chapter-084 神明神社

[ 2015.08~ ]

■お伊勢参り・・・・・



[ 伊勢神宮参拝者 1926(S1)年~2014(H26)年 ]


昔から一生に一度はお参りしたいと言われている伊勢神宮は、2013(H25)年に第62回の式年遷宮があり参拝者が激増しました。
これまでも遷宮が行われる年は伊勢神宮への参拝者が大幅に増えてます。遷宮はお伊勢参りを忘れさせない素晴らしいシステムでもあります。
昭和元年からの参拝者数を見ると、太平洋戦争の前後で大きな変動がありますが、戦後は遷宮がない年でも安定的な参拝者があり「お伊勢参り」は今も昔も人気のある旅行コースです。
戦前は内宮より外宮の参拝者が多かったのですが、昭和30年代以降になると内宮の参拝者が上回るようになり、平成に入ると外宮の参拝者は200万人を下回る年もありました。



[ 内宮前(2015年) : おはらい町通り ]


内宮は天照大御神(あまてらすおおみかみ)が祀られ、参拝経路には宇治橋や五十鈴川があります。
さらに旧参宮街道のおはらい町通りは、伊勢の名物赤福餅の本店などお土産物店が軒をそろえ、門前町の賑わいを十分に満喫できます。
最近はおはらい町通りの中に、お土産物店のテーマパークのような「おかげ横丁」が造られ多くの観光客を引き寄せています。
しかし内宮は駅から遠いのでバスに乗るか自家用車を使わないと大変です。
一方、外宮は豊受大御神(とようけおおみかみ)が祀られ、伊勢市駅や宇治山田駅から徒歩でも楽に行ける距離ですが、伊勢市駅から外宮に向かう道は門前町というよりは、どこにでもある地方都市の駅前といった感じで旅行気分は高まりません。



[ 外宮前(2015年) : 伊勢市駅から外宮への通り ]


交通の便は外宮が圧倒的に便利なのですが、最近は内宮の参拝者が増えています。
外宮を参拝してから内宮にお参りするのが古来からの習わしですが、時間に余裕がない人は内宮だけお参りすることも多いようです。
外宮には御装束神宝の製作工程や外宮正殿の原寸模型が展示されている式年遷宮記念「せんぐう館」が2012(H24)年に誕生しました。
外宮から内宮に向かうバスは所要時間10~15分程度、本数も多いので是非外宮と内宮をお参りすることをお勧めします。


■伊勢神宮・・・・・



[ 内宮の大木(2015年) : 人目を引く大きさ ]


伊勢神宮の内宮も外宮も大木が林立する森の中を歩き御正殿(ごしょうでん)に着きます。
御正殿の横にはに古殿地(こでんち)という遷宮のための更地があり、他の神社にはない雰囲気があります。
建物は遷宮のたびに建て替えられるのですが、神社を囲む森の木々はかなりの年代もので、直径5mを超えるような大木もあります。
本来は神聖で静かな空間なのですが、観光バスを仕立てて来るお伊勢参りの一団に出くわすと、瞬く間に都会の喧騒の中に引き戻された気分になってしまいます。



[ 外宮(2015年) : 御正殿と古殿地 ]


江戸の昔から「お伊勢参り」はお参りするだけでなく飲んだり食べたりと庶民にとって最大の娯楽・レジャーでした。
今日の内宮に至る旧参宮街道は、参拝者の胃袋を満たしてくれる店と近所に配るお土産が買えるお店が数多く連なり、参拝だけでは満足できない観光客も十分エンジョイできます。
内宮の参拝者が増えているのはこんなところにも理由があるのかもしれません。


■神明神社・・・・・



[ 神明神社の参道(2015年):参道の両側は林 ]


伊勢神宮を総本社として神明神社、神明社、天祖神社などと呼ばれる神社が全国各地にあります。
その一つに埼玉県の久喜市(旧・菖蒲町)にちょっと有名な神明神社があります。
旧・菖蒲町の神明神社は500mほどの参道があるのですが、参道の両側が林になっていて木々が緑のトンネルを作り出しているのです。
大宮にある氷川神社の参道も約2kmにわたり緑が連続するのですが、こちらは杉などの大木による並木道なので神明神社の参道とは状況が異なります。



[神明神社の空中写真(2009年)]
(国土地理院 空中写真CKT20091-C19-44から切取り)


神明神社の参道は、明治時代の地図では縮尺が小さく鳥居の印があるだけで状況はつかめませんが、太平洋戦争前後の空中写真を見るとほぼ現在と同じ形の細長い林があります。
神社本殿があるところは林が広がっているため、柄の太いひしゃくのような形をしています。
参道入口は両側に民家があり参道の林は幅20m程度しかなく、とても500m以上もの緑のトンネルが続く参道があるようには見えません。
入口にある立て看板によると、本殿の林と参道の林をあわせて1.74ヘクタール(17,400㎡)の面積があります。



[ 神明神社入口(2015年):両側は民家がある ]


参道は敷石が並べられ歩きやすくなっていて、林の木にはネームプレートが所々つけられ樹種のお勉強ができるようになっています。
林は人が入り込むことが少ないようで、木々の落とした種から育った小さな木と雑草に覆われています。
暑い時期は、木々の枝葉が参道上空を覆い日差しを遮断して涼しい空間を提供してくれるのですが、自然が豊かなので蚊も多く散歩するときは虫よけスプレーなどの対策は欠かせません。
参道はところどころに交差する道があり、緑のトンネルに穴が空いているのが残念ですが、街灯の類がないので夜になると出口と入口しか見えず、恐怖心が頭をもたげます。 夜の散歩は遠慮した方が無難です。



[ 参道を横切る道(2015年):ところどころ林に穴がある ]


神明神社の周辺は田畑が広がる農業主体の地域です。
農地であれば耕地整理やほ場整備によって耕作しやすい矩形の耕地に造成されることが多いのですが、神明神社のまわりは住宅が散在していたため、このような事業から外れ長い参道が残ったようです。
旧・菖蒲町は、明治神宮の森を造った本多静六博士が生まれたところです。
明治神宮の森は「永遠の森」を造ろうと近代造園学を取り入れ、荒れ地のような畑に全国各地から献上された10万本の樹木を植え造られました。
誰が神明神社の森を造ったのかわかりませんが、本多静六博士を生んだ旧・菖蒲町には森林を造り残そうとするDNAがあるようです。



[ 本多静六博士(2012年):旧・菖蒲町にある胸像 ]



■おまけ・・・・・


[ JA南彩食堂(2012年) ]

神明神社の東700mの県道沿いにある農協が運営する食堂です。
メニューの中心はうどんとそばですが、定食もあります。安くてそこそこ美味しいのでお昼時は結構混んでいます。
一昔前のスキー場にあったゲレンデ食堂が平地に下りてきたような造りで、スキー靴の代わりにゴム長を履いているのが似合うお店です。





<参考資料>