chapter-116 道の種類

[2018.04]

■高速道路・・・・・


昔の高速道路は、入口で通行券を受け取り出口で料金を現金で払っていたので、渋滞した時などは料金が非常に高く感じられました。
2000年以降、ETC(Electronic Toll Collection system)の普及が進み現金で支払うことが無くなり、料金を払っている感覚自体が薄らいできました。



[関越道(2018年):高坂サービスエリア付近]


高速道路は昭和30年代以降盛んに整備され、今では何気なく『高速道路』と使いますが、高速道路株式会社法では次のように定義されています。
 一 高速自動車国道法第四条第一項に規定する高速自動車国道
 二 道路法第四十八条の四に規定する自動車専用道路並びにこれと同等の規格及び機能を有する道路
一号は文字通り国道ですが、二号は一般国道のほか都道府県道又は指定市の市道もあります。
関越道、中央道、東名道などは一号に該当する高速自動車国道で、「自動車の高速交通の用に供する」こと目的とした本家本元の高速道路です。
ちなみに東名道の法律上の路線名は『第一東海自動車道』です。



[圏央道(2015年):鶴ヶ島ジャンクション]


同じ高速道路でも圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は、道路法の規定により自動車専用道路の指定を受けた一般国道468号です。
自動車専用道路は「交通が著しくふくそうして道路における車両の能率的な運行に支障のある市街地及びその周辺の地域において、交通の円滑を図るために必要があると認めるとき」に道路管理者が指定するものです。
この条文を見ると、自動車専用道は高速で走るというよりは、渋滞しないで走れるようにするための道路のようです。
関越道、中央道、東名道も圏央道も旧・日本道路公団が分割されて誕生した東日本高速道路会社(ネクスコ東日本)、中日本高速道路会社(ネクスコ中日本)が管理しているので、走っている人にとってほとんど違いを感じません。



[首都高(2016年):千鳥ヶ淵付近]


このほかに、東京を中心に首都高速道路があります。
首都高は都心及びその周辺の都道、県道(神奈川・埼玉・千葉)、市道(横浜・川崎)のうち、自動車専用道路の指定を受けた道路で、首都高速道路株式会社が建設・管理しています。
大阪・神戸には阪神高速道路株式会社があり、首都高と同じような仕組みで高速道路を建設し管理しています。
名古屋市、広島市、福岡市・北九州市では、県と市が出資してつくられた高速道路公社が都市高速道路を建設し管理しています。



[名古屋高速都心環状線(2015年):テレビ塔から]


高速道路と言っても、定めている法律、国道・都府県道・市道の違いもあり複雑ですが、利用者としては渋滞なく走れれば特に文句はありません。


■有料道路・・・・・



[皆野寄居有料道路(2005年):歩行者と自転車は通行禁止]


高速道路のほかに観光地、長い橋、トンネルで有料道路になっているところがあります。
○○観光道路とか□□大橋有料道路といった名称の道路で、ネクスコ、地方自治体やその外郭団体である道路公社などが運営しています。
多くは道路整備特別措置法に基づく有料道路で、建設費借入金の償還が終われば無料開放されるのが原則です。
なかには、交通量が少なく償還が終わらない道路もありますが、その場合は料金徴収期間(30年間が多い)の満了時に不足分を自治体などが補填して無料化されます。



[東京高速道路(株)の高架(2018年):西銀座二丁目付近]


有料道路では料金所で領収書を渡されますが、よく見ると民間会社が運営している道路もあります。
比較的知られているのが、箱根ターンパイクや万座ハイウェーでしょうか。
民間会社でも道路運送法の免許を受ければ、『一般自動車道』を建設・管理する自動車道事業を行うことができ、2023(R5)年4月1日現在で30路線301.7kmが営業しています。
一般自動車道は私道であり、永久的に有料道路事業として経営されることを予定しています。
例外は銀座・有楽町を通る東京高速道路です。
河川を埋め立てた土地に、屋上に道路を持つ商業施設が、万里の長城のように市街地を巡っています。
高架下に入っている店子からの家賃収入で建設費を償還しさらに維持管理費も行い、通行料金は無料という素晴らしい仕組みです。
昔は道路法は建設省、道路運送法は運輸省が所管していましたが、現在はどちらも国土交通省が所管していますが、紛らわしいことに変わりはありません。


■農道・・・・・



[新潟県長岡市(2013年):穀倉地帯は農道がいっぱい]


高速道路、国道、都道府県道、市町村道のほかよく耳にする道路に「農道」や「林道」があります。
農道は農業生産のみならず農村の生活環境改善にも役立つ道路として、農林水産省の所管する事業により全国的に造られてきました。
2022(R4)年8月現在この定義による農道は全国で170,719kmあり、最も多い新潟県は14,702km、次いで鹿児島県には12,793kmありますが、埼玉県内にはたったの56㎞しかありません。
農林水産省の統計では、農道として造成された道路であっても、国土交通省が所管する道路法によって都道府県道、市町村道に認定された道路は、農道の統計に含まないとされるからです。



[大里比企広域農道(2018年):大型車の進入は御遠慮下さい]


農道は機能によって基幹的農道、圃場内農道(幹線農道・支線農道・耕作道)に分類されますが、農道を造る事業制度から「広域農道」「農免道路」などと呼ばれるほうが一般的です。
広域農道は広域営農団地農道整備事業で造られた農道で、延長は10㎞以上、車道幅員5m以上が事業の採択要件なので、立派な道路です。
埼玉県内に広域農道として造られた道は4路線・約64kmありますが、本来の農業生産活動、農産物流通などによる利用よりも、混雑する国道や県道の抜け道として使われていることが多い道路です。


[農免道路(2017年):めったに見ない標識]


農免道路は農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業によって造られた農道です。
1953(S28)年に揮発油税が旧・建設省所管の道路整備財源に充てられることにとなった際に、「農林漁業用に使用される揮発油については課税を免除するべきである」との世論が強くなりました。
しかし、ガソリンスタンドに給油に来た車が農林漁業用に使われるのか否かを判断することができないので、免税の代わりに免税相当額を財源にしてこのような事業ができたのです。
旧・建設省系の道路整備に充てられていた道路特定財源は、平成17年12月9日に政府・与党による「道路特定財源の見直しに関する基本方針」が取りまとめられ、平成21年度から一般財源化されました。
このため、1965(S40)年度から続く農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業も2008(H20)年度で廃止になりました。


■林道・・・・・



[林道金山志賀坂線(2012年):ぽろぽろと石が落ちている]


林道もいろいろな事業で造られています。
広域基幹林道、普通林道、森林造成林道……間伐対策林道、小規模林道、農林業地域改善対策林道など様々な事業制度によって造られています。
令和2年現在、全国の林道は139,770km、埼玉県には国有林内に42km、民有林内に860kmの林道があります。
林道も農道と同様に道路法の都道府県道や市町村道に認定されると、林道の統計から除かれます(林道ではなくなる)。



[林道金山志賀坂線(2012年):八丁トンネル886m]


埼玉県のホームページを見ると『林道』とは言わず『森林管理道(林道)』と書かれ、安全に走れる速度は時速20kmだそうです。
厳しい自然条件の中に造られる道路なので、県が管理する林道でもしょっちゅう通行止めになっています。
林道を走る場合はくれぐれもご注意を。


■臨港道路・・・・・



[レインボーブリッジ(2018年)]


海のない埼玉県民には縁の少ない道路ですが、気付かないうちに走っていることもあります。
臨港道路は、漁港漁場整備法(農林水産省系)に基づく漁港と港湾法(旧・運輸省系)に基づく港湾にあります。
漁港でも4車線で歩道を備えた臨港道路が整備されることもあるので、そこら辺の幹線道路よりよっぽど立派な道路です。
港湾法に基づく臨港道路となるとさらに大規模な道路になります。
お台場への入り口であるレインボーブリッジの下層部には、ゆりかもめの両側にそれぞれ2車線の車道と歩道がありますが、この部分は海岸青海線という臨港道路で東京都港湾局が管理しています。
臨港道路だからと言って一般の車両が通れないわけではありませんが、本来の目的は船舶の積荷を運搬する車両のための道なので、コンテナ車などの大型車の割合が高く、小さな車で走ると恐怖心すら覚えます。



[ゲートブリッジ(2017年):航空法により高さが制限]


恐竜が向かい合ったような形で有名な東京ゲートブリッジも、東京港臨海道路という臨港道路の一部で、この橋には片側ですが歩道がついています。
新木場からゲートブリッジに向かって臨港道路の歩道を歩いていくと、若洲公園入口で車道沿いの歩道は途切れてしまいます。
が、その先の高架下を歩くか公園内を通れば、ゲートブリッジのたもとにある若洲側エレベーター棟に行けます。
このエレベーターを使わないとゲートブリッジの歩道を歩くことはできません。



[東京ゲートブリッジ(2017年):若洲側エレベーター]


エレベーターで橋の上まで昇ると、周りに高い建物がないので、若洲ゴルフ場、東京湾、高層ビル群を一望することができます。
橋の歩道を歩いていると路面より下側のトラスは見えないので、恐竜が向かい合った形には見えず特異な形状の橋を渡っている感じはありません。
さらに進むと海面から約61mの最高地点を過ぎ、中央防波堤外側埋立地に降りるエレベータ棟に着きますが、エレベーターは動いていません。
中央防波堤内側埋立地~お台場をつなぐ第二航路海底トンネル、中央防波堤内側埋立地~城南島を結ぶ東京港臨海トンネル、いずれも歩行者や自転車の通行ができません。
このためゲートブリッジを歩く歩行者は強制的に戻らざるを得ないようにしているようです。
中央防波堤内側埋立地にある『海の森公園』の整備が進み一般に開放されるようになれば、埋立地側のエレベーターが動くかもしれません。



[ゲートブリッジ(2017年):中央部は海面から約61m]


ゲートブリッジの車道は自転車、原動機付自転車の通行が禁止になっています。
いい気になって、自転車で橋の上を走ろうものなら、直ちに監視カメラでチェックされ「その場を動かないように!」とスピーカーで警告され、黄色と黒のツートンカラーに赤灯を付けた道路パトロールカーが駆けつけて取り押さえられます。
そのうちに警視庁のパトカーも来てこってり絞られたうえに、パトカーとともに来た方向に強制送還されることになります。



[ゲートブリッジ(2017年):パトカーと一緒にお戻り]


■道路交通法の道路・・・・・



[霧降高原の駐車場(2017年):この中も道交法が適用]


スピード違反、駐車違反など交通違反で捕まると反則金や罰金を取られることがあります。
根拠となる道路交通法は、道路の定義を「道路法第二条第一項に規定する道路、道路運送法第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。」としています。
パッと見ると道路法の「道路(高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道)」と道路運送法の「自動車道」だけが対象のように思えますが、曲者は及び以降の「一般交通の用に供するその他の場所」と言う言葉です。
不特定多数の人が自由に通れれば「道路」と判断されるので、農道、林道、臨港道路のみならずコンビニの駐車場までもが該当するようです。
道路交通法の定義による「道路」の範囲が最も広いようです。



■おまけ・・・・・


[矢場とん(2014年)]

名古屋名物みそかつで有名な矢場とんのわらじとんかつで、写真はみそとソースのあいがけです。
かつ二枚はボリュームたっぷりで御飯小盛でようやく完食できました。
二枚ともみそかつにすると、名古屋人以外にとって完食は至難の業だと感じた次第です。





<参考資料>