chapter-119 未完成 
[2018.05]

■ 完成と未完成・・・・・


[ ミレニアム・ファルコン(1/144)  ]
  完成時の姿が分かっていれば、つくっているものが未完成なのか完成なのか判別は容易につきます。たとえばプラモデル。
部品を組み立てて着色し箱絵と同じように出来上がれば”完成”です。
一方、鉄道模型のジオラマのように、製作者の頭の中に完成イメージがあるだけでは、良いものにしようといつまでも手を加え続けることになるので、永久に”未完成”です。
完成形が明確であればいつかは「完成した」と言える時が必ず来るはずですが、世の中には完成形がありながらなかなか完成しないもの、完成形の有無すら分からないものもあります。
 

[ Nゲージ(1/150)のジオラマ ]

■ 堤防・・・・・


[ 利根川(2017年):加須市 ]
  川の堤防は完成したように見えてもたびたび工事が行われています。より大きな洪水に耐えられるようにするため、堤防が高く大きく頑丈にされていきます。
昔に比べ現代の日本人が持つ資産は大きくなり、ひとたび住宅が浸水しようものなら、被害は建物本体のみならず家電、家具、衣類などに及び、鍋・釜が財産だった頃とは比べ物にならない額になります。
大都市には地階を持つ建物が増え地下街が広がり、地下をつなぐ通路が浸水の被害を大きくします。
そのうえICTの発達に伴い膨大なデータを蓄えている電子機器が被災すると、機器本体のみならず失われる情報の価値は計り知れない額になります。
 

[ 利根川堤防の変遷:139km右岸 ]
  関東平野を流れる利根川の流域は、たびたび大きな水害に見舞われました。
1947(S22)年にカスリーン台風の大雨により堤防が決壊した際は、あふれ出た水は埼玉県東部を襲い葛飾区や江戸川区にまで到達しました。
利根川では再度このような災害が起きないようにするため、堤防を高く大きくする工事が常に行われています。
さらに、洪水が堤防を乗り越えても決壊しないようにするためのスーパー堤防もところどころで造られています。
安全性は格段に高まりますが、コストも格段に高くなります。
 

[ スーパー堤防(2016年):足立区新田の荒川堤防 ]
  荒川沿いの足立区新田にスーパー堤防に整備された区間があります。
工場跡地を住宅地に転換する際に、堤内地側を盛土して緩やかな傾斜で宅地を整えました。
盛土をせずにそのまま使うと堤防が壁のように立ちはだかり、川の流れは全く見えません。
スーパー堤防を造るためには土地の買収は不要ですが、広い範囲の建物を一度移転してから盛土し、その後移転した建物を戻すので事業費は大きくなります。
また、スーパー堤防の整備は、土地区画整理や再開発事業に併せて行われることが多いので、権利者の合意形成にも時間がかかります。
 

[ 整備済と未整備の境(2018年):整備済のところは地盤が高い ]
  堤防の決壊を防ぎ洪水から市街地を守るためには、一部分だけ頑丈な堤防にしても効果はありません。
市街地沿いの堤防をすべて頑丈にするためにはまだまだ時間がかかります。
 

[ スーパー堤防横断図 ]

■ 首都高速道路・・・・・
 

[ 首都高のパンフ(2018年):晴海線が表紙に ]
  最近の首都高速道路は、車線を増やす工事や老朽化した施設の更新工事が目立ちますが、少しずつですが新しい路線も開通しています。
首都高速道路のホームページには、開通の歴史を分かりやすく示すページがありますが、どこまで造れば完成になるのかは示されていません。
2018(H30)年3月10日に首都高速道路10号晴海線の豊洲~晴海が開通し、湾岸線東雲JCTから晴海まで2.8㎞が通れるようになりました。
晴海には東京2020オリンピック大会の選手村が造られ、大会終了後は住宅に転用されることになっています。
築地市場の豊洲移転問題で完成が間に合わなかった環状2号線は注目を浴びましたが、10号晴海線は羽田空港から晴海の選手村を直結する高速道路で、環状2号線と同様にオリンピック開催時に大きな役割を担う道路です。
 

[ 首都高案内図に10号晴海線の都市計画決定されたルートを赤丸で追記 ]
  10号晴海線はこれで完成ではなく、さらに銀座方面に向かいます。
勝鬨橋の少し南で隅田川を渡り築地市場側へ入り、国立がん研究センター北側を通り新橋演舞場付近で都心環状線に合流する路線と、旧・築地川の跡地を使って新富町出口につながる路線が『高速道路晴海線』という名称で都市計画決定されています。
どちらの路線も地下を通る計画ですが、2016(H28)年11月に『築地魚河岸』という小売り店約60軒を集めた商業施設が、晴海線計画地の地上部にオープンしました。
将来、首都高の工事で支障にならないのでしょうか?
 

[ 新富町出口(2018年):出口線の両側に晴海方面への道路が見える ]
  新富町出口付近は10号晴海線の建設を見越して、出口のほかに晴海方面へ向かう道路がすでに造られています。
あとは舗装してラインを引けばすぐにでも車が通れそうです。
新富町出口の先は、築地川公園や駐車場として使われている部分もありますが、公園の地下には首都高速のトンネル構造物ができています。
公園の脇には地下と地上をつなぐランプが顔をのぞかせていますが、柵で閉ざされて入ることはできません。
 

[ 備前橋付近(2018年):使われていればオンランプ ]
  新富町出口から築地本願寺裏の備前橋までは、地下にトンネル構造物ができているようですが、備前橋から築地市場にかけては造られてないようです。
新富町出口付近は首都高の中でも最も古い1962(S37)年12月の開通なので、すでに建設から半世紀が経過していますが、いまだに未完成です。
10号晴海線の完成はいつになるのでしょうか。
 

[ 中央環状線(2017年):内・外回りが2層に分かれている ]
  10号晴海線は都市計画に定められた道路なので、いずれ完成形を見ることができそうですが、都市計画にすら定められていないルートが首都高にはあるようです。
その一つが中央環状線の扇大橋~千住新橋の間にあるジャンクションと思える構造です。
この区間は、わざわざ内回りの高架橋は高く、外回りの高架橋は低く造られ、荒川を渡ってくる高速道路と接続できるようにしています。
首都高を走っているときはあまり疑問に思いませんが、外から眺めると不思議な形です。
しかも内回り・外回りとも分岐線を取付けられるような構造で高架橋が造られています。


[ 中央環状線(2017年):分岐線が取付けられる構造 ]
  荒川を渡ってくる首都高は、入谷まできている1号上野線が延伸され中央環状線につながる構想のようですが、どこをどう通ってくるのか都市計画すら決まっていません。
完成することはないかもしれません。



■ サグラダ・ファミリア・・・・・
 

[ サグラダ・ファミリア(2014年):バルセロナでも巨大な建造物 ]
  スペインのバルセロナにあるサグラダ・ファミリアは、いつも工事中で完成までは数百年かかると言われる建物でした。
ところが、近年の建築技術の進歩や資金調達により2026年に完成する見通しがついたそうです。
1882年の着工から144年の歳月をかけての完成となります。
誠に気の長い話で、日本であればその間に2,3回は建て替えが行われています。
焦ることなくゆったりと完成を待つ寛容性が、日本人には欠けているのでしょうか。





 


おまけ   [ ナイルレストラン(2018年) ]
歌舞伎座の近くにある1949年創業の日本最古の印度料理専門店で、グルメ雑誌やガイドブックによく登場するお店です。
定番のムルギーランチは鶏肉も柔らかく辛さもほどほどですが、1500円はさすがに銀座価格では。
 

<参考資料>
○利根川上流河川事務所 ホームページ 「利根川・江戸川河川整備計画」
 (http://www.ktr.mlit.go.jp/tonejo/tonejo00141.html)
〇中央区都市計画施設図【平成30年3月31日現在】