法のように改正するにいたった立法の沿革に徴しても明らかで
あるから、法第七七条第一項第四号の規定により公安委員会が定めた行為であ
っても、一般にそれが法にいわゆる一般交通に著しい影響を及ぼすような行為
に該当すると解することができなければ、法定の要許可行為とならないことは
いうまでもない。そして、ここに一般交通に著しい影響を及ぼすような行為と
は、検察官所論のとおり、必ずしも現に一般交通に著しい影響を及ぼす行為に
限るものではなく、一般交通に著しい影響を及ぼすことが通常予測し得られる
行為、換言すればその意味で一般交通に著しい影響を及ぼすおそれのある行為
であれば足りると解すべきことは、法第七七条第二項第一号第二号の規定の存
することからしてもうかがわれるところであるけれども、その「一般交通に著
しい影響を及ぼす」ということが意味する一般交通に与える支障の程度につい
ては、法が例示する「祭礼行事」や「ロケーション」の概念から一般に連想さ
れるところの内容にかんがみ、又法第七六条において道路において禁止行為と
して掲げるものの多くが、道路においてそのようなことをする行為自体におい
て不当視されるものか若しくは社会的に無用行為と見られるもの等であるのに
反し、法第七七条の定める道路の使用に関する要許可行為の中には、その道路
における行為自体が公益上若しくは社会の慣習上有意義であると考えられるも
のあるいは個人の表現の自由、生活上の権利に関するもの等も含まれるので、
これと道路における危険の防止ないし交通の安全と円滑を図る必要とを調和さ
せその妥当な限界を画するため、とくに「一般交通に著しい影響を及ぼすよう
な行為」でなければならないという条件が置かれたものと考えるときは、それ
(前述の「一般交通に著しい影響を及ぼす」ということが意味する一般交通に
与える支障の程度)は相当高度のものを指すと解さなければならない。ところ
で、法第七七条第一項第四号の規定に基づき制定された東京都道路交通規則
(以下単に規則という)第一四条がその第八号に掲げるところの「交通のひん
ぱんな道路において、……物を……交付すること。」の場合について考えるに、
検察官は「交通ひんぱんな道路において物を交付する行為は、抽象的に一般交
通に著しい影響を及ぼす行為であるとともに、法が公安委員会に要許可事項と
して規制することを委任した範囲内の行為である」と主張するけれども、原判
決のいうように、単なる「物を交付すること」という概念は甚だ広範かつ包括
的であって、たとえそれが社会通念上いわゆる「交通のひんぱんな道路におい
て」なされる場合であっても、その交付の規模、態様等を度外視してそれ自体
から一般的に一般交通に対する影響の程度を判然と考えることは困難であるか
ら、祭礼行事やロケーションの場合と異り、規則に定めた前掲行為から一概に、
それが前述の意味での一般交通に著しい影響を及ぼすことが通常予測し得られ
るものの、換言すれば法にいわゆる一般交通に著しい影響を及ぼすような行為
であるとは即断し難いのであって、原判示の通り、それが多数集団によってな
される等の事例においてあるいは一般交通に著しい影響を及ぼすことがあると
見られる場合が考えられるとしても、当該交通状況のほかその規模、態様等方
法のいかんを問うことなく、すべて一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあ
るということはできない。しかし、それだからといって、規則の定めた前掲規
定をもって直ちに法の委任の範囲を超えた無効のものであると断じ去るのは必
ずしも妥当ではなく、法の委任の趣旨に照らし法第七七条第一項第四号の規定
との関連において考えると、むしろ、原判決のいうように、公安委員会は「一
般交通に著しい影響を及ぼすような方法により」物を交付する場合に限る趣旨
において前掲規定を設けたものと解すべきであるとするのは決して不当ではな
い。ところで、原判決の掲げる証拠によれば、原判示のように、被告人らが本
件印刷物を交付した場所は国鉄有楽町駅中央日比谷口とそごう百貨店との間の
歩車道の区別のない幅員一一・三米の道路であって、右印刷物を交付した日時
における同所の交通状況は、朝の出勤時に際し、同駅に電車が停車する都度降
車した客の一部相当数の通勤者が日比谷方面に向って同道路を横断して通行し
去り、次の電車が到着するまでの数分は人の交通が閑散になるという状態が繰
り返されるほか、通勤者以外の一般歩行者及び自動車の通行は多少あるに過ぎ
ない程度であることが認められ、同所が社会通念上いわゆる交通のひんぱんな
道路に該当することは原判決の認定する通りであるとしても、右証拠により認
められる被告人らの本件印刷物交付の規模、態様等その方法の具体的内容を見
ると、被告人らは、前記有楽町駅中央日比谷口前とそごう百貨店との間の道路
にほか二名の女性と通行者を間にはさむようにして二列に向い合ってほぼ固定
した位置で立並び、手にしたビラ(本件印刷物)を、通行者が来るのを待って、
前を通ればそのまま、後を通れば後を向いて、ときには接近して行って手渡す、
いらないという人に無理に持って行けということはない、もらう人はちょっと
立止まる恰好になるから後から来る人が若干歩調をゆるめる、いらない人は出
されたビラにさわらないように身体を左右に向けて通り過ぎる、又道路の方向
に進む通行人は被告人らが立っているところを避けて通ったとか、自動車が一
時停車し若しくは左に寄って進行していったものがあるとかいうのであって、
これを前述の同所における当時の交通状況に照らして考えると、被告人らの本
件印刷物の交付が、一般交通にある程度の影響を及ぼしたことはこれを否定で
きないにしても、前述の意味での一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあっ
たとは認め難く、ほかに右認定を左右すべき信ずるに足る証拠はない(原判決
が、「一人または少数のものが、人の通行の状況に応じその妨害を避けるため
いつでも移動し得る状態において、通行人に印刷物を交付する行為のようなも
のは、その態様、方法において、社会通念上一般に、一般交通に著しい影響を
及ぼす行為類型に該当するものとはいい難い」とし、これを前提として被告人
らの本件印刷物の交付行為はその態様、方法に照らし右行為類型に当らないと
したのも、結局同旨に出たものとして理解することができる。なお、検察官は、
本件印刷物交付の具体的内容が原判示の通りであることを認めながら、証拠に
より現に相当の交通妨害の結果を発生せしめたことが認められるとし、右の状
況からするならば、本件において被告人らの行為は現に一般交通に著しい影響
を及ぼしたものとはいえないとしても、これより交通量が若干増加するなどの
条件が加われば、一般交通に著しい影響を及ぼす結果が発生することは十分に
認められると主張するけれども、前認定の本件印刷物交付の方法ならびに同所
における当時の交通状況にかんがみ、一般交通に著しい影響を及ぼすことが通
常予測し得られるほどの条件が達成される状況にあったとは証拠上これを認め
ることはできない。)。してみれば、被告人らの本件印刷物の交付は法第七七
条第一項第四号所定の要許可行為に該当するものとはいえない。したがって被
告人らの本件所為はいずれも罪とならないものとして被告人らに無罪の言渡を
した原判決には、何ら所論の法令の解釈を誤った違法は認められず、本件控訴
は理由がないから、刑事訴訟法第三九六条により主文の通り判決する。

 昭和四一年二月二八日
                    東京高等裁判所第二刑事部
                      裁判長判事 足 立   進
                         判事 栗 本 一 夫
                         判事 浅 野 豊 秀

    街頭宣伝に許可はいらない
              逮捕令状問題を考える会HPより

 

 私たちが、駅前や繁華街などの道路で街頭宣伝を行い、ビラを配付していると、しばしば、制服警官が、「許可はあるのか。なければ道交法違反だからやめろ」と妨害してきます。
 しかし、原則として道路上でのビラ配付(街頭宣伝)に許可はいらないのです。
 警官が「許可は?」と言う根拠は道路交通法77条1項4号 です。けれど、道路上の通常のビラ配付は同条項に該当しないという確定判決が、下級審ですがすでに3件出されており、それは裁判所の確立した判断となっています。

●東金市中央公民館事件(判例タイムズ755号145頁)

 事件は、1987年1月15日午前11時20分ころ、千葉県東金市の中央公民館の前の歩道で、日本民主青年同盟の同盟員約15人が核兵器廃絶のビラまきと署名活動を行っていたところ、道交法77条1項4条および千葉県道交法施行細則11条9号による警察署長の道路使用許可を受けないビラ配付の容疑で、千葉県東部地区委員長が現行犯逮捕されたもの。

●有楽町事件2審判決(判例時報443号26頁)

 事件は、1962年5月4日午前8時ころ、被告人らが東京の国鉄(当時)有楽町駅中央日比谷口前の交通ひんぱんな道路において、日本共産党関係の印刷物を通行人に配付したため検挙されたもの。一審東京地裁は、道交法77条1項4号に該当しないと無罪判決を出し、東京高裁も一審判決を支持しました。
 

●大阪駅東口事件(判例時報922号21頁)

 事件は、1977年12月3日、「11・22在日韓国人留学生青年不当逮捕を救援する会」のメンバー17人が大阪駅前でビラ配付をしたところ、大阪駅長の構内ビラ配付許可と所轄警察署長の道路使用許可を受けていないとして警察官が妨害し、その際、警察官への暴行などで現行犯逮捕された原告が、不当逮捕として国賠を提訴したもの。