所沢市 【行政道路】

chapter-013 2006.01 2024.12

■在日米軍の基地・・・・・



[ 赤坂プレスセンター(2023年) ]


日本にはいまだに在日米軍の基地がいたるところにあり、最も多くある沖縄県は県の面積の8%を占め、在日米軍基地の70%が集中しています。
意外なところでは、東京のど真ん中、港区六本木にも「赤坂プレスセンター」という施設があり、星条旗新聞社やヘリポートがあります。六本木ヒルズから直線距離で400m、国立新美術館とは都道を挟んで隣り合っている近さです。



[ AFN Tokyoの電波塔 (2012年) ]


埼玉県内は、所沢通信施設、大和田通信所、キャンプ朝霞の3ヶ所、約204ヘクタールの在日米軍基地が残っています。
終戦直後はもっとに多くの土地が基地として使われていましたが、次第に返還され公園や新しいまちづくりのために利用されてきました。入間市では彩の森入間公園、所沢市では市役所や防衛大学病院、航空記念公園などが返還された基地跡地に造られました。
埼玉県内に米軍基地があると言っても、今では軍用機が飛び交うことも戦車が走り回ることもないため、基地の存在を忘れている人も多いことだと思います。



[ 彩の森入間公園(2024年) ]


■道路の愛称・・・・・



[ 国道246号:明治通りを境に愛称が変わる ]


道路の呼び名でよくあるのは「青山通り」「日光街道」「けやき通り」などのように地名や昔の名称、並木の種類などに由来する愛称です。
本来、道路には路線名が付けられています。国道は数字(番号)、都道府県道は起終点の地名など、市町村道は数字(番号)が路線名になっているのが一般的です。
  国道: 一般国道17号、一般国道254号
  都道府県道: 川越所沢線、所沢青梅線
  市町村道: 市道1-100号線
都道府県道は名称が長いため、標識などには路線番号だけが記載されているので、都道府県道は普通の人にとってはなじみが薄い存在です。



[ 17は国道17号 68は県道練馬川口線(2024年) ]


都道府県道だけが地名を使った路線名ですが、1964(S39)年の道路法改正以前は国道にも地名による路線名が併せて使われていました。
国道が一級国道と二級国道に分けられていた頃は、一級国道は現在と同様に路線名が「一号線」や「一七号線」のように数字で指定されていましたが、二級国道は路線番号のほかに地名などを使った路線名がありました。
道路地図を見ると今でも国道16号に「東京環状」と併記しているものがあります。



[ 国道の路線名 二級国道の時代 ]


■行政道路・・・・・



[ グーグルマップ(2024年) ]


所沢市内には「行政道路」と地元で呼ばれる道路があり、google mapでも表示されますが、愛称と言うには硬い感じの呼び名です。
どこからどこまでの区間を指して「行政道路」と呼んでいるのかはっきりしませんが、国道463号(旧道の方)と県道東京所沢線がこのように呼ばれているようです。 この道路は一年中渋滞しているため、通るのを避けたいのですが、まわりの道は狭く迷路のような道ばかりなので、通らないわけにはいきません。
「行政道路」と言われる所以は、敗戦後に締結された日米安全保障条約に基づき、1952(S27)年に締結された日米行政協定(正式には「日本国とアメリカ合衆国との安全保障条約第三条に基づく行政協定」)に関係があるらしいのです。 「安全保障条約」など縁遠い存在に感じますが、意外と身近なところに影を落としているのです。



[ 行政道路(2024年):いつも渋滞 ]


1951(S26)年9月8日にサンフランシスコ講和条約が署名され、国会の承認を経て翌年の4月28日に公布・発効されました。 講和条約と同時に「日本国とアメリカ合衆国との安全保障条約」が結ばれ、日米行政協定も4月28日に発効し在日米軍のための予算が確保されるようになったようです。
埼玉県の県議会史によると、1952(S27)年12月20日の12月臨時会の提出議案説明で、次のように知事が説明しているくだりがあります。
「次に、道路費について述べる。今日駐留軍の高速大型重量自動車の運行のため道路橋梁の破損が多い。これが改修につき国庫補助を強く要望してきたが、本月初旬政府の方針が決定した。 本年度分として川越東京線、川越豊岡線、二本木入曽停車場線、東京所沢線、浦和志木線、延長9200余mの道路改修工事費1億190万円、所沢豊岡線8300mの舗装工事費9300万円、計1億9490万円を追加計上した。」と。
さらに 1953(S28)年3月11日に行われた2月議会の追加提出議案では、
「昭和27年度追加更正予算は、… …土木事業関係では… …また、日米行政協定にもとづく安全保障道路工事については、今回第四次分として、所沢東京線2150mの道路改良工事費3500万円、所沢八王子線6760m、所沢東京線3200m、川越東京線5753mの舗装工事費あわせて1億8500万円、総計2億2000万円を追加計上した…」と説明してます。
「 所沢豊岡線」は国道463号(旧道の方)が国道に昇格する前の県道名です。 



[ 旧・川越東京線(2011年):国道254号の旧道 ]


当時は、埼玉県南部や東京都多摩地方に米軍基地が散在し、基地を連絡する道路に特別な予算が付けられ工事が行われたようです。
多額の舗装工事費が計上され一気に舗装された道路は、砂利道が当たり前の時代に沿道の住民を驚かせたはずです。 このようなことから「行政道路」と呼ばれるようになったのではないでしょうか。翌年度には、行政協定区域関係道路事業として国道17号の戸田・鴻巣間の道路舗装費が計上されています。
県内あちこちに、「行政道路」なる道路が存在していたようです。


■行政道路のバイパス・・・・・



[ 所沢入間バイパス(2024年):所沢市内 ]


現在でも地元で「行政道路」と呼ばれている国道463号は一年中渋滞が激しいため、4車線の所沢入間バイパスが建設され東京都境に近い部分を残し開通しています。 しかしバイパスが東京都側に通じていないこともあり「行政道路」の交通量はほとんど変わらず、さらに飲食店や物販店の立地が盛んで混雑に拍車をかけています。
所沢入間バイパスが接続する東京都側の都市計画道路は、都のホームページ(R6年9月時点)によると「令和7年度までに優先的に整備すべき路線として選定されていますが、事業認可取得時期は未定」となっており、いつになったら事業が始まるのかまったく不明です。



[ 行政道路(2024年):満足な歩道もない道 ]


バイパスの整備が東京都側へ進み渋滞が解消されない限り、「行政道路」は渋滞する道路の代表格から解放されることはありません。





<参考資料>