文献・学会発表

文献

IBSでは性的、身体的虐待歴が多く、重度の虐待歴はIBSの重症度と相関がある。(Ann Intern Med 123:782,1995)

米国からの報告ではIBS 患者に対する治療費として、受診費用が年間240〜350万ドル、薬剤費として年間220万ドルが費やされており、IBS患者の休職、失職率は健常者の3倍。これらをすべて考慮するとIBSによる直接・間接経費は約250億ドル(1ドル115円で計算して2兆8750億円)。(Pharmacoeconomics 17:331,2000)

IBSの病態に大きく関わるのが5-HT3及び、5-HT4であるが、いずれの受容体の刺激によっても消化管の通過が促進され、特に5-HT3の刺激により求心性知覚線維を介して消化管運動を腸液分泌が促進される。(Br J Pharmacol 141:1285.2004)

下痢型女性にアロセトロンが有効:2000年、2002年と下痢型女性を対象にした大規模臨床試験ではアロセトロン2mgが53〜69%の有効率を示した。(Lancet 355:1035,2000, Am J Gastroenterol 97:3139,2002)
米国では2002年から商品名Letronexとして下痢型女性に限って使用が認められている。

下痢型男性対するアロセトロンの効果:下痢型男性を対象にした臨床試験では2mgで53%の有効性を示した。(Am J Gastroenterol 100:115,2005) これまでの比較臨床試験で、アロセトロンの男性への有効率が低い結果となったが、理由は不明である。

行動認知療法はIBSに有効:症状発現時の状況とその時の症状認知、行動、情動、そして身体的変化について、その相互作用を自ら明らかにしていく行動認知療法の有効性が確かめられた。この根拠は不適切な認知、行動が症状増悪に作用し、適切な認知行動が症状改善の助けになるとの考えである。(BMJ 331:435,2005)
ラクトバチルスとビフィドバクテリウムがIBSの症状緩和に効果的:IBSに対するラクトバチルスとビフィドバクテリウムのプロバイオティクスの効果が確認された。しかもIBSではサイトカインであるIL-10とIL-12のバランスが崩れており、その改善も認められたという。(Gastroenterology 128:541,2005)

症状重症度は月経周期によって左右され、閉経前の患者の方が閉経後の患者より重症である。(Dig DisSci 49:88,2004,Clin Gastroenterol Hepatol 3:717,2005)

IBS患者では知覚以下の刺激に対しても神経回路の過敏性がある。(Gastroenterology 130:26,2006)

過敏性腸症候群の治療には、食物繊維、ペパーミントオイル、鎮痙薬が有効である。(BMJ Nov14,2008)




第4回 IBS Forum 2004 10/30

IBSにおけるHIF(Hypoxia-induced factor),VEGF(Vascular endothelial growth factor)の発現の検討:下痢型IBSではHIFとVEGFの発現が低下しており、腸管の虚血耐性低下、炎症鎮痛化の遅延、組織修復不全が起こり、炎症が持続するために消化管運動異常や痛覚過敏亢進を引き起こしていることが示唆された。

下痢型IBSにおける直腸知覚へのポリカルボフィルカルシウムの影響:ポリカルボフィルカルシウムは便性状の変化だけではなく、痛み閾値や直腸コンプライアンスの改善にもつながることが示された。




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