chapter-82 石垣注意 
[2015.03]

■ 城下町の数・・・・・
   小柳ルミ子のヒット曲『わたしの城下町』は、どこの城下町がモデルだったのか知りませんが、全国各地に城下町から発展した都市があります。
 城下町はいくつあるのか?の問いに答えるのは難しそうですが、江戸時代の初め1615年に幕府から一国一城令が出され、大名が居住していない城は破却されたので、「大名の数≒城の数」となっているはずです。


[ 犬山城(2015年):2004年まで個人が所有していた国宝  ]
   大名が居住している城の周辺には武士や商工人を集め、軍事・行政・経済・文化の中心として発展し、城下町が形成されていきました。幕末には大名が治める藩は約260あったので、城下町もこれくらいの数があるはずです。
 城下町のシンボルといえば天守ですが、現存している天守は、国宝に指定されている姫路城、松本城、彦根城、犬山城の4つを含め12しかありません。
 江戸時代に地震や火災により天守が消失し、そのまま天守が再建されずに幕末を迎えるお城も多数ありました。明治になると1871(M4)年の廃藩置県により藩主は城を追われ、主のいなくなった城に対して1873(M6)年には廃城令が出されました。城郭を陸軍用地として使うため、または土地売り払いのために建物が取り壊され、江戸末期まで存在できた天守を含む多くの建造物が消失しました。
 

[ 名古屋城(2015年):空襲により焼失し1959年に再建 ]
   その後残っていた天守も、第二次世界大戦の空襲で焼失するなど、現存する天守はごく少なくなったのです。
 街のシンボルとして天守を復元したり、正確な形状ではないものの天守を復興したりするなど、今では100近い天守があります。大阪城も名古屋城も鉄筋コンクリートの天守ですが、訪れる観光客は絶えません。
 一方、天守が復元・復興されないお城でも、石垣や堀が残っているところもあります。松阪牛で有名な三重県松阪市には、羽柴秀吉の命により封ぜられた蒲生氏郷が丘の上に造った松坂城があります。江戸時代初期までは天守がありましたが、台風で倒壊した後は再建されず、今では石垣が残る城跡が松阪公園となっています。
 何層もある石垣はきれいに保存れており、天守があった頂上(天守台)まで歩くといい運動になります。
 ※お城は「松坂」、市の名は「松阪」、お肉も「松阪」だそうです。



■ 石垣注意・・・・・
 

[ 石垣注意(2015年):松坂城跡にある看板 ]
 松坂城跡を歩いていると、「石垣注意」と書いてある看板を見かけます。
 この注意書き見れば、石垣が崩れ易いから気を付けなさい、石が落ちてくるから近づかないように、と思うのが普通です。しかし看板があるのは石垣の下部ではなく天端で、また石垣を見る限り崩れそうな状態ではありません。
 「石垣注意」の看板のほかに「転落注意」の看板が出ているところがありました。あらためて石垣の天端を見ると、柵やフェンスが付いていないのです。
 

[ 転落注意(2015年):所々にある ]
   この石垣の縁すべてに柵をつけると相当な長さになり、設置するのも維持管理するのも大変です。また、城跡から市街地を眺めるときには邪魔になり、まわりからお城を見たときには、美しい石垣を台無しにする要因になりかねません。
 立ち入り禁止にしていないのは、保存状態の良い石垣を存分に見て楽しんでもらう計らいでしょうか。
 石垣は高いところでは10mを超える高さがあります。落ちれば身に危険を及ぼすことは誰でもわかるので、石垣の際まで近づくか否かは各個人が判断できるはずです。


[ 歩行跡(2015年):安全なところを歩いている ]
   石垣の天端の草の生え方を見ると、内側を歩いている人が多いようなので、「危険」については判断ができているようです。
 ただ、最下段の石垣は天端に柵が設けられているところがありました。石垣のすぐ下に道路があるので交通への配慮があるのかもしれません。
 松坂城跡の管理は、石垣を見る人が「危険」の程度を判断し自己の責任で、好きなところからご覧ください、ご利用ください、の精神のようです。
 

[ 柵のあるところ(2015年):石垣の下には道路がとおる ]
■ 過剰な施設・・・・・
   日本の施設は、安全対策が過剰に施されているように思います。駅のホームのように、混雑時には自己の意思に関わらず押されて転落する危険性がある場合は、ホームドアなどの対策が必要だとは思います。
 もちろん、混雑から縁遠い駅では、ホームドアは過剰な設備になります。
 

[ 二見浦駅(2015年):永久にホームドアはつかない ]
   鉄道や高速道路のように、関係者以外が立ち入ることで利用者に被害が生じる場合は、利用者を保護するために立ち入りを防止する柵など物理的な対策は必要です。
 しかし、「危険」が認知できて、自分の意思で「危険」までの離隔をコントロールできるケースで、当人にしか被害・損害が及ばない場合まで、対策は必要なのでしょうか?
 公園は老若男女を問わず誰が使っても安全であることが求められるので、過剰ともいえるような安全対策が施してあります。階段一段ほどの段差であっても、水が流れるところであれば立派な柵がつけられているところもあります。
 過剰な設備と言えども、一旦据え付けてしまえばその後は維持・管理・更新が必要になり、撤去するまでお金(公共施設の場合は税金)がかかります。
 

[ 臨港パーク(2013年):塩入りの池にある柵 ]
   最近は、なんでも人に責任を押し付け、自己の責任を逃れようとする傾向が強くなっているように感じられます。
 駅のアナウンスは「危険ですから黄色い線の内側をお歩きください」を連呼し、車内に入れば「揺れますのでつり革や握り棒におつかまりください」と車掌さんが声をかけてくれます。スマホの操作に夢中になり、周りの状況を把握しない人の面倒まで見なければならないのでしょうか?
 しかも裁判になれば「営造物として通常有すべき安全性を欠いていた」と、管理者に対して厳しい判決が多いように思えます。


[ 柵+表示:名古屋城の堀にある柵 ]

   雪の日に歩いて転べば「早く除雪をしないからだ!」、小さな段差につまずけば「注意書きがないからだ!」と怒りまくる人。そのうちに、階段の一段ごとに「この先段差あり」の看板が必要になるかもしれません。
 いつからこんなに身勝手な日本人が増えたのでしょうか?この身勝手が余計なコストを生じさせ、商品価格や税金の上昇につながるのです。そして身勝手な客に応対するために、まじめな客に対するサービスが低下するのです。許せませんね。
゛(`ヘ´#)
 松坂城跡の石垣には、これからも柵がつかないことを祈っています。


 



おまけ   [ 洋食屋牛銀 かつ定食 ]
松阪市内にある牛銀本店は、松阪肉料理の伝統あるお店でお値段もそれなりです。しかも料理は2人前からの注文となるので、一人では入れません(2人前食べられれば大丈夫かも)。
牛銀本店の横にある洋食屋牛銀は、リーズナブルな値段で食べられるお店です。牛かつにはデミグラスソースがかかっています。もちろんステーキや牛丼もあります。