chapter-80 スペイン その2 
[2014.10]

   chapter-79 スペイン その1
  ■先進国?
  ■交差点の形
  ■歩道の形
  ■歩道の使われ方
  ■路面
  ■電線・電柱のない空
■ 乗り物・・・・・・
<乗用車>

[ コンパクトカーが多い(2014年):マドリッド ]
   乗用車はドイツ、フランス、イタリア、韓国、日本などいろいろな国の車が走っていますが、形はコンパクトカーと言われる車が圧倒的多数で、セダンがちらほら、日本で流行りのミニバンはほぼ皆無です。
 都市部では駐車場を持たず路上駐車することが多いので、狭いスペースに駐車できるコンパクトカーが選択されるそうです。路上駐車は縦列駐車が多いのですが、車両間隔が数十センチしかなくこれでは車が出せないと思える駐車もありました。バンパーはこんな状況から車を出す時に、前後の車を押し動かすためにあるのだ、という話はあながち嘘ではないようです。
 コンパクトカーが多いのですがエンジンの音から察するに、ディーゼル車が結構走っていました。また、タクシーで多かったのがトヨタのプリウスで、マドリッド、バルセロナで多く見かけました。


[ 路上駐車の様子(2014年):バレンシア 出られる? ]
<バス・トラック>  乗っていた観光バスは、日本の観光バスと同じくらいの大きさでしたが、路線バスは日本より長いように見えました。また大都市では連接バスが走り、大通りにはバス・タクシーの専用レーンが設けられ、一般車に比べ優遇されています。
 トラックも大きいように感じました。日本のトラックは大半が後輪は2軸ですが、スペインの高速道路を走っているトラックは後輪3軸がほとんどでした。タイヤの数が多いのですから車体も大きいはずです。大型のトラックは高速道路はもちろん走っていますが、市街地を通行しているのは見かけませんでした。市街地は大型車の通行が規制されているのでしょうか?
 

[ バス(2014年): バレンシア ]
<自転車>  日本ではママチャリ(軽快車)と言われる買い物かごと荷台の付いた自転車が多く走っていますが、スペインでママチャリは走っていませんでした。かごと荷台のない変速機付きのスポーツ車、レース車と言われる自転車に、リュックを背負って颯爽と走るのが普通のようです。
 走っている自転車の台数は少ないのですが、自転車専用レーンがちゃんと造られている道路が結構あり、多くは歩道寄りに設けられているのですが、道路の中央に造られているところもありました。
 自転車は路上駐輪していると、チェーンでしっかりと鍵をかけてもサドルがなくなったりハンドルがなくなったりするそうです。
 

[ 車道中央にある自転車レーン(2014年):バルセロナ ]
   バルセロナやバレンシアは地中海性気候で、日本に比べれば雨が少なく自転車が使える日数が多く、もっと利用者が多いのではと思ったのですが意外でした。坂道も東京や横浜に比べれば少ないと思うのですが、自転車よりも多く走っているのがバイクやスクーターです。自転車に乗ることはスポーツであり、買い物や通勤通学などの交通手段として使うことが定着していないのか、夏休みだったのでしょうか。 
<LRT>

[ LRT(2014年):セビリア ]
   最近では路面電車ではなくLRT(Light Rail Transit)が多いようです。昔の路面電車は自動車と道路を共用し編成も1,2両なのに対し、LRTは専用軌道区間を多くし車両は低床で連結数も多いものが一般的です。定時性が確保できない、乗降りが不便、輸送力が小さい、といったこれまでの路面電車の欠点を改善した次世代型路面電車です。
 LRTは5~6両程度の長い編成が多く、車との共用区間を走っている風景は、旧世代の路面電車しか見たことのない人には少々異様です。鉄の車輪が見えないようになっているので、近くを走っていても怖さはあまり感じませんでした。
 

[ 緑の専用軌道(2014年):バルセロナ ]
   バルセロナで見たLRTの専用軌道部分は石張りではなく芝生が植えてあり、都市の緑化に一役買っていました。採算が取れているのか知りませんが、市街地の車を減らし車を運転できない交通弱者を救うことが重要視されているのか、いくつかの都市で走っています。
 車両の形はどれもほぼ同じですが、セビリア(Sevilla)の街中を走っている車両は、窓まで覆い尽くすラッピング広告が描かれていました。車内から外の景色は見えるのでしょうか?
<電車>

[ マドリッド・チャマルティン駅(2014年):22:07発GUADALAJARA行き ]
   残念ながら電車・列車に乗るツアーではなかったのですが、マドリッドでは停車中の電車を見ることができました。地下鉄は改札があり切符がないとホームに入れませんが、郊外電車は車内改札が一般的でホームまでは誰でも行くことができます。たまたま止まっていた電車を覗いたのですが、総2階建て、座席は新幹線と同じ2列+3列シート配置でした。
 この電車は都心と郊外を結ぶの通勤電車だと思うのですが、夜の10時頃なのに発車10分前でも乗客は皆無でした。日本では残業を終えた人、ほろ酔い加減の人でいっぱいの時間帯です。電車通勤の人はいないのでしょうか、それなら総2階建ての車両など造る必要はありません。残業などせずに終業チャイムが鳴ったら早々に帰宅するのでしょうか?
 

[ スペイン国鉄(2014年):2列+3列のシート ]

■ 街並み・・・・・
 

[ 壁面が揃う(2014年):バレンシア ]
 日本人が憧れる壁面の揃った街並みです。道路ギリギリに建物の壁面が揃えられ5,6階建ての建物が並んでいます。もちろん建物と建物の間に隙間はなく、隣の建物を壊さない限り側壁は見えません。
 古い建物は窓の間隔が揃い、小さなバルコニーの柵は凝った装飾が施されたものが使われています。1階部分は道路境界に沿って壁面があるのですが、2階以上が道路上に張り出している建物がたくさんあります。新しい建物は窓の形が違ったりバルコニーがないものもありますが、「道路ギリギリ & 5,6階建て & 隙間なし」で建てられているのが一般的でした。 
 日本では、道路斜線制限を受けないようにするため、容積率ボーナスを得るため、などで前面道路から後退して建築することがあり、道路と建物の間に隙間が生じ、隣と壁面が揃わないことが往々にしてあります。こちらは道路ギリギリに建てる規則でもあるのでしょうか。


[ 少々張り出している建物(2014年):マドリッド ]
   新市街地にはもちろん高層ビルもあり、最近はいろいろな形状の建物が増えているようです。バルセロナ市街を丘の上から眺めると、旧市街地も拡張市街地も高さの揃わない建物で凸凹していました。それでもサグラダ・ファミリアは背が高く大規模なので、他の建物と一線を画しています。
 高層ビルの中には奇抜なデザインのビルがあり市民の賛否も別れるようですが、建築主の言は「数百年後は歴史的建築物」になるとのことだそうです。
 

[ モンジュイックの丘から(2014年):バルセロナ ]
   日本では、著名な建築家の建物であっても使い勝手が悪くなったり、所有者が変わると簡単に取り壊され、「数百年後は歴史的建築物」どころが数十年先まで存在できるかさえ怪しいものです。建物にあわせた利用・生活をするのではなく、利用目的・生活の変化に対応して建替えるのが日本のスタイルのようです。
 国立代々木競技場や東京都庁舎を設計した丹下健三氏の手による赤坂プリンスホテルは、1982(S57)に竣工した新しい建物でしたが、30年後には姿を消してしまいました。
 建築物も自動車や電気製品と同程度の耐久消費財と考えられているようで、消費サイクルが短く建替えの度に膨大なお金をつぎ込まなければなりません。建築物が都市のストックとして蓄積される状況は程遠いようです。
 

[ 2014年3月 : 解体された赤坂プリンスホテル跡 ]
   バスの車窓から見える範囲で戸建て住宅があったのは、畑の中の農家、プール付きの豪邸、地中海沿いの高級別荘くらいでした。郊外の一般市民が生活する住宅は中層アパートであったり、タウンハウス形式で隣の建物と接している住宅が普通でした。
 日本の中流庶民が住み暮らす「隣の建物とくっついていない」だけの、ウサギ小屋と酷評されたような戸建て住宅はありません。戸建て志向の強い日本では、一般住宅はもちろん街中のビルでさえ隣の建物と接することを嫌っているようです。これでは壁面の揃った街並みの実現は難しそうです。
 

[ 郊外の住宅(2014年):バレンシア 隣の建物とくっついている ]
   千葉市美浜区の海浜幕張駅付近には、道路に沿って建物を建て中庭を設けたロの字型に近いの中層建物群があります。最新の建築技術とデザインで造られているのですが、憧れのヨーロッパの街並みとは大いに雰囲気が違います。住んでいる人には大変失礼ですが、壁面だけを揃えても、歴史と伝統に支えられた都市景観には遠く及ばないようです。


[ 壁面をそろえた団地(2014年):海浜幕張 ]

■ ゴミ箱・・・・・
 

[ 路上のごみ箱(2014年):バルセロナ ]
   日本ではゴミ出しの日が決められていて、それ以外の日にゴミを出すことはできません。また、大抵の場合、ゴミ集積施設がなく道路脇にゴミ袋を山積みにしているので、見た目も悪く、時にはカラスや猫がゴミを漁り周辺を汚していることもあります。
 スペインでは路上に常時巨大なゴミ箱が置かれていて、いつでもゴミが捨てられるようになっています。日本では道路も公園もゴミ持ち帰りが進められ、ゴミ箱が少なくなっていますが、道路に常時ゴミ箱があれば、路上にゴミを捨てる人も減るはずです。
 

[ 分別のマーク(2014年):バルセロナ ]

   バルセロナではゴミの分別は細かいようで、ゴミ箱6個で1セットになっていて、車2、3台分の駐車スペースを使っています。
 いつでもゴミが捨てられるのは大いに魅力的なのですが、まわりの人は常にゴミ箱を眺めなけれなりません。どうせクレーンを使って箱ごとゴミ収集するのであれば、投入口だけ地上に出しゴミ箱本体は地下に収納にするようなカセット式が考えられないものでしょうか、景観の向上に役立つはずです。


■ 看板・・・・・
 

[ 市街地の看板(2014年):マドリッド ]
   遥か昔に西ドイツ、フランス、イギリスを観光した時の記憶と比べ、看板は多い方ような気がします。それでも、新宿や渋谷の駅前交差点のように大音響とともに四方八方のLEDパネルが動画を流し続けているのに比べれば、断然地味です。動画が流れる電光パネルはなく、建物から歩道上に突き出している袖看板も少ないのです。また、壁面についている看板も小さなもので、通りを歩いて上空を見上げても看板で壁面が見えなくなるということはありません。
 ただ、郊外に向かう道路の沿道には大きな看板があったり、田園地帯でも黒い牛の看板(酒造会社の看板で以前は文字があったが批判を受け全面黒色に塗りつぶされた)や、よくわからない看板もぽつぽつあります。
 

[ 巨大な黒い牛(2014年):高速道路から見える ]
   日本に比べれば看板や広告は少ないのですが、落書きは凄まじいものがありました。文字を特異な書体で描いてあるのですが、意味はまったく分かりません。お店のシャッターは落書きがあるのですが、使っている建物の壁面には少ないのです(ちょっと感心しました)。
 驚くべきは、高速道路を跨ぐ橋の橋脚や防音壁に延々と落書きがしてあったり、郊外の畑の中にポツンとある廃屋にまで落書きがあるのです。若者の失業率が高いそうですが、落書きのための移動に要する費用やペンキ代を考えたら、とても失業した人の仕業とは思えません。
 落書きはスペイン国内のどこにでもあり、消している様子もないので、行政も諦めているようです。
 

[ 防音壁の落書き(2014年) : 意味不明 ]

■ 自動販売機・・・・・
 

[ 自動販売機(2014年):バルセロナ空港 ]
   日本であれば自動販売機は、都会・田舎を問わず屋内にも屋外にもあるのが普通で、ともすれば自販機だけの店舗すら存在しています。こちらでは、屋外に置かれた自販機はありませんでしたが、意外なことに銀行のATM機が建物の外壁に取り付けられているところがありました。
 自販機に並ぶ商品は缶飲料と思いがちですが、こちらは紙またはペットボトルのみで、しかも写真のように中にある商品が見える自販機でした。空港の自販機はサンドイッチやポテチまで売っています。たばこの自販機はボタンに銘柄があるだけで、とても自販機には見えませんでした。
 

[ スーパーの棚 : 缶コーヒーがない ]
   水やジュースは自販機で買えるのですが、日本でポピュラーな缶コーヒーがないのです。自販機にないので、高速道路のサービスエリアやスーパー、コンビニのような雑貨屋に入って探したのですが、缶ビールはあるのに缶コーヒーはないのです。コーヒー飲料で唯一あったのがスタ―バックスブランドのプラ容器に入ったコーヒーで、1本3ユーロ(≒400円)もしました。
 コーヒーは作り立てを対面販売で飲ませるのが普通のようで、サービスエリアでも街中のカフェでも、店舗の店先でもコーヒーを飲んでる人を見かけました。
 

[ コーヒーとたばこ(2014年):バレンシア ]
   でも、ホテルの朝食で飲めるコーヒーは、ボタンを押してネスカフェのマシンが作ってくれるコーヒーでした(安いツアーだから?)。缶コーヒーって日本独自の飲み物なのでしょうか?


■ 畑・・・・・
 

[ オリーブ畑(2014): 山の上まで続くオリーブ ]
   日本では高速道路を郊外に向け走ると、周りの風景はビルが戸建て住宅に代わり、田園風景から木々の生い茂る山林に変わります。
 スペインの高速道路も郊外に向けて走ると山地に入るのですが、山地というよりは丘陵地がほとんどで、山、山岳が当てはまる風景はほとんどありません。メセタと呼ばれる高原台地だそうです。
 

[ オリーブ畑とブドウ畑(2014年):高速道路の沿道に広がっている ]
   丘陵地は、ぶどう、オリーブ、オレンジの木などが等間隔で一面に植えられていて、どうやって収穫するのだろうと心配になるくらいの広さです。
 とくにオリーブは少々急な斜面でも、石だらけの畑でも植えられています。この広大な農地を見ていると、狭いところで手間と暇かけている日本の農業は、価格的に太刀打ちできないことが実感できます。
 その他に見えたのは、綿の畑、麦?を刈り取った後の畑、枯れたトウモロコシの畑で、野菜を見たのは唯一玉ねぎ畑だけでした。大西洋側には地中海側や中央部と違った畑の光景が見られるのでしょうか?


[ 広がる農地(2014年):麦畑? ]
   地中海性気候で乾燥しているためか、畑には雑草が少ないのです。日本では耕作放棄した田畑はあっという間に雑草に覆い尽くされ、公園や道路でも雑草だらけのところがいたるところにあります。道路の斜面などはコンクリートブロックやモルタルで覆っていても、隙間から根性ある雑草が生えているのです。
 スペインの広大なオリーブ畑は木々の間に雑草はなく、道路の斜面もほとんど草が生えていないのです。雑草を刈り取ったようにも見えません。雑草が生えない羨ましい気候です。


■ おわり・・・・・
   先進国に数えらえていないスペインでしが、陽気な人々が多く、これまで国民が造り上げてきた街や国土を大事に使っていると見受けました。また、スマホやケータイを持ったまま歩く猿が少ないのも良かったです。
 少しでも収入の良い仕事に就くため塾に通い受験競争をくぐり抜け、就職した後はマイホームを持つために満員電車に揺られ、残業を強いられパワハラを受けても頑張らざるを得ない多くの日本人が、とても可哀そうな存在に思えました。
 国民性の違いはどこから来るのでしょうか。気候、風土が国民性を育てるとすれば、神様でもない限り変えられません。いつまでも日本人は日本人のままなのです。頑張れニッポン!




 


 
おまけ 
[ セビリア スペイン広場 ] 
 1929年に開かれた万国博覧会の施設として造られた半円形の回廊に囲まれた広場で、建物側から入ると広場の大きさに圧倒されます。
 広場には露天商が陣取り、お土産になりそうなものを観光客に売っていますが、場所は決まっているようでした。



[ ミハス ]
 地中海に多くある白い漆喰を塗った町のひとつです。強い日差しを避けるために白くしたもので、昔は漆喰塗りは女性の仕事だったそうです。
 多くの観光客が訪れお土産屋も軒を並べていますが、少し裏に入ると普通の生活を見ることができます。



[ コルドバ大聖堂 メスキータ ]
 785年に建築が始められたモスクですが、その後再征服したキリスト教徒によって改造され、イスラム教にキリスト教が混在する建物になっています。イスラム様式を完全に破壊することなく使っているところが、スペイン独特の雰囲気を創りだしています。



[ プラド美術館 ]
 1819年に開館したスペイン王室のコレクションを展示した美術館で、略奪品がないことが誇りだそうです。エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤの三巨匠の作品が充実しています。
 館内は小部屋が多く迷路のようになっているので、一回りするだけでも相当時間がかかります。


[ トレド ]
 1561年にマドリッドに首都が移転するまで政治、経済の中心でしたが、その後は「16世紀で歩みを止めた町」といわれています。キリスト教徒の再征服後もイスラム教徒とユダヤ人が残り共存していました。狭い路地が良い雰囲気ですが、石畳の坂道が多いので足腰に御注意を。


<参考資料>
○地球の歩き方A20 スペイン 2014~2015年版 (ダイヤモンド・ビック社 2014.3.21)