[ 国勢調査:2010年の調査票 ]
5年に一度行われる国勢調査は、総務省統計局 - 都道府県 - 市町村 - 国勢調査指導員 -
国勢調査員の流れにより行われていますが、近年は調査に応じない住民もいて苦労が絶えないようです。
国勢調査の項目は、世帯員に関する事項として出生年月、就業状態、従業地又は通学地など15項目、さらに世帯に関する事項として世帯員の数、住宅の建て方など5項目があります(2010年の調査)。
調査項目の中でも注目を浴びるのは人口に関する調査です。
[ 中国紫禁城(2004年):人がいっぱい ]
2020(R2)年の国勢調査によると、日本の人口は1億2614万6099人でメキシコに次いで世界第11位の人口を有していますが、第1位の中国は14億700万人で日本の11倍、第2位のインドは13億8000万人で11倍の人が住んでいます。
中国やインドの人口は、想像を絶する人数で、エネルギー、食糧需給を左右する脅威でもあります。
インドは日本より人口密度も高く464人/平方kmで日本の338人/平方kmを上回っています。
全世界の平均は60人/平方kmなので、日本は5.6倍以上の密度があります。
[ 千代田区(2011年):皇居周辺 ]
日本国内に目を向けると、人口、人口密度とも東京都が1404万7594人、6,402.6人/平方kmで第1位です。
ここで言う人口とは、住んでいる人を対象としているので、夜間人口とも言われます。
このほかに仕事や勉強など人が活動している時間帯の人口は昼間人口と言われ、昼間人口と夜間人口の比率(昼夜間人口比)は都市によって大きな差があります。
都道府県で昼夜間人口比が最も高いのは東京都で、昼間の人口が1675万1563人と夜間に比べ270万人以上も多いため昼夜間人口比は1.192もあり断トツの一位です。
東京都の中でも異常なのが千代田区で、夜は6万6680人ですが昼間は116万9399人もいるため昼夜間人口比はなんと17.53にもなります。
[ 官庁街(2010年):千代田区永田町、霞が関の夜間人口は少ない ]
東京はオフィスや学校が多いため昼間の人口が増えますが、その逆に埼玉県は通勤通学で多くの人が東京など県外に移動するので、夜間人口734万4765人に対し昼間人口は643万4818人と約91万人も人口が減少します。
埼玉県の昼夜間人口比は0.876で、千葉県の0.883、神奈川県の0.899に及ばず2020(R2)年国勢調査では最下位でした。
他県から埼玉県に通勤通学する人もいるのですが、埼玉県から他都県へ通勤通学している人口は123万3366人もいます。
通勤通学にある程度の時間がかかるのはやむを得ませんが、長時間の通勤通学は個人にとっては肉体的・精神的に大きな負担であり、国家にとっては経済的な損失でもあります。
[ 池袋付近(2013年):東武東上線、JR埼京線が池袋へ向かう ]
令和3年社会生活基本調査によると、埼玉県民は一日のうち通勤通学に91分を使っています。
東京都92分、千葉県92分、神奈川県97分に比べわずかながら短い時間になっています。
埼玉県民の10歳以上662.2万人のうち通勤通学しているのは38.8%の256.9万人です。
91分/日 × 256.9万人 = 389.6万時間/日
389.6万時間/日 × 時給2000円/時間 = 77億9200万円/日
77億9200万円/日 × 250日/年 = 1兆9480億円/年
(サラリーマン平均年収400万円÷250日/年÷8時間/日=2000円/時間)
なんと埼玉県民だけで毎年約2兆円相当の労働力が、通勤と通学に使われていることになります。
[ 高崎線130周年(2013年):通勤通学に使われる中距離電車 ]
自宅で仕事ができる場合以外は通勤通学にかかる時間をゼロにすることできませんが、極力短くすることが個人にとっても日本国にとっても幸せなことです。
たとえばビルの下層階を仕事場にあて、上層階をそこに勤める人の住居にできれば職住密接となり、通勤時間はエレベータか階段で上下移動するだけの超短時間になります。
しかし職場の上に社宅があるようで、仕事帰りにちょっと一杯、といった息抜きの時間をとることもできないので、ストレスと疲れがたまる一方の生活サイクルになるかもしれません。
職場と住居は適度な距離があったほうが、働く人の気分転換ができ、飲食業界にもメリットがあるようです。
[ 新橋(2013年):サラリーマン憩いの場 ]
理想の通勤時間をネットで調べてみると、片道30分程度が理想だという調査やアンケート結果が多いようです。
片道30分の通勤通学時間とすれば、徒歩のみの場合は自宅から勤め先までは2~3kmの距離です。
電車利用の場合は、乗車時間15~20分に自宅から駅、駅から職場までの徒歩を加えて30分程度を想定すると、23区内に住んでいないと30分以内で山手線内側地域への通勤通学は難しそうです。
[ 東京23区と山手線:赤色が山手線 ]
[ 東急渋谷駅(2013年):再開発による取り壊し中の駅舎 ]
バブルがはじけた後の長い不況からの脱出にもがいている現在でも、都心部では取り壊されるビルがある一方で新しい巨大な高層ビルがにょきにょき増えています。
その中でも、都市再生特別措置法に基づき定められた都市再生特別地区で建てられる建物は、高くなるだけではなく床面積もより大きくなるのですが、増えた床の多くは店舗やオフィスに使われるため、そこで働く人はどこからか通勤して来なければなりません。
都市再生特別地区は、『都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域』であれば、都市計画に定めることができ、既定の都市計画制限が取り払われます。
そこで働く人がどこから通勤しようが、どこに住んでいようがお構いなし、その地区の高度利用がなされればそれで良いのです。
[ 渋谷ヒカリエ(2013年):容積率1370%の巨大建物 ]
都市再生特別地区に造られた建物の一つに『渋谷ヒカリエ』があります。
以前はプラネタリウムのドームが特徴的だった『東急文化会館(延床面積約3万㎡)』があったのですが、都市再生特別地区に定められたことで800%、900%の容積率は1370%に引き上げられ、高さ182.5m、延床面積約144,546㎡の『渋谷ヒカリエ』に生まれ変わりました。
床面積のうち商業に32,000㎡、オフィスに50,000㎡が使われ、10㎡/人で計算してもオフィスだけで5,000人以上が働くことになりますが、この再開発で住宅は造られず働く人はすべてどこからか通勤することになります。
長距離通勤せざるを得ない人はこれまで以上に多くなります。
[ 渋谷ヒカリエの工事看板(2013年):完成まで8年近くかかった ]
渋谷駅周辺では『渋谷ヒカリエ』に続きこれからも再開発が進められ、小さなビルは取り壊されて巨大なビルに建替えられ、店舗やオフィスなどの床面積はどんどん増えます。
再開発された市街地では、ビルや駅をつなぐデッキを歩く人、巨大なビルのエレベーターで垂直移動する人が増えます。
小さなビルがひしめく街中で、どこを目指して歩いているのかわからない人々がつくる大都会の雑踏を見る機会は減ってしまいます。
海外からの観光客が必ずカメラを構える『渋谷交差点の雑踏』風景は、再開発が進むと見られなくなってしまいそうです。
[ 渋谷駅交差点(2013年):映画にも登場する雑踏 ]
また、一定規模の工場や大学の新設・増設を制限していた『首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律』が2002(H14)年に廃止され、多摩地域や近接県に校舎を分散していた大学は、校舎を都心部に戻しつつあります。
23区内に立地している大学のほうが希望者が多いようで、有名大学といえども少子化の御時世で生き残るためには、都心回帰が一番の対策のようです。
が、地価の高い都心に住める学生はごく少数で、郊外の自宅から長距離通学するか、地方の学生は都心から外れたアパートから通学するのが精一杯です。
都心の大学に快適な通学時間でお勉強のできるのは、お金持ちの御子息に限られるのが現実です。
[ 文京区周辺(2009年):数多くの大学がある ]
都心部ではマンションなどの住宅が供給されていますが、一般のサラリーマンには手の届かない高価格であり、外資系企業の社員や一部のお金持ちしか住むことはできません。
東京の都心部は利便性の高い地域なので地価が高く、居住できる人は地価負担に耐えられる高所得者が多くなる傾向にあります。
ちなみに2022(R4)年度の市町村民税納税者一人あたりの課税対象所得は、港区1471.4万円、山口県周防大島町1177.0万円、千代田区1076.8.9万円、渋谷区1000.1万円の4自治体が1000万円以上で、埼玉県ではさいたま市の412.4万円が最高です。
山口県周防大島町は、海外で事業を展開するなどしている経営者ら複数の人が、移住してきたことが増収の理由だそうです。
これらの人々は普通の人に比べると生活必需でも高額なものを消費し専門品の購買量も多いため、地価の高い地域には地方では見られない高級品の専門店も出店してきます。
このような店は広いエリアから客を呼び込み高収益を実現し、商業地としての投資利回りを高くするためさらに地価が上昇する循環を形成することになります。
[ 都心の住宅(2013年):緑のあるマンションも多い ]
お金持ちが住む街はますます洗練され、よりお金のある人を惹きつけるので、そこでは良い循環が続きますが、周辺地域では所得が高くなった人が都心へ引っ越してしまうという、厳しい循環を受入れざるを得ない状況にあります。
東京都心部は江戸時代以降、国策として社会資本の集積が行われた地域であり、多くの人々を惹きつける要素には事欠きません。
戦後の高度成長期になってから慌てて整備が進められた埼玉県などの都市とは、魅力・機能などに雲泥の差があり、その差はますます開くばかりです。
[ 1964年東京オリンピック:様々な基盤整備が進められた ]
新型コロナウイルス感染拡大という想定外の事態はありましたが、2021年に57年ぶりに開催された東京オリンピックもあり、東京はさらに洗練されおしゃれな街に変身しようとしています。
新たな都市機能の付加が進められるほか、老朽化した都市施設や建築物の更新にも拍車がかかり、これまでより便利で安全な街に成熟していきます。
臨海部に建てられたオリンピック選手村はマンションに変身し多くの引き合いがあり、都心部のマンション価格は上昇の一途です。
東京への通勤・通学の現状はまさに痛勤・痛学であり、朝も夜もすし詰め状態の電車に乗せられているのに、時折『お客様同士のトラブル(≒客の喧嘩)』が生じ電車が遅れることはありますが、車内で暴動が起きないのが不思議なくらいです。
どんな動物でも何百もの個体が狭い空間に閉じ込められれば、生命の危険を感じ回避行動に走ります。朝の満員電車ほど非人道的な空間はありません。
[ 虎ノ門ヒルズと環状2号線(2014年):2014年3月29日開通の日 ]
通勤・通学時間から見ると東京は過度に一極集中が進んだ巨大すぎる都市ですが、それでも、都心部ではこれからも再開発が進められ、さらに痛勤・痛学を強いられる人々を増やしています。
これだけ多くの人々をひとところに集めて長い時間仕事をしても、日本の国際競争力が低下しつつあるのは、日本人の生産性が低いからなのでしょうか?
[ 牛かつ もと村(2014年) ]
渋谷駅南側の明治通り沿いというか渋谷川沿いにあるお店。
地下1階にありカウンターの10席弱と小振りで落ち着いたお店で、厚みのある牛ロースのレアなカツがリーズナブルなお値段で食べられます。
メニューは「牛ロースかつ麦めしセット」がメインで麦めしは1杯お替り無料です。
牛かつはボリュームがあるので、わさびをのせて半分ほどビールとともにいただき、残りでご飯を食べるとちょうどいいくらいです。
女性にも人気のあるお店で最近は大行列です。
<参考資料>