過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)とは


過敏性腸症候群は器質的な異常が無いにもかかわらず、下痢や便秘が慢性的に持続する機能性胃腸症の一つである。社会的なストレスの増加とともにこの疾患も急増しており、サラリーマンの欠勤理由2位、消化器内科外来患者の30%、国内人口の5%が罹患していると言われている。良性疾患であるが、仕事や旅行、レジャー、食事に制約が生じ、生活の質(QOL)を大きく低下させる原因となっている。発症機序は不明な点も多いが、病態生理として中枢神経機能と消化管機能の関連、すなわち、心理的ストレスを背景とした腸脳相関と消化管知覚の過敏が重視されている。実際、過敏性腸症候群患者へのストレス関連ホルモンCorticotropin-releasing hormone(CRH)阻害剤の投与により大腸の蠕動運動亢進が改善することがわかっている。



病態

IBSの腸脳相関を示唆する事項

1、IBSの腹痛や便通異常は心理的ストレスで発症あるいは増悪することが多い。
2、IBSは睡眠中に愁訴が出現することは稀である。
3、IBSは消化管の痛覚を感じやすい。
4、IBSは消化器症状以外に多彩な身体症状や精神症状を呈することが多い。
5、動物実験でIBS類似病態に中枢作動物質の関与が推定されている。
6、IBS患者の中には脳波学的に見て正常から偏位している症例が存在する。


日本臨床 50巻11号p.130,1992


Home