chapter-105  生産緑地

[ 2017.10 ]

■都市計画道路3・4・83指扇宮ヶ谷塔線・・・・・



[ ロヂャース大和田店(2017年) ]


さいたま市の幹線道路である第二産業道路の東武野田線アンダーパス部が、2017(H29)年7月にようやく4車線で通れるようになりました。
このアンダーパスの北側の畑だったところに、ロヂャースマート大和田店が2016(H28)年5月に出店しました。
ロヂャースは、埼玉県南部で安売り量販店の展開している古株で、昔は廃業したボーリング場をそのまま店舗に使っていたので、床にボーリングのレーンが残っているところもありましたが、最近は新しく建物を建てて出店しています。
ロヂャースマート大和田店は店名からもわかるとおり、食料品を中心としたいわゆるスーパーマーケットなので、これまでのロジャースと違い建物は小ぶりなお店です。
大和田店は平面駐車場はなく、2階と屋上が駐車場になっています。



[ きずなひろば(2017年) ]


裏にまわると細長い広場があるのですが駐車場ではなく、さいたま市が建てた「大和田第一きずなひろば」の看板があり、市有未利用地を暫定的に活用したスポーツもできる多目的広場と書かれています。
さいたま市の都市計画図を見ると、この土地は「3・4・83指扇宮ヶ谷塔線」という幅18mの都市計画道路が計画されているところで、市が土地を買収したものの当面は道路として使わない(使えない)ので、多目的広場として使えるようにしています。
多目的広場に整備されたのは2013(H25)年ですが、都市計画道路の用地として買収されたのはそれよりかなり前です。



[ 多目的広場の先にロヂャースマート(2017年) ]


ロヂャースマートは「大和田第一きずなひろば」の延長線上にあり、都市計画道路3・4・83指扇宮ヶ谷塔線の計画がかかっています。
「大和田第一きずなひろば」になっている土地を市がどのような経緯で買収したのかわかりませんが、当時は都市計画道路を造る意思があったか、すぐに道路を造れないにしても第三者が購入し建物を建てられると、買収が難しくなると考えていたはずです。
しかし、どういうわけか約20年後は、同じ都市計画道路の予定地にロヂャースマートという店舗が建ってしまいました。


■都市計画法第53条・・・・・



[ 3階建住宅(2017年):最近は3階建住宅ても普通 ]


都市計画道路が予定されている土地に建物を建てる場合は、都市計画法第53条により都道府県知事(政令市は市長)の許可が必要です。
53条の許可基準は、54条第3項にあるとおり
 イ 階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと。
 ロ 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロツク造その他これに類する構造であること。
かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること
とされています。
しかし、遅々として都市計画道路の整備が進まず、都市部の地価が高いところでは三階建住宅が増え基準緩和の圧力が高まり、現在では基準を緩和しているところが増えています。
さいたま市の現在の許可基準は、ロは同じですが、イは「階数が3以下で、かつ、地階を有しないこと。」となっています。



[ 東京都不忍通り(2016年):53条制限がかかっている部分は3階建て ]


普通の住宅であればやむを得ない基準とは思いますが、小ぶりといえども店舗面積が2835㎡もあり138台もの駐車場があるロヂャースマートは、簡単に移転できそうにありません。
これでは何のための都市計画制限なのかさっぱりわかりません。
大都市圏は鉄道などの公共交通機関が担う交通も相当量ありますが、地方部の道路のように渋滞なしで走れる道路は多くありません。
歩道もない狭い道路を大型車がひっきりなしに通ることのないように最低限の道路整備は必要です。


■生産緑地地区・・・・・



[ さいたま市都市計画審議会資料の抜粋 ]


ロヂャースマートが建っている土地は、3・4・83指扇宮ヶ谷塔線という都市計画のほかに大砂土東44号生産緑地地区という都市計画も定められていました。
大砂土東44号生産緑地地区は、2015(H27)年12月21日開催のさいたま市都市計画審議会において、都市計画変更が議題にあげられています。
変更の内容は、生産緑地法第14条の規定に基づき、地区の一部について行為制限が解除され、面積約1.41ヘクタールのうち約0.31ヘクタールを削除し、残りは3地区に分割して生産緑地地区を継続するという内容です。
生産緑地法第14条に基づく行為制限の解除とは、
  ・生産緑地地区に指定されてから30年以上経過した場合
  ・農林魚業の主たる従事者の死亡または故障の場合
いずれかの場合に至ったとき所有者は、市町村長に対し買取り申出をすることができますが、買取ってもらえない場合は生産緑地としての管理や建築などの行為の制限が解除され、市街化区域内の土地として使えるようになるのです。



[ 大砂土東第44-2号生産緑地(2017年):分割された生産緑地 ]


ロヂャースマートは、生産緑地地区から削除された約0.31ヘクタールを含む土地の上に建てられています。
不思議なのは、削除された約0.31ヘクタールには3・4・83指扇宮ヶ谷塔線の都市計画がかかっているにもかかわらず、買取り申出をされたさいたま市が買取らなかったことです。
「大和田第一きずなひろば」の土地を買取ったころに比べ、この都市計画道路を造ろうとするさいたま市の意思が低くなってしまったのでしょうか。
3・4・83指扇宮ヶ谷塔線は、JR川越線指扇駅の南を走る国道16号から岩槻IC付近の国道16号までを結ぶ10.8キロメートルもある道路ですが、大宮駅北側の東大成小学校前は鉄道アンダー部分を含め完成している区間もあるので、これからも整備が進められていくはずです。



[ JR交差部(2017年):アンダーパスで既に完成 ]


3・4・83指扇宮ヶ谷塔線はロヂャースマートの建物の真ん中に計画されていますが、建物のその部分だけを切取って土地を買収し道路を造ることは不可能です。
建物を丸ごと移転できる補償費用がもらえなければ、土地を売ることに同意する人はいません。
生産緑地の買取り申し出という用地買収のチャンスがありながら、将来的に余計な支出をせざるを得ない状況になってしまいました。
いつの間にか、ガソリンなど車の燃料にかかっていた税金が道路整備以外の目的に使われるようになりました。
ガソリン代を払う側からすれば、負担した税金が何に使われているのかわからないよりも、道路の整備や管理に使ってくれた方がまだ納得がいきます。



[ 後退部分(2017年):指扇宮ケ谷塔線の計画に沿って後退 ]



■おまけ・・・・・


[ 中華そば 蛍(2017年) ]

大和田立体南側の交差点を西方向に曲ると、畑の中に見える中華そば屋です。
中華そば、つけ麺などメニューも結構あり、お昼時は店外にお客さんが並んでいる人気店です。
つけ麺の魚介系スープは万人受けする味だったかと思います。
駐車場は結構広いのですが、休日のお昼時は入れないこともあるので要注意です。





<参考資料>