chapter-43 住んでみたい街 
[2010.11]

■ 住んでみたい街(駅)ランキング・・・・・
   不動産会社の(株)長谷工アーベストは、ここ数年「住んでみたい街(駅)ランキング」を発表しています。WEBアンケート形式による調査とのことですが、新聞紙上でも取り上げられ関係業界では結構話題になるようです。
  2010(H22)年首都圏版の総合ランキングは、1位が『吉祥寺』、2位『横浜』、3位は『自由が丘』でした。1位から10位までは東京都内と神奈川県内にある街で占められ、残念ながら埼玉県からランクインした街はありませんでした。


[  ランキング2位の横浜(2004年):中華街は人気スポット ]
    アンケートは有効回答数が2340件とあまり多くない調査なので、時代の流行によって順位が大きく変動する街(駅)もあるようですが、それでも、新聞などで取り上げられるのは、首都圏に在住する住民の意向がある程度は読み取れるからだ思います。
 ちなみに関西版は、再開発によって大きく街が変貌した『阪急 西宮北口駅』だそうです。首都圏の都県別のランキングは下のとおりでした。
 
1位 2位 3位
23区 自由が丘 恵比寿 新宿
23区以外 吉祥寺 府中 立川
神奈川県 横浜 鎌倉 たまプラーザ
埼玉県 川越 大宮 浦和
千葉県 新浦安 市川
[ 都県別のランキング ]

■ 街のイメージ・・・・・
 さらにアンケートでは、街のイメージも聞いています。
 23区のランキング3位までは「都心立地」、「交通の便の良い立地」のポイントが高い街が上位という、誰もが納得いくアンケート結果でした。23区以外で上位3位までに入った街は、意外にも「公園・緑が多い街」という項目のポイントが最も高くなっていました。埼玉県の上位3都市もそこそこ緑の多い所だと思うのですが、評価の高い項目は「交通便の良い立地」、「庶民的な街」といった項目でした。


[ 新宿御苑付近(2011年):都心立地で交通の便が良い ]

■ 公園・緑の量・・・・・
 さて、「公園・緑が多い街」というイメージの『吉祥寺』、『府中』、『立川』は本当に公園・緑が多いのでしょうか? イメージを確かめるため公園・緑地の面積を見てみましょう。
 国土交通省が毎年行っている『都市計画現況調査』の平成21年度版によると、市の面積に対する「都市公園+緑地」の割合は、『吉祥寺』のある武蔵野市が4.4%(47ヘクタール)、府中市が5.1%(148ヘクタール)、立川市が5.9%(143ヘクタール)となっています。
 

[ 昭和記念公園(2010年):立川市にある国営公園 ]
   一方、川越市は0.8%(82ヘクタール)、『大宮』、『浦和』のあるさいたま市は2.2%(485ヘクタール)しかありません。統計資料の数字からも明らかなように『吉祥寺』、『府中』、『立川』の3都市には公園・緑地が多くあることが裏付けられています。



■ 23区以外の上位3都市・・・・・
ー吉祥寺ー  『吉祥寺』の駅は物販店、飲食店に取り囲まれ、公園や緑地を目にすることはできませんが、南に300m程行くと「井の頭恩賜公園」(三鷹市になります)、その隣には「井の頭自然文化公園」と、駅から歩いて行ける距離に大きな公園があります。どちらの公園にも多くの樹木があり大きな緑の塊をつくりあげています。神田川の源流がある井の頭公園などの存在は、街のイメージ形成に大きな影響を与えているようです。
 

[ 吉祥寺駅前(2010年):店舗に囲まれる駅前 ]


[ 井の頭公園(2009年):緑が多い ]

ー府中ー  『府中』は大國魂神社への参道なのでしょうか、駅のすぐ西側に約500mのけやきの並木道があり、大きな緑のトンネルを造り出しています。東京競馬場の周りにも並木やお寺、神社の森があり、緑が多い印象を与えています。
 さらに、市内の道路は決して幅が広いとは言い難いのですが、桜や銀杏などの街路樹が植えられ並木道が創られています。井の頭公園のように著名な公園はありませんが、このような緑が評価につながるのでしょう。


[ けやき並木(2010年):大國魂神社から500m続く緑 ]


[ 桜通り(2010年):市内には並木道が多い ]
ー立川ー  『立川』は多摩都市モノレールが上空を駆け抜け、駅周辺は再開発が進み近代的な都市の雰囲気を醸し出していますが、駅から10分も歩けば面積163haの昭和記念公園があります(一部は隣の昭島市になります)。
 さすがに国営公園だけあって管理の行き届いた誰もが楽しめる公園となっています。立川駅に近い無料で入れる部分にも広場ときれいな並木があり、近所のママさん達が子供を連れて遊ぶには十分な広さの公園になっています。この公園の存在は「公園・緑」の評価に関して強烈なインパクトを及ぼします。 
 

[ 立川駅(2010年):中央線、南武線、青梅線、モノレールの乗換駅  ]


[ 昭和記念公園(2010年):市中心部に隣接]
   このように見ていくと、23区以外で3位までに入った都市はいずれも駅の近くに大きな公園や並木道があり、「公園・緑が多い街」を強く印象付けているようです。


■ 埼玉県の上位3都市・・・・・
ー川越市ー  さて、県内の川越、大宮、浦和はどうかというと、『川越』は蔵造りの街並みで有名になりましたが、川越駅、本川越駅、川越市駅のいずれの近くにも「公園・緑」はありません。
 川越の街中には春日局ゆかりの建物や五百羅漢で有名な「喜多院」がありますが、本川越駅からは直線距離で700mほど離れ、その広さは200m四方と小規模なものです。また、川越にはお城があったのですが、その跡地は学校や野球場などに利用され、一部に本丸御殿が残っているだけで、緑は多くありません。蔵造りなどレトロな建物は数多くありますが、残念ながら公園・緑はあまり目につきません。
 

[ 川越駅南口(2007年):印象に残る公園・緑がない]
ー大宮ー  『大宮』はその名の通り「氷川神社」があり、その北側には大宮公園があります。氷川神社と大宮公園が隣り合って約40haの大きな緑を造り出していますが、残念ながら大宮駅から氷川神社まで歩いて行くと20分位はかかるので「すぐそば」とは言えません。
 もう少し氷川神社の近くに駅があれば、『大宮』のイメージが変わっていたかもしれません。また氷川神社には2kmに及ぶ参道があるのですが、両側は住宅が背中を向けて建ち並び、景色を眺めながら散策する道といった雰囲気ありません。参道の一部は幅を広げて公園になっているのですが、その他の部分はは幅が 7~8m程度しかなく「公園・緑」のインパクトを与えるには力不足は否めません。
 

[ 氷川神社の参道(2006年):長さはあるのですが ]
ー浦和ー  『浦和』も同様です。駅の南西、旧中山道沿いに「調(つきのみや)神社」(一部は公園になっています)があり市民の憩いの場になっていますが、面積は100m×200m(約2ヘクタール)ほどの大きさしかありません。
 しかも、駅からは10分ほどかかり、「公園・緑」が多くあるというイメージを植え付けるには物足りません。浦和駅周辺は耕地整理事業によって戦前に面整備が行われましたが、耕地整理事業で公園を造らなかったことが、現在でも公園の不足が感じられる原因のひとつです。
 

[ 調神社(2006年):浦和市街にある小さな公園と緑 ]
   こうして見てくると、「住んでみたい街(駅)ランキング」の街のイメージアンケートは的を射たものと言えるかもしれません。


■ 生産緑地の存在・・・・・
   このほかにも、市街地で「緑」を印象付けるものとして「生産緑地」の存在も大きいのではないでしょうか。生産緑地は、市街化区域内にある農業活動に裏付けられた緑地として、公害や災害の防止、都市環境の保全などに役立つ農地等を計画的に保全し、うるおいのある都市環境を造り出すために定められるものです。
 

[ 生産緑地:きちんと営農されれば貴重な緑地なる ]
 『吉祥寺』 (武蔵野市)、『府中』、『立川』は市域のほとんどが市街化区域となっているので、農業を続けるためには生産緑地地区の指定を受けないと、固定資産税が宅地並みに課税されてしまいます。地価の高い東京では、営農意欲のある農家は生産緑地地区を選択することになります。
 「生産緑地」の面積が占める割合は、武蔵野市が 2.8%、府中市が3.8%、立川市はなんと9.3%もあります。「公園+緑地」に「生産緑地」を加えた割合は立川市で15.2%に達します。きちんと営農されていれば公園・緑地を補完する緑地として多くの面積が確保されていることになります。
 

[ 浦和の住宅地(2005年):古くからの住宅には緑が多い ]
   『吉祥寺』 (武蔵野市)、『府中』、『立川』に比べると、川越市やさいたま市の生産緑地は意外と少なく 1.4%と1.7%です。市街化区域から市街化調整区域に出ると周りは田んぼや畑があり、あえて市街化区域の中で農業を続ける人は少ないようです。


■ おわりに・・・・・
   引っ越しを重ねて数多くの街で生活した経験のある人もいれば、生まれてからずっと同じ所で生活している人もいます。生まれ育った環境が違えば、街の評価軸にも違いがあるので、街の評価をすることは難しく「住んでみたい街」はイメージ先行になってしまうかもしれません。
 

[ 氷川神社の参道(2006年):街づくりの大きな資産 ]
   しかし、人口減少が進み住宅地が過剰になれば、住みにくい街から住みやすい街、さらには住んでみたい街に人気が集まります。気に入らない所でも我慢して生活し、慣れ親しんでくれば「住めば都」などと言ってくれる人はいなくなってしまいます。多くの人に気に入って住んでもらうためには、小難しいマニフェストを掲げるよりも「住んでみたい街」と言われる街づくりも大事ではないでしょうか。


 


 
おまけ   [ お肉屋SATOU ]
 メンチカツで有名な吉祥寺のお肉屋さんです。平日でも行列に並び、黄色い整理カードをもらわないと買えません。メンチカツは1個180円(2010年)ですが5個以上買うと140円とお安くなります。真ん丸の形でボリュームのあるメンチカツは、大人でも2つ食べるとおなかがいっぱいになります。
 
<参考資料>
○都市計画現況調査 平成21年度(国土交通省)
○「住んでみたい」街(駅)ランキング2010(都県別)   
 (https://www.haseko.co.jp/hc/information/press/20101015.html)